令和6年能登半島地震では、ガソリンスタンドが営業困難になり、災害応急対策を行う車両の燃料が不足しました。
この課題を受けて、消防庁は令和7年4月に、可搬式の燃料給油機の整備を進めるよう通知しました。
給油機はタンクローリーと直結して使い、その安全対策は危険物の仮取扱いの考え方が参考になります。
この記事では、消防災第52号と消防危第226号が示す運用の中身を整理します。
災害でガソリンスタンドが使えなくなったら、うちの町の車両の燃料はどうなるのでしょうか。
その備えとして、可搬式の燃料給油機が通知で示されています。
まずは、通知が何を求めているのかを確認しましょう。
その給油機は、どこでも自由に置いて使えるのでしょうか。
危険物を扱うので、安全対策が必要です。
消防庁が示した仮取扱いの考え方も、あわせて見ていきます。
この記事の結論
- 消防庁の通知(消防災第52号・令和7年4月1日)は、災害時の燃料確保・供給体制を構築するため、可搬式の燃料給油機の整備を進めるよう求めたものです。
- 可搬式の燃料給油機は、タンクローリーと直結して災害応急対策の車両へ給油する機器です。
- 給油に使うときの安全対策は、消防危第226号が示す仮取扱いの実施計画(6mの保有空地、漏えい防止シートなど)が参考になります。
- 整備費は、条件を全て満たして計画の確認が取れれば緊急防災・減災事業債の対象です。
- 通知は、年に1度は訓練等で給油機を活用するよう求めています。
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災害時の燃料不足に備えてなぜ可搬式の燃料給油機の通知が出されたのか
この通知は、令和6年能登半島地震で起きた課題を出発点にしています。
まず、通知が示している背景を原文で確認します。
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)大規模災害が発生した場合には、迅速・的確な災害応急対策が求められるため、地方公共団体においては、災害応急対策を継続して行うことができるよう、災害発生時の燃料確保・供給体制を構築することが必要です。令和6年能登半島地震においては、地震等の影響により、ガソリンスタンドが営業困難な状況となり、災害応急対策を行う車両に必要となる燃料が不足する等の課題が生じたところです。
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)各都道府県防災担当課長におかれましては、災害発生時の燃料確保・供給体制を構築するため、下記を参考に、可搬式の燃料給油機の整備を進めていただくとともに、貴都道府県内の市町村に対して周知及び適切に助言していただきますようお願いします。なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言として発出するものであることを申し添えます。
通知が出された背景は、能登半島地震でのガソリンスタンドの営業困難です。
通知は、地震等の影響でガソリンスタンドが
営業困難となり、災害応急対策を行う車両の
燃料が不足する課題が生じたと書いています。
そのため、地方公共団体には、災害発生時の燃料確保・供給体制を構築することが必要だと述べています。
通知は、その手段として可搬式の燃料給油機の整備を進めるよう、各都道府県防災担当課長に求めています。
発出は令和7年4月1日で、消防庁国民保護・防災部防災課長の
消防災第52号です。地方自治法に基づく技術的な助言であると、本文に書かれています。
能登半島地震では、ガソリンスタンドも動かなくなったのですね。
通知は、災害応急対策を行う車両の燃料が不足する課題が生じたと書いています。
次は、可搬式の燃料給油機がどんな機器かを確認しましょう。
可搬式の燃料給油機とはどんな機器でどう運用するのか
通知は、可搬式の燃料給油機の意味と、災害時の運用のイメージを示しています。
まず、定義を原文で確認します。
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)可搬式の燃料給油機は、ガソリンスタンドが災害等で使用困難な場合等に、燃料を積んだタンクローリーと直結し、災害応急対策を行う車両への給油を可能とする燃料給油機であること。
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)(別紙)②燃料の確保 災害時応援協定等に基づき、地方公共団体が石油商業組合等の関係機関へ燃料及びタンクローリーの手配を要請(略)③可搬式の燃料給油機の運搬(備蓄倉庫⇒給油場所) 災害時応援協定等に基づき、地方公共団体がトラック協会等の関係機関へ運搬を要請(略)④給油の実施 救助車両等へ給油を実施。※②のタンクローリー運転手(危険物取扱者)が立ち会い、給油作業の監視監督を行う。
可搬式の燃料給油機は、タンクローリーと直結して給油できる機器です。
通知は、ガソリンスタンドが災害等で
使用困難な場合等に、燃料を積んだタンクローリーと直結し、災害応急対策を行う車両への給油を可能にする機器と定義しています。
運用のイメージでは、地方公共団体が石油商業組合等に燃料とタンクローリーの手配を、トラック協会等に給油機の運搬を、それぞれ
災害時応援協定等に基づいて要請するとされています。
給油の際は、タンクローリーの運転手である
危険物取扱者が立ち会い、給油作業の監視監督を行うとされています。
通知は、関係機関との協定締結等による運用体制の構築に努めることも求めています。
給油機は、タンクローリーとつなぐだけで使えるのですね。
