危険物の規制に関する政令第24条と第25条は、貯蔵および取扱いの通則を定めています。
許可を受けた品名以外のものを置いたら違反になるのか。
給油取扱所の事務所でプロパンガスを売っていたらどうなのか。
タンクから中身が流出したら何条違反なのか。
流れ出た液から立ちのぼった蒸気は蒸気を発生させたことになるのか。
昭和37年から平成31年までの5つの質疑を通して、通則がどこまでを対象にしているのかを解説します。
製造所の敷地にプロパンガスのボンベや木炭を置いてたら、政令第24条第1号違反になるん?
「品名以外のものを取り扱わないこと」って書いてあるやん。
そこは条文の読み方が示されています。
プロパンガスは危険物に該当しないから政令第24条第1号とは別段の関係はないとされました。ただし同条第4号に適合するよう指導されたい、と続きます。
ほなタンクから中身が漏れたときは?
防油堤で受け止めたけど、そこから蒸気が外に飛んでもうたら二重に違反なん?
流出そのものは政令第24条第8号の規定に違反していたものと認められるとされました。
一方で流出に伴って拡散する蒸気は、令第25条第1項第4号の「みだりに蒸気を発生させる」ことには該当しないです。5件まとめて解説します!
- プロパンガスは危険物に該当しないから政令第24条第1号とは別段の関係はないが同条第4号の規定に適合するよう指導されたい
- 火薬類および高圧ガスについては危険物に該当する火薬類を除き政令第24条第1号の規定の適用はない
- 湖畔の桟橋を利用する遊覧船用給油取扱所は設問のように措置した場合は政令第24条第3号の規定を遵守しうると思料されるので設置して差し支えない
- さきの回答中の適当でないは許可基準としてではなく行政指導上の事項として解釈したものと念を押されている
- 移動タンク貯蔵所で危険物と準危険物を定期的に変更して貯蔵輸送することはさしつかえない
- タンクからの流出は政令第24条第8号の規定に違反していたものと認められる
- 流出に伴って拡散する蒸気は令第25条第1項第4号のみだりに蒸気を発生させることには該当しない
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目次
プロパンガスや木炭は政令第24条第1号の対象にならない

愛媛県の総務部長から、製造所等における火薬類や高圧ガス等の取り扱いについて3項目の照会がありました。
出発点は危険物の規制に関する政令第24条第1号です。ここには当該製造所等において許可を受けた数量以上又は品名以外の危険物を貯蔵し、又は取り扱わないことと定められています。
- 例えばプロパンガスボンベ(充てんせるもの)や木炭その他の可燃物を、同一敷地内で貯蔵し又は取り扱うことについても当然禁止されているものと解すべきか
- 本号中の品名以外の危険物とは、消防法で指定する以外の危険物、例えば火薬類または高圧ガスの如きものを含むのか
- 給油取扱所の事務所等にプロパンガスボンベを5本から6本保管し、これらの販売業務を行なうことは政令の趣旨に反する行為だと思料されるので、政令第24条第1号を適用して指導取締を行なうものと解されるがどうか
2項目めについては、火薬類および高圧ガスについては、危険物に該当する火薬類(いわゆる混合危険物を除く。)を除き、政令第24条第1号の規定の適用はないとされました。3項目めは1により承知されたい、です。
第1号が見ているのは危険物だけです。
危険物以外のものが敷地内にあること自体を第1号で咎めることはできません。ただし放置されたわけではなく、第4号という別の受け皿が示されています。危険物以外のものであっても、製造所等を安全な状態に保つという側面から見れば野放しではない、という整理です。
条文が届かないときに、届く条文を指し示すという答え方になっています。
なお、ここで引かれている号の番号は照会当時の条文のもので、現在の危険物の規制に関する政令とは条文の構成が異なります。
湖畔の桟橋に給油取扱所を設けることは措置しだいで認められる

