病院や福祉施設などには、ボタン1つで消防機関へ通報できる火災通報装置を置くことになっています。
国の基準が決めているのは、本体を防災センター等に置くことまでです。
鴻巣市・桶川市・北本市を受け持つ埼玉県央広域消防本部の審査基準は、本体とは別の場所に置く遠隔起動装置について、要る場面を具体的に挙げています。
この記事では埼玉県央広域の基準を入口に、遠隔起動装置が要る場面と同じ敷地の別棟の扱いを、三重の3市や大阪市・堺市と比べます。
鴻巣市で運営している施設は、夜になると職員が2階の宿直室にいます。
火災通報装置は1階の事務室にしかないのですが、これで足りるのでしょうか。
埼玉県央広域の審査基準は、そうした施設の宿直室に遠隔起動装置を設けるよう求めています。
行政指導の印が付いた項目なので、中身と位置づけを順に確かめましょう。
敷地の中に別棟もあるのですが、そちらにも本体が要るのですか。
別棟は4つの要件を満たせば本体の設置を免除できると書かれています。
市によって書き方が違うので、比べながら見ていきましょう。
- 国の基準は火災通報装置を防災センター等に置くとするだけで、遠隔起動装置の置き場所までは決めていません
- 埼玉県央広域は、常時人がいる場所が2か所以上あるときや、夜間の職員室が別の階にあるときに遠隔起動装置を設けるよう求めています
- 同じ建物に管理の分かれた部分があるときも、県央広域は遠隔起動装置で対応するとしています
- 遠隔起動装置を設けるときは、本体の場所と同時に通話できる設備も設けます
- 同じ敷地の別棟は、管理権原が同じであることなど4つの要件を満たせば本体の設置を免除できるとしています
▼

目次
火災通報装置の本体は国の基準ではどこに置くのか

その「防災センター等」が何を指すかは、同じ規則の第12条にある定義を借ります。
令第23条第2項の規定による火災報知設備は、次の各号に掲げる種別に応じ、当該各号に定める場所に設置しなければならない。
一 一の押しボタンの操作等により消防機関に通報することができる装置(電話回線を使用するものに限る。以下この条において「火災通報装置」という。) 防災センター等
消防法施行規則 第12条第1項第8号(抜粋)
(略)防災センター(略)、中央管理室(略)、守衛室その他これらに類する場所(常時人がいる場所に限る。以下「防災センター等」という。)(略)
規則は本体を防災センター等に置くとし、防災センター等は常時人がいる場所に限るとしていますが、遠隔起動装置という言葉は規則の第25条には出てきません。
埼玉県央広域の審査基準 第4章 第13 4⑴アは、平成8年の消防予第22号を出典に、防災センター等を防災センター・中央管理室・守衛室・管理人室の4つとしています。
鈴鹿市はこの4つに加えて、それらが無いときの事務室・職員室など常時人が居る場所と、共同住宅の廊下やホールなどの共用部分も挙げています。
本体を自動火災報知設備の受信機と並べて置く点は、県央広域と鈴鹿市が「努めて」併設する行政指導(▲)、四日市市が「受信機又は副受信機と併設すること」、堺市が市独自の指導(★)、大阪市が見出しに行政指導の◆を付けた設置場所の節で受信機の直近に置くとして書いています。
うちの施設の事務室も、防災センター等に当たるのでしょうか。
鍵になるのは常時人がいるかどうかです。
昼と夜で職員のいる部屋が変わるなら、まずその部屋を時間帯ごとに書き出しましょう。
常時人がいる場所が2か所以上あるときはどうするのか

最初のアとウが、どの建物にも当てはまる基本の形です。
ア 防災センター等常時人がいる場所が複数ある場合には、一つの場所に火災通報装置の本体を設け、それ以外の場所には遠隔起動装置を設けること。▲
(略)
ウ 遠隔起動装置を設ける場合は、前⑴イからカまでに準ずることとし、火災通報装置の本体を設けた場所相互間で同時に通話することができる設備を設けること。▲
常時人がいる場所が2か所以上あるときは、そのうち1か所に本体を置き、ほかの場所には遠隔起動装置を置きます。
遠隔起動装置を置くときは、本体のある場所と同時に通話できる設備を設け、設置場所の条件は本体の⑴イからカまで(受信機との併設・高温多湿や振動を避ける・転倒防止など)に準じます。
どちらにも県央広域の凡例で行政指導基準を示す▲が付いていて、第1章 第3は行政指導事項は関係者に義務を課すものではなく任意の協力によると明記しています。
同じ内容を堺市は国の通知を参考にした指導(◆)とし、その通知を平成8年2月16日の消防予第22号と示しているので、県央広域の▲も国の通知に沿った指導と読めます。
- 消防法施行規則第25条第2項第1号で、本体は防災センター等に置く
- 県央広域 4⑵アで、常時人がいる場所が2か所以上なら本体は1か所・残りは遠隔起動装置(▲)
- 同 4⑵ウで、遠隔起動装置は本体の⑴イからカまでに準じて置き、本体の場所と同時に通話できる設備を付ける(▲)
- 同じ扱いを堺市は平成8年の消防予第22号を参考にした指導(◆)、津市は「原則として主たる防災センター等」に本体と書いている
遠隔起動装置だけでなく、通話の設備もセットなのですね。
通報した側と本体の側で話ができることが前提になっています。
今ある内線電話やインターホンが使えるかも含めて、設計の段階で確かめましょう。
夜間の職員室が別の階にある福祉施設は何が要るのか

