高圧ガスを製造する設備を新しく設置しようとしたとき、都道府県知事の許可が必要なのか、それとも届出だけで足りるのか迷う会社は少なくありません。
実は高圧ガス保安法第五条は、同じ条文の中に「許可」と「届出」という重さの違う2つの手続きを並べています。
この線引きを誤ると、届出のつもりが実は無許可製造に当たり、罰則の重さが一気に跳ね上がることがあります。
本記事では高圧ガス保安法第五条を取り上げ、許可と届出の分かれ目と、それぞれの罰則の違いを解説します。
うちの設備は許可がいるのか届出でいいのか、正直よく分かっていません。
数量が多いか少ないかだけの違いなんでしょうか。
実は処理できるガスの量で線引きが決まっています。
条文を順番に見ていきましょう。
届出で済むならまだ気が楽ですが、もし勘違いしていたら怖いですね。
実は無許可での製造には重い罰則が定められています。
次はその重さの違いから見てみましょう。
- 高圧ガス保安法第五条は、一日に処理できるガスの量に応じて「許可」が必要な設備と「届出」で足りる設備を分けています。
- 許可が必要になるのは、一日百立方メートル以上(冷凍設備は冷凍能力二十トン以上)を処理する設備です。
- 冷凍能力が三トン以上二十トン未満の設備は、許可ではなく届出で足ります。
- 届出を怠っても、罰則は三十万円以下の罰金にとどまります。
- ところが許可を受けずに製造すると、一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金という、この記事の中で最も重い罰則の対象になります。
▼

目次
高圧ガスの製造はなぜ規模によって許可と届出に分かれるのか

すべてに同じ重さの手続きを求めると、実務が回らなくなります。
処理できるガスの量が多い設備ほど、ひとたび漏えいや爆発が起きたときの被害が大きくなるため、事前に都道府県知事の審査を受ける許可制が採られています。
一方で処理量が少ない設備にまで同じ許可を求めると、事業者にも行政にも負担が重すぎるため、規模に応じた線引きが必要になります。
その線引きが具体的にどこにあるのか、次で確認しましょう。
事故の大きさで手続きの重さが変わるという発想なんですね。
実際の基準はどこにあるんでしょうか。
実は一日百立方メートルという数字が線引きです。
次はその基準を詳しく見てみましょう。
許可が必要になるのはどんな設備なのか

条文を確認しましょう。
一般の製造設備は処理できるガスの容積で、冷凍のための設備は冷凍能力で、それぞれ別の物差しが使われている点に注意が必要です。
ガスの種類によっては、この基準が政令でさらに引き上げられる場合もあります。
なお、経済産業大臣の認定を受けた設備はこの許可の対象から除かれており、これは認定高度保安実施者制度とつながっています。
うちの設備は基準ぎりぎりな気がするんですが、少しでも下回れば許可はいらないんでしょうか。
いえ、基準未満でも別の手続きが必要です。
次はその中身を見てみましょう。
届出だけで足りるのはどんなときか

条文を確認しましょう。
届出は事業開始や製造開始の二十日前までに、施設の位置・構造・設備・製造方法を書面にして都道府県知事へ提出する仕組みです。
許可のような事前審査ではありませんが、書面を出さずに黙って始めることは認められていません。
この「二十日前まで」という期限を守らなかった場合の重さを、次で見ておきましょう。
許可より軽い手続きとはいえ、出し忘れたらどうなるんでしょうか。
実は無許可で始めた場合とは罰則の重さがまったく違います。
次はその差を見てみましょう。
許可を受けずに製造するとなぜ罰則が一番重いのか

条文を比べてみましょう。
第五条第一項の許可を受けずに製造すると一年以下の拘禁刑または百万円以下の罰金ですが、第五条第二項の届出を怠っても三十万円以下の罰金にとどまります。
同じ第五条から生まれる違反なのに、拘禁刑の有無と罰金の額に3倍以上の差があるのは、無許可の製造そのものが事前審査を丸ごと素通りする行為だからです。
「届出さえ出せば許可と同じ」という思い込みは危険で、対象設備を取り違えたまま届出だけで済ませてしまうと、実際には無許可製造として重い罰則の対象になりかねません。
対象設備を勘違いしたまま届出だけで済ませるのは怖いですね。
処理量の計算を最初に確認するのが一番の対策です。
次はやることを整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

最後にもう一つ、算定の根拠となる条文を確認します。
冷凍能力は感覚ではなく省令で定める算定基準に従う必要があり、自己流の見積もりでは基準を見誤るおそれがあります。
計算の結果が一日百立方メートルまたは冷凍能力二十トン以上なら許可、三トン以上二十トン未満なら届出が必要というように、自社がどちらの区分に当たるかを一つずつ突き合わせておきましょう。
迷ったときは、届出だけで済ませず所轄の都道府県知事に事前相談することをおすすめします。
自社の処理量と冷凍能力を、まず計算し直してみます。
計算結果を書面で残しておくと安心です。
次によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
許可と届出の分かれ目がよく分かりました!
うちの処理量の計算をもう一度見直してみます。
処理量と冷凍能力の算定が一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第5条・第80条・第83条
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の判断については所轄の都道府県にご確認ください。