青森県の総務部長から、遊覧船用給油取扱所の設置についての照会がありました。
国立公園十和田湖畔の休屋にある乗船桟橋を利用する遊覧船用給油施設です。これについては以前に政令第24条第3号の規定に適合させることが著しく困難であるため適当でないという回答を受けていました。その後再検討した結果、次のとおり施設した場合は同規定に抵触するものとして不適当であるか、という問い直しです。
- 地下貯蔵タンク7キロリットル(ガソリン2キロリットル、軽油5キロリットル入り、中仕切り鋼製板)1基を湖畔に埋設する
- 直近に設けられたギヤポンプ2台(ポンプ専用室は鉄骨トタン張り)をもって、乗船桟橋(鉄筋コンクリート造り)の横側下に取付けられた配管を通し、桟橋突端の給油口に移送給油する
- 給油口と乗船場は10メートル以上の距離を保ち、かつ、両者間には鉄柵を設けて区別する
最初の回答で著しく困難とされた政令第24条第3号を、施設の作りを変えることで守れる状態にした、という筋道です。
距離と柵で人の流れを分けたことが決め手です。乗船場と給油口が混ざっていれば守りようがありませんが、10メートル離して柵で区別すれば守れる、という判断になりました。
そして回答には注意書きが付いています。さきの回答中の適当でないとしたのは、許可基準としてではなく、行政指導上の事項として解釈したものである、というものです。
前回の否定が法令上の不可ではなかったことを、あとから明確にした形です。
移動タンク貯蔵所で危険物と準危険物を入れ替えて運ぶことはできる

福島県の総務部長から、危険物と準危険物を定期的に変更して貯蔵輸送することについての照会がありました。
内容は、移動タンク貯蔵所において一定の期間に限り危険物以外のものを貯蔵輸送してよいか、というものです。運ぼうとしているのは当時の消防法施行令別表第2で第四類第2種引火物とされていたアスファルトで、180度に熱して流動性のある状態にするという扱いでした。
タンクの温度降下を防止するため断熱材のガラスウール100ミリメートルで被覆する以外は、危険物の規制に関する政令第15条に適合するという前提が示されています。
あわせて、貯蔵してもよいとすれば危険物から準危険物、準危険物から危険物に変更する際の手続きおよび手数料はどうなるか、という問いが添えられていました。
ただし、そのあとに長い念押しが続きます。この場合、危険物を貯蔵しない期間については消防法第16条の4の規定により、その始期および終期に、移動タンク貯蔵所における危険物の貯蔵を休止または再開する旨の報告をさせるとともに、貯蔵休止中の使用方法および再開時における保安上の点検方法等についても報告させ、その実態をは握しておく必要がある、というものです。
認めるかわりに実態を把握しておけという答えです。
2項目めの手続きと手数料についても、上記1により承知されたいとされました。変更のたびに許可を取り直す話ではないという整理です。
危険物を運んでいない期間があること自体は問題にならず、その期間に何がどう使われているかを消防機関が知っていることが求められています。
タンクからの流出は第24条第8号違反だが蒸気の飛散は別に問われない

愛知県から、一般取扱所のタンクからの危険物の流出について照会がありました。実際に起きた事故についての法令解釈の疑義です。
事故の概要はこうです。昭和49年7月4日午後1時10分ごろ、愛知県の某株式会社のテレフタル酸製造工場において、工程中の高温洗浄槽の底部に設置されていたドレン抜バルブが、槽内にあった酢酸により固定ボルト8本が腐蝕されたことにより突然落下しました。
槽内に入っていた濃度約90パーセントの酢酸とテレフタル酸の混合物であるスラリ溶液約35立方メートルが槽外に流出し、防油堤内に流出します。排水ピットの自動排水ポンプを停止したため溶液は防油堤内に溜まりましたが、その一部は蒸気となって堤外に飛散しました。
- 一般取扱所の設備である屋外にあるタンクから危険物が流出したが、消防法第10条第3項の規定に基づき政令第24条第8号違反となるか
- 防油堤内に流出した危険物の一部が蒸気となって堤外に飛散した場合は、消防法第10条第3項の規定に基づき政令第25条第1項第4号違反となるか
2項目めの回答は、設問が危険物の流出に伴って拡散する蒸気を意味するものであれば、令第25条第1項第4号のみだりに蒸気を発生させることには該当しないです。
みだりにという言葉が効いています。
第25条第1項第4号が禁じているのは、必要もないのに蒸気を出す行為です。流出という一つの事故の結果として蒸気が広がったことを、別個の違反として二重に問うことはしないという整理になりました。
事故は第24条第8号の一件として評価され、そこから派生した現象は重ねて数えられていません。
ナトリウムを封入したエンジンバルブは合算して規制しなくてよい

