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火災から命を守る避難の指針はなぜ策定されたのか|階段の煙の有無で変わる避難レベルと訓練への生かし方を解説

火災から命を守る避難の指針なぜ策定されたかを示す避難階段のイメージ

夜、大きな物音や焦げたようなにおいに気づいたら、まず何を考えればよいでしょうか。
消防庁は令和元年に京都市内で起きた火災の避難行動を詳しく分析し、「火災から命を守る避難の指針」として全国の消防機関へ情報提供しました。
階段が使えるか、煙がどこまで広がっているかで、とるべき行動は大きく変わります。
指針は実際の避難行動の検証から生まれた、訓練や消防計画にそのまま生かせる知恵です。

避難訓練のマニュアルを作るとき、何を基準にすればいいのか迷っています。
もっと具体的な指針はないのでしょうか。

消防庁が示した避難の指針が参考になります。
実際の避難行動の分析から作られたものです。

煙が充満したとき、階段を使ってよいのかどうかも分かりません。

煙の広がり方で危険度が3段階に分かれます。
置き換え方を、5つの見出しで順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防庁は令和元年の火災の避難行動分析をもとに「火災から命を守る避難の指針」を全国の消防機関へ情報提供しました
  • 指針は7項目の指針と11項目の知恵で構成されています
  • 避難行動は階段に煙があるかどうかで3段階の危険レベルに分かれます
  • 見落としやすいのはドアを開放したままにして煙を拡散させてしまうことです
  • 特定の防火対象物には消火訓練・避難訓練を年2回以上実施する義務があります

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火災から命を守る避難の指針を早く知り行動する煙のない階段を選ぶ窓や庇から逃れるドアを閉めて煙を防ぐの4ステップで示した図解

火災から命を守る避難の指針はなぜ策定されたのか

煙と炎が上がる建物の前に消防車と梯子を伸ばした消防隊員が到着している様子
令和元年7月、京都市内の建物で発生した火災で、大勢の在館者が避難を迫られました。
その避難行動を詳しく分析したことが、指針づくりの出発点になっています。
「京都市伏見区で発生した爆発火災を踏まえた京都市消防局の取組について」(令和2年3月17日付け事務連絡 消防庁予防課) 令和元年7月18日に京都府京都市伏見区で発生した爆発火災を踏まえ、本日、京都市消防局が別添のとおり「火災から命を守る避難の指針」を報道発表しましたので、参考として送付します。
同事務連絡別添 京都市伏見区桃山町の火災における避難行動の分析・検証を実施(令和元年12月23日、総務消防委員会で検証結果報告)。指針は7項目の「指針」に,11項目の「知恵」で構成。
出発点は、実際の避難行動の検証です。
建物内にいた全70人(被疑者を除く)の避難行動を京都市消防局が聴き取り、階ごとにどう逃げたかを一件ずつ検証しました。
1階の在館者はトイレに逃げ込んで救出され、2階・3階の在館者の多くは階段ではなくベランダや窓からの避難を選んでいます。
この結果を踏まえて令和元年12月に検証結果が報告され、令和2年3月に指針としてまとめられました。
消防庁はこの指針を他の地域でも活用できるよう、事務連絡で全国の都道府県・消防本部へ情報提供しています。

