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危険物施設の不活性ガス消火設備はなぜ移動式だけ予備動力源が要らないのか|三方式の設置基準の違いを解説

危険物施設で不活性ガス消火設備の配管を確認する作業員のイメージ

危険物施設の消火設備というと、屋内消火栓やスプリンクラー設備を思い浮かべがちですが、不活性ガスを使う「第三種」の消火設備という選択肢もあります。
不活性ガス消火設備には全域放出方式・局所放出方式・移動式という三つの型があり、それぞれ設置基準が大きく異なります。
なかでも「予備動力源」の設置義務は、方式によって課される場合と課されない場合が分かれる見落としやすい箇所です。
この記事では、危険物施設専用の不活性ガス消火設備の基準を、三つの方式の違いとあわせて整理します。

うちの施設、二酸化炭素を使う消火設備があるって言われたんです。

それはおそらく「不活性ガス消火設備」ですね。
第三種の消火設備として、規則で基準が定められています。

全域放出とか移動式とか、種類があるって聞きました。

はい。
方式によって基準が変わるので、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 不活性ガス消火設備は危険物の規制に関する規則で第三種の消火設備に位置づけられ、全域放出方式・局所放出方式・移動式の三方式があります
  • 全域放出方式は不燃材料の区画と開口部の自動閉鎖装置が前提です
  • 局所放出方式は防護対象物に不活性ガス消火剤を直接放射する方式です
  • 移動式のホース接続口は水平距離15メートル以下に設けます
  • 予備動力源の設置義務があるのは全域放出方式と局所放出方式だけで、移動式には課されていません

不活性ガス消火設備は全域放出方式が区画と自動閉鎖装置局所放出方式が対象物への直接放射移動式が水平距離十五メートル以下予備動力源は全域放出方式と局所放出方式のみ必要であることを示す図解

危険物施設の不活性ガス消火設備はなぜ第三種に位置づけられるのか

不燃材料の壁で区画された部屋の天井に取り付けられた噴射ヘッドと自動閉鎖装置付きの扉のイメージ
不活性ガス消火設備も、危険物施設では専用の法令で位置づけが決まっています。
まずはその位置づけから確認します。
危険物の規制に関する政令第二十条第1項第一号(抜粋) (略)別表第五に掲げる対象物について同表においてその消火に適応するものとされる消火設備のうち、第一種、第二種又は第三種の消火設備並びに第四種及び第五種の消火設備を設置すること。危険物の規制に関する規則第三十二条の七 第三種の不活性ガス消火設備の設置の基準は、次のとおりとする。(略)
不活性ガス消火設備は、危険物の規制に関する規則の中で第三種の消火設備と位置づけられています。
著しく消火が困難と判定された施設には、第一種・第二種・第三種のいずれかの消火設備を設置する義務があります。
屋内消火栓・屋外消火栓は第一種、スプリンクラー設備は第二種、不活性ガスやハロゲン化物、粉末を使う設備は第三種にあたります。
不活性ガス消火設備にはさらに全域放出方式・局所放出方式・移動式という三つの型があり、方式ごとに基準が異なります。
まずは全域放出方式と局所放出方式の違いから見ていきましょう。

消火設備は消火栓とスプリンクラーだけだと思っていました。

いえ、不活性ガスを使う設備もあります。
次は方式ごとの違いを見ていきましょう。

全域放出方式と局所放出方式はどう使い分けるのか

貯蔵容器に直接ノズルを向けて不活性ガスを放射するイメージ
全域放出方式と局所放出方式では、噴射ヘッドの設け方がまったく違います。
それぞれの要件を確認します。
危険物の規制に関する規則第三十二条の七第一号・第二号 一 全域放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、不燃材料で造つた壁、柱、床、はり又は屋根(天井がある場合にあつては、天井)により区画され、かつ、開口部に自動閉鎖装置(防火設備又は不燃材料で造つた戸で不活性ガス消火剤が放射される直前に開口部を自動的に閉鎖する装置をいう。)が設けられている部分に当該部分の容積及び当該部分にある防護対象物の性質に応じ、標準放射量で当該防護対象物の火災を有効に消火することができるように、必要な個数を適当な位置に設けること。ただし、当該部分から外部に漏れる量以上の量の不活性ガス消火剤を有効に追加して放出することができる設備であるときは、当該開口部の自動閉鎖装置を設けないことができる。二 局所放出方式の不活性ガス消火設備の噴射ヘッドは、防護対象物の形状、構造、性質、数量又は取扱いの方法に応じ、防護対象物に不活性ガス消火剤を直接放射することによつて標準放射量で当該防護対象物の火災を有効に消火することができるように、必要な個数を適当な位置に設けること。
全域放出方式は不燃材料で区画された部屋ごと不活性ガスで満たす方式です。
噴射ヘッドは、壁・柱・床・はり・屋根で区画され、開口部に自動閉鎖装置が設けられている部分に設けます。
ただし部屋の外へ漏れる量以上のガスを追加放出できる設備であれば、自動閉鎖装置を省略できるという例外もあります。
一方の局所放出方式は、部屋全体ではなく防護対象物そのものに直接不活性ガスを放射する方式です。
どちらも標準放射量で火災を消火できるように、必要な個数のヘッドを設けます。

