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危険物タンクの容量はなぜ内容積そのままで決まらないのか|空間容積の算定基準と特定屋外貯蔵タンクの特例を解説

危険物タンクの容量はどうやって決まるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

危険物を貯蔵するタンクには、書類上の「内容積」とは別に、実際に危険物を入れてよい「容量」という数字があります。
この二つを混同すると、設置や変更の申請段階で数量の記載を誤ってしまいかねません。
容量は内容積そのものではなく、あらかじめ一定の空間を差し引いて決まる仕組みになっています。
本記事では、危険物の規制に関する政令と規則が定める空間容積の算定方法を、条文に沿って解説します。

うちのタンクの容量って、内容積とイコールじゃないんですね。
知りませんでした。

はい、タンクには必ず空間を残しておく決まりがあるんです。
今日はその仕組みを説明しますね。

空間ってどれくらい空けておけばいいんですか。

原則は内容積の百分の五から百分の十です。
ただし条件によって計算方法が変わりますよ。

この記事の結論
  • タンクの容量は、内容積から空間容積を差し引いた数字になります。
  • 空間容積は原則として内容積の百分の五以上百分の十以下の範囲で定めます。
  • 上部に消火剤放射口がある一定のタンクは、放射口の位置を基準に空間容積を計算し直します。
  • 大型の特定屋外貯蔵タンク岩盤タンクには、原則とは別の算定方法が定められています。
  • 内容積そのものは、形状に応じて近似計算または通常の計算方法で求めます。

危険物タンクの容量は内容積を測り空間を確保し消火設備で変わり海上や岩盤は別基準になることを示した図解

危険物タンクの容量はなぜ内容積そのままで決まらないのか

円筒形の屋外貯蔵タンクの断面で液面と上部の空間を確認する担当者
危険物の規制に関する政令は、タンクの数字を「内容積」と「容量」の二つに分けています。
容量のほうが届出や許可の申請で使う実際の貯蔵可能量です。
(危険物の規制に関する政令第五条)第一項 危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンクの内容積及び空間容積は、総務省令で定める計算方法に従つて算出するものとする。第二項 前項のタンクの容量は、当該タンクの内容積から空間容積を差し引いた容積とする。第三項 前項の規定にかかわらず、製造所又は一般取扱所の危険物を取り扱うタンクのうち、特殊の構造又は設備を用いることにより当該タンク内の危険物の量が当該タンクの内容積から空間容積を差し引いた容積を超えない一定量を超えることのないものの容量は、当該一定量とする。
容量は内容積そのものではなく、空間容積を差し引いた数字です。
第一項が「内容積」と「空間容積」を総務省令(規則)に計算方法をゆだねる形にし、
第二項でこの二つの関係を「容量=内容積-空間容積」と定めています。
第三項は例外で、製造所や一般取扱所のタンクのうち、構造上あふれる量が決まっているものは、その一定量をそのまま容量とみなします。
まずはこの「容量は内容積から空間を引いた数字」という原則を押さえておきましょう。

内容積と容量って、そもそも別の数字だったんですね。

はい、書類に書く容量は、必ず空間を引いた後の数字なんです。
次はその空間の広さを見ていきましょう。

空間容積はどれだけ確保しなければならないのか

タンク上部の空間をメジャーで確認する担当者
空間容積の割合は、規則第三条が具体的な数値で定めています。
液面の上にどれだけの空気の層を残すかという話です。
(危険物の規制に関する規則第三条第一項)令第五条第一項の総務省令で定めるタンクの空間容積の計算方法は、当該タンクの内容積に百分の五以上百分の十以下の数値を乗じて算出する方法とする。(ただし書は次章)
空間容積は、内容積の百分の五から百分の十が原則です。
言い換えると、タンクは満量まで危険物を入れることを想定しておらず、
最大でも内容積の九十五パーセント程度までしか貯蔵できないように設計上の余白を持たせています。
この余白は温度変化による膨張や、揺動時のあふれを防ぐための空間です。
どの数値を採用するかは告示や個別の設計で決まるため、設置業者への確認が欠かせません。

タンクって満タンにできない前提で作られてるんですね。

そのとおりです。
次は消火設備によって計算が変わるケースを見てみましょう。

消火設備の消火剤放射口があるタンクは計算方法が変わるのか

タンク内部上方の消火剤放射口を確認する担当者
原則の百分の五から十とは別に、規則にはただし書きがあります。
消火設備の位置そのものを基準にする計算方法です。
(危険物の規制に関する規則第三条第一項ただし書)ただし、令第二十条第一項第一号の規定により第三種の消火設備(消火剤放射口をタンク内の上部に設けるものに限る。)を設ける屋外タンク貯蔵所又は屋内タンク貯蔵所の危険物を貯蔵し、又は取り扱うタンク及び製造所又は一般取扱所の危険物を取り扱うタンクの空間容積は、当該タンクの内容積のうち、当該消火設備の消火剤放射口の下部〇・三メートル以上一メートル未満の面から上部の容積とする
消火剤放射口が上部にある一定のタンクは、割合ではなく位置で空間容積を決めます。
放射口の下部〇・三メートル以上一メートル未満の面から上を空間容積とみなす方式で、
消火剤が液面より上の空間へ確実に放射されるようにするための計算です。
どの種類の消火設備がこの計算方法に該当するかは、施設ごとに設置されている第三種消火設備の仕様を確認しないと分かりません。
新設や改修の際は、設計図書で消火剤放射口の位置と空間容積の関係を必ず突き合わせましょう。

