消火設備の設置範囲は「著しく消火困難な施設」かどうかで大きく変わりますが、その判定も代替の可否も条文だけでは汶まりません。
高さ6メートル以上の塔槽類は消火困難な施設になるのか。
壁のない上屋は煙が充満するおそれのある場所なのか。
密封構造の塔槽類に泡消火設備は必須なのか。
既設の設備が新しい基準に合っていないとき、すぐ改修が必要なのか。
平成元年から平成2年の執務資料をもとに解説します。
塔が3階分ほどの高さにあります。
これも危険物を取り扱う設備に含まれるのでしょうか。
塔槽類も含まれるとされています。
ただし密封構造であれば、窒素ガス送入設備で第三種を省略できる道があります。
乾燥設備が2基あるのですが、どのくらい離せば互いに隣接する場合から外れるのでしょうか。
距離では外れません。
区画のない一般取扱所では、原則として相互の距離によらず該当するとされました。
この記事でまとめて解説します!
- 屋内貯蔵所を複数の防護区画に分けている場合、ハロゲン化物消火設備の薬剤量は一の区画を防護できる量で足りる(選択弁付)
- 屋内消火栓の加圧送水装置には原動機として内燃機関を用いることができる
- 高さ6メートル以上で危険物を取り扱う設備に塔槽類は含まれる
- 上屋のみで壁が設けられていない場所は「火災のとき煙が充満するおそれのある場所等」に該当しない
- 密封構造の塔槽類は、消火に十分な量の窒素ガスを保有する送入設備により政令第23条を適用して第三種消火設備を設けないこととして差し支えない
- 区画のない一般取扱所の乾燥設備2基は、原則として相互の距離によらず「互いに隣接する場合」に該当する
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目次
ハロゲン化物消火設備の薬剤量は一の防護区画分で足りる

耐火構造で延面積600平方メートルの屋内貯蔵所について照会がありました。類を同じくするものを貯蔵するため150平方メートルずつ4つに区切られており、ここに設置する第三種消火設備の消火薬剤量は次のいずれによるべきかという問いです。
- 一の許可施設であるため、600平方メートルすべてを同時に有効に防護できる量
- 一の許可施設ではあるが、四の防護区画があるため、そのうち一の区画を防護できる量(選択弁付)
許可上は1つの施設でも、防護区画に分かれていれば薬剤量は区画単位で考えます。同時に4区画が燃えることは想定せず、選択弁で発生した区画に放出する構成です。
あわせて、消火設備については昭和46年に「製造所等の消火設備に関する資料」が出されており、かなり古いがこれによって指導されたいと考えていると付記されています。
区画されていれば、薬剤の量は一区画分でよいのですね。
同時に防護する範囲で考えます。
区画の図面と設備の容量を突き合わせておいてください。
屋内消火栓の加圧送水装置には内燃機関を使える

平成元年の執務資料では、屋内消火栓の加圧送水装置に原動機として内燃機関を用いることができるかという問いが立てられています。
内燃機関の性能および構造は「自家発電設備の基準」(昭和48年消防庁告示第1号)に定める内燃機関の例によることとされています。
電動機以外を認めるが性能は既存の告示に合わせるという構成です。停電時にも動く点は非常用電源として有利ですが、告示の基準に適合させる必要があります。
加圧送水装置に内燃機関も使えるのですね。
用いることができます。
非常時の燃料の確保まで含めて計画してください。
高さ6メートル以上の塔槽類は消火困難な施設になる

高さ6メートル以上で危険物を取り扱う設備を有する製造所または一般取扱所は著しく消火困難な施設となりますが、塔槽類はこの危険物を取り扱う設備に含まれるかという問いです。
蒸留塔や反応槽は化学プラントでは当然に高さがあるため、この確認により多くのプラントが著しく消火困難な施設に該当します。第一種から第三種の消火設備が必要になる区分です。
一方で、上屋のみで壁が設けられていない場所は、規則第33条第2項第1号の表中の「火災のとき煙が充満するおそれのある場所等」に該当しないと解してよいかという問いにはお見込みのとおりと回答されています。壁がなければ煙は滞留しないという素直な整理です。
施行日において現に設置されている屋外タンク貯蔵所の第三種泡消火設備の固定式泡放出口の数が通達に適合していない場合、適合するように改修する必要があるかという問いには、屋外貯蔵タンクの内部点検等の機会をとらえ、改修するよう指導することとして差し支えないとされました。
また、新たに自動火災報知設備の設置が必要とされる既設の製造所等について、改正規則附則により一定期日までの間は従前の例によることとしてよいかという問いにも差し支えないと回答されています。
既設への遡及は点検の機会や猶予期間で調整されるという運用です。
高さが6メートル以上あると、消火が困難な施設になるのですね。
区分が変わります。
設備の高さを実測して、記録に残しておきましょう。
密封構造の塔槽類は窒素ガス送入設備で代替できる

