危険物の規制に関する政令第二十七条は、危険物の取扱いの技術上の基準を定めています。
蒸留や抽出といった製造工程は、貯蔵の基準とは別に専用の規定が置かれています。
抽出罐の内圧や乾燥の温度、粉砕時の粉末の状態まで、工程ごとに求められることが違います。
この記事では消防法第十条第三項と政令第二十七条第二項に基づいて、蒸留・抽出・乾燥・粉砕それぞれの取扱いの基準を解説します
うちは貯蔵所しかないので、この基準は関係ないですよね。
貯蔵所だけなら第二十七条第二項は直接には及びません。
ただ製造所を併設する事業所も多いので、一度確認しておくと安心です。
製造の基準といっても、工程によって中身は違うんでしょうか。
蒸留・抽出・乾燥・粉砕の4つの工程ごとに、別の号で基準が置かれています。
順番に見ていきましょう。
- 製造所における危険物の取扱いは、政令第二十七条の定める技術上の基準に従わなければならない
- 蒸留工程は設備の内部圧力の変動があっても、液体・蒸気・ガスが漏れない状態を保つことが基準の中心である
- 抽出工程は蒸留と違い、罐の内圧が異常に上昇すること自体を許さない基準になっている
- 乾燥工程は危険物の温度が局部的に上昇しない方法での加熱・乾燥を求めている
- 粉砕工程は、粉末が著しく浮遊し、または著しく付着している状態での取扱いを禁止している
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目次
危険物の蒸留や抽出にはなぜ専用の取扱いの基準があるのか

製造所では、危険物を貯蔵するだけでなく蒸留や抽出といった工程で直接扱う場面があります。
政令はこの製造工程だけを取り出して、専用の取扱いの基準を定めています。
危険物の規制に関する政令第二十七条第一項 法第十条第三項の危険物の取扱いの技術上の基準は、第二十四条及び第二十五条に定めるもののほか、この条の定めるところによる。
同条第二項 危険物の取扱いのうち製造の技術上の基準は、次のとおりとする。
製造工程には専用の基準があります。
第二十四条・第二十五条は貯蔵や運搬に共通する基準ですが、第二十七条はそれとは別枠です。
第二項はさらに製造工程を4つに分け、蒸留・抽出・乾燥・粉砕のそれぞれに固有の基準を置いています。
どの工程も危険物が漏れる・あふれる・異常な状態になることを防ぐという発想は共通していますが、注目する場所は工程ごとに違います。
次からその4つを順番に見ていきます。
貯蔵の基準とは別枠になっているんですね。
製造工程だけを取り出した規定です。
次の4つの号をひとつずつ確認していきましょう。
蒸留工程ではなぜ設備の内部圧力の変動に気を配る必要があるのか

蒸留は液体を加熱して成分を分離する工程で、装置の内部で圧力が変わりやすい作業です。
政令はこの圧力の変動そのものを危険源として名指ししています。
圧力の変動を止めろとは書いてありません。
条文が求めているのは変動があっても漏れさせないことで、原因を封じるのではなく結果を防ぐという書き方です。
蒸留装置は運転中に圧力が上下するのが通常なので、変動をゼロにする基準を課しても現実的ではありません。
だから配管の継ぎ目や弁の状態を、圧力が動く前提で日常的に点検しておくことが実務の中心になります。
圧力計の数字が動くこと自体は問題ないんですね。
動くこと自体は想定内です。
問題は変動したときに漏れる隙があるかどうかなので、継ぎ目と弁を重点的に見てください。
抽出工程で罐の内圧が異常に上昇しないようにするとはどういうことか

抽出は溶剤を使って目的の成分だけを取り出す工程で、密閉した罐の中で行われます。
政令は罐の内圧が異常に上がることを直接の規制対象にしています。
異常上昇をどう防ぐかは条文に書かれていません。
蒸留の号が変動を許容したうえで漏れを防ぐ書き方だったのに対し、抽出の号は異常上昇そのものを許さない書き方になっています。
密閉容器である罐は、圧力が逃げ場を失えば破裂につながりやすいという構造上の理由があります。
安全弁や圧力計が正常に働くかどうかを、運転前後で確認する習慣が欠かせません。
蒸留の基準と何が違うんでしょうか。
蒸留は変動を前提に漏れを防ぐ基準で、抽出は異常上昇そのものを許さない基準です。
罐は密閉されている分、圧力の逃げ場がない点が違います。
乾燥工程ではなぜ温度を局部的に上げてはいけないのか

乾燥は危険物から水分や溶剤を飛ばす工程で、加熱の仕方そのものが基準の対象です。
政令は温度が一部分だけ高くなることを問題にしています。
全体を均一に温めることが基準の中心です。
一部分だけ温度が上がると、その箇所だけ発火点に近づいたり分解が進んだりする危険があります。
均一に加熱できているかどうかは、温度計を複数箇所に置かないと分からないという実務上の課題があります。
乾燥室の中で危険物がどこに置かれているかまで含めて、温まり方に偏りがないかを確認してください。
温度計は1箇所だけでは足りないんですね。
1箇所の数字だけでは局部的な上昇を見逃します。
複数箇所で測って、偏りがないかを確認する運用にしてください。
粉砕工程では粉末の浮遊や付着にどう対応すればよいのか

粉砕は危険物を細かい粉にする工程で、粉じん爆発につながりやすい作業です。
政令は粉末が浮遊した状態や機械に付着した状態そのものを禁止しています。
著しい浮遊と著しい付着の両方が禁止されています。
浮遊した粉末は空気と混ざって爆発性の雰囲気をつくり、機械に付着した粉末は摩擦や静電気で着火源になり得ます。
条文が禁止しているのは粉砕という行為そのものではなく、粉末がそういう状態のまま機械器具を取り扱うことです。
だから作業後の清掃と換気を、工程の一部として組み込んでおく必要があります。
粉じんが多少舞うのは仕方ないと思っていました。
多少ではなく著しい浮遊かどうかが線引きです。
清掃と換気を工程に組み込んで、著しい状態を作らないようにしてください。
よくある質問
まとめ
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
製造工程は蒸留と抽出と乾燥と粉砕で、それぞれ見るべき場所が違うんですね。
次の点検からさっそく確認します!
工程ごとの危険源が違うので、点検の視点も分けて考えてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法第十条第三項
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第二十七条第一項・第二項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





