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建築工事中の建物はなぜ仮囲いで囲われるのか|落下物防護や火気使用の安全基準を解説

作業着姿の点検員が工事現場の仮囲いを確認しているイメージ

建物を新築したり、増築や改修の工事をしたりするとき、現場の周りにはさまざまな安全対策が義務づけられています。
工事中の敷地は資材や重機が行き交い、火を使う作業も日常的に行われるため、平常時とは違うリスクが生まれます。
実はこうした工事現場の安全対策は消防法令ではなく、建築基準法施行令という別の法令が細かく定めています。
本記事では仮囲いの高さから落下物の防護、火気使用時の措置まで、建物の管理権原者が押さえておきたい基準を条文にもとづいて解説します

うちの建物も来月から改修工事に入るんですけど、工事中の安全対策って消防法とは別に決まりがあるんですか。

はい、工事現場の仮囲いや落下物の防護は建築基準法施行令が具体的な数値まで定めています。

数値まで決まってるなら、工事業者に任せきりにせず自分でも確認しておきたいですね。

この記事で仮囲いの高さから火気使用の注意点まで、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 高さ13メートル超の木造建築物や2階以上の非木造建築物の工事では、1.8メートル以上の仮囲いが義務になります。
  • 深さ1.5メートル以上の根切り工事では、地盤の崩壊を防ぐ山留めの設置が原則として必須です。
  • 吊り上げ荷重0.5トン以上の移動式クレーン等を使う基礎工事では、転倒による周辺への危害防止措置が必要です。
  • 境界線から5メートル以内かつ高さ3メートル以上からの投下はダストシュート等、高さ7メートル以上の工事部分は鉄網や帆布での落下物防護が必要になります。
  • 火気を使う作業では不燃材料の囲いなど防火上必要な措置を講じなければなりません。

建築基準法施行令が定める仮囲いの高さ根切りの山留め落下物の防護火気使用の防火が工事現場の安全基準になることを示した図解

建築工事中の建物はなぜ仮囲いで囲われるのか

高さ13メートル超の建築物の工事現場を囲う板塀の仮囲い
建築工事中の現場は資材の搬入や重機の作業で人の出入りが多く、周辺の通行人や隣接地への危害を防ぐ必要があります。
そこで建築基準法施行令は、一定規模以上の工事を行う建物について仮囲いの設置そのものを義務として定めています。
建築基準法施行令第百三十六条の二の二十 工事期間中工事現場の周囲にその地盤面(その地盤面が工事現場の周辺の地盤面より低い場合においては、工事現場の周辺の地盤面)からの高さが1.8メートル以上の板塀その他これに類する仮囲いを設けなければならない
仮囲いの高さは1.8メートル以上と決まっています
地盤面という基準点も、工事現場側と周辺側のどちらか低い方をとる決まりなので、道路より敷地が低い現場では周辺の地盤面が基準になります。
これは板塀に限らず、同じ高さを確保できるフェンスなど「これに類する」囲いであれば足ります。
まずは自分の工事現場にこの高さの囲いがあるかどうかを確認しておきましょう。

1.8メートルって、思ったより高いんですね。

足場や資材が外から見えない高さを想定した基準ですね。

どんな建物の工事から仮囲いの対象になるのか

足場のある高い木造建築物と2階建ての非木造建築物の比較
仮囲いはどんな工事でも必要になるわけではなく、建物の構造や規模で対象が線引きされています。
自分の工事がこの線引きに当てはまるかどうかは、着工前に確認しておきたいところです。
建築基準法施行令第百三十六条の二の二十(抜粋) 木造の建築物で高さが13メートル若しくは軒の高さが9メートルを超えるもの又は木造以外の建築物で2以上の階数を有するものについて、建築、修繕、模様替又は除却のための工事を行う場合(略)。ただし、これらと同等以上の効力を有する他の囲いがある場合又は工事現場の周辺若しくは工事の状況により危害防止上支障がない場合においては、この限りでない
木造は高さ13メートル超か軒高9メートル超、非木造は2階建て以上が対象になります
戸建て住宅のような小規模な木造工事は対象から外れやすい一方、非木造は2階建てというごく普通の規模でも対象に入ります。
ただし書きにより、同じ効力を持つ塀がすでにある場合や、周辺の状況から危害のおそれが乏しい場合は仮囲いを省略できます。
「建築、修繕、模様替又は除却」のいずれも対象になるため、解体工事だけを別扱いにはできません。

うちは鉄骨造の2階建てだから、対象に入るってことですね。

そうなります。
ただし書きの例外に当たるかどうかも、工事業者に確認してみてください。

根切り工事や重機の使用にはどんな安全対策が必要か

山留めを設けた根切り工事と支持板の上の基礎工事用機械
基礎工事では地面を深く掘り下げる根切り工事や、重い基礎工事用機械の使用が伴い、地盤の崩壊や機械の転倒という別のリスクが出てきます。
建築基準法施行令はこの段階にも具体的な安全対策を義務づけています。
建築基準法施行令第百三十六条の三第4項 建築工事等において深さ1.5メートル以上の根切り工事を行なう場合においては、地盤が崩壊するおそれがないとき、及び周辺の状況により危害防止上支障がないときを除き、山留めを設けなければならない。この場合において、山留めの根入れは、周辺の地盤の安定を保持するために相当な深さとしなければならない。
深さ1.5メートルを超える根切り工事には山留めが原則必要です
同じ条文には、根切りに先立って地下に埋設されたガス管や水道管などの損壊を防ぐ措置を講じる義務も定められています。
また、くい打機や吊り上げ荷重0.5トン以上の移動式クレーンなど基礎工事用機械を使う場合は、敷板などで転倒を防ぐ措置も別に義務づけられています。
掘削と重機の両方に安全対策が求められている点を、工事の打ち合わせで確認しておくとよいでしょう。