夜間に職員がいる部屋が本体と別の階にあるかどうかで判断します。
イ 次に掲げる防火対象物のうち、火災通報装置の本体の設置以外の階に、ナースステーション、宿直室、介護職員室その他夜間に職員が存する室がある場合又は管理区分が異なる部分を有する場合(例 複数の障害者グループホーム)には、遠隔起動装置を設けること。▲
(ア) 政令別表第1(6)項イ⑴から⑶までに掲げる防火対象物
(イ) 政令別表第1(6)項ロに掲げる防火対象物
(ウ) 政令別表第1(6)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)
(エ) 政令別表第1(16)項イ(前アからウまでに掲げる用途に供される部分が存するものに限る。)に掲げる防火対象物
対象は入院施設のある病院・診療所など(6)項イ⑴から⑶まで、グループホームなどの(6)項ロ、入居や宿泊をさせる(6)項ハと、それらを含む(16)項イです。
本体が1階の事務室にあっても、夜間に職員がいるのが2階の宿直室なら、その宿直室に遠隔起動装置を設けることになります。
四日市市は用途を限らず「夜間など時間帯によって常時人のいる場所が宿直室、スタッフステーション等に移動する場合」に遠隔起動装置を設けるとし、この部分は市の行政指導を示す下線付きで書いています。
堺市も同じ文言を市独自の指導(★)とし、津市は病院・福祉施設等で夜間に勤務者がいるナースセンター等に設けるとしています。
自動火災報知設備と連動しているなら、手で押す装置は要らない気もします。
県央広域の4⑵イは連動の有無で分けておらず、夜間の職員室の階で判断しています。
連動している施設でも、宿直室の位置を消防本部に伝えて相談しましょう。
同じ建物に別々のグループホームが入っているときはどうするのか

例として複数の障害者グループホームが挙がっていて、ここは市によって答えが分かれます。
(1) 火災通報装置は、防火対象物ごとに設置すること。ただし、次に掲げる場合にあっては、それぞれの定めるところによるものとする。
(略)
イ 1の防火対象物中に要設置対象物又は設置推進対象物が2以上あり、その管理について権原が分かれている場合(図2-4-2)
1の管理権原ごとに設置すること
埼玉県央広域と鈴鹿市は、管理区分が異なる部分があるときは遠隔起動装置を設けるとしていて、本体1台に各部分の遠隔起動装置をつなぐ形を想定しています(いずれも▲)。
大阪市は、1つの建物の中で設置義務のある部分の管理権原が分かれていれば、管理権原ごとに本体を設けるとしています。
大阪市でも、建物全体を集中して管理する防災センター等が別にあるときは、図2-4-5で本体と遠隔起動装置を組み合わせる形が示されています。
津市も管理権原ごとに本体を設けるのが原則で、建物全体を管理する防災センター等があれば、そこに本体を置き、それぞれの部分に遠隔起動装置を設けるとしています。
| 消防本部 | 1つの建物に管理の分かれた部分があるとき | 記号 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 管理区分が異なる部分を有する場合(例 複数の障害者グループホーム)は遠隔起動装置を設ける | ▲(行政指導) |
| 鈴鹿市 | 管理区分が異なる用途部分がある場合(例 複数の障害者グループホーム)は遠隔起動装置を設ける | ▲(行政指導) |
| 津市 | 管理権原ごとに本体。全体を管理する防災センター等があれば本体+各部分に遠隔起動装置 | 凡例なし |
| 大阪市 | 管理権原ごとに本体。全体を集中管理する防災センター等がある場合は図で本体と遠隔起動装置の組み合わせを示す | 見出しに◆(行政指導) |
| 四日市市・堺市 | 今回読んだ基準にこの場面の記載なし | - |
つまり運営法人が違うかどうかで、本体の台数が変わることがあるのですね。
そうなりうるので、誰が管理しているかを最初に整理しておくことが大切です。
賃貸借や運営委託の契約書を手元に置いて、消防本部と相談しましょう。
同じ敷地の別棟は本体の設置を省けるのか

