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事務所ビルの維持保全計画はなぜ自動的に義務にならないのか|建築基準法施行令が定める特定行政庁の指定という条件を解説

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事務所ビルにも、劇場や病院と同じような設備の維持管理が求められることがあります。
建築基準法第八条第二項は、一定の建築物に維持保全の準則や計画の作成を義務づけています。
ただしこの義務は、劇場や病院のように基準を満たせば自動的に生じるわけではありません。
事務所その他これに類する用途の建築物では、特定行政庁が指定して初めて義務が生じるという別の仕組みが働きます。

自分の事務所ビルにも維持保全計画が要ると聞きました。
劇場や病院と同じ話でしょうか。

実は少し違います。
事務所は基準を満たすだけでは義務になりません。

では何が決め手になるんですか。

特定行政庁の指定があるかどうかです。
まずそこを確認しましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法第八条第二項は、一定の建築物に維持保全の準則又は計画の作成を義務づけています
  • 対象は第一号(劇場・病院等の特殊建築物)と第二号(事務所その他これに類する用途)の二種類に分かれます
  • 第二号の建築物は、施行令第十三条の三第二項により階数三以上・延べ面積二百平方メートル超が基準です
  • 基準を満たしても、特定行政庁が指定しなければ第八条第二項の義務は生じません
  • 作成義務者は建築物の所有者又は管理者で、占有者は含まれません

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事務所ビルの維持保全計画は用途と規模の確認だけでなく特定行政庁の指定を確認しなければ義務にならないことを示した図解

事務所ビルにも維持保全の準則や計画を作る義務はあるのか

事務所ビルの脇に維持保全の準則を示す分厚いルールブックが立っているイメージ
建築物の維持管理は、まず所有者や管理者自身の努力に委ねられています。
しかし建築基準法は、一部の建築物についてさらに進んだ義務を定めています。
建築基準法第八条第二項 次の各号のいずれかに該当する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない。(略)
維持保全の準則や計画づくりは、努力義務を超えた実際の義務です。
第八条第一項は、建物の所有者・管理者・占有者すべてに「常時適法な状態に維持するよう努める」という努力義務を課しています。
一方で第二項は、対象となる建築物について、準則又は計画の作成という具体的な行動を義務づけています。
第二項の対象は二種類あり、第一号は劇場や病院などの特殊建築物、第二号は事務所その他これに類する用途の建築物です。
自分の建物がどちらに当たるのか、まず用途から確認する必要があります。

うちの事務所ビルも、この第二項の対象になるということですか。

それはまだ分かりません。
次に対象となる要件を確認しましょう。

どんな事務所が対象になるのか

階数を示す事務所ビルの脇で床面積の図面に定規が当てられているイメージ
第二号の対象になる事務所には、用途だけでなく規模の条件も付いています。
政令が具体的な数字を定めているので、まず条文を確認します。
建築基準法施行令第十三条の三第二項 法第八条第二項第二号の政令で定める建築物は、事務所その他これに類する用途に供する建築物(特殊建築物を除く。)のうち階数が三以上で延べ面積が二百平方メートルを超えるものとする。
対象になるのは階数三以上かつ延べ面積が二百平方メートルを超える事務所です。
「事務所その他これに類する用途」なので、貸事務所やオフィスビルだけでなく、これに類する用途に使われる建築物も含まれます。
ただし特殊建築物は除かれます。特殊建築物にあたるものは、既に第一号の基準(劇場・病院等)で判断されるためです。
延べ面積は建物全体の合計で判断し、事務所部分だけの面積ではありません。
自分の建物が事務所その他これに類する用途で、特殊建築物に当たらないかどうかも合わせて確認しておく必要があります。

階数三以上で延べ面積二百平方メートル超なら、もう義務があるということですね。

まだそう決まりません。
ここが今回の一番大事なところです。

基準を満たせば自動的に義務が生じるのか

官公庁の建物の脇で書類に大きな印が押されているイメージ
施行令の基準に当てはまることと、実際に義務が生じることは同じではありません。
条文の本体である第八条第二項第二号に戻って確認します。
建築基準法第八条第二項第二号 前号の特殊建築物以外の特殊建築物その他政令で定める建築物で、特定行政庁が指定するもの
第二号の建築物は特定行政庁の指定を受けて初めて義務の対象になります。
第一号(劇場・病院等)は政令の基準を満たせば自動的に義務が生じますが、第二号は政令の基準に加えて特定行政庁の指定という条件が重ねられています。
つまり階数三以上・延べ面積二百平方メートル超の事務所であっても、特定行政庁の指定がなければ第八条第二項の準則・計画作成義務は生じません。
この場合でも第八条第一項の努力義務は、事務所の所有者・管理者・占有者すべてに引き続きかかっています。
「規模の基準を満たした=義務が生じた」と思い込まず、指定の有無を別に確認することが実務の分かれ目になります。