山留めがないと、掘った穴が崩れてくることもあるんですね。

はい、周辺の地盤ごと崩れるおそれがあるので、深さ1.5メートルが一つの目安になります。

落下物の防護で見落としやすいのはどこか

ダストシュートと防護ネットで覆われた工事現場の建物
高い場所から資材やごみを投げ落とす作業は、工事現場の外にいる人にとって大きな危険になります。
建築基準法施行令は境界線からの距離と高さの組み合わせで、防護すべき場合を細かく定めています。
建築基準法施行令第百三十六条の五第1項 建築工事等において工事現場の境界線からの水平距離が5メートル以内で、かつ、地盤面からの高さが3メートル以上の場所からくず、ごみその他飛散するおそれのある物を投下する場合においては、ダストシユートを用いる等当該くず、ごみ等が工事現場の周辺に飛散することを防止するための措置を講じなければならない。同条第2項 建築のための工事をする部分が工事現場の境界線から水平距離が5メートル以内で、かつ、地盤面から高さが7メートル以上にあるとき(略)は、工事現場の周囲その他危害防止上必要な部分を鉄網又は帆布でおおう等落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない
境界線から5メートル以内かどうかが、防護義務の分かれ目になります
高さ3メートル以上からのごみの投下にはダストシュート、工事部分の高さが7メートル以上になる場合は鉄網や帆布での防護が求められます。
第2項は新築だけでなく、はつりや外壁の修繕など落下物のおそれがある作業全般にも及ぶとされています。
自分の建物に隣接地との距離が5メートル以内の部分がないか、着工前に見ておくと見落としを防げます。

新築じゃなくて外壁の修繕でも防護ネットっているんですね。

落下物のおそれがある作業かどうかで判断されるので、規模だけで油断しないようにしましょう。

火気を使う作業や資材の集積でなにを確認すればよいか

防火のための遮へい板と整理された工事用材料
工事現場では溶接や切断のために火を使う作業が日常的に行われるほか、資材の集積や足場の組み立てそのものにもリスクがあります。
建築基準法施行令はこうした現場の作業行為にも防止措置を義務づけています。
建築基準法施行令第百三十六条の八 建築工事等において火気を使用する場合においては、その場所に不燃材料の囲いを設ける等防火上必要な措置を講じなければならない
火気を使う場所には不燃材料の囲いなどの防火措置が必要です
このほか、工事用材料の集積はその倒壊や崩落による危害が少ない場所で行い、山留めや架構の上に予定以上の荷重をかけないことも定められています。
建て方の際には仮筋かいなどで荷重や外力による倒壊を防ぐ措置も必要とされ、鉄骨造では仮締めの安全性も求められます。
明日の現場確認では、火を使う場所に囲いがあるか、資材が安全な場所にまとまっているかを見ておきましょう。

溶接している場所だけじゃなくて、資材の置き方まで見られているんですね。

火気の管理と資材の集積は現場でつい後回しになりやすいので、意識して確認してみてください。

よくある質問

Q仮囲いを設けなくてよい工事はありますか?
A木造で高さ13メートル以下かつ軒高9メートル以下、非木造で平屋の工事は対象外です。また同等以上の効力がある囲いがすでにある場合や、周辺の状況から危害防止上支障がない場合は仮囲いを設けなくてよいとされています
Q根切り工事の深さが1.5メートルに届かなければ山留めは不要ですか?
A条文上の設置義務は深さ1.5メートル以上が基準ですが、1.5メートル未満でも地盤の状況によっては崩壊のおそれがあります。深さにかかわらず、地下埋設物の損壊防止措置は別途必要です。
Q落下物の防護は工事現場の全周に必要ですか?
A条文が対象にしているのは境界線から水平距離5メートル以内という条件を満たす部分です。敷地に余裕があり境界線まで5メートルを超える部分は、この規定の対象になりません。
Qこれらの基準は消防の立入検査でも確認されますか?
A本記事の基準は建築基準法施行令にもとづくもので、所管は消防機関ではなく建築主事や特定行政庁です。工事中の消防計画など消防法令側の義務とあわせて、両方の窓口を確認しておくと安心です。

まとめ

工事現場の安全対策は消防法令ではなく、建築基準法施行令という別の法令が定めています。
木造は高さ13メートル超か軒高9メートル超、非木造は2以上の階数を有するものが仮囲いの対象です。
仮囲いの高さは地盤面から1.8メートル以上と定められています。
深さ1.5メートル以上の根切り工事には、原則として山留めの設置が必要です。
吊り上げ荷重0.5トン以上の重機を使う基礎工事では、転倒による危害防止措置が必要です。
境界線から5メートル以内かつ高さ3メートル以上からの投下にはダストシュート等の措置が必要です。
火気を使用する作業現場には不燃材料の囲いなど防火上必要な措置が求められます。

仮囲いから落下物の防護まで、工事業者との打ち合わせで一つずつ確認してみます!

工事現場の安全対策に不安があれば、いつでもお声がけください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第百三十六条の二の二十(仮囲い)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の三(根切り工事、山留め工事等を行う場合の危害の防止)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の四(基礎工事用機械等の転倒による危害の防止)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の五(落下物に対する防護)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の六(建て方)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の七(工事用材料の集積)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の八(火災の防止)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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