著しく消火困難な製造所で、高さ6メートル以上の部分において危険物を取り扱う密封構造の塔槽類について、消火に十分な量の窒素ガスを保有する窒素ガス送入設備を設けることにより、政令第23条の規定を適用して第三種消火設備を設けないこととして差し支えないかという照会がありました。
前項で塔槽類が含まれると確認された結果、高さのあるプラントには第三種の消火設備が求められます。しかし密封構造であれば内部に泡を送り込む意味が乏しいという実態があります。
そこで窒素ガスで内部を不活性化する方法が代替として認められました。条件は消火に十分な量の窒素ガスを保有していることで、カーバイドの事例と同じ立て方です。
密封の構造なら、窒素ガスの設備で代えられるのですね。
十分な量を保有することが条件です。
容量の計算書を用意して相談してください。
覆土式は泡放出口方式とし乾燥設備は距離によらず隣接扱い

自衛隊の覆土式屋外タンク貯蔵所の消火設備は、従来は泡消火栓方式により設置してきたところ、今後設けられるものについて同様に特例を適用することとしてよいかという照会がありました。
そのうえで運用上の注意が示されています。フォームチャンバーからデフレクターまでの距離が長くなることが想定されるので、設置許可の審査において適正な泡が供給されることを確認するとともに、完成検査時においても放射試験により泡の性能確認を行うよう留意されたい
方式を格上げしたうえで実際に泡が届くかを試験で確認させるという二段構えです。図面の審査だけで終わらせない点が特徴です。
もうひとつ、危険物を取り扱う乾燥設備2基を有する区画のない一般取扱所に二酸化炭素消火設備を局所放出方式で設置する場合、それぞれの設備が何メートル以上離れていれば運用指針に規定する「互いに隣接する場合」に該当しないこととなるのかという問いです。
照会者は距離の数値を求めていますが、回答は距離では線を引かないという答え方をしています。区画がない空間では離しても火災は伝わるという判断です。
離隔距離で解決しようとするのではなく、区画を設けるかどうかを検討することになります。
まず区画があるかどうかから整理するのですね。
そこで判断が変わります。
いまの建物に区画があるか、図面で確かめてください。
よくある質問
まとめ
- 屋内貯蔵所が複数の防護区画に分かれている場合、消火薬剤量は一の区画を防護できる量(選択弁付)で足りる
- 屋内消火栓の加圧送水装置には内燃機関を用いることができるが、性能と構造は自家発電設備の基準の例による
- 高さ6メートル以上で危険物を取り扱う設備に塔槽類は含まれ、著しく消火困難な施設となる
- 上屋のみで壁が設けられていない場所は火災のとき煙が充満するおそれのある場所等に該当しない
- 密封構造の塔槽類は、消火に十分な量の窒素ガスを保有する送入設備により政令第23条で第三種消火設備を省略できる
- 覆土式屋外タンク貯蔵所は泡放出口方式とし、完成検査時に放射試験で泡の性能確認を行う
- 区画のない一般取扱所の乾燥設備2基は、原則として相互の距離によらず互いに隣接する場合に該当する
距離で解決しようとしても、うまくいかない場合があるのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
区画があるかどうかで判断が変わるので、まず区画の有無から整理してください。
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第20条・第23条 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第32条・第32条の6・第33条・第38条 e-Gov法令検索
- 「自家発電設備の基準」(昭和48年消防庁告示第1号)
- 屋内貯蔵所に設置する消火設備(ハロゲン化物消火設備)の薬剤量について(昭和59年8月10日付け消防危第85号 危険物規制課長から山口県あて回答)
- 「危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所を除く)の送付について」(平成元年7月4日付け消防危第64号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)問33から問37まで
- 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成2年5月22日付け消防危第57号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)問4
- 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(平成2年10月31日付け消防危第105号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)問5・問6
- 「消火設備及び警堭設備に係る危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令の運用について」(平成元年3月22日付け消防危第24号 危険物規制課長通達)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)消火設備の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




