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検定にない新技術の消防機器はどうやって世に出るのか|評価者へ委任される特例制度の仕組みを解説

検定にない新技術の消防機器が特例制度で世に出る仕組みを示す画像

消防用の機械器具は、法令が定めた技術上の規格に適合しなければ検定や自主表示を通りません。
しかし新しい技術で作られた製品は、既存の省令が想定していない形状や構造になることがあります。
令和元年12月6日、消防庁は「基準の特例制度」の運用を見直す通知を発出しました(消防予第255号)。
総務大臣に直接申請しなくても、評価者を通す仕組みに変わった点を知らないと、手続きで遠回りをすることになります。

うちの製品は今の省令の基準に当てはまらない形状なんですが、それでも検定を受けられるんでしょうか。

はい、基準の特例制度を使えば新技術でも検定を受けられます。
令和元年の通知が手続きを見直していますよ。

総務大臣に直接申請しないといけないなら、うちのような小さな会社には荷が重いです。

評価者への依頼だけで手続きが完結します。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和元年12月6日の消防予第255号により、新技術に係る基準の特例制度の運用が見直されました。
  • 特例制度は検定対象機械器具等と自主表示対象機械器具等の両方に適用されます。
  • 技術的な評価は評価者が消防機器等評価規程に基づいて行うことになり、総務大臣への直接申請は不要になりました。
  • 特例の適用を受けても、検定そのものは免除されません。
  • 本通知の発出により平成18年消防予第78号(住宅用防災警報器の運用通知)は廃止されました。

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基準の特例制度の評価依頼から特例決定までの流れを示す図解

新技術の消防機器はなぜ特例制度の運用が見直されたのか

新技術の消防用機器と評価を待つ申請書類を示すイラスト
新しい技術で作られた製品は、既存の省令が定める形状や構造にそのまま当てはまらないことがあります。
そこで使われるのが、基準の特例制度です。
(令和元年12月6日 消防予第255号)新たな技術開発に係る検定対象機械器具等及び自主表示対象機械器具等の技術上の規格の基準の特例制度については、「消防法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知)」(昭和62年3月27日付け消防予第36号。以下「36号通知」という。)により運用しているところですが、このたび、当該運用等について、下記のとおり取り扱うこととしたので通知します。
特例制度そのものは昭和62年から存在していましたが、今回の通知は運用のやり方を見直すものです。
基準の特例制度は、消防の用に供する機械器具等が検定対象機械器具等または自主表示対象機械器具等に指定されているのに、既存の省令の基準では評価できない新技術を製品化するための仕組みです。
この仕組み自体は、昭和62年3月27日付け消防予第36号(36号通知)により運用されてきました。
今回の消防予第255号は、この36号通知に基づく運用のやり方を、審査期間の短縮と事務処理の簡素化の観点から見直すものです。
次は、この制度がどんな機械器具等を対象にしているのかを見ていきます。

