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危険物施設はなぜ高圧ガス施設からも距離が必要なのか|規則第12条が定める対象施設と20メートルの基準を解説

高圧ガスの施設からもなぜ距離が必要になるのか アイキャッチ

高圧ガスのタンクが近くにあっても「自分の敷地内だから関係ない」と思っていないでしょうか。
現場では保安距離というと、学校や病院との30メートルばかりが意識されがちです。
実は危険物施設は、高圧ガスなどを扱う施設からも距離を取るよう定められています。
今回はこの高圧ガス施設との距離の仕組みを、条文からたどっておきます

うちの近くに高圧ガスのタンクがありますが、学校や病院みたいに距離は要りますよね。

はい、高圧ガスの施設も距離の対象です。
ただし学校等とは条文の作りが違います。

条文の作りが違うとはどういうことですか。

政令には距離の数字が書かれていません
規則の条文を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号ニは、高圧ガスその他災害を発生させるおそれのある物を貯蔵し、又は取り扱う施設からも保安距離が必要と定めています
  • 対象になる施設の範囲は、危険物の規制に関する規則第12条が定めています
  • 対象は高圧ガス保安法の許可・届出施設、液化酸素の消費施設、液化石油ガスの300キログラム以上の販売所などです
  • 距離は20メートル以上ですが、耐火構造の塀等を設ければ告示の要件で短くできます
  • 学校等と違い高圧ガス等は、政令に距離の数字が無く規則へすべて委任されている点が見落としやすい違いです

危険物施設が高圧ガスの施設からも保安距離を必要とし規則第12条が対象施設と20メートルの基準を定めることを示す図解

高圧ガス施設との距離はどの条文が求めているのか

製造所と高圧ガスタンクの間の距離を測る人物
危険物施設が保安距離を取る相手は、学校や病院だけではありません。
まずは根拠になる条文を確認します。
危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号 製造所の位置は、次に掲げる建築物等から当該製造所の外壁又はこれに相当する工作物の外側までの間に、それぞれ当該建築物等について定める距離を保つこと。(略)ニ 高圧ガスその他災害を発生させるおそれのある物を貯蔵し、又は取り扱う施設で総務省令で定めるもの 総務省令で定める距離
保安距離を取る相手には、高圧ガスなどを扱う施設も含まれています
号ニのほかにも、住居・学校病院・重要文化財・特別高圧架空電線が同じ第1号の中に並んでいます。
この号は製造所の基準ですが、屋内貯蔵所や屋外タンク貯蔵所などにも準用され、幅広い施設に効いてきます。
号ニだけが他の号と違い、条文の中に距離の数字を持っていません。
どんな施設が対象になり、距離が何メートルなのかは、次に規則の条文で確認します。

製造所だけの話かと思っていました。

貯蔵所や取扱所にも準用されます。
次は対象になる施設の範囲を見ましょう。

どんな施設が高圧ガス等に当たるのか

高圧ガスボンベの一群と単独のボンベを見比べる人物
条文には「総務省令で定める施設」とだけ書かれています。
中身は規則が具体的に定めています。
危険物の規制に関する規則第12条 令第9条第1項第1号ニ(略)の総務省令で定める施設は、次に掲げる施設(略)とする。一 高圧ガス保安法第5条第1項の規定により都道府県知事の許可を受けなければならない高圧ガスの製造のための施設(略)及び同条第2項の規定により(略)都道府県知事に届け出なければならない高圧ガスの製造のための施設であつて、(略)一日30立方メートル以上である設備を使用して高圧ガスの製造(略)をするもの 二 高圧ガス保安法第16条第1項の規定により都道府県知事の許可を受けなければならない貯蔵所(略)及び同法第17条の2第1項の規定により都道府県知事に届け出なければならない貯蔵所 三 高圧ガス保安法第24条の2第1項の規定により都道府県知事に届け出なければならない液化酸素の消費のための施設 四 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律第3条第1項の規定により(略)登録を受けなければならない販売所で300キログラム以上の貯蔵施設を有するもの
対象になるかどうかは、高圧ガスがあるかどうかではなく許可や届出の区分と数量で決まります
規則第12条が挙げるのは4つの区分で、製造施設・貯蔵所・液化酸素の消費施設・液化石油ガスの販売所です。
液化石油ガスの販売所は300キログラム以上の貯蔵施設を持つものに限られ、それ未満は対象外です。
「近くに高圧ガスのボンベがあるから対象になる」という単純な話ではなく、法令上の許可・届出のラインを超えているかを見る必要があります。
対象に当たると分かったら、次は距離そのものの基準を確認します。

