共同住宅の玄関ホールは床面積に数えるのか、それとも別扱いなのか——煙感知器の設置基準には、現場で迷いやすい線引きがいくつもあります。
消防実務六法には、こうした線引きをめぐって当時の消防庁が答えた質疑応答が数多く収録されています。
この記事では、そのなかから五つを選び、現行の消防法施行規則と照らし合わせて読み直します。
居室やダクトや通路の判定基準を順に確かめていきましょう。
うちのマンション、玄関ホールって煙感知器の数え方、どうなってるんでしょうか。
実はそのホール、昭和44年の質疑応答で扱いが示されているんですよ。
居室の広さとか通路の定義とか、細かい線引きが結構あるんですね。
はい。
今日は五つの質疑応答を、現行の条文に当てはめて順番に見ていきましょう。
- 共同住宅等の玄関ホールは別に感知器を設けるのではなく、通路として扱われ歩行距離によって数えるとされました
- 廊下の幅が狭くて壁から0.6メートルの距離を取れなくても、設置を省略することはできないとされました
- 集じんダクトはじんあい等が滞留する場所に該当し設置を要しないとされました
- 天井が低い居室や狭い居室は、天井高2.5メートル未満・床面積40平方メートル未満がおおむねの目安とされました
- デパートの売場の通路も通路に該当しますが、令第32条の特例を認めてさしつかえないとされました
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目次
共同住宅の玄関ホールは煙感知器の数え方にどう入るのか

この場所を感知器の数のうえでどう扱うのかが問われました。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第23条第4項第7号ヘは、廊下及び通路にあっては歩行距離三十メートルごとに一個以上の感知器を設けると定めています。
玄関ホールを居室の床面積(同号ホ)に加算するのか、通路の歩行距離(同号ヘ)に加算するのか、当時は決着がついていない疑問でした。
この回答により、玄関ホールは通路の仲間として歩行距離で数える扱いに統一されています。
共同住宅の図面を確認するときは、玄関ホールを居室側の面積ではなく通路側の歩行距離に含めて感知器の個数を数える必要があります。
うちのマンションのエントランスホール、居室の面積に入れて数えてました。
玄関ホールは通路扱いなので、歩行距離で数え直してみましょう。
廊下の幅が狭くて壁から0.6メートル離せなくても設置を省略できないのか

古い建物では廊下の幅そのものが狭く、この距離を確保できない場所があります。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第23条第4項第7号ニは、感知器を壁又ははりから0.6メートル以上離れた位置に設けることを定めていますが、これは望ましい取付け位置の基準であって、免除の条件ではありません。
廊下への設置義務そのものは規則第23条第5項が別に定めており、取付け位置の制約とは切り離されています。
建築基準法施行令第119条が定める廊下の最低幅を踏まえても、狭い廊下だからという理由だけで感知器を省略することはできません。
壁から0.6メートル離せない現場では、できる限り条件に近い位置を選びつつ、必ず感知器自体は設置する必要があります。
うちの古いビル、廊下が狭くて規定どおりの位置に付けられないんですが、それなら免除されますか。
免除にはなりません。
できるだけ条件に近い位置を選んで設置しましょう。
集じんダクトには煙感知器を設置しなくてよいのか

パイプダクトの一種として、これにも煙感知器が必要なのかが問われました。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第23条第4項第1号ニ(イ)は、じんあい、微粉又は水蒸気が多量に滞留する場所を煙感知器の設置除外場所としていて、この項目は昭和44年当時から変わっていません。
パイプダクトは本来規則第23条第5項第3号により設置対象ですが、集じんダクトはダクト内部そのものが粉じんの通り道であるため、この除外規定が優先して適用されます。
同じダクトでも、煙や空気が通るだけの縦穴と、粉じんが常時滞留するダクトとでは扱いが変わる点に注意が必要です。
集じん設備を新設・改修するときは、ダクトの用途を確認し、除外規定に当てはまるかを個別に判断する必要があります。
うちの工場、集じんダクトがあるんですが、あれも煙感知器の対象になるんですか。
粉じんが滞留するダクトは除外対象です。
用途を確認してから判断しましょう。
天井が低い居室や狭い居室とはどれくらいの広さをいうのか

条文にある「天井が低い居室」「狭い居室」という言葉の具体的な線引きが問われました。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第23条第4項第7号イは、天井が低い居室又は狭い居室にあっては入口付近に感知器を設けることと定めていますが、条文そのものには具体的な数字は書かれていません。
2.5メートルや40平方メートルという数字は、この回答が示した行政上の目安です。
「おおむね」とされているとおり、境目に近い居室は数値だけで機械的に判断せず、所轄消防署に確認したほうが安全です。
該当すると判断した居室では、天井の中心ではなく入口付近に感知器を寄せて取り付ける必要があります。
うちの小部屋、天井が低いんですが、入口の近くに付け直したほうがいいんでしょうか。
天井高2.5メートル未満ならその扱いです。
入口付近への付け替えを確認しましょう。
デパートの売場の通路にも煙感知器は必要なのか

この売場の通路が、条文にいう「通路」として扱われるのかが問われました。
(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
現行の規則第23条第5項第2号は、廊下及び通路(令別表第一の一定の防火対象物の部分に限る。)に煙感知器を設けることと定めていて、この条番号は昭和44年当時から変わっていません。
デパートの売場の通路は、商品を並べる陳列棚の間の通行部分であっても、屋内で専ら通行・運搬に使われる以上は通路に含まれます。
ただし売場は見通しがよく陳列の配置も変わりやすいという事情から、令第32条の特例を認めてよいとされました。
特例を適用できるかどうかは売場ごとの個別事情によるため、設計段階で所轄消防署に相談しておく必要があります。
うちの店舗、売場の通路にも全部感知器が要るのかと思ってました。
通路には含まれますが、特例の余地もあります。
所轄消防署に相談してみましょう。
よくある質問
まとめ
居室やダクトや通路の線引きも、根拠を確かめれば迷わず判断できそうです。
数字だけで迷ったときは、所轄の消防機関との相談が前提です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条・第32条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第23条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第119条
- 共同住宅の玄関ホールの煙感知器設置に関する質疑(昭和44年11月20日 消防予第265号 消防庁予防課長から都道府県消防主管部長あて回答)
- 廊下の取付け距離と設置義務に関する質疑(同上)
- 集じんダクトの煙感知器設置に関する質疑(同上)
- 天井が低い居室及び狭い居室の限界に関する質疑(同上)
- 通路の定義とデパートの売場に関する質疑(同上)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