部屋ごとガスで満たす方法と、物にだけ吹きかける方法があるんですね。

はい。
対象物の性質によって使い分けます。

移動式のホース接続口はどんな基準で配置するのか

ホースリールとホースを持つ作業員が対象物までの距離を確認するイメージ
部屋を区画できない場所では、移動式という選択肢があります。
その配置基準を確認します。
危険物の規制に関する規則第三十二条の七第三号・第四号 三 移動式の不活性ガス消火設備のホース接続口は、すべての防護対象物について、当該防護対象物の各部分から一のホース接続口までの水平距離が十五メートル以下となるように設けること。四 不活性ガス消火剤容器に貯蔵する不活性ガス消火剤の量は、防護対象物の火災を有効に消火することができる量以上の量となるようにすること。
移動式のホース接続口は、水平距離15メートル以下になるように設けます。
全域放出方式や局所放出方式のように部屋を区画する必要が無く、ホースを伸ばして届く範囲で配置を決められる方式です。
すべての防護対象物について、各部分から一のホース接続口までの距離が15メートル以下になっているかを確認します。
容器に貯蔵する消火剤の量は、防護対象物の火災を有効に消火できる量以上を確保する必要があります。
数値そのものはシンプルですが、防護対象物の配置が変わると届かなくなる場所が出てきます。

ホースが届く範囲で決めればいいなら、分かりやすいですね。

はい。
ただし距離が足りているか、実測での確認が必要です。

なぜ移動式だけ予備動力源の設置が要らないのか

予備動力源が接続された設備と予備動力源のないホースリール式の設備を並べたイメージ
方式によって、予備動力源の扱いが違います。
見落としやすいポイントを確認します。
危険物の規制に関する規則第三十二条の七第五号 五 全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備には、予備動力源を附置すること。
予備動力源の設置義務があるのは、全域放出方式と局所放出方式だけです。
条文は全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備に限って予備動力源の附置を求めており、移動式は対象に含まれていません
移動式は人が操作してホースを伸ばす方式なので、自動作動を前提にした電源設備までは求められていないと考えられます。
「不活性ガス消火設備だから一律に予備動力源が要る」と思い込むと、点検項目を余分に数えてしまいます。
方式ごとに条文の対象がどこまで及ぶかを、そのつど確認することが大切です。

うちの移動式の設備、予備動力源が無いのでおかしいと思っていました。

移動式には設置義務が無いので、その状態で問題ありません。
方式を確認してみましょう。

導入までに何を確認すればよいのか

チェックリストを持つ作業員が不活性ガス容器の配管を点検するイメージ
明日からは、自分の施設がどの方式に当たるかを確認しましょう。
点検の流れに沿って見ていきます。
危険物の規制に関する規則第三十二条の七第一号・第五号(抜粋) (略)ただし、当該部分から外部に漏れる量以上の量の不活性ガス消火剤を有効に追加して放出することができる設備であるときは、当該開口部の自動閉鎖装置を設けないことができる。五 全域放出方式又は局所放出方式の不活性ガス消火設備には、予備動力源を附置すること。
明日からは、自分の施設がどの方式に当たるかを確認しましょう。
まず設備が全域放出・局所放出・移動式のどれに当たるかを設置届や図面で確認します。
全域放出方式なら、開口部の自動閉鎖装置の有無と、省略の例外に当たるかどうかを点検表と照らし合わせます。
移動式なら、ホース接続口から防護対象物までの水平距離が15メートル以下に収まっているかを確認します。
判断に迷う場合は、所轄消防署や専門業者に相談するのが確実です。

うちの設備がどの方式か、一度確認してみます。

点検記録とあわせて確認しておくと安心です。

よくある質問

Q不活性ガス消火設備は必ず設置しなければならないのですか?
A危険物の規制に関する政令第二十条が定める組み合わせに従い、施設の区分や場所の性質に応じて必要な種別が決まります。不活性ガス消火設備(第三種の消火設備)は、屋内消火栓・屋外消火栓(第一種)やスプリンクラー設備(第二種)と並ぶ選択肢のひとつで、必ず設置が必要というわけではありません。
Q全域放出方式の自動閉鎖装置は絶対に省略できないのですか?
A省略できる場合があります。区画の外へ漏れる量以上の不活性ガス消火剤を有効に追加して放出できる設備であれば、開口部の自動閉鎖装置を設けないことができます。
Q移動式にはなぜ予備動力源が要らないのですか?
A条文が予備動力源の附置を求めているのは全域放出方式又は局所放出方式に限られ、移動式は対象に含まれていないためです。移動式は人が操作する方式である点も関係していると考えられます。
Q全域放出方式と局所放出方式はどちらを選んでもよいのですか?
A防護対象物の形状・構造・性質・数量や取扱いの方法に応じて選びます。部屋ごと不活性ガスで満たせる区画がある場合は全域放出方式、対象物に直接放射するほうが効率的な場合は局所放出方式が選ばれます。

まとめ

不活性ガス消火設備は危険物の規制に関する規則で第三種の消火設備に位置づけられます
全域放出方式・局所放出方式・移動式という三つの方式があります
全域放出方式は不燃材料の区画と開口部の自動閉鎖装置が前提です
区画の外へ漏れる量以上を追加放出できる設備なら自動閉鎖装置を省略できます
局所放出方式は防護対象物に直接不活性ガスを放射します
移動式のホース接続口は水平距離15メートル以下に設けます
予備動力源の設置義務があるのは全域放出方式と局所放出方式だけで、移動式には課されていません

不活性ガス消火設備の仕組み、思ったより整理しやすいですね!

方式ごとの違いは、定期点検のときにもあわせて確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第32条の7
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第20条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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