ボンベが少しでもあれば対象になるんですか。

いいえ、許可・届出の区分と数量で決まります。
次は距離そのものを見てみましょう。

距離は何メートルで緩和は認められるのか

建物とタンクの間に防火塀を確認する人物
対象施設だと分かったら、次は具体的な距離の数字を確認します。
条文を確認します。
危険物の規制に関する規則第12条第2項 令第9条第1項第1号ニの総務省令で定める距離は、20メートル以上とする。ただし、耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置を講じた場合には、告示で定める要件を満たす距離を当該距離とすることができる。
基準となる距離は20メートル以上です
学校等(30メートル以上)や重要文化財(50メートル以上)と並ぶと、数字だけ見れば緩いようにも見えます。
ただし耐火構造の塀の設置その他の防火上有効な措置を講じれば、告示で定める要件を満たす範囲で距離を短くできます。
緩和には塀を建てれば足りるわけではなく、告示が定める要件を満たしていることの確認が必要です。
20メートルを確保できない敷地では、この緩和の仕組みを使えるかどうかが検討の分かれ目になります。

塀を建てさえすれば距離は短くできるんですね。

いいえ、告示で定める要件を満たすことが条件です。
次は見落としやすい点を確認しましょう。

学校等と同じように読むとどこでつまずくのか

数字が書かれた標識と空欄の標識を見比べる人物
同じ第1号の中に並ぶ号なので、学校等と同じ読み方でよいと考えてしまいがちです。
条文を見比べて確認します。
危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号ロ(再掲)学校、病院、劇場その他多数の人を収容する施設で総務省令で定めるもの 30メートル以上
号ロは政令そのものに「30メートル以上」という数字が書かれています
一方で号ニには、政令の条文の中に距離の数字が一切ありません。
「政令を見れば距離が分かる」という号ロの感覚のまま号ニを読むと、数字が無いことに戸惑い、規則まで見に行かずに済ませてしまいがちです。
対象施設の決め方も号ロは収容人員などの基準(規則第11条)、号ニは許可・届出の区分と数量(規則第12条)と、判定のものさし自体が違います。
同じ第1号の中でも、号ごとに政令と規則の役割分担が違うことを意識しておく必要があります。

政令に数字が無いから距離は不要なのかと思っていました。

規則まで見て初めて数字が出てきます
最後に確認の手順を整理しましょう。

現場ではどの順番で確認すればよいのか

左に書類を手渡す人物 右に受け取る人物
対象になるかどうかは、敷地の内外を問わず段階的に確認するのが出発点です。
確認する項目を整理します。
  • 敷地の内外を問わず、周辺に高圧ガス関連の施設が無いか確認する
  • その施設が規則第12条の4区分(製造の許可・届出/貯蔵所の許可・届出/液化酸素消費の届出/液化石油ガス300キログラム以上の販売所)のいずれかに当たるか確認する
  • 該当すれば20メートル以上を確保できているか敷地図で確認する
  • 確保できないときは告示の要件を満たせるか所轄消防署や専門家に相談する
確認するのは対象施設の該当有無・数量基準・距離・緩和の要件の四つで足ります
高圧ガス関連の許可や届出の内容は、都道府県の高圧ガス担当部局に確認できることが多い情報です。
自社の敷地図に高圧ガス施設との距離を書き込み、20メートルを下回っていないか早めに確認しておきます。
下回る場合は、緩和の要件を満たせるかどうかを含めて計画段階から検討する必要があります。
判断に迷ったときは、所轄消防署に相談すれば適切な対応が分かります。

まずは近くの高圧ガス施設を洗い出してみます。

4区分に当てはまるかまで確認できれば判断も確実です。
距離が足りないときは早めにご相談ください。

よくある質問

Q高圧ガス施設との距離は自分の敷地内であれば不要ですか?
A政令第9条第1項第1号ニの条文自体には敷地の内外による区別は書かれておらず、危険物の規制に関する規則第12条が定める施設に当たれば距離の確保が必要です。
Q高圧ガスに関する施設であれば規模を問わずすべて対象になりますか?
Aいいえ。規則第12条は許可・届出が必要な区分を基準にしており、例えば液化石油ガスの販売所であれば300キログラム以上の貯蔵施設を持つものに限られます。
Q距離は必ず20メートル確保しなければなりませんか?
A原則はそうですが、規則第12条第2項により耐火構造の塀の設置など防火上有効な措置を講じ、告示の要件を満たせば距離を短くできます。
Q学校等の30メートルと高圧ガス等の20メートルはどちらも政令に書かれていますか?
Aいいえ。学校等は政令に30メートル以上と直接書かれていますが、高圧ガス等は政令に数字が無く、規則第12条第2項にすべて委任されています。

まとめ

危険物施設は、高圧ガスなどを扱う施設からも保安距離を取るよう政令第9条第1項第1号ニが定めています
対象になる施設の範囲は危険物の規制に関する規則第12条が定めています
対象は高圧ガス保安法の許可・届出施設、液化酸素の消費施設、液化石油ガス300キログラム以上の販売所などです
距離は規則第12条第2項により20メートル以上です
耐火構造の塀など防火上有効な措置を講じ告示の要件を満たせば距離を短くできます
学校等は政令に距離が書かれていますが、高圧ガス等は規則にすべて委任されています
対象施設への該当有無・数量基準を順に確認し、不足するときは所轄消防署へ相談することが大切です

まずは近くに高圧ガスの施設が無いか確認します!

20メートルを確保できないときは告示の要件を一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条第1項第1号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第12条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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