火災の話が、どうして避難の指針にまでつながったのですか。

実際に避難した人の行動を検証したからです。
階ごとの違いが、対策のヒントになりました。

この指針は誰のどんな建物にあてはまるのか

飲食店とホテルと病院を表す建物が並び指針の対象になる防火対象物の幅広さを示す図
指針は特定の業種だけに向けたものではありません。
階段とベランダ、窓を持つ建物であれば、幅広く当てはまります。
同事務連絡別添 指針は,この火災の避難者の方々等への聴き取りで得た貴重な教訓をもとに作成したもので,指針を踏まえた対策や実践的な訓練(図上訓練含む。)を行うことで,火災発生時に事業所や個人,更に市民が,能動的に力強く行動できる知恵や行動力を備え,火災から命を守ることを目的とする。
消防法施行規則第3条第10項 令別表第一(一)項から(四)項まで,(五)項イ,(六)項,(九)項イ,(十六)項イ又は(十六の二)項に掲げる防火対象物の防火管理者は,令第三条の二第二項の消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施しなければならない。
対象は事業所と市民の両方です。
指針そのものは劇場・飲食店・ホテル・病院など不特定多数が出入りする建物で特に役立ちます。令別表第一(1)項から(4)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イ・(16の2)項に当たる建物の防火管理者は消火訓練・避難訓練を年2回以上実施する義務があり、この指針はその訓練の中身を具体的にするのに向いています。
階段が一つしかない建物や、複数の階をまたいで避難する構造の建物ほど、指針の効果が大きくなります。
自分の施設がどの区分に当たるかは、消防計画に記載された防火対象物の区分で確認できます。

うちは小さな飲食店ですが、この指針は関係があるのでしょうか。

不特定多数の方が出入りする建物ほど関係があります。
階段が一つしかない建物なら、特に確認しておきたい内容です。

指針は避難のどの場面に何を求めているのか

煙のない階段を人が落ち着いて降りている様子とドアクローザ付きの扉を示す図
指針は7項目にまとめられ、それぞれに具体的な「知恵」が添えられています。
まず押さえておきたいのは、危険度を3段階で見分ける考え方です。
同事務連絡別添 火災人命危険レベル1 階段に煙がなく使用可能な状況 階段を利用して地上,下階へ避難。レベル2 階段が煙により使用できない状況 窓,ベランダ等,外気に触れる場所への避難(救助を求める)。レベル3 階段及びフロア全体に煙が流入し,避難者自身が煙に覆われ危機的な状況 身を低くして最小限の呼吸で,冷静に避難。
同事務連絡別添 指針1 火災を早く知る手段の確保と早期の避難行動の開始 指針2 煙が流入しない安全な避難経路(階段)の確保と冷静な避難行動 指針3 窓,ベランダ等から屋外へ逃れる手段の確保 指針4 煙から逃れ一時的に避難できる場所の確保 指針5 煙や炎に覆われるなど危機的状況下における対策 指針6 避難後の命を守る行動 指針7 放火等防止のための防犯対策の徹底。
中身は3段階の判断基準です。
階段に煙がなければレベル1、階段が煙でふさがればレベル2、フロア全体が煙に覆われればレベル3というように、状況に応じて避難方法を切り替える発想が土台になっています。
レベル2では窓やベランダからの避難、レベル3では一時避難スペースへの退避やパニックを抑える行動が求められます。
初動は119番通報・初期消火・避難誘導の3つで、これは平常時の消防計画にも共通する基本です。
7項目の指針と11項目の知恵は、この3段階のどこに当てはまる対策かを意識すると整理しやすくなります。

レベルによって避難方法が変わるというのは、初めて聞きました。

階段が使えるかどうかが最初の分かれ道です。
訓練のときにこの判断を体で覚えておくと安心です。

煙に覆われたとき何を見落としやすいのか

煙が充満した通路で閉じたドアと開け放たれたドアを対比させ開放禁止を示す図
落とし穴は、設備より日頃の使い方に潜んでいます。
ドアの開け放しひとつで、避難経路の安全度が変わってしまいます。
同事務連絡別添 知恵4 煙を建物の内部に広げず,有効な避難経路(階段)を確保 ・屋内階段の防火区画等の形成 ・ドアクローザ等を設置し,扉が自動的に閉鎖する機能を設ける ・階段室の扉等は,避難の際に「開放状態」にしない。
同事務連絡別添 知恵9 人間の行動特性(思考力,判断力の低下)を踏まえた対策 ・視界不良の煙に覆われたときのパニックコントロール(STOP&GOルールの習得:Stop止まり,Think考え,Observe観察し,Play(Plan)&Go行動する)。
見落としやすいのは「開けたまま」です。
階段室の扉を避難のために開けっぱなしにすると、そこから煙が階段へ流れ込み、せっかくの避難経路がレベル2・3に変わってしまうことがあります。
ドアクローザ等で自動的に閉まる仕組みになっているか、日常点検で確認しておくことが重要です。
もう一つの落とし穴は、煙に巻かれたときの焦りです。視界が悪くなるとパニックで思考が止まりやすく、指針は「止まる・考える・観察する・行動する」という手順を習得するよう勧めています。
普段の訓練でドアの開閉確認とこの行動手順をセットで扱っておくと、実際の場面で差が出ます。

