セルフ式のガソリンスタンドでは、係員が座って給油を監視する制御卓が基本形です。
令和元年の省令改正で、この制御卓の代わりに持ち運べる「可搬式の制御機器」を使うことも認められるようになりました。
令和2年3月27日、消防庁は具体的な運用のポイントをまとめた通知を発出しました(消防危第87号)。
「持ち運べる」からといって自由に使ってよいわけではない点を知らないと、思わぬ手続き漏れにつながります。
うちのスタンドは狭くて制御卓を置く場所が無いんですが、可搬式の機器を使えばどこでも操作できるんでしょうか。
いいえ、使える場所や監視の仕方には決まりがあります。
令和2年の通知が運用のポイントを示していますよ。
持ち運べる機器なのに、そんなに細かいルールがあるんですか。
はい、設置には変更許可も必要です。
順番に見ていきましょう。
- 令和2年3月27日の消防危第87号により、セルフスタンドで使う可搬式の制御機器の具体的な運用要領が示されました。
- 可搬式の制御機器は、ビーコン等で位置に応じて給油許可機能を作動・停止させる必要があります。
- 顧客の給油作業の監視は、固定給油設備や給油空地等の近傍から行うことが求められます。
- 予防規程には落下防止措置や火災時の使用中止など、可搬式ならではの項目を明記する必要があります。
- 可搬式の制御機器を新たに設置するときは、消防法第11条第1項に基づく変更許可が必要です。
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目次
セルフ給油所の可搬式制御機器はなぜ運用要領が示されたのか

令和元年の省令改正が、その状況を変えるきっかけになりました。
令和元年12月20日公布の省令改正(令和元年総務省令第67号)により、令和2年4月1日から可搬式の制御機器で給油許可等を行うことが技術上の基準として認められました。
背景には、人口の少ない地域でガソリンスタンドの担い手が減り、固定の制御卓を置く余裕が無い店舗でも運営を続けられるようにする狙いがあります。
制度化にあたっては「過疎地域等における燃料供給インフラの維持に向けた安全対策のあり方に関する検討会」でモデル検証が行われ、その結果を踏まえて今回の運用要領がまとめられました。
次は、可搬式の制御機器に具体的に何が求められるのかを見ていきます。
過疎地域の話だと聞くと、うちのスタンドには関係ない気もします。
制度自体は地域を限定していません。
次は具体的な要件を見ましょう。
可搬式の制御機器はどこでどう作動させればよいのか

通知は位置に応じた作動・停止の仕組みを求めています。
給油許可を行える範囲は、各給油取扱所のレイアウトに合わせて従業者が適切に監視できる範囲に設定する必要があります。
その範囲を機械的に区切るために、位置に応じて給油許可機能を作動・停止させるビーコン等の機器を配置することが求められます。
一方、火災等の際の給油停止機能・一斉停止機能は、この範囲に限らず給油空地・注油空地及びその周辺の屋外であれば、どこでも作動できるようにしておく必要があります。
「許可できる範囲」と「止められる範囲」は同じではない点に注意しましょう。
ビーコンなんて、うちの規模だと大掛かりすぎる気がします。
位置に応じた作動・停止さえ実現できれば、機器の選び方は現場に合わせられますよ。
顧客の給油作業の監視はどこから行えばよいのか

通知は監視する位置についても具体的に定めています。
規則第40条の3の10第3号イは、顧客の給油作業等を「直視等により適切に監視すること」と定めています。
通知はこれを可搬式の場合にも当てはめ、固定給油設備や給油空地等の近傍から監視することを明確にしています。
つまり、可搬式の制御機器を持っていても、事務所の奥や離れた場所から遠隔で監視することは想定されていません。
「持ち運べる=どこからでも操作できる」という理解は誤りだと押さえておきましょう。
事務所からモニター越しに監視すればいいと思っていました。
近傍からの監視が前提です。
次は予防規程に書くべきことを見ましょう。
予防規程には何を書いておく必要があるのか

通知は予防規程に明記すべき事項を4つ挙げています。
機器は平成30年消防危第154号が定める携帯型電子機器の規格等に適合させ、肩掛け紐やアームバンドなどの落下防止措置を講じること。
火災等の災害発生時は、一斉停止や緊急通報などの応急対応以外で機器を使用せず、安全が確保されるまで使用を中止すること。
固定給油設備の近傍や事務所出口など適切な場所に消火器を配置すること。
可搬式の制御機器で給油許可を行う係員への教育・訓練を実施すること。
これら4点と運営体制を、予防規程またはその関連文書に明記しておく必要があります。
落下防止のストラップまでは考えていませんでした。
スマートフォンと同じ規格が求められています。
最後に手続きの注意点を見ましょう。
設置するとき見落としやすい手続はどこか

「持ち運べる機器だから届出だけでよい」という理解は誤りです。
制御機器の給油許可・停止機能に関わる位置・構造・設備の基準への適合性を確認する必要があるため、消防法第11条第1項に基づく変更許可が必要になります。
「持ち運べる小型の機器だから届出だけで済む」と考えると、無許可の変更工事になりかねません。
また、既に使っている機器を更新するときの手続きは、平成14年消防危第49号が定める変更工事の取扱いに沿って進める必要があります。
導入前に所轄消防署へ相談し、変更許可の要否と手続きの流れを確認しておきましょう。
機器を買い替えるだけなら、許可はいらないと思っていました。
更新の場合も消防危第49号の手続きに沿って進めます。
よくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
ビーコンの範囲設定と変更許可、導入前にまず確認します!
位置管理と手続きの両方を押さえれば安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「顧客に自ら給油等をさせる給油取扱所における可搬式の制御機器の使用に係る運用について」(令和2年3月27日 消防危第87号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する規則第28条の2の5第7号
- 危険物の規制に関する規則第40条の3の10第3号イ
- 消防法第11条第1項
- 「給油取扱所において携帯型電子機器を使用する場合の留意事項等について」(平成30年8月20日付け消防危第154号)
- 「製造所等において行われる変更工事に係る取扱いについて」(平成14年3月29日付け消防危第49号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