特例というと、既存の基準を無視してよいという意味かと思っていました。

基準そのものを無視するわけではありません。
次は対象になる機械器具等を見ましょう。

特例制度の対象になるのはどんな機械器具等か

検定対象機械器具等と自主表示対象機械器具等の2種類の表示を示すイラスト
特例制度は、消防用機械器具等のうちどちらのグループにも使えます。
まずは、それぞれの制度がどう違うのかを確認しましょう。
(消防法第21条の2第1項)消防の用に供する機械器具若しくは設備、消火薬剤又は防火塗料、防火液その他の防火薬品(略)のうち、一定の形状、構造、材質、成分及び性能(略)を有しないときは火災の予防若しくは警戒、消火又は人命の救助等のために重大な支障を生ずるおそれのあるものであり、かつ、その使用状況からみて当該形状等を有することについてあらかじめ検査を受ける必要があると認められるものであつて、政令で定めるもの(以下「検定対象機械器具等」という。)については、この節に定めるところにより検定をするものとする。
(消防法第21条の16の2)検定対象機械器具等以外の消防の用に供する機械器具等のうち、一定の形状等を有しないときは火災の予防若しくは警戒、消火又は人命の救助等のために重大な支障を生ずるおそれのあるものであつて、政令で定めるもの(以下「自主表示対象機械器具等」という。)は、次条第1項の規定による表示が付されているものでなければ、販売し、又は販売の目的で陳列してはならず、(略)
(消防予第255号)なお、自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格の基準の特例制度の運用についても、検定対象機械器具等に係る運用に準じて行うこと。
対象は、検定対象機械器具等と自主表示対象機械器具等の両方です。
消防法第21条の2が定める検定対象機械器具等は、あらかじめ検定を受けなければ販売や工事への使用ができない機械器具等です。
一方、消防法第21条の16の2が定める自主表示対象機械器具等は、検定ほど重大な支障には至らないものの、一定の形状等を欠くと支障が生じるおそれがあるため表示が必要な機械器具等です。
今回の通知は「自主表示対象機械器具等に係る…運用についても、検定対象機械器具等に係る運用に準じて行うこと」と明記しており、両方の制度で同じ手順が使えることを確認しています。
自社の製品がどちらに当たるかによって、手続きの入口が変わるわけではありません。

うちの製品は検定対象ではなく自主表示対象なんですが、この制度は使えますか。

自主表示対象機械器具等にも同じように使えます。
次は具体的な手続きを見ましょう。

評価者への申請では何が簡単になったのか

評価委員会が申請書類を書面で審査する様子を示すイラスト
以前は、総務大臣への申請と技術的な評価の依頼が別々に必要でした。
今回の通知は、この手続きを一本化しています。
(消防予第255号)新たな技術開発に係る検定対象機械器具等について、技術上の規格に係る基準の特例制度を適用するか否かは、同制度の適用を受けようとする者の申請により総務大臣が審査し判断するものであるが、審査期間の短縮、事務処理の簡素化等の観点から、当該検定対象機械器具等の形状等についての技術的な評価については、当該検定対象機械器具等の型式承認についての試験を行う者が、評価者として消防機器等評価規程(例)(別添1)を参考に定めた評価規程に基づき行うこと。また、総務大臣への申請手続きについては、基準の特例制度の適用を受けようとする者が、当該検定対象機械器具等に係る技術的な評価を評価者に依頼する際にあわせて別添2に掲げる申請書を提出すれば足りるものであること。
ポイントは、申請書を一度提出するだけで済むようになったことです。
特例制度を適用するかどうかは総務大臣が最終的に審査・判断しますが、製品の形状等についての技術的な評価は、型式承認の試験を行う者が「評価者」として担うことになりました。
評価者は、消防機器等評価規程(例)を参考に自ら定めた評価規程に基づき、評価委員会(委員15名以内、任期2年)で原則として書面による審査を行い、審査はおおむね3ヶ月以内に終了します。
申請者は、評価者に技術的な評価を依頼する際に基準の特例申請書もあわせて提出すれば足り、総務大臣へ別途申請する必要はありません。
審査を終えた評価者から総務大臣へ意見が提出され、そのうえで特例基準が決定されます。

