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危険物保安技術協会の検査員はどんな資格が必要なのか|学歴と実務経験の3つのルートと総務大臣認定を解説

クリップボードを手に屋外貯蔵タンクを点検する作業員の写真

危険物施設の完成検査前検査は、市町村や都道府県ではなく危険物保安技術協会が代わりに行うことがあります。
その検査を実際に担当する職員は、協会の中なら誰でもよいわけではありません。
学歴や実務経験によって、検査員になれる道筋は法令で決まっています。
この記事では消防法第16条の38と危険物の規制に関する政令第41条の3が定める検査員の資格要件を確認します

うちのタンクの完成検査、協会の人が担当するって聞きましたけど、誰でも検査できるんですか。

実は検査員になれる資格は法令で決まっているんです。
順番に見ていきましょう。

資格がある人じゃないと検査できないってことですか。

はい、学歴と実務経験の組み合わせで決まります。
まずは条文から確認しましょう。

この記事の結論
  • 危険物保安技術協会が完成検査前検査などの審査事務を行うときは、消防法第16条の38により政令で定める資格を有する検査員に実施させなければなりません
  • 検査員の資格は、学歴と実務経験を組み合わせた3つのルート(大学卒+3年、短大・高専卒+5年、学歴を問わず7年)のいずれかで得られます
  • 実務経験として数えられるのは、石油タンクや高圧ガスタンクなどの鋼構造物の研究・設計・工事の監督又は検査に限られます
  • この3つのルートに届かなくても、総務大臣が同等以上の学力及び経験を有すると認定すれば検査員になれます
  • 検査員は誠実にその職務を行う義務があり、違反したときは総務大臣が協会に対し検査員の解任を命ずることができます

検査員になるための学歴と実務経験の3つのルートと総務大臣認定の関係を示した図解

危険物保安技術協会の検査員とは何をする人か

作業着姿の検査員がクリップボードを手に屋外貯蔵タンクを点検し奥にもう一つのタンクと配管が見えるイメージ
危険物保安技術協会は、市町村長等に代わって完成検査前検査などの審査事務を行うことができる団体です。
その審査事務を実際に担当する人には、条文上の呼び方があります。
消防法第16条の38第1項・第2項
協会は、審査事務を行うときは、政令で定める資格を有する者に実施させなければならない。
審査事務を実施する者(以下「検査員」という。)は、誠実にその職務を行わなければならない。
審査事務を実際に担当する人は「検査員」と呼ばれ、政令で定める資格が無ければ担当できません
協会が自由に人を選べるわけではなく、法令で決まった資格を持つ者に限って実施させる義務が協会側に課されています。
あわせて検査員には、自分の判断で誠実に職務を行う義務も定められています。
つまり「資格の有無」と「職務の誠実さ」という2つの縛りが、検査の担当者にはかかっていることになります。
次はその資格の中身を確認します。

協会の職員なら誰でも検査できると思っていました。

いいえ、政令で定める資格を持つ人だけです。
次はその条件を見てみましょう。

どんな学歴と実務経験があれば検査員になれるのか

積み重なった書籍とリボンで結ばれた巻物状の証書を左に配し右にクレーンで組み立て中の円筒形タンクの鋼板を配したイメージ
検査員の資格は、学歴と実務経験の年数を組み合わせた形で決まります。
政令が定める号を順番に確認します。
危険物の規制に関する政令第41条の3第一号・第二号・第三号
一 学校教育法(昭和22年法律第26号)による大学(同法による短期大学を除く。)において機械工学、造船工学、土木工学又は建築工学の学科又は課程を修めて卒業した者であつて、石油タンク、高圧ガスタンク等の鋼構造物の建設、改造又は修理に係る研究、設計、工事の監督又は検査(次号及び第三号において「石油タンク等の研究等」という。)に3年以上の実務の経験を有するもの
二 学校教育法による短期大学(同法による専門職大学の前期課程を含む。)又は高等専門学校において機械工学、造船工学、土木工学又は建築工学の学科又は課程を修めて卒業した者(同法による専門職大学の前期課程にあつては、修了した者)であつて、石油タンク等の研究等に5年以上の実務の経験を有するもの
三 石油タンク等の研究等に7年以上の実務の経験を有する者
学歴が短くなるほど、求められる実務経験の年数が長くなる仕組みです
大学卒業なら3年以上短大・高専卒業なら5年以上、そして学歴を問わなければ7年以上の実務経験があれば資格を満たします。
専門職大学の前期課程を修了した者も、短大・高専卒業と同じ扱いになります。
学歴も年数も無い人がいきなり検査員になれるわけではなく、どのルートを選んでも一定の実務経験は必ず必要になります。
次はその実務経験に何が数えられるのかを確認します。

