屋外タンク貯蔵所のポンプ設備というと、周囲の空地や油分離装置にばかり目が向きがちです。
実はポンプと電動機を建築物の中に収めた場合、その建築物=ポンプ室そのものにも独自の構造基準が定められています。
壁や屋根の材料から窓ガラスの種類、床の高さまで、条文は建屋そのものの仕様を細かく指定しています。
今回はこのポンプ室の構造基準を、条文からたどっておきます。
屋外貯蔵タンクのポンプ設備は、屋根さえ付けておけば基準を満たすと思っていました。
いいえ、ポンプ室を設ける場合は壁や窓にも構造基準があります。
条文で範囲を確認しましょう。
建築物の中に置くかどうかで、基準がまるごと変わるということですか。
はい、ポンプ室に収めるかどうかで基準が変わります。
順番に見ていきましょう。
- 危険物の規制に関する政令第11条第1項第10号の2は、ポンプ及び電動機のための建築物その他の工作物を「ポンプ室」と定義し、壁・柱・床及びはりを不燃材料で造ることを義務付けています
- ポンプ室は屋根も不燃材料とし、金属板その他の軽量な不燃材料でふくことが必要です
- ポンプ室の窓及び出入口には防火設備を設け、ガラスを用いる場合は網入りガラスに限られます
- 床には高さ0.2メートル以上の囲いを設け、危険物が浸透しない構造・適当な傾斜及び貯留設備を備えることが必要です
- ポンプ室以外の場所に設ける場合は囲いの高さが0.15メートル以上に変わり、水に溶けない第4類の危険物を扱うときは油分離装置の設置が必要になります
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目次
ポンプ室というくくりはどこで生まれるのか

条文はまずポンプ設備そのものの範囲を決め、そこから建屋の扱いが枝分かれします。
条文はポンプ設備を「ポンプ及びこれに附属する電動機」と定義したうえで、これらのために建築物その他の工作物を設ける場合はその工作物を含めてポンプ設備と扱うと決めています。
つまりポンプを屋外にむき出しで置くか、建屋に収めるかは事業者の選択ですが、建屋を選んだ瞬間にポンプ室としての構造基準が付いてきます。
その最初の基準が、壁・柱・床及びはりを不燃材料で造ることです。
木造の物置やプレハブをそのまま流用することはできません。
ポンプに屋根を付けただけで、ポンプ室という扱いになるんですか。
はい、建築物その他の工作物を設ければポンプ室です。
壁と柱の材料をまず確認しましょう。
屋根や窓はどんな基準を満たさなければならないのか

ここにも同じ発想の基準が続きます。
軽い材料でふくのは、万一の異常燃焼でも屋根が抜けやすい構造にして被害を抑えるためと考えられます。
窓及び出入口には防火設備を設け、ガラスを用いる場合は網入りガラスに限られます。
普通のガラス窓や木製建具をそのまま使うことはできません。
壁だけでなく屋根・窓・出入口まで、建屋全体が不燃仕様であることが前提になります。
ポンプ室に普通のガラス窓を付けたら、それだけで基準違反になりますか。
はい、ガラスを使うなら網入りガラスに限られます。
普通のガラスは使えません。
床はどんな構造にしなければならないのか

床の基準は、万一の漏えいと蒸気の滞留をポンプ室の中で食い止める発想でできています。
床自体も危険物が浸透しない構造とし、適当な傾斜と貯留設備で漏れた危険物を一箇所に集める仕組みが求められます。
あわせて採光・照明・換気の設備が必要で、可燃性の蒸気が滞留するおそれがあるポンプ室には、蒸気を屋外の高所に排出する設備も設けなければなりません。
建屋に収めて密閉度が高くなる分、漏えいと蒸気の両方への手当てが同時に求められている形です。
換気扇を付けていれば、蒸気の排出設備は満たしていることになりますか。
屋外の高所へ排出できる構造かどうかがポイントです。
設置場所まで確認しましょう。
ポンプ室以外に置いた場合との基準の違いを見落としていないか

同じ号の中には、屋外にむき出しで置く場合の別の基準もあります。
ポンプ室の床が高さ0.2メートル以上の囲いなのに対し、屋外にむき出しで設置する場合は0.15メートル以上の囲いとされています。
さらに水に溶けない第4類の危険物を扱うポンプ設備では、貯留設備に油分離装置の設置まで義務付けられます。
「ポンプ室の基準」と「ポンプ室以外の基準」を同じものと思い込むと、囲いの高さや油分離装置の要否を取り違えるおそれがあります。
自社の設備がどちらの基準の対象になるのか、まず建屋の有無から確認する必要があります。
うちのポンプは屋根付きの土間に置いてあります。
ポンプ室と同じ基準でいいですか。
壁や柱まで不燃材料で囲まれた建築物かどうかで判断が変わります。
構造から確認しましょう。
明日からポンプ室の何を確認すればよいのか

自社の屋外貯蔵タンクのポンプ設備に当てはめて、順番に見ていきましょう。
- ポンプ設備が建築物その他の工作物の中にあるか、屋外にむき出しで置かれているかを確認する
- ポンプ室であれば、壁・柱・床・はりが不燃材料か、屋根が不燃材料と軽量な不燃材料でふかれているかを確認する
- 窓及び出入口に防火設備があり、ガラスは網入りガラスになっているかを確認する
- 床の囲いの高さ・傾斜・貯留設備、採光・照明・換気と蒸気排出設備の有無を確認する
- 屋外にむき出しで設置している場合は、囲いの高さと、水に溶けない第4類の危険物なら油分離装置の有無を確認する
ポンプ室に収めるか屋外に置くかで、囲いの高さや油分離装置の要否まで基準が変わる点に注意が必要です。
古い設備では設置当時の基準のまま更新されていないこともあるため、図面と現況を突き合わせて確認します。
判断に迷う場合は、自己流の解釈に進む前に所轄消防署へ相談することが安全です。
自社のポンプ設備がポンプ室に該当するか、まず図面で確認してみます。
構造が分かれば、必要な設備もはっきりします。
不安な点があれば一緒に確認しましょう。
よくある質問
まとめ
まずは自社のポンプ設備の構造を確認してみます!
ポンプ室の構造に不安があれば、一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第11条第1項第10号の2
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