評価者って、具体的にはどこに頼めばいいんでしょうか。

型式承認の試験を行っている機関が評価者になります。
次は見落としやすい落とし穴を見ましょう。

特例を受けても見落としやすい落とし穴はどこか

検定マークが付いた機器と付いていない機器を対比したイラスト
特例の適用を受けたからといって、その後の手続きがすべて不要になるわけではありません。
通知は、その後も守るべきことを明記しています。
(消防予第255号)第2 その他 1 基準の特例制度の適用を受けた検定対象機械器具等についても、消防法令の規定により検定が行われるものであること。2 基準の特例制度の適用を受けた検定対象機械器具等及び自主表示対象機械器具等にあっては、特例制度の適用を受けたものである旨の表示がなされるものであること。
(消防法第21条の2第4項)検定対象機械器具等は、第21条の9第1項(第21条の11第3項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による表示が付されているものでなければ、販売し、又は販売の目的で陳列してはならず、また、検定対象機械器具等のうち消防の用に供する機械器具又は設備は、第21条の9第1項の規定による表示が付されているものでなければ、その設置、変更又は修理の請負に係る工事に使用してはならない。
見落としやすいのは、特例イコール検定不要ではないという点です。
基準の特例制度の適用を受けた検定対象機械器具等であっても、消防法令の規定による検定そのものは別途必要です。
特例はあくまで技術上の規格への適合性を評価する手続きを簡素化するものであり、検定・型式承認の手続き自体を省略するものではありません。
また、特例制度の適用を受けた機械器具等には、特例の適用を受けた旨の表示がなされます。
今回の通知の発出にあわせて、平成18年消防予第78号(住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備の技術上の規格を定める省令第11条の運用等について)は廃止されているので、古い通知を根拠に手続きを進めないよう注意しましょう。

特例が通れば、もう検定は受けなくていいと思っていました。

検定は特例のあとも必要です。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

評価依頼書と特例申請書を提出する様子を示すイラスト
新技術の製品を持っているなら、まず評価者への相談から始めましょう。
問い合わせ先も決まっています。
(消防予第255号)貴職におかれては、下記事項に御留意いただくとともに、貴都道府県内の市町村(消防の事務を処理する一部事務組合等を含む。)に対してもこの旨周知していただきますようお願いします。<問合せ先>消防庁予防課規格係
まずやることは、自社の製品がどちらの対象機械器具等に当たるかを確認することです。
次に、その製品の型式承認についての試験を行っている機関(評価者)に、技術的な評価を依頼します。
依頼の際は、消防機器等評価依頼書とあわせて基準の特例申請書(別添2)を提出すれば、総務大臣への別途申請は不要です。
審査はおおむね3ヶ月以内に書面で行われ、評価者から総務大臣へ意見が提出されたのち、特例基準が決定されます。
不明な点があれば、消防庁予防課規格係に問い合わせましょう。

つまり、評価者への依頼とあわせて申請書を出せば手続きが終わるということですね。

そのとおりです。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q特例制度は検定対象機械器具等にしか使えませんか?
Aいいえ。自主表示対象機械器具等にも同じ運用に準じて適用されます。
Q評価者にはどこがなれますか?
A検定対象機械器具等の型式承認についての試験を行う者が評価者になります。
Q総務大臣への申請は別途必要ですか?
A不要です。評価者への評価依頼とあわせて特例申請書を提出すれば足ります。
Q特例の適用を受ければ検定は不要になりますか?
Aいいえ。特例の適用を受けた機械器具等も、消防法令の規定による検定は別途必要です。

まとめ

✔令和元年12月6日の消防予第255号により、新技術に係る基準の特例制度の運用が見直されました。
✔制度の土台は昭和62年3月27日付け消防予第36号(36号通知)で、今回の通知はその運用を見直すものです。
✔特例制度は検定対象機械器具等と自主表示対象機械器具等の両方に適用されます。
✔技術的な評価は型式承認の試験を行う評価者が担い、審査はおおむね3ヶ月以内に書面で行われます。
✔申請者は評価者への依頼とあわせて基準の特例申請書を提出すれば、総務大臣への別途申請は不要です。
✔特例の適用を受けても消防法令の規定による検定は別途必要です。
✔本通知の発出により平成18年消防予第78号(住宅用防災警報器の運用通知)は廃止されました。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「新たな技術開発に係る検定対象機械器具等及び自主表示対象機械器具等の技術上の規格の基準の特例制度の運用等について(通知)」(令和元年12月6日 消防予第255号 消防庁予防課長)
  • 「消防法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知)」(昭和62年3月27日付け消防予第36号)
  • 消防法第21条の2
  • 消防法第21条の16の2
  • 「住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備の技術上の規格を定める省令第11条の運用等について」(平成18年2月20日付け消防予第78号、消防予第255号の発出により廃止)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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