大学を出ていない人は検査員になれないんですか。

いいえ、7年以上の実務経験があればなれます。
どんな仕事が数えられるかを見ましょう。

実務経験に数えられるのはどんな仕事なのか

製図台に広げた設計図を左に配し右にクレーンで鋼板を吊り上げるタンク建設現場を配したイメージ
条文は「石油タンク等の研究等」という言葉を使っていますが、これは何でもよいわけではありません。
号一のかっこ書が、この言葉の中身を定義しています。
危険物の規制に関する政令第41条の3第一号(かっこ書)
石油タンク、高圧ガスタンク等の鋼構造物の建設、改造又は修理に係る研究、設計、工事の監督又は検査(次号及び第三号において「石油タンク等の研究等」という。)
実務経験に数えられる仕事は、研究・設計・工事の監督・検査の4つに限られます
対象になる構造物も石油タンクや高圧ガスタンクなどの鋼構造物に限られ、無関係な工事の経験までは含まれません。
学歴の要件が機械工学・造船工学・土木工学・建築工学の4分野に限られているのも、これらの構造物を扱う工学分野だからです。
現場の施工管理だけでなく、研究や設計に携わった経験も対象になる点は見落としやすいところです。
自分の経歴がこの4分野の学科と実務内容に当てはまるかを、まず確認してみてください。

タンクの工事なら何の仕事でも実務経験になるんですか。

いいえ、研究・設計・工事の監督・検査に限られます。
次は例外的な認定ルートを見ましょう。

総務大臣が個別に認定するケースとはどんなものか

赤い公印の押された証書が置かれた机を左に配し右にファイルボックスの並ぶ書棚を配したイメージ
学歴と実務経験の3ルートのどれにも当てはまらない人が、絶対に検査員になれないわけではありません。
政令はもう1つ、個別認定という道を用意しています。
危険物の規制に関する政令第41条の3第四号
総務大臣が前三号のいずれかに掲げる者と同等以上の学力及び経験を有すると認定した者
総務大臣が個別に学力と経験を審査し、同等以上と認めれば検査員になれる救済ルートです
号一から号三までの学歴・年数の要件を機械的に満たさなくても、この号によって道が閉ざされないようになっています。
ただし認定するのは総務大臣であり、協会や本人の自己申告だけで足りるわけではありません。
どのような学力・経験が「同等以上」と判断されるかは条文に具体的な基準が書かれておらず、個別の審査に委ねられています。
自分の経歴がどのルートにも当てはまらないと感じたときは、まずこの認定制度があることを覚えておいてください。

学歴も年数も足りない人は完全に対象外なんですか。

いいえ、総務大臣の個別認定という道が残っています。
最後に違反したときの扱いを見ましょう。

検査員が違反したらどうなるのか

低層の事務所建物を左に配し右に向き合う二人が書類を手渡すイメージ
資格を満たして検査員になったあとも、義務がそこで終わるわけではありません。
誠実義務に違反した場合の扱いを条文で確認します。
消防法第16条の38第3項
総務大臣は、検査員がこの法律若しくはこの法律に基づく命令若しくは審査事務規程に違反したとき、又はその者にその職務を行わせることが審査事務の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、協会に対し、検査員の解任を命ずることができる。
検査員が法令や審査事務規程に違反すれば、総務大臣が協会に解任を命じることができます
資格を満たして検査員になったことと、その後も誠実に職務を行うことは別の話として扱われています。
解任を命じるのは協会ではなく総務大臣であり、協会が検査員を選んだあとも国の監督が及ぶ仕組みです。
違反の判断は「法令違反」だけでなく「職務を行わせることが審査事務の適正な実施に支障を及ぼすおそれ」という抽象的な基準でも行われます。
資格・誠実義務・解任命令の3点をあわせて確認しておくと、検査員制度の全体像がつかめます。

資格さえ取れば、あとは何をしても大丈夫というわけではないんですね。

はい、誠実義務違反には解任命令があります。
最後に確認事項をまとめましょう。

よくある質問

Q検査員の資格に有効期限はありますか?
A政令第41条の3には有効期限の定めはありません。資格要件を満たしていれば検査員になれますが、誠実義務に違反すれば総務大臣による解任命令の対象になります。
Q大学を出ていなくても検査員になれますか?
Aなれます。政令第41条の3第三号は学歴を問わず、石油タンク等の研究等に7年以上の実務経験があれば足りると定めています。
Q実務経験の「石油タンク等の研究等」にはどんな仕事が含まれますか?
A石油タンクや高圧ガスタンクなどの鋼構造物の建設・改造又は修理に係る研究、設計、工事の監督又は検査の4つの業務に限られます。
Q検査員が法令に違反した場合はどうなりますか?
A総務大臣が協会に対し検査員の解任を命ずることができます(消防法第16条の38第3項)。

まとめ

危険物保安技術協会が審査事務を行うときは、政令で定める資格を有する検査員に実施させなければなりません(消防法第16条の38第1項)
検査員の資格は、学歴と実務経験を組み合わせた3つのルートのいずれかで満たされます(政令第41条の3第一号〜第三号)
大学卒業なら3年以上、短大・高専卒業なら5年以上、学歴を問わなければ7年以上の実務経験が必要です
実務経験として数えられるのは、石油タンク等の鋼構造物の研究・設計・工事の監督又は検査に限られます
3つのルートに届かなくても、総務大臣が同等以上と認定すれば検査員になれます(第四号)
検査員は誠実にその職務を行う義務があります(消防法第16条の38第2項)
法令や審査事務規程に違反したときは、総務大臣が協会に検査員の解任を命ずることができます(第3項)

検査員の資格、条文で整理できてすっきりしました!

お役に立ててよかったです。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第16条の38
  • 危険物の規制に関する政令第41条の3
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の資格の該当性や認定手続きに関する判断は、危険物保安技術協会又は総務省消防庁にご確認ください。

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