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消防の命令に不服があるとき審査請求はなぜ30日しかないのか|行政不服審査法の原則3か月との違いを解説

市役所の受付カウンターに置かれたカレンダーと書類の写真

消防署から改修命令や使用禁止命令の書類が届いたとき、内容に納得できなければどう動けばよいのでしょうか。
裁判に訴える前に、行政不服審査法にもとづく審査請求という手続きがあります。
ところが消防法は、この審査請求ができる期間を一般の行政処分よりずっと短く定めています。
命令を受け取った日をいつと数えるかで、争える期間が変わってきます。

消防署から改修命令の書類が届いたんですが、内容に納得できません。
もう争う方法はないんでしょうか。

いいえ、審査請求という手続きが用意されています。
ただし期限がとても短いので急ぎましょう。

期限が短いというのは、具体的にどれくらいなんでしょうか。
詳しく知りたいです。

消防法には専用の条文があり、わずか30日しかありません。
順番に条文を確認していきましょう。

この記事の結論
  • 消防の命令に不服があるときは審査請求という手続きで争えます(消防法第5条の4)。
  • 審査請求の対象になるのは改修命令・使用禁止命令・物件の措置命令の3つです。
  • 審査請求の期間はわずか30日で、一般の行政処分の期間より大幅に短いものです。
  • 起算日は命令を受け取った日の翌日から数えます。
  • 審査請求と取消訴訟は自由選択主義により、どちらを先に選んでもかまいません。

消防の命令に対する審査請求の期間がわずか30日であることを示す図解

消防の命令に納得できないときまず何をすればよいのか

消防署の建物から命令書が発送され封筒に届く様子
いきなり裁判所に訴えることだけが選択肢ではありません。
まずは条文がどんな手続きを用意しているか確認しましょう。
消防法第五条の四 第五条第一項、第五条の二第一項又は前条第一項の規定による命令についての審査請求に関する行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第十八条第一項本文の期間は、当該命令を受けた日の翌日から起算して三十日とする。
消防の命令には専用の審査請求ルールがあります。
行政不服審査法にもとづき、命令を出した行政庁などに対して審査請求を申し立てる方法が用意されています。
消防法第五条の四は、この審査請求ができる期間について特別な定めを置いています。
一般の行政処分より大幅に短い期間なので、命令を受け取ったらすぐに確認する必要があります。
まずはどの命令が審査請求の対象になるのかを次で見ていきましょう。

審査請求なんて、これまで名前も聞いたことがありませんでした。
誰でも使える手続きなんでしょうか。

はい、命令を受けた関係者なら誰でも使える手続きです。
次はどの命令が対象になるかを見ていきましょう。

審査請求の対象になる命令はどれか

改修命令と使用禁止命令と物件の措置命令の書類が並ぶ様子
第五条の四が指しているのは、消防長・消防署長・消防吏員が行う代表的な命令です。
それぞれどんな命令なのか条文で確認します。
消防法第五条第一項(抜粋) 消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について……権原を有する関係者に対し、当該防火対象物の改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置をなすべきことを命ずることができる。消防法第五条の二第一項(抜粋) 消防長又は消防署長は……権原を有する関係者に対し、当該防火対象物の使用の禁止、停止又は制限を命ずることができる。消防法第五条の三第一項(抜粋) 消防長、消防署長その他の消防吏員は……物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者に対して、必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
審査請求の対象になる命令は3種類です。
第五条第一項は建物そのものに対する改修・移転・除去などの措置命令、第五条の二第一項は建物の使用の禁止・停止・制限を命じる命令です。
第五条の三第一項は、放置された危険な物件そのものに対して消防吏員が所有者らへ措置を命じる規定です。
自分の建物が受けた命令がこのどれに当たるかで、争う際の主張の組み立て方も変わってきます。
どの命令であっても、審査請求ができる期間の考え方は次で見るとおり共通です。

うちに来たのは使用禁止命令なので、第五条の二にあたるんですね。
命令の種類ごとに条文が分かれているとは知りませんでした。

そのとおりです。
次はいよいよ肝心の期間の長さを見ていきましょう。

審査請求の期間はなぜ30日という短さになっているのか

30日の期限を示すカレンダーと三か月分のカレンダーを並べて比べる様子
一般の行政処分と比べて、この期間がどれほど短いのかを確認します。
根拠になっている条文を並べて見比べましょう。
行政不服審査法第十八条第一項(本文) 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月……を経過したときは、することができない。消防法第五条の四 第五条第一項、第五条の二第一項又は前条第一項の規定による命令についての審査請求に関する行政不服審査法第十八条第一項本文の期間は、当該命令を受けた日の翌日から起算して三十日とする。
期限はわずか30日しかありません。
行政不服審査法第十八条第一項本文は、審査請求の期間を原則「知った日の翌日から起算して三月」と定めています。
ところが消防法第五条の四は、消防の命令に限ってこの期間を三十日に短縮する特例を置いています。
火災予防にかかわる命令を早期に確定させ、防火対象物を速やかに安全な状態にするための定めと考えられます。
「あとで争えばいい」と後回しにしていると、あっという間に期限が過ぎてしまいます。

