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緩降機は点検で何を確かめるのか|調速器の往復走行とロープの長さと着用具の数を点検要領で解説

緩降機の点検は見た目と動きの両方を見ますかというタイトルと、バルコニーに設置された緩降機収納箱の写真を組み合わせたアイキャッチ画像

避難器具の緩降機は、ロープを使って人を安全に地上へ降ろす設備です。
ところが点検のとき、動きさえ正常なら合格だと思い込んでしまいがちです。
実は点検要領が、見た目の異常を動きの異常より先に判定するよう定めています。
この記事では、その判定の考え方を告示と通知から確認します。

点検で調速器を手で動かしてみたら、特に違和感はありませんでした。

見た目に異常があれば要注意です。
動きが正常でも安心できません。

てっきり、動きが正常ならそれで合格だと思っていました。

実は判定の順番が逆です。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 緩降機の調速器点検は、固定した状態でロープを手動で往復走行させて行う(平成14年消防予第172号第15)。
  • 目視で異常があれば、作動が正常でも内部に異常の原因があるとみなす。
  • 往復走行で不安定な抵抗感があるものは、性能及び強度上の欠陥があるものとみなす。
  • ロープが所定の長さに適合していないときは、器具が所定の階数(位置)から移動されていないかを確認する。
  • 着用具は最大使用者数に応じた数がロープの末端に緊結されていることを確認する。

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緩降機の点検は調速器の外形と往復走行の両方を目視と作動で確認し、ロープの長さと着用具の数と緊結金具の分解痕跡を見ることを示した図解

緩降機の調速器は、外形点検で何を確かめるのか

小さな円筒形の調速器のふちに並んだビスと、封印された上面を示したイラスト
まず、調速器そのものの外形を確認します。
調速器は、ロープが繰り出される速さを一定に保つ、緩降機の心臓部にあたる部品です。
消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日消防予第172号)第15 避難器具 1 機器点検 器具本体 緩降機 調速器(外形) ビス、ナット、リベット等に変形、損傷、腐食、緩み、脱落等がなく、封印部に異常がないこと。著しい打痕その他の損傷、著しい錆等がないこと。注油を禁じているものにあっては、注油の痕跡がないこと。油圧式のものは、油漏れがないこと。
ここで見るのは、ビス・ナット・リベットの緩みや脱落、そして封印部の異常です。
封印部は、無資格者が内部を分解していないことを示す印です。
注油を禁じている機種では、油の痕跡そのものが異常のサインになります。
油圧式のものは、これとは別に油漏れの有無も確かめます。

注油していないのに、油の痕跡があるのは変ですね。

はい、禁止されたはずの注油の跡です。
次は実際の動きを見ます。

目視で異常が見つかったら、動きが正常でも合格にしないのはなぜか

円筒形の調速器にロープが通り、上下に伸びたロープの両側に往復を示す曲がった矢印が描かれたイラスト
次に、調速器の機能を確認します。
調速器を固定し、ロープを手動で往復走行させて作動状況を見る試験です。
同別添15 機器点検 器具本体 緩降機 調速器(機能) 調速器を固定し、ロープを手動で往復走行させ、作動状況に異常がないこと。ロープが円滑に走行すること。適度の抵抗感があり、不安定な抵抗感でないこと。※(ア)目視により異常のあるものは、作動事項で必ずしも異常を感じなくとも、内部に異常を発生させる原因を有しているものとすること。(イ)不安定な抵抗感のあるものは、性能及び強度上欠陥があるものとすること。
ここでの判定には、見落としやすい優先順位があります。
点検要領は、目視による確認を作動の確認より優先させています。
外形に異常が見つかれば、往復走行がどれだけ円滑に感じられても、内部に異常を発生させる原因があるものとして扱います。
反対に、走行の抵抗感が不安定であれば、それだけで性能及び強度上の欠陥と判定します。