給油作業には、危険物取扱者が立ち会うとされています。
次は、仮取扱いの安全対策を確認しましょう。
仮取扱いで可搬式の給油設備を使うときはどんな安全対策が求められるのか
通知は、可搬式の燃料給油機の取扱いについて、消防危第226号の内容を参考にするよう求めています。
226号は、災害時の仮取扱いによる給油計画を認めてよいかという問いに答えたものです。
(危険物規制事務に関する執務資料の送付について 平成30年12月18日消防危第226号 消防庁危険物保安室長)(危険物の仮取扱い関係)問 管内事業者より、災害時に周辺の給油取扱所において燃料供給が困難となった場合に、消防法第10条第1項ただし書きに基づく仮取扱いにより自動車への給油等を行うための実施計画(詳細は別紙参照)について相談を受けた。仮取扱いの形態としては、危険物の流出防止対策を施した場所において、可搬式の給油設備を移動タンク貯蔵所と接続し、危険物取扱者免状の保有者が当該給油設備を用いて自動車への給油又は容器への注油を行うとのことである。(略)仮取扱いを認めることとして差し支えないか。答 差し支えない。
(消防法(昭和23年法律第186号)第10条第1項)指定数量以上の危険物は、貯蔵所(略)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。
(危険物規制事務に関する執務資料の送付について 平成30年12月18日消防危第226号 消防庁危険物保安室長)(2)保有空地の確保 給油場所の周囲に、6mの幅の保有空地を確保する。保有空地の周囲には、柵、ロープ等を立てて空地の状態を確保する。(略)(4)流出防止対策 給油場所は、コンクリート又はアスファルトで舗装された平坦な地盤面に設けるものとし、給油設備及び移動タンク貯蔵所の設置場所を包含するように漏えい防止シートを敷くとともに、簡易の防油堤を周囲に設置する。(略)(7)消火設備の設置 第五種消火設備(10型粉末消火器)を3本以上設置する。
(危険物規制事務に関する執務資料の送付について 平成30年12月18日消防危第226号 消防庁危険物保安室長)(本計画の取扱い形態に応じた対策)(1)給油設備は、危険物の規制に関する規則第25条の2(固定給油設備等の構造)の規定に準ずる構造のものとする。(略)(3)移動タンク貯蔵所1台につき、貯蔵する危険物はガソリン、灯油又は軽油のいずれか一油種とする。(略)(5)給油業務を行う時間帯は、危険物の取扱い作業の有無を問わず、作業員が常駐し監視を行う。(6)夜間等、給油業務が終了した後は、移動タンク貯蔵所を常置場所等に移動させる。
仮取扱いで可搬式の給油設備を使う計画は、消防庁が差し支えないと答えています。
災害時に周辺の給油取扱所で燃料供給が困難となった場合に、消防法第10条第1項ただし書きに基づく
仮取扱いで自動車へ給油する計画への回答です。
法律上は、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて、10日以内の期間、仮に取り扱う場合が例外とされています。
計画の主な安全対策は、給油場所の周囲に
6mの保有空地をとる、漏えい防止シートと簡易の防油堤で流出を防ぐ、10型粉末消火器を3本以上置く、などです。
給油設備は規則第25条の2の構造に準ずるものとし、危険物は移動タンク貯蔵所1台につき
一油種とするなど、この形態ならではの対策も挙がっています。
周囲に6mの保有空地を確保し、柵やロープで囲うとされています。
次は、整備の費用の面を確認しましょう。
可搬式の燃料給油機の整備にはどんな地方財政措置があるのか
通知は、可搬式の燃料給油機の整備に係る地方財政措置も示しています。
対象になる条件と、計画の出し方を原文で確認します。
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)(1)地方財政措置及びその対象となる可搬式の燃料給油機 地方公共団体が災害応急対策を継続するために運用する可搬式の燃料給油機の整備について、次の内容を全て満たす場合に、令和7年度から緊急防災・減災事業債の対象となります。①地方公共団体が実施する災害応急対策に係る用途に供するものであること②地方公共団体の防災部局が整備・管理・運用するものであること なお、災害発生時に、防災部局の差配の下、各種災害応急対策を実施する他の部局が運用することは差し支えない③地方公共団体において、可搬式の燃料給油機の活用に係る具体的な運用方法や運用体制について定めること
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)(2)可搬式の燃料給油機整備・運用事業計画の提出 全国各地で頻発する災害の発生に備え、各地方公共団体が整備・運用する可搬式の燃料給油機に係る計画(別添)を消防庁国民保護・防災部防災課に提出し、2(1)に示す内容を満たすことの確認が取れたものについて、緊急防災・減災事業債の対象とします。なお、防災課の同計画の確認には1か月程度を要することから、各地方公共団体におかれては、総務省への起債届出・協議等を踏まえ、期間に余裕をもって提出していただきますよう留意願います。
整備費が起債の対象になるには、条件を全て満たして計画を出す必要があります。
通知は、令和7年度から
緊急防災・減災事業債の対象になる条件を、災害応急対策用であること、防災部局が整備・管理・運用すること、運用方法と体制を定めることと示しています。
災害発生時には、防災部局の差配の下で他の部局が運用することも差し支えないとされています。
条件を満たすことの確認のため、整備・運用事業計画を消防庁