三月のはずが三十日になるなんて、こんなに短縮されるとは知りませんでした。
うっかり見落としそうです。

だからこそ日付の数え方が重要になります。
次は見落としやすい落とし穴を見ていきましょう。

審査請求をすれば取消訴訟の期限も延びるのか

消印のある封筒からカレンダーの一日へ矢印が伸びる様子
審査請求を選んだら取消訴訟のことは考えなくてよいのか、実務で見落としやすい点を確認します。
条文を見比べてみましょう。
行政事件訴訟法第八条第一項(本文) 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。
審査請求をしても取消訴訟の期限は自動的には延びません。
行政事件訴訟法第八条第一項本文は、審査請求ができる処分であっても直ちに取消訴訟を提起できる自由選択主義を採っています。
つまり消防の命令に対しては、審査請求と取消訴訟のどちらを先に選んでもよく、両方をあわせて検討することもできます。
ただし消防法第六条第一項が定める取消訴訟の期限も命令を受けた日から30日とされており、審査請求の期間とは別に進行します。
審査請求だけを申し立てて安心していると、取消訴訟のほうの期限を見落としかねません。

審査請求をしていれば裁判のほうは待ってもらえると思っていました。
両方の期限を別々に見ないといけないんですね。

そのとおりです。
最後に明日から確認しておきたいことをまとめますね。

明日からなにを確認すればよいのか

窓口へ審査請求書を差し出す手の様子
命令書を受け取ったその日から、確認しておきたいことを整理します。
どこに申し立てるかも合わせて押さえておきましょう。
行政不服審査法第四条(抜粋) 審査請求は、法律……に特別の定めがある場合を除くほか……処分庁等に上級行政庁がない場合……当該処分庁等(に対してするものとする)。
まず命令書を受け取った日付を記録しましょう。
起算日は受け取った日の翌日なので、封筒や配達記録に残る受領日をそのまま控えておくと安心です。
審査請求をどこに対して行うかは、条文上は上級行政庁がなければ処分庁自身が原則ですが、条例で審査庁が別に定められている自治体もあります。
命令書には審査請求ができる旨や請求先の教示が記載されているはずなので、まずそこを確認してください。
30日というカレンダー上の期限を手帳に書き込み、迷ったら期限が来る前に相談することが大切です。

まずは受け取った日付を控えて、命令書の教示を確認します。
手帳に30日の期限も書き込んでおきます。

㈱防災屋でもご相談を承っております。
迷ったときは期限が来る前にお声がけください。

よくある質問

Q審査請求はどこに対して行えばよいですか?
A行政不服審査法第四条の原則では、上級行政庁がなければ処分庁自身が審査庁になります。ただし条例で別に定められている自治体もあるため、命令書に記載された教示を必ず確認してください。
Q30日を過ぎてしまったら、もう争えないのですか?
A消防法第五条の四が準用する行政不服審査法第十八条第一項ただし書は、正当な理由があるときの例外を認めています。ただし何が正当な理由に当たるかは個別の事情次第なので、期限内に動くのが原則です。
Q審査請求と取消訴訟は同時に申し立ててもよいですか?
A行政事件訴訟法第八条第一項本文の自由選択主義により、同時に申し立てることも、どちらか一方だけを選ぶこともできます。裁判所は審査請求の裁決が出るまで訴訟手続を中止できる規定もあります。
Q審査請求の対象にならない消防の処分もありますか?
A消防法第五条の四が定める30日の特例が及ぶのは第五条・第五条の二・第五条の三の命令だけです。それ以外の処分については行政不服審査法の原則どおり別の期間が適用される場合があります。

まとめ

消防の命令に不服があるときは審査請求という手続きで争えます(消防法第5条の4)。
対象になるのは第五条・第五条の二・第五条の三の命令です。
審査請求の期間はわずか30日です。
起算日は命令を受けた日の翌日からです。
一般の行政処分の原則である三月と比べて、かなり短い期間です。
審査請求と取消訴訟は自由選択主義により、どちらも選ぶことができます。
期限を過ぎる前に速やかに動くことが大切です。

審査請求という手段があることと、期限がとても短いことがよく分かりました。
命令を受け取ったらまず日付を確認します。

消防の命令や立入検査に関する疑問も遠慮なくお尋ねください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第五条・第五条の二・第五条の三・第五条の四
  • 行政不服審査法第四条・第十八条
  • 行政事件訴訟法第八条

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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