テナントごとに部屋を貸しているビルで、階段室や廊下のような共用部分は誰が管理するのでしょうか。
実はこの点があいまいなまま長く放置されていたことが、大きな火災被害につながった過去があります。
消防庁の通知は、共用部分の管理権原者を消防計画にはっきり書くよう求めています。
誰の担当でもない場所を作らないことが、雑居ビルの防火管理の出発点です。
うちのビルはテナントごとに階段を共用しているのですが、消防計画にその管理者が書かれていません。
それは歌舞伎町のビル火災をきっかけに国が明確化を求めた点です。
火災がきっかけで決まりができたんですか。
はい、共用部分の管理者が曖昧だったことが被害を広げた一因とされました。
- 管理権原が分かれている防火対象物は、共用部分の管理権原者を消防計画に明示する義務があります。
- 平成13年の歌舞伎町ビル火災を受けた消防審議会の答申が、この規則改正の出発点です。
- 通知が示す例では、階段室等の共用部分の権原は原則として所有者に帰属します。
- 所有者が建物に居住・勤務していない場合でも、共用部分の管理権原は所有者に残ります。
- 消防計画の届出を受け付ける際、消防機関は共用部分の管理権原者が明確かを確認します。
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目次
雑居ビルの階段室はなぜ誰の管理でもなくなるのか

ところが階段室や廊下のような共用部分は、誰にとっても自分の持ち場という意識になりにくい場所です。
平成13年9月1日、東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルで発生した火災では、避難経路にあたる共用部分の管理があいまいだったことが被害拡大の背景として指摘されました。
この火災を受け、消防審議会は同年12月26日に答申をまとめ、共用部分の管理権原者を明確にする指導基準を示すよう国に求めました。
この答申が、のちの規則改正の出発点になっています。
雑居ビルの防火管理者にとって、この経緯を知ることが最初の一歩です。
うちのビルも所有者と各テナントで管理がバラバラです。
管理権原が分かれている建物ほど、共用部分の担当が抜け落ちやすいので注意が必要です。
権原の範囲を明示しなければならないのはどんな建物か

所有者・管理者・占有者のあいだで管理権原が分かれているかどうかで決まります。
テナントが2件しかない小さなビルでも、所有者と賃借人で管理権原が分かれていれば、この規定の対象です。
逆に単独の所有者が全フロアを自ら使用している建物であれば、そもそも権原が分かれていないため対象になりません。
自分のビルが対象かどうかは、まず「誰が何を管理しているか」を紙に書き出すところから確認できます。
複数のテナントが入る雑居ビルの多くは、この確認だけで対象に該当することが分かります。
権原が分かれているビルなら、うちも対象になりますね。
はい、規模の大小にかかわらず権原が分かれていれば対象になります。
権原の範囲はどうやって決めて示すのか

所有形態・管理形態・使用形態を総合的に見たうえで、抜け漏れのない担当を決めます。
所有者が建物内に居住・勤務している場合はもちろん、居住・勤務していない場合でも、階段室等の共用部分の権原は所有者に残るという考え方が示されています。
区分所有の建物では、各区分所有者が共用部分を共有する形になります。
テナントが多数入る建物では、各占有者は自分の専有部分だけを管理し、共用部分は所有者が所有・管理する形が基準例として示されています。
自分のビルがどの形に近いかを見極めれば、権原の範囲は迷わず決められます。
階段の管理は結局誰が持つのが基本なんですか。
通知の例では、いずれも建物の所有者が共用部分の権原を持つ形になっています。
明示を怠るとどんな落とし穴があるのか

共用部分の担当を決めないまま放置すると、点検も清掃も避難経路の管理も抜け落ちます。
消防計画の作成届や変更届を受け付ける際、消防機関は共用部分の管理権原者が明確になっているかを確認します。
ここが空欄のままだと、届出そのものが差し戻される場合があります。
テナント側も「共用部分は自分の担当ではない」と考えがちですが、誰かが必ず担当を持つという前提で確認する必要があります。
所有者が遠方にいる、あるいは管理会社に任せきりというビルほど、この確認が抜けやすい傾向があります。
うちの消防計画には共用部分のことが何も書いてありません。
それは見落としの典型です。
次の見直しで必ず加えましょう。
消防計画で今日から何を確認すればよいか

まず自分のビルの消防計画を開き、共用部分の欄を見るところから始めます。
1つ目は、消防計画に共用部分の管理権原者が明記されているかを見ることです。
2つ目は、所有者・管理会社・各テナントのあいだで担当の認識がずれていないかをすり合わせることです。
3つ目は、必要に応じてフロアごとの担当を示す図面を消防計画に添付することです。
この3つを押さえれば、共用部分が「誰のものでもない」状態を防げます。
今日から何を確認すればいいですか。
まず消防計画を開いて、共用部分の担当者が書かれているか確認してください。
よくある質問
まとめ
つまり階段室も所有者が担当するのが基本なんですね。
共用部分の相談もお任せください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防審議会答申(平成13年12月26日) 小規模雑居ビルにおける防火安全対策のあり方について
- 消防法施行規則の一部を改正する省令(平成14年総務省令第105号)
- 消防法施行規則の一部を改正する省令の施行後における「防火対象物の管理についての権原の範囲」及び「共同防火管理協議会の代表者」に係る運用について(平成14年12月27日付消防安第135号消防庁防火安全室長通知)
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





