深夜に共同住宅で火災が起きたとき、逃げ遅れを分けるのは設備の有無だけではありません。
令和5年1月、神戸市兵庫区の共同住宅火災で4名が亡くなったことを受け、消防庁はある条件に当てはまる建物に絞って防火対策の徹底を呼びかけました。
対象になったのは、延べ面積が小さく、自動火災報知設備が設置されておらず、居住者も少なく、廊下が外に開かれていない建物です。
この4つの条件が重なる建物ほど、火災に気づくのが遅れやすいと示されました。
うちのビルは事務所ですけど、共同住宅の話は関係ないですよね。
寮や社宅を持つ会社なら関係あります。
延べ面積・自火報の有無・居住人数・廊下の構造で対象が決まります。
寮の管理も任されているので、確認しておきたいです。
神戸市の火災を受けて出された通知の中身を、順番に見ていきましょう。
- 令和5年1月22日、神戸市兵庫区の共同住宅火災(死者4名)を受け、消防庁が消防予第45号で防火対策の注意喚起を行いました。
- 対象は延べ面積500平方メートル未満の令別表第一(5)項ロ(寄宿舎・下宿・共同住宅)で、自動火災報知設備が設置されていない建物です。
- さらに延べ面積を収容人員で除した数が10未満で、廊下が外気に開放されていないことも対象の条件です。
- 求められるのは避難経路の確保・消火器の場所確認・大声での通報・住宅用火災警報器の維持管理の4点です。
- 住宅用火災警報器を交換する際は、連動型への切り替えが望ましいとされています。
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目次
神戸市兵庫区の共同住宅火災はなぜ全国への注意喚起につながったのか

この火災を受けて、消防庁は全国の消防機関に向けて異例の速さで注意喚起を発出しています。
発生時刻は午前1時17分、鎮火は午前4時24分。焼損は26平方メートルにとどまりましたが、死者4名・重症4名という深刻な人的被害が出ました。
出火原因はこの通知の時点でまだ特定されていません。それでも消防庁は原因の確定を待たず、同じような条件の建物で再び火災が起きることを防ぐために、先に注意喚起を出す判断をしました。
本通知は消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたもので、法令改正ではなく、既存の建物への呼びかけという位置づけです。
原因がまだ分かっていないのに、もう注意喚起が出たんですね。
はい。
同じ条件の建物が全国にあるため、原因確定を待たずに動いたんです。
注意喚起の対象になるのはどんな建物か

どれか1つではなく、すべてに当てはまるかどうかで判断します。
このクラスの建物は、面積要件だけで見れば自動火災報知設備の設置義務が生じないことがあり、それが未設置のままになっているケースを対象にしています。
さらに、延べ面積を収容人員で割った数値が10未満、つまり床面積のわりに住んでいる人が少ない建物であることも条件です。人が少ないほど、誰かが火災に気づいて知らせてくれる可能性が下がります。
加えて、廊下が外気に開放されていない、いわゆる内廊下型の構造も条件に含まれます。煙や熱がこもりやすく、火災の広がりに気づくまでの時間が延びやすい構造だからです。
面積だけじゃなくて、人の少なさや廊下の構造まで見るんですね。
そのとおりです。
気づかれにくい条件が重なる建物ほど、狙い撃ちで指導されています。
通知はどんな防火対策を求めているのか

どれも今日から確認できる、日常の防火対策です。
5つ目はさらに具体的で、寝たばこをしない、灰皿には水を張る、ストーブは可燃物から離す、就寝時は消す、ガスこんろの周囲に物を置かない、コンセントをたこ足配線にしないという出火防止の実践項目が並びます。
どれも建物側の一手間で実行できる内容で、リーフレットを配って終わりではなく、実際に習慣として根づかせることが求められています。
消火器の場所を知っているだけじゃ駄目なんですね。
はい。
使い方まで習得しておくことが求められています。
実務で見落としやすいのはどこか

この通知は、まさにその思い込みへの警鐘といえます。
ところが単独型の警報器は、その部屋で火災が起きたときにその部屋でしか鳴りません。居住者が少なく廊下も閉じた建物ほど、隣の部屋の異変に気づく手段が乏しくなります。
だからこそ通知は、交換のタイミングで連動型への切り替えを勧めています。どこか1部屋で作動すれば、建物内のすべての警報器が同時に鳴る仕組みです。
「設置義務がない=対象外」ではなく、むしろ設置義務がない建物こそこの通知の対象だという点が、見落とされがちなポイントです。
単独型のままだと、隣の部屋の火事に気づけないこともあるんですね。
そこが盲点です。
次に交換するときは連動型を選んでください。
明日から何を確認すればよいのか

今日中に、管理する建物を思い浮かべながら見ていけます。
該当しそうな建物があれば、避難経路に物が置かれていないか、消火器の場所が入居者に周知されているかを確認します。
住宅用火災警報器が単独型のままなら、次の交換時期に連動型への切り替えを検討してください。
寝たばこやストーブの使い方といった出火防止の基本も、入居者向けに一言添えるだけで意味があります。
今日、管理している寮が対象になるか確認してみます。
はい。
その一手間が、逃げ遅れを防ぎます。
よくある質問
まとめ
4つの条件を確認するところから始めればいいと分かりました。
今日中に見てみます。
面積、自火報の有無、収容人員、廊下の構造。
この4つを確認すれば、対象かどうか大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「神戸市兵庫区で発生した共同住宅火災を受けた防火対策の注意喚起について」(令和5年1月23日付け消防予第45号 消防庁予防課長)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(5)項ロ
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