防災課に提出し、確認には
1か月程度かかるとされています。
このため、総務省への起債届出・協議等を踏まえて、期間に余裕をもって提出するよう通知は求めています。
整備費は、どんな条件なら財政措置の対象になるのでしょうか。
全ての条件を満たし、計画の確認が取れたものが緊急防災・減災事業債の対象とされています。
最後に、明日から確認することを整理しましょう。
明日から何を確認すればよいのか
通知は、運用体制と訓練、そして取扱いの参考資料を示しています。
最後に、その部分を原文で確認します。
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)(2)運用体制の構築等 可搬式の燃料給油機の活用にあたっては、関係機関との協定締結等による運用体制の構築に努めること(運用のイメージは別紙を参照すること)。また、年に1度は訓練等で活用し、災害時に円滑に活用できるよう、関係する職員等の対応力向上に努めること。
(災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知) 令和7年4月1日消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)(3)その他 可搬式の燃料給油機の取り扱いについて、別添「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成30年12月18日付け消防危第226号消防庁危険物保安室長通知)の内容を参考とすること。
確認したいのは、運用体制・訓練・仮取扱いの安全対策の3点です。
1点目は、石油商業組合やトラック協会等との
災害時応援協定など、燃料とタンクローリー、運搬の手配先が決まっているかです。
2点目は、
年に1度は訓練等で給油機を活用し、関係職員の対応力を高めているかです。
3点目は、可搬式の給油機の取扱いを、消防危第226号の内容を参考にして、所轄の消防機関と事前に相談しているかです。
なお、226号の答は相談のあった実施計画に対するものなので、実際の運用は
所轄消防署に確認するのが確実です。
まずは、燃料とタンクローリーの手配先が協定で決まっているかを確認しましょう。
訓練の予定も、あわせて見ておきます。
よくある質問
Q通知は、どこの担当者に向けて出されていますか?
A通知は、各都道府県の防災担当課長宛てです。都道府県内の市町村への周知と適切な助言も求めています。
Q給油作業は、誰が行うことになっていますか?
A消防危第226号の別紙は、危険物の取扱いを危険物取扱者免状の保有者が行うとしています。消防災第52号の運用イメージでも、タンクローリー運転手(危険物取扱者)が立ち会い、監視監督を行うとされています。
Q緊急防災・減災事業債の対象になる条件はありますか?
A通知は、災害応急対策に係る用途であること、防災部局が整備・管理・運用すること、運用方法や運用体制を定めることの全てを満たす場合と示しています。
Q通知は、可搬式の燃料給油機の整備を義務づけていますか?
A消防災第52号は、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的な助言として発出されたと書かれています。整備を義務づけるとは書かれていません。消防危第226号も、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されています。
まとめ
✔消防災第52号は、災害時の燃料確保・供給体制の構築のため、可搬式の燃料給油機の整備を進めるよう求めた通知
✔可搬式の燃料給油機は、タンクローリーと直結して給油できる機器である
✔運用は、石油商業組合やトラック協会等との災害時応援協定等に基づいて手配する流れが示されている
✔給油では、危険物取扱者が立ち会って監視監督を行う
✔仮取扱いの計画は、6mの保有空地・漏えい防止シート・10型粉末消火器を3本以上などの安全対策が挙がっている
✔整備費は、条件を満たして計画の確認が取れれば緊急防災・減災事業債の対象になる
✔まずは、協定の有無と年に1度の訓練を確認する
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この記事を書いた人
㈱防災屋Web編集部
元消防士、行政書士、高専卒など
防火管理者には「セルフ選任」と「プロ代行」の2択があることをもっと多くの方々に知ってもらい、世の中の防火管理レベルをもっと上げていきたい。
0にはできない火災リスクとの向き合い方を伝え、救える命を増やし、悲しみの総量を減らしたい。
後悔してからでは遅すぎる火災予防に、Webの力で取り組む㈱防災屋の編集部です。
監修・編集者
青木 俊輔
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
主な活動
参考・出典
- 災害応急対策を継続するための可搬式の燃料給油機の活用について(通知)(令和7年4月1日 消防災第52号 消防庁国民保護・防災部防災課長)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成30年12月18日 消防危第226号 消防庁危険物保安室長)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条第1項
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第25条の2
- 地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。