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少量危険物の配管はなぜ指定数量未満でも基準に従うのか|水圧試験から地下埋設の点検まで解説

少量危険物を扱う配管の圧力計を点検する作業員

指定数量の5分の1以上指定数量未満の危険物は「少量危険物」と呼ばれ、消防法ではなく市町村の火災予防条例で規制されます。
政令の対象にならない量だから配管の基準も緩いはずだ、と考えている現場は少なくありません。
ところが火災予防条例(例)は、この少量危険物を取り扱う配管にも強度・水圧試験・劣化対策・地下埋設時の点検まで、独自の技術上の基準を定めています。
指定数量に届かない量でも、配管の基準まで外れるわけではありません。

うちは塗料用のシンナーを指定数量未満で置いてるだけなんですが。
配管とか設備にまで消防の基準ってあるんですか。

指定数量未満でも、火災予防条例が配管専用の基準を定めています。
政令の対象外=基準なし、ではないんです。

具体的にどこまで求められるんでしょう。
今の配管で足りているのか不安になってきました。

強度・水圧試験・劣化対策・地下埋設の4つを順番に見ていきましょう。
今日は条例の条文に沿って確認します。

この記事の結論
  • 指定数量の5分の1以上指定数量未満の少量危険物も、政令ではなく火災予防条例(例)が定める技術上の基準に従わなければなりません。
  • 配管は、設置条件に応じた十分な強度を持ち、最大常用圧力の一・五倍以上の圧力で行う水圧試験に耐えるものであることが必要です。
  • 配管は取り扱う危険物による劣化・火災の熱による変形・外面の腐食を防ぐ措置を講じなければなりません。地下配管は熱変形の基準が除かれます。
  • 配管を地下に設置する場合は、接合部分からの漏えいを点検できる措置と、地盤面の荷重が配管にかからないようにする保護が必要です。
  • 配管を含む設備を修理するときは、安全な場所で危険物を完全に除去してから行うことが基準に定められています。

少量危険物の配管が火災予防条例第三十一条の二により強度と水圧試験劣化と腐食を防止地下は点検措置修理は除去後にという基準を定めていることを示す図解

少量危険物でも配管には基準があるのか

少量危険物を貯蔵する倉庫と配管でつながれたタンクや容器のアイソメ図
指定数量の5分の1という数字は、政令の基準がそのまま及ぶかどうかの境目にすぎません。
その手前の量であっても、貯蔵し取り扱う場所の位置・構造・設備には別の基準が及びます。
火災予防条例(例)第三十一条 指定数量の五分の一以上指定数量未満の危険物の貯蔵及び取扱い並びに貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備は、前条に定めるもののほか、次条から第三十一条の八までに定める技術上の基準によらなければならない。同第三十一条の二第二項 指定数量の五分の一以上指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備のすべてに共通する技術上の基準は、次のとおりとする。
基準の根拠は消防法ではなく市町村の火災予防条例です。
消防法や政令が対象にする指定数量以上の施設と違い、少量危険物は条例が定める第三十一条以下の技術上の基準がそのまま適用されます。
この基準は場所そのものだけでなく、そこに設ける配管にも及びます。
「量が少ないから配管はどうでもいい」という判断は、条例上は成り立ちません。

指定数量以上の施設向けの話だと思っていました。
うちの規模でも条例の基準がそのまま来るんですね。

はい、位置や構造だけでなく配管も対象です。
次は配管そのものの強度の基準を見ましょう。

配管の強度と水圧試験はどう確かめるのか

配管に圧力計付きの水圧試験ポンプを接続して試験している様子のアイソメ図
配管の強度は、目視で確かめられるものではありません。
条例は数値で試験の条件まで示しています。
火災予防条例(例)第三十一条の二第二項第九号 危険物を取り扱う配管は、次によること。イ 配管は、その設置される条件及び使用される状況に照らして十分な強度を有するものとし、かつ、当該配管に係る最大常用圧力の一・五倍以上の圧力で水圧試験(水以外の不燃性の液体又は不燃性の気体を用いて行う試験を含む。)を行つたとき漏えいその他の異常がないものであること。
基準は「常用圧力の1.5倍」という具体的な倍率で示されています。
配管が実際に使われる圧力そのものではなく、最大常用圧力を基準にする点に注意が必要です。
試験は水だけでなく、不燃性の液体や気体を使う方法も条文上認められています。
新設のときはもちろん、既存の配管を延長・更新するときも同じ強度基準がかかります。

水圧試験の記録なんて取ったことがありませんでした。
これは工事のときに業者に確認すればいいんでしょうか。

そうです、施工業者に試験結果の記録を残してもらいましょう。
次は日々の劣化や腐食への対策です。

劣化や熱や腐食から配管をどう守るのか

腐食した配管と防食コーティングを施した配管を並べて示すアイソメ図
強度が足りていても、時間の経過とともに配管は弱ります。
条例は劣化・熱・腐食の三方向から手当てを求めています。
火災予防条例(例)第三十一条の二第二項第九号 ロ 配管は、取り扱う危険物により容易に劣化するおそれのないものであること。ハ 配管は、火災等による熱によつて容易に変形するおそれのないものであること。ただし、当該配管が地下その他の火災等による熱により悪影響を受けるおそれのない場所に設置される場合にあつては、この限りでない。ニ 配管には、外面の腐食を防止するための措置を講ずること。ただし、当該配管が設置される条件の下で腐食するおそれのないものである場合にあつては、この限りでない。
耐熱の基準は地下配管には及びません。
地上に露出した配管は火災の熱で変形しない材質・構造が求められますが、地下など熱の影響を受けにくい場所ではこの基準そのものが除外されます。
一方で劣化対策と腐食対策は、地上・地下を問わず「そのおそれがない」と言えない限り必要です。
取り扱う危険物の性質に合わない材質の配管を使っていないか、外面の塗装や防食テープが劣化していないかを点検します。