動きに違和感がなくても、安心してはいけないんですね。

はい、目視がいつも優先されます。
次はロープそのものを見ます。

ロープの長さが足りないとき、点検ではまず何を疑うのか

床から天井まで伸びる建物の輪郭と、その高さいっぱいに垂れ下がったロープを示したイラスト
続いて、ロープそのものを確認します。
ロープには、損傷や老化だけでなく、長さそのものの基準もあります。
同別添15 機器点検 器具本体 緩降機 ロープ 損傷、腐食、著しい糸切れや磨耗、吸湿等による老化、錆等がないこと。ロープの長さは、使用状態において設置場所に応じた長さであること。※所定の長さに適合していないものは、当該器具が所定の階数(位置)から移動されていないかを確認すること。
長さが合わないと感じたら、まず器具の設置場所を疑います。
緩降機のロープは、設置されている階に応じた長さに作られています。
別の階へ持ち出されたまま戻されていなければ、ロープの長さは設置場所の基準と食い違ったままになります。
つまり、長さの異常はロープ自体の劣化だけでなく、器具の移動を疑う手がかりにもなります。

ロープが短く感じたら、まず切られていないかと思っていました。

先に移動の有無を確認します。
次は着用具を見ましょう。

着用具は、何人分そろっていればよいのか

ロープの末端に三つの輪の形をした着用具が横に並んで取り付けられたイラスト
次に、ロープの先に付く着用具を確認します。
着用具は、降りる人の体に直接固定する部分です。
同別添15 機器点検 器具本体 緩降機 着用具 変形、著しい損傷、腐食、著しい磨耗及び老化の原因となる薬品、油、錆、かび、その他強度を減少させるものが付着していないこと。各部品の作動が円滑であること。最大使用者数に応じた着用具の数がロープの末端に緊結されていること。
ここで確かめるのは、劣化の有無だけでなく着用具の数です。
緩降機には、一度に使用できる最大使用者数が器具ごとに決められています。
ロープの末端には、その人数分の着用具が緊結されていなければなりません。
あわせて、薬品・油・錆・かびなど強度を落とす付着物がないかも見ます。

着用具がひとつでもロープに付いていれば十分だと思っていました。

いいえ、人数分の数が必要です。
最後に緊結金具を見ます。

緊結金具は、なぜ「分解した痕跡」まで見るのか

鎖の輪にしっかりとかけられたフック状の金具を示したイラスト
最後に、ロープと着用具をつなぐ緊結金具を確認します。
ここが外れると、着用具ごと使用者を支えられなくなります。
同別添15 機器点検 器具本体 緩降機 ロープと着用具の緊結部 緊結金具は、著しい損傷、腐食、緩み、錆等により強度上に異常のないこと。堅固に結合されていること。分解した痕跡のないこと。
点検要領は、損傷や腐食だけでなく分解の痕跡まで見るよう定めています。
緊結金具は、もともと現場で分解する部品ではありません。
分解の痕跡があれば、締め直しが甘くなっていたり、別の部品に入れ替えられていたりするおそれがあります。
堅固に結合されているかという見た目の確認とあわせて、分解歴という点検者ならではの視点が求められます。

結局、ひとつひとつを別の部品のように見ていくんですね。

調速器・ロープ・着用具・金具の4つです。
最後に整理しましょう。

よくある質問

Qロープが円滑に走行していれば、それだけで合格ですか?
Aいいえ。目視で異常があれば、走行が円滑でも内部に異常の原因があるとみなします。
Qロープの長さが基準と違うのは、劣化のサインですか?
A劣化だけでなく、器具が別の階数から移動されていないかも確認します。
Q着用具の数は、何を基準に決まりますか?
A器具ごとに決められた最大使用者数に応じた数が、ロープの末端に緊結されている必要があります。
Q緊結金具に分解した痕跡があったらどうしますか?
A強度上の異常につながるおそれがあるため、点検結果として記録し、必要な是正につなげます。

まとめ

✔緩降機の調速器点検は、固定した状態でロープを手動で往復走行させて行う
✔目視で異常があれば、作動が正常でも内部に異常の原因があるとみなす
✔不安定な抵抗感は性能及び強度上の欠陥とみなす
✔ロープの長さが基準と違えば、器具の設置場所からの移動を疑う
✔着用具は最大使用者数に応じた数がロープの末端に緊結されていること
✔着用具には薬品・油・錆・かびなど強度を落とす付着物がないこと
✔緊結金具は損傷・腐食だけでなく分解した痕跡の有無まで確認する

まず、調速器の外形と往復走行の両方を確認してみます!

目視と作動の両方を見れば迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第31条の6(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
  • 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)別表第15
  • 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年消防予第172号)第15 避難器具

※本記事は公表されている告示および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。

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