避難のときはドアを開けたままにしておくものだと思っていました。

開けたままだと煙が流れ込んでしまいます。
自動的に閉まる仕組みになっているか確認してください。

明日から防火管理者は何を確認すればよいのか

防火管理者が消防計画と訓練カレンダーを確認し避難訓練に向かう人たちの様子
最後は、今日から始められる確認です。
大がかりな工事をしなくても、消防計画と訓練の見直しだけでできます。
消防法施行規則第3条第1項第1号チ 消火,通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること(防火管理に係る消防計画に定める事項)。
消防法施行規則第3条第11項 前項の防火管理者は,同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には,あらかじめ,その旨を消防機関に通報しなければならない。
やることは3つです。
まず、自分の建物の階段・ベランダ・窓を見直し、煙が充満したときにどこへ逃げられるかを図面と現地の両方で確かめます。
次に、年2回以上の消火訓練・避難訓練を実施し、実施前には消防機関へあらかじめ通報します。
最後に、訓練の中に火災人命危険レベルに応じた避難方法の切り替えを組み込み、ドアの自動閉鎖機能の点検もあわせて行います。
指針は京都市消防局が作成したものですが、内容は全国どこの建物にも応用できます。所轄消防署に相談すれば、自分の建物に合わせた訓練内容の助言を受けられます。

次の訓練では、レベルに応じた避難方法を試してみます。

それだけで訓練の中身が大きく変わります。
ドアの点検もあわせて確認しておきましょう。

よくある質問

Q「火災から命を守る避難の指針」とはどんな文書ですか?
A令和元年の京都市での火災の避難行動を分析し、京都市消防局が策定した指針で、7項目の指針と11項目の知恵で構成されています。
Q火災人命危険レベルとは何を基準に分かれますか?
A階段に煙があるかどうか、フロア全体が煙に覆われているかを基準に、レベル1からレベル3までの3段階に分かれます。
Qうちの建物でもこの指針を訓練に使えますか?
Aはい。指針は京都市消防局が作成したものですが、階段とベランダ、窓を持つ建物であれば幅広く応用できます。
Q消火訓練・避難訓練はどのくらいの頻度で行う必要がありますか?
A令別表第一の特定の区分に当たる防火対象物は、消火訓練・避難訓練を年2回以上実施する義務があります。

まとめ

✔消防庁は令和元年の火災の避難行動分析をもとに「火災から命を守る避難の指針」を全国へ情報提供しました
✔指針は7項目の指針と11項目の知恵で構成されています
✔避難行動は階段に煙があるかどうかで3段階の危険レベルに分かれます
✔レベル2・3では窓やベランダからの避難や一時避難スペースへの退避が必要です
✔ドアを開放したままにすると煙が階段へ流れ込み危険レベルが上がります
✔特定の防火対象物は消火訓練・避難訓練を年2回以上実施する義務があります
✔指針は京都市消防局の作成ですが階段とベランダ・窓を持つ建物に広く応用できます

階段の煙の有無で避難方法を変えると聞いて、次の訓練が楽しみになりました。

指針を訓練に落とし込めば、いざというとき迷わず動けます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 京都市伏見区で発生した爆発火災を踏まえた京都市消防局の取組について(令和2年3月17日付け事務連絡 消防庁予防課)
  • 「火災から命を守る避難の指針」(令和2年3月 京都市消防局)
  • 消防法施行規則第3条第1項第1号チ・リ(防火管理に係る消防計画に定める事項)
  • 消防法施行規則第3条第10項・第11項(消火訓練及び避難訓練の実施と消防機関への通報)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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