基準を満たしていれば、うちも当然義務があると思っていました。

特定行政庁が指定していなければ、努力義務のままです。
指定の有無を確認しましょう。

指定の有無はどうやって確認すればよいのか

事務所ビルから小さな役所の建物へ疑問マーク付きの矢印が伸びているイメージ
指定は建築物ごとに特定行政庁が行うもので、全国一律の基準表では確認できません。
確認先を間違えると、指定の有無を見落としたまま放置してしまいます。
建築基準法第二条第三十五号 特定行政庁 建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。(略)
指定の有無は建築主事を置く市町村長または都道府県知事の窓口で確認します。
特定行政庁は、建築主事を置く市町村では市町村長、それ以外の地域では都道府県知事にあたります。
指定は個別の建築物ごとに行われるため、同じ用途・規模の建物でも地域や個別の事情によって指定の有無が分かれることがあります。
過去に指定を受けた記録が管理会社や前の所有者に引き継がれていない場合もあるため、台帳上の記録だけに頼らず窓口で確認することが確実です。
指定を受けている場合は、第八条第三項の国土交通大臣の指針も参考にしながら準則・計画の作成に進みます。

うちのビルが指定されているかどうか、これまで確認したことがありませんでした。

台帳の記録だけでは分かりません。
窓口へ直接確認するのが確実です。

明日からなにを確認すればよいのか

事務所ビルの脇でチェックリストの書類にペンと確認済みの印が置かれているイメージ
ここまでの内容を、確認する順番に沿って整理します。
一つずつ順番に確認すれば、見落としを防げます。
  • 自社の建築物が事務所その他これに類する用途で、特殊建築物に当たらないか確認する
  • 階数三以上・延べ面積二百平方メートル超という規模の基準に当てはまるか確認する
  • 建築主事を置く市町村長又は都道府県知事(特定行政庁)の窓口に、指定の有無を照会する
  • 指定を受けている場合は、所有者又は管理者が維持保全の準則又は計画を作成する(占有者は作成義務を負わない)
指定の有無を確認するまでは、義務の有無も確定しません。
規模の基準を満たしているというだけで、準則や計画の作成に着手する必要はありません。
指定を受けていることが分かった時点で、第八条第三項の国土交通大臣の指針も参照しながら、維持保全の準則又は計画の内容を検討します。
占有者に管理を任せている事務所ビルでも、作成義務そのものは所有者又は管理者にあることを社内で共有しておくと安心です。

指定を確認してからでないと、何から手を付けるかも決まらないんですね。

まず指定の有無を確認することが出発点です。
そこから準則や計画の検討を始めましょう。

よくある質問

Q事務所ビルなら必ず維持保全計画が必要になりますか?
A回答は、事務所その他これに類する用途の建築物は、建築基準法施行令第十三条の三第二項が定める階数三以上・延べ面積二百平方メートル超の基準を満たし、かつ特定行政庁の指定を受けた場合に義務が生じるとしています。基準を満たすだけでは義務は確定しません。
Q劇場や病院と事務所ではなぜ扱いが違うのですか?
A回答は、建築基準法第八条第二項第一号(劇場・病院等の特殊建築物)は政令の基準を満たせば自動的に義務が生じるのに対し、第二号(事務所その他これに類する用途)は政令の基準に加えて特定行政庁の指定が必要だとしています。対象の性質によって義務の生じ方が分けられています。
Q指定を受けているかどうかは誰に確認すればよいですか?
A回答は、建築主事を置く市町村長又は都道府県知事にあたる特定行政庁の窓口で確認するとしています。指定は建築物ごとに行われるため、台帳の記録だけに頼らず窓口へ直接照会することが確実です。
Q維持保全の準則や計画は誰が作成しなければなりませんか?
A回答は、作成義務者は建築物の所有者又は管理者であるとしています。占有者に管理を任せている場合でも、作成義務そのものは占有者には及びません。

まとめ

✔建築基準法第八条第二項は、一定の建築物に維持保全の準則又は計画の作成を義務づけています
✔対象は第一号(劇場・病院等の特殊建築物)と第二号(事務所その他これに類する用途)に分かれます
✔第二号の建築物は施行令第十三条の三第二項により階数三以上・延べ面積二百平方メートル超が基準です
✔第一号は基準を満たせば自動的に義務が生じますが、第二号は特定行政庁の指定を受けて初めて義務になります
✔特定行政庁は建築主事を置く市町村長又は都道府県知事です
✔指定の有無は台帳の記録だけに頼らず窓口へ直接確認することが確実です
✔作成義務者は建築物の所有者又は管理者で、占有者は含まれません

事務所ビルの義務は指定があって初めて生じると分かりました。
まず窓口に確認します。

指定の有無は早めに確認しておくほど安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第八条・第二条第三十五号
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第十三条の三

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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