うちの配管は地上に出ている部分が多いです。
耐熱まで気にする必要があるんですね。

はい、地上部分は熱で変形しない構造かを確認しましょう。
逆に地下に埋める配管には別の注意点があります。

地下に配管を設けるとき見落としやすいのはどこか

地下に埋設された配管と地上の点検口を断面で示すアイソメ図
地下配管は熱の基準こそ免除されますが、代わりに地下ならではの基準が加わります。
埋めてしまえば見えなくなる、という点が条例の狙いです。
火災予防条例(例)第三十一条の二第二項第九号 ホ 配管を地下に設置する場合には、配管の接合部分(溶接その他危険物の漏えいのおそれがないと認められる方法により接合されたものを除く。)について当該接合部分からの危険物の漏えいを点検することができる措置を講ずること。ヘ 配管を地下に設置する場合には、その上部の地盤面にかかる重量が当該配管にかからないように保護すること。
点検が必要になるのは溶接以外の方法でつないだ接合部分です。
フランジやねじ込みなど、溶接以外で配管をつないだ箇所は、埋設後も漏えいを点検できる構造にしておかなければなりません。
点検口や点検ピットを設けず土に直接埋めてしまうと、条文の要求を満たせなくなります。
地盤面の重量対策も、車両が通る場所の配管ではとくに見落とされがちです。

配管はもう埋めてしまっていて、点検口があるかも覚えていません。
今から確認する方法はありますか。

竣工図面や設置時の写真が残っていれば確認できます。
最後に、修理するときの基準もあわせて見ましょう。

配管を含む設備を修理するときは何を確認すればよいか

配管を修理する作業者が容器で危険物を回収してから作業する様子のアイソメ図
配管そのものの基準を満たしていても、修理のやり方を誤れば事故につながります。
条例は修理という行為そのものにも基準を置いています。
火災予防条例(例)第三十一条の二第一項第六号 危険物が残存し、又は残存しているおそれがある設備、機械器具、容器等を修理する場合は、安全な場所において、危険物を完全に除去した後に行うこと。
修理は「危険物を完全に除去した後」が条件です。
配管の一部を切断・溶接するような修理を、中身が残ったまま行うことは基準違反になります。
残油の抜き取りと、抜き取った危険物の一時保管場所の確保をセットで計画することが必要です。
明日からは、配管まわりの水圧試験の記録地下接合部の点検体制の2点をまず確認してください。

修理のときは中身を抜いてから、というのは意識していませんでした。
次の点検からは業者にもその手順を伝えます。

それが一番確実です。
まとめとよくある質問もあわせて確認していきましょう。

よくある質問

Q水圧試験は誰が実施し、どう記録すればよいですか?
A条例は実施者を指定していませんが、配管を施工した業者に依頼し、試験圧力・保持時間・結果を記録に残す方法が一般的です。記録は設置時だけでなく、配管を延長・更新した際にも残します。
Q既に埋めてしまった配管は掘り返さないといけませんか?
A条文が求めているのは漏えいを点検できる措置であり、必ず掘り返すことまでは求めていません。既存の点検口や点検ピットの有無をまず確認し、無い場合の対応は所轄消防署にご相談ください。
Q地下配管なら腐食対策も不要になりますか?
Aいいえ、条文で除かれているのは熱による変形の基準だけです。腐食を防止するための措置は地上・地下を問わず必要で、腐食するおそれがないと言える場合のみ除かれます。
Q配管の修理は自社の従業員が行ってもよいですか?
A条文は実施者を制限していませんが、安全な場所での危険物の完全な除去という条件は誰が行う場合でも同じです。溶接など火気を伴う修理は、資格を持つ業者への依頼を検討してください。

まとめ

指定数量の5分の1以上指定数量未満の少量危険物も、火災予防条例(例)第三十一条以下の技術上の基準がそのまま適用されます。
配管は設置条件に応じた十分な強度を持ち、最大常用圧力の一・五倍以上の圧力で行う水圧試験に耐えることが必要です。
劣化・熱・腐食への対策が求められ、耐熱の基準だけは地下など熱の影響を受けにくい配管には及びません。
地下配管は溶接以外の接合部分を漏えい点検できる措置と、地盤面の荷重から守る保護が必要です。
配管を含む設備の修理は、安全な場所で危険物を完全に除去した後に行うことが条文上の条件です。
水圧試験は施工業者の記録を残す形で確認するのが確実です。
既設の地下配管は、点検口や点検ピットの有無をまず確認し、判断に迷う場合は所轄消防署に相談してください。

量が少なくても配管の基準まで見なければいけないと分かって助かりました。
今の配管を一つずつ点検してみます。

水圧試験の記録と地下配管の点検体制、この2点から始めてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官)第三十一条・第三十一条の二
  • 消防法第九条の四(指定数量未満の危険物の貯蔵及び取扱いの基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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