主たる棟に本体を置き、別棟は要件を満たせば本体を省けるとしています。
⑶ 同一敷地内における2以上の防火対象物(いずれも消防機関へ通報する火災報知設備の設置義務があるもの)について、主たる棟に火災通報装置の本体を設置し、かつ、主たる棟以外の棟(以下この⑶において「別棟」という。)に、次に掲げる要件に適合する場合に限り、別棟について設置を免除することができる。
ア 火災通報装置本体又は別棟に設置される遠隔起動装置(以下この⑶において「代替遠隔起動装置」という。)の一は、防災センター等に設置されていること。
ただし、無人となることがある別棟に設置される代替遠隔起動装置については、多数の者の目にふれやすく、かつ、火災に際し、すみやかに操作することができる箇所又は防災センター等に設置することをもって代えることとすることができる。
イ 主たる棟と別棟の管理権原を有する者が、同一であること。
ウ 通報内容に支障がないこと。
エ 主たる棟と別棟の防災センター等相互間で同時に通話することのできる設備が設けられていること。
要件は、本体か別棟の遠隔起動装置のどちらかが防災センター等にあること、主たる棟と別棟の管理権原を持つ者が同じであること、通報内容に支障がないこと、両方の防災センター等の間で同時に通話できることの4つです。
無人になることがある別棟では、遠隔起動装置を人目につきやすくすぐ操作できる場所に置けば、防災センター等に置く代わりにできます。
この⑶は⑵の遠隔起動装置の項目と違って▲が付いておらず、根拠の通知名も書かれていません。
鈴鹿市は同じ4つの要件を、別棟に本体を省く「免除」ではなく、主たる棟に本体・別棟に遠隔起動装置を設ける形で書いていて、大阪市は管理権原が同じなら複数の建物を1の防火対象物として扱って差し支えないとし、従たる建物に遠隔起動装置を置くとしています。
| 消防本部 | 同じ敷地の別棟の扱い | 遠隔起動装置が要る場面 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 4要件(防災センター等・管理権原同一・通報内容・同時通話)で別棟の設置を免除できる(記号なし) | 複数の常時人がいる場所/夜間の職員室が別の階/管理区分が異なる部分(▲) |
| 鈴鹿市 | 主たる棟に本体、別棟に要件を満たす遠隔起動装置(記号なし) | 県央広域と同じ3場面(▲) |
| 四日市市 | 記載なし | 時間帯で常時人のいる場所が宿直室等へ移る場合(下線=行政指導) |
| 津市 | 記載なし | 複数の防災センター等/病院・福祉施設等の夜間のナースセンター等/管理権原が分かれ全体を管理する防災センター等がある場合 |
| 大阪市 | 管理権原が同じなら1の防火対象物として扱い、従たる建物に遠隔起動装置(見出しに◆) | 各階のナースステーション等/昼夜で場所が変わる場合など(見出しに◆) |
| 堺市 | 記載なし | 複数の常時人がいる場所(◆)/夜間に宿直室等へ移る場合(★) |
| 行田市・羽生市 | 審査基準を公開していないため確認できず | |
うちの別棟も法人は同じなので、要件に当てはまりそうです。
管理権原のほかに通報内容と同時通話も要件に入っています。
別棟の名前や所在地が通報の音声で伝わるかも含めて、設置前に確かめましょう。
よくある質問
まとめ
宿直室と別棟の場所を図面に書き込んで、遠隔起動装置の要る場所を洗い出します!
通話の設備や耐熱配線まで含めて計画すると工事の手戻りがありません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第23条、消防法施行規則第12条第1項第8号・第25条
- 平成8年2月16日 消防予第22号「消防機関へ通報する火災報知設備の取扱いについて」(埼玉県央広域・四日市市・堺市の基準が出典として掲げているもの)
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第1章 第2・第3、第4章 第13 消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置) 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第13 鈴鹿市「消防用設備等に関する審査基準」のページ
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第13 消防機関へ通報する火災報知設備 四日市市消防本部「消防同意事務審査基準」のページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-14 消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置) 津市消防本部「予防関係審査基準」のページ
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第4節 消防機関へ通報する火災報知設備(火災通報装置)
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 消防機関へ通報する火災報知設備 Ⅱ 細目 1 設置場所等 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。埼玉県央広域の審査基準は令和5年4月1日適用の版を読んでいます。鈴鹿市の基準は令和7年3月26日の消防予第129号の要件を満たすものは火災通報装置の設置を要しないとしていますが、本記事ではその通知の中身は扱っていません。行田市・羽生市は審査基準を公開していないため比較に含めていません。





