圧縮水素スタンドの中には、ガソリンなどを改質して水素を作る改質装置を備えるものがあります。
この改質装置は水素の製造をすぐ始められるよう、夜間などに暖機運転としてバーナーでガソリンや灯油を燃やしておく必要があります。
暖機運転も危険物の取扱いにあたるため、本来は危険物取扱者本人が扱うか、無資格者が扱うなら立会いが必要です。
なぜ夜間でも危険物取扱者の立会いなしで運転できる場合があるのかを整理します
うちのスタンド、水素も作れる設備なんですが、夜中の暖機運転のたびに危険物取扱者を呼ぶのが大変で。
それなら遠隔監視の仕組みが使えるかもしれません。
まずは制度の中身を確認しましょう。
危険物取扱者が現地にいなくても暖機運転をしていいことなんてあるんですか。
はい、条件を満たせば遠隔監視で対応できます。
順番に見ていきましょう。
- 平成24年5月23日の消防危第140号で改質装置の遠隔監視が認められた
- 対象は圧縮水素スタンドに設置される改質装置の暖機運転に限られる
- JPEC自主基準に基づく監視・制御装置やガス検知器などの安全対策を講じれば遠隔監視に切り替えられる
- 予防規程には監視の場所・体制・緊急時対応・訓練を明記する必要がある
- 火災等の緊急時には危険物保安監督者等が迅速に駆けつける体制が必要
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目次
圧縮水素スタンドの改質装置はなぜ危険物取扱者の立会いが必要になるのか

なぜこの暖機運転が危険物取扱者の立会いを必要とするのかを見てみましょう。
改質装置は水素をすぐに作れる状態を保つため、需要が高まる前の夜間にバーナーでガソリンや灯油を燃やしておきます。
この燃焼作業は消防法上の危険物の取扱いにあたるため、危険物取扱者本人が行うか、そうでなければ危険物取扱者の立会いが必要になります。
ところが改質装置は無人運転が前提の設備なので、毎晩立会いのために人を配置するのは現実的ではありませんでした。
そこで消防庁は遠隔監視によって立会いに代える方法を検討しました。
危険物取扱者が現場にいなくても暖機運転をしてもいいということですか。
条件を満たせば遠隔監視で立会いに代えることができます。
次でその条件を見ましょう。
遠隔監視に切り替えられる改質装置はどんな要件を満たす必要があるのか

JPEC自主基準に基づく要件を確認しましょう。
まずJPECの自主基準に沿った安全対策を講じたうえで、運転状況を遠隔で監視・制御できる装置を備えます。
鋼板の箱に収める改質装置は、箱内にガス検知器と換気装置を設け、換気が止まれば自動的に運転を止める仕組みも必要です。
事故が起きたときに監視者が遠隔で止められる装置と、現地で手動でも止められる装置の両方を備えます。
遠隔と手動、両方の停止手段を持たせておくことがポイントです。
監視カメラを置くだけでは駄目なんですか。
監視だけでなく制御・停止までできる装置が必須です。
監視だけでは要件を満たしません。
予防規程にはどんな内容を定めればよいのか

危険物の規制に関する規則第60条の2に基づく項目を見てみましょう。
まず改質装置を監視する者そのものを危険物取扱者に限り、監視・制御装置の操作を理解している人であることを求めています。
そのうえで予防規程には、監視や制御を行う場所と体制、火災等の緊急時の連絡・対応体制、そしてその訓練を明記します。
これらは規則第60条の2が定める予防規程の記載事項の枠組みに沿ったもので、新しい制度のために別枠が用意されたわけではありません。
既存の予防規程の様式に、改質装置の監視分をそのまま追記する形になります。
監視する人は必ず甲種の資格が要りますか。
甲種・乙種の別は問われませんが、危険物取扱者であることは必須です。
遠隔監視にしても現地対応が要らなくなるわけではないのはなぜか

緊急時に何が求められるのかを確認しましょう。
平常時の暖機運転は無人で進められますが、ひとたび火災等の緊急事態が起きれば危険物保安監督者等が現地へ迅速かつ確実に駆けつける体制が求められます。
別添の体制例では、地震動や停電、改質炉バーナーの失火といった要因ごとに事前警報とシャットダウンの2段階で監視者へ信号を送る例が示されています。
遠隔で気づいた異常を、最終的には人が現地で処理するという役割分担が前提になっている点を押さえておきましょう。
参集にかかる所要時間や連絡順位を予防規程や訓練計画に落とし込んでおくと、いざというときに迷いません。
遠隔監視があれば、もう誰も現場に行かなくていいと思っていました。
いいえ、緊急時の駆けつけは引き続き必要です。
平常時と緊急時で役割が分かれています。
明日から改質装置の遠隔監視をどう進めればよいのか

装置・予防規程・体制の3点を順に見ていきましょう。
まず自社の給油取扱所や貯蔵所に改質装置があるかどうかを確認します。
あれば、監視・制御装置やガス検知器などJPEC自主基準に基づく安全対策が施されているかを点検します。
次に予防規程に監視の場所・体制・緊急時対応・訓練が明記されているかを確認し、抜けていれば追記します。
最後に、火災等の緊急時に危険物保安監督者等が迅速に駆けつけられる体制と訓練が整っているかをあわせて確認しましょう。
うちの設備、まずどこから確認すればいいですか。
まずは改質装置の有無から確認しましょう。
あれば安全対策と予防規程の順に見ていきます。
よくある質問
まとめ
改質装置の遠隔監視の仕組み、すっきりわかりました!
お力になれてよかったです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「危険物から水素を製造するための改質装置の遠隔監視に必要な安全対策について」(平成24年5月23日 消防危第140号 消防庁危険物保安室長/改正 平成24年12月 消防危第263号)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第13条第3項
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第60条の2第1項第4号・第6号・第11号
- 一般高圧ガス保安規則(昭和41年通商産業省令第53号)第2条第25号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





