マンションや店舗の駐車場に、2段式の機械式駐車場を何基か並べて置くことがあります。
国の基準では、機械装置で車を収める駐車場は収容台数が10以上になると泡消火設備などが必要です。
では、1基ずつは10台未満でも、並べて置いたときに台数を合計して数えるのかどうか。
埼玉県央広域消防本部(鴻巣市・桶川市・北本市)の審査基準は、間隔が6m未満なら合計して数えると決めています。
うちの駐車場に、2段式の機械式駐車場を2基並べて置こうと思っているんです。
6台と4台なので、どちらも10台未満で大丈夫ですよね。
1基ずつ見ると10台未満でも、並べ方によっては台数を合計して数えることがあります。
鴻巣市の審査基準では、その境目が間隔6mです。
間隔が狭いと、2基で10台と見られるということですか。
そのとおりで、間を空けるか防火壁で区切るかで扱いが変わります。
鈴鹿市や堺市の基準とも比べながら見ていきましょう。
- 消防法施行令第13条は、昇降機等の機械装置で車を収める駐車場のうち収容台数が10以上のものに、泡消火設備などの設置を求めている
- 埼玉県央広域の審査基準は、屋外の多段方式の機械式駐車場どうしの間隔が6m未満なら、収容台数を合計して施行令第13条を当てはめる
- 防火壁で区切って別々に数えるには、耐火構造で自立し、両端と最上段の車の頂部から50cm以上突き出すなど4つの条件がある
- 鈴鹿市の審査基準は県央広域と同じ文言で、堺市は原則として合計しつつ、おおむね1m以上離すなどすれば1基ごとに数えられる
- 四日市市・津市・大阪市・東大阪市の基準には同じ定めが見当たらないので、増設の前に管轄の消防本部へ確かめる
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目次
国の基準では機械式駐車場に泡消火設備などが要るのはどこからか

機械式駐車場は、床面積ではなく台数で線が引かれているのが特徴です。
一 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの
二 昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が十以上のもの
(設置する消火設備)水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備
自走式の駐車場は階ごとの床面積で判断しますが、機械式駐車場は収容台数が10以上かどうかが境目です。
条文には、並べて置いた複数の駐車場を「1つ」と数えるのか「別々」と数えるのかまでは書かれていません。
そこで、近接して置いたときの数え方を、各消防本部が審査基準で決めています。
増設や入れ替えを考えたら、まず敷地にある全部の台数を数えておくのが出発点です。
1基ずつの台数だけを見ればいいと思っていました。
条文だけでは数え方が決まらないので、管轄の消防本部の基準を見ることになります。
次は鴻巣市を受け持つ埼玉県央広域の扱いです。
埼玉県央広域では並べて置いた機械式駐車場の台数をどう数えるのか

第2章 第3「建築物の床面積及び階の取り扱い」の中に、駐車場の数え方がまとめてあります。
第3-14図の例では、3列2段(6台)と2列2段(4台)の駐車場が6m未満の間隔で並んでいます。
1基ずつなら10台未満ですが、合計すると10台になるので施行令第13条が適用される、と図に書かれています。
対象は工作物の多段方式で、建物の中のタワー方式は同じ項目のウで水平投影面積を床面積に入れる別の定めです。
この項目には行政指導を示す▲や●の印が付いておらず、基準そのものとして示されています。
間を6m以上空けるか、防火壁で区切るかのどちらかということですね。
どちらもできないときは、合計した台数で消火設備の要否を考えます。
既にある駐車場との間隔も必ず測っておきましょう。
防火壁で区切るにはどんな条件が要るのか

同じ項目の続きに、その防火壁の条件が並んでいます。
(ア) 耐火構造とし、かつ、自立する構造とすること。
(イ) 機械式駐車場の両端から50㎝以上、最上段の車両の頂部より50㎝以上突出させること。
(ウ) 防火壁等には、配線、配電管が貫通する場合を除き、その他の開口部を設けないこと。
(エ) 配線、配電管が、防火壁等を貫通する場合においては、当該管と防火壁等とのすき間をモルタルその他の不燃材料で埋めること(雨水処理のための排水管を除く。)。
壁は機械式駐車場の骨組みに頼らず自立させ、耐火構造にします。
長さは駐車場の両端から、高さは最上段に止めた車の頂部から、それぞれ50cm以上突き出します。
壁にあけてよいのは配線・配電管の貫通だけで、そのすき間はモルタルなどの不燃材料で埋めます。
第3-15図には建物の中に収める場合の壁の図も載っているので、屋内に置くときも図を見ながら設計者と打ち合わせます。
フェンスのような薄い板で仕切るだけでは足りないのですか。
県央広域の基準は耐火構造の自立した壁を求めています。
別の方法を考えるなら、計画の段階で消防本部に相談しておきましょう。
鈴鹿市や堺市では同じ場面をどう扱っているのか