割合じゃなくて位置で決まるパターンもあるんですね。

はい、消火設備の性能を守るための特例です。
次は大型タンクの特例を見てみましょう。

大規模な屋外タンクや岩盤タンクは空間容積の考え方がどう違うのか

海上に浮かぶタンクと岩盤の中の地下タンクを見比べる担当者
規則第三条第二項は、大型のタンクにさらに別の計算方法を用意しています。
海の上のタンクと地中のタンクでは、確認する対象がまったく違います。
(危険物の規制に関する規則第三条第二項)前項の規定にかかわらず、次の各号に掲げるタンクの空間容積は、それぞれ当該各号に定める容積とする。一 特定屋外タンク貯蔵所の屋外貯蔵タンク(以下「特定屋外貯蔵タンク」という。)であつて、海上タンク(略)及び次号に掲げるもの以外のもの 前項の規定により算出された容積又は告示で定める容積のいずれか大なる容積 二 岩盤タンク(略) 当該タンク内に湧出する七日間の地下水の量に相当する容積又は当該タンクの内容積に百分の一の数値を乗じて算出された容積のいずれか大なる容積
大型の特定屋外貯蔵タンクと岩盤タンクは、原則とは別の物差しで空間容積を求めます。
海上タンクを除く特定屋外貯蔵タンクは、原則の計算結果と告示で定める容積を比べ、大きいほうを採用します。
一方、地中に築造する岩盤タンクは、内容積の百分の一という数値のほかに、
タンク内に七日間で湧き出す地下水の量という、他の危険物施設には出てこない基準まで比較します。
海上タンクそのものは、この二つの号のどちらにも当たらないため、原則どおり前章の計算方法が適用される点に注意してください。

岩盤タンクは地下水の量まで見るんですか。

そうなんです、地中ならではの特例ですね。
最後に内容積そのものの求め方を確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいか

点検簿を持ちタンクを見上げて確認する担当者
空間容積を求める前提として、内容積そのものの計算方法も規則が決めています。
形が複雑なタンクとそうでないタンクとで扱いが分かれます。
(危険物の規制に関する規則第二条)令第五条第一項の総務省令で定めるタンクの内容積(屋根を有するタンクにあつては、当該屋根の部分を除いた部分。)の計算方法は、次の各号のとおりとする。一 容易にその内容積を計算し難いタンク 当該タンクの内容積の近似計算によること。二 前号以外のタンク 通常の計算方法によること。
まずは自分のタンクの内容積がどちらの方法で計算されているかを確認しましょう。
円筒形など通常の計算方法で求められるタンクが大半ですが、
複雑な形状のタンクは近似計算によることがあり、その場合は設計図書に採用した計算根拠が残っているはずです。
そのうえで、自分のタンクが原則(百分の五から十)・消火剤放射口の特例・特定屋外貯蔵タンクや岩盤タンクの特例のどれに当たるかを設計図書で照らし合わせてください。
数量の変更届や定期点検の記録を作るときは、内容積ではなく容量の数字を使っているかを毎回確認する習慣をつけましょう。

設計図書を見返して、うちのタンクがどれに当たるか確認してみます。

それが確実です。
分からないときは設置業者にも相談してみてください。

よくある質問

Q内容積と容量はどちらを届出に書けばよいですか?
A危険物の数量として扱うのは容量のほうです。内容積は容量を求めるための計算過程の数字にすぎません。
Q空間容積の百分の五から十のうち、実際にどちらを採用するかは誰が決めますか?
A条文には範囲だけが示されており、具体的な数値は設計や告示で決まります。設計図書や設置業者への確認が必要です。
Q海上タンクは特定屋外貯蔵タンクの特例に含まれないのですか?
A含まれません。規則第三条第二項第一号は海上タンクを明確に除外しており、海上タンクの空間容積は原則の計算方法によります。
Q既存のタンクの容量の計算方法をあとから確認できますか?
A完成検査時に提出した設計図書や計算書に採用した方式が記載されています。手元にない場合は所轄消防署や設置業者に確認してください。

まとめ

タンクの容量は、内容積から空間容積を差し引いた数字として決まります。
空間容積は原則として内容積の百分の五以上百分の十以下です。
タンクは満量まで貯蔵できない前提で設計されています。
第三種消火設備の消火剤放射口がある一定のタンクは、放射口の位置で空間容積を計算し直します。
海上タンク以外の特定屋外貯蔵タンクは、原則の計算結果と告示で定める容積のいずれか大きいほうを採用します。
岩盤タンクは七日間の湧水量と内容積の百分の一のいずれか大きいほうを空間容積とします。
内容積は近似計算または通常の計算方法で求め、設計図書に根拠が残ります。

容量と内容積の違い、しっかり整理できました!

設計図書の確認など、専門的な判断が必要な場面もあります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第五条
  • 危険物の規制に関する規則第二条・第三条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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