時代はぐっと下って平成31年、消防庁危険物保安室長から各都道府県の消防防災主管部長等あてに送付された執務資料の中に、通則の考え方がよく表れた質疑があります。
管内事業者から、内部にナトリウムを封入した自動車用エンジンバルブを貯蔵することについて相談を受けた、という照会です。
示された事情は次のとおりでした。当該バルブは1本当たりのナトリウムが0.4グラム程度であるものの、大量に貯蔵しまたは取り扱う場合にはナトリウムの総量が指定数量以上となる可能性があります。
一方で当該バルブは自動車エンジンのシリンダーヘッドに搭載され、シリンダー内の爆発や高温の燃焼ガスにさらされても変形や摩耗が生じない耐久性を有しているため、バルブからナトリウムが流出する可能性は考えにくい。したがって集積した際に火災危険性が高まるとは考えにくく、ナトリウムの量を合算して危険物関連の規定を適用する必要はないと思料するがいかがか、という問いです。
そのうえで3つの念押しが添えられました。当該バルブは自動車エンジン内部という極めて過酷な環境下においても容易に損傷しない構造であり、バルブごとに取り扱うことで危険物保安上支障ないと考えられること。ただし運搬に関する基準は適用されること。そして当該バルブにナトリウムを封入する工程は危険物の取扱いに該当し、量に応じて危険物関連の規定が適用されることです。
製品になった後と作る過程は別に見られます。
昭和37年の回答が「危険物に該当しないものは第1号の対象外」と線を引いたのと同じ発想で、ここでは閉じ込められていて出てこないものは合算しないという線が引かれました。
とはいえ封入前のナトリウムはむき出しの危険物です。同じ物質でも、どの状態でどう扱われているかによって規定のかかり方が変わります。
よくある質問
まとめ
- プロパンガスは危険物に該当しないから政令第24条第1号とは別段の関係はないが、同条第4号の規定に適合するよう指導されたい
- 火薬類および高圧ガスについては、危険物に該当する火薬類を除き政令第24条第1号の規定の適用はない
- 湖畔の桟橋を利用する遊覧船用給油取扱所は、給油口と乗船場を10メートル以上離し鉄柵で区別する措置により設置して差し支えない
- さきの回答中の適当でないは、許可基準としてではなく行政指導上の事項として解釈したものであると念を押されている
- 移動タンク貯蔵所で危険物と準危険物を定期的に変更して貯蔵輸送することはさしつかえないが、休止と再開の報告により実態を把握する必要がある
- 一般取扱所のタンクからの危険物の流出は、政令第24条第8号の規定に違反していたものと認められる
- 流出に伴って拡散する蒸気は、令第25条第1項第4号のみだりに蒸気を発生させることには該当しない
- ナトリウムを封入したエンジンバルブは合算して規制する必要はないが、運搬に関する基準は適用され封入工程は危険物の取扱いに該当する
条文が届かへんときは、届く条文を教えてくれるんやな。
通則の質疑はその形が多いです。
第1号では問えないが第4号で指導する、流出は第8号だが蒸気は第25条で重ねて問わない、というように、どの条文で受けるかを整理する回答が並んでいます。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第10条第3項・第16条の4 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第15条・第24条・第25条 e-Gov法令検索
- 製造所等における火薬類、高圧ガス等の取り扱いについて(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から愛媛県総務部長あて回答)
- 遊覧船用給油取扱所の設置について(昭和40年11月4日付け自消丙予発第179号 予防課長から青森県総務部長あて回答)
- 危険物と準危険物を定期的に変更して貯蔵輸送することについて(昭和44年7月17日付け消防予第193号 予防課長から福島県総務部長あて回答)
- 一般取扱所のタンクからの危険物の流出について(昭和51年4月19日付け消防予第60号 予防課長から愛知県あて回答)
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成31年4月19日付け消防危第81号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長および東京消防庁ならびに各指定都市消防長あて)別紙 内部にナトリウムを封入した自動車用エンジンバルブについて
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)貯蔵及び取り扱いの基準の通則に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。