鈴鹿市は県央広域と同じ文言で、堺市は出発点も数字も違います。
(1)政令第13条第1項に規定する昇降機等の機械装置により車両を収容させる防火対象物の収容台数の算定方法について、2段式以上の機械式駐車装置(略)は、それぞれの機械式駐車装置の収容台数を合計して算定すること。
(2)屋外に設けられる機械式駐車装置(略)のうち、次のアからウのいずれかに適合するものは、前(1)にかかわらず、各駐車装置ごとの収容台数により政令第13条第1項の規定を適用することができる。
ア 地上に駐車装置を2基以上並べて設置するもののうち、構造的に結合されておらず、かつ、次のいずれかに適合するもの
(ア)駐車装置相互の間が概ね1m以上離れているもの(略)
| 消防本部 | 合計して数える範囲 | 1基ごとに数えられる条件 |
|---|---|---|
| 埼玉県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市) | 多段方式(工作物)を近接して置き、間隔が6m未満のもの | 間隔6m以上、または防火壁等(耐火構造で自立・両端と頂部から50cm以上突出・開口部なし・貫通部の埋め戻しの4条件) |
| 鈴鹿市 | 県央広域と同じ(第2章 第3 2 ⑷オ) | 県央広域と同じ |
| 堺市 | 2段式以上の機械式駐車装置は原則として合計 | 屋外:構造的に結合せず概ね1m以上離す、または隣の車両の高さ・長さ以上の不燃材料で延焼を防ぐ/地下ピットの区画など 屋内:乗り入れ面が屋外に面し、開口部のない耐火構造の壁が車両から90cm以上突き出し、配管等が貫通しない |
| 四日市市・津市・大阪市・東大阪市 | 今回確かめた基準には定めが見当たらない | 管轄の消防本部に確認 |
県央広域と鈴鹿市は6mを境に合計するかどうかを決めますが、堺市は2段式以上の装置をまず全部合計し、条件を満たすものだけを1基ごとに数えます。
屋外で並べるなら、構造的に結合していないことに加えて概ね1m以上離すか、不燃材料で隣の車両の高さと長さ以上を仕切ります。
地下ピットのある装置は、ピットの中を耐火構造の壁で区切り、排水溝が貫通するなら断面積300㎠以下で区画壁の両側2m以上を厚さ6mm以上の鉄板で覆うなど、細かい条件が付きます。
県央広域と鈴鹿市の項目には▲や●の印がなく、堺市の項目にも★などの印は付いていません。
同じ並べ方でも、堺市なら1mで別々に数えられることがあるのですね。
ただし構造的につながっていないことが前提です。
装置の仕様書を持って、管轄の消防本部で確かめましょう。
機械式駐車場を増設する前になにを確かめればよいのか

いちばん見落としやすいのは、既にある駐車場との間隔です。
- 敷地にある機械式駐車場を全部書き出し、1基ごとの収容台数(段数×列数)を数える
- 新しく置く駐車場と既存の駐車場の間隔を測る(県央広域・鈴鹿市は6m、堺市は概ね1mが目安)
- 間隔が足りないときは、合計した台数が10以上になるかを確かめる
- 防火壁や不燃材料の仕切りで分ける場合は、管轄の基準の寸法と構造を図面に書き込む
- 図面と装置の仕様書を持って、着工前に管轄の消防本部へ相談する
合計して10台以上になると、泡消火設備などの特別な消火設備が必要になり、工事費も維持管理の手間も大きく変わります。
後から1基を足しただけで合計が10台に届き、既存の駐車場まで含めて見直しになる、という順番の逆転がいちばん困ります。
四日市市・津市・大阪市・東大阪市のように数え方の定めが見当たらない地域でも、近接した装置の扱いは消防本部の判断になるので、事前の相談が欠かせません。
行田市と羽生市は審査基準を公開していないので、それぞれの消防本部の予防課に確かめてください。
増設の見積もりを取る前に、間隔と台数を消防本部に見せておくのがよさそうですね。
先に合計の台数を確かめておけば、設備の要否で計画がぶれません。
図面が固まる前の相談がいちばん安く済みます。
よくある質問
まとめ
既存の駐車場との間隔を測ってから、増設の相談に