高圧ガスの製造施設を持つ会社の中には、経済産業大臣の認定を受けて危害予防規程の届出や変更工事の許可が要らなくなっているところがあります。
では、届出や許可そのものが「要らない」というのは、義務が丸ごと消えるという意味なのでしょうか。
実は高圧ガス保安法は、認定を受けた事業者にも記録の作成・保存という別の義務を課しており、怠れば罰則も残っています。
本記事では高圧ガス保安法の認定高度保安実施者制度を取り上げ、届出が不要になる仕組みと、それでも消えない義務を解説します。
うちは認定を受ければ、届出や許可が全部要らなくなると聞きました。
本当にそれで大丈夫なんでしょうか。
実は届出が要らなくなる代わりに記録の保存という別の義務が生まれます。
条文を順番に見ていきましょう。
記録を保存していなかったら、どうなるんでしょうか。
実は普通に届け出なかった場合と同じ重さの罰則があります。
次はその条文から見てみましょう。
- 高圧ガス保安法は、経済産業大臣の認定を受けた第一種製造者(認定高度保安実施者)に、複数の許可・届出義務を特例で免除しています。
- 認定を受けるには、事業所で高圧ガスによる災害を2年間起こしていないことなどの欠格要件をクリアする必要があります。
- 変更工事は許可制から届出制に、完成検査は自主確認に切り替わります。
- 危害予防規程は都道府県知事への届出が不要になりますが、規程を保存し提出を拒めば三十万円以下の罰金です。
- 罰則の金額は、通常の届出義務違反と同じ三十万円以下のまま変わりません。
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目次
高圧ガス施設はなぜ届出や許可を減らせる認定制度があるのか

その手続きを減らせる制度が用意されているのはなぜなのでしょうか。
第三十九条の十四では、認定の基準として保安の確保のための組織が業務遂行能力を持続的に向上させる仕組みと、高度な情報通信技術を用いた保安の確保の方法の2つを求めています。
つまり、人の体制と設備の技術力の両方が高い水準にある事業者だけが対象で、誰でも申請すれば通る制度ではありません。
まずは、実際にどんな事業者が認定を受けられるのかを見ていきましょう。
組織の仕組みと技術力の両方が要るんですね。
どんな会社でも申請すれば受けられるんでしょうか。
実は欠格要件があり誰でも通るわけではありません。
次はその中身を見てみましょう。
認定を受けられるのはどんな事業者なのか

欠格条項を確認しましょう。
稼働を始めたばかりの施設や、災害から日が浅い施設は、この時点で対象になりません。
第三十九条の十四第二項では、経済産業大臣自身が申請内容を検査すると定められており、自己申告だけで通る制度ではないことが分かります。
認定は永久ではなく、第三十九条の十七により五年以上十年以内で更新を受けなければ効力を失います。
事故を起こしていないことが条件なんですね。
認定を受けると具体的に何が変わるんでしょうか。
許可・検査・届出が軒並み簡略化されます。
次はその中身を見てみましょう。
認定を受けると具体的に何が要らなくなるのか

特例を定めた条文を確認しましょう。
第三十九条の二十二では施設の完成検査も都道府県知事の検査に代えて自ら確認する自主検査で足り、第三十九条の二十三では危害予防規程の届出そのものが不要になります。
第三十九条の二十四・二十五でも、保安統括者や保安主任者の選任・解任の届出が不要になると定められています。
つまり許可・検査・届出という3種類の手続きが、まとめて簡略化されるのがこの制度の中身です。
届出まで要らなくなるなら、規程を作らなくてもいいということですか。
いえ、保存と提出の義務は残ります。
次はその落とし穴を見てみましょう。
届出が要らなくても義務が消えるわけではないのはなぜか

条文をよく読むと、その理由が見えてきます。
規程を保存せず、または提出を拒んだ場合は三十万円以下の罰金で、これは通常の届出義務違反(第八十三条第一号)とまったく同じ金額です。
つまり届出という手続きが記録の保存・提出という別の手続きに置き換わっただけで、義務違反の重さは変わっていないということです。
第三十九条の二十一・二十四・二十五の各特例にも、それぞれ記録の作成・保存を怠ると同じ三十万円以下の罰金が定められています。
届出が無くなっても、罰則の重さは変わらないんですね。
置き換わっただけで軽くなったわけではありません。
次はやることを整理しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認すべきポイントを整理します。
認定を受けている場合は、届出が不要になった項目(変更工事・完成検査・危害予防規程・保安統括者等の選任)についても、記録の作成・保存が今も義務であることを社内で共有しておく必要があります。
保安の確保のための組織や方法に変更があったときの届出そのものは今も残っており(第三十九条の十八)、これを怠ると三十万円以下の罰金です。
「届出が要らない」という言葉だけを鵜呑みにせず、何が届出不要で何が保存・提出義務として残っているかを一つずつ突き合わせておきましょう。
認定の有無と、保存すべき記録の範囲を社内で確認してみます。
記録の保存台帳を作っておくと安心です。
次によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
認定を受けても油断できないことがよく分かりました!
うちの記録の保存体制も見直してみます。
記録台帳の一元管理が一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)第26条・第39条の13・第39条の14・第39条の15・第39条の17・第39条の18・第39条の21〜第39条の25・第83条
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の判断については所轄の都道府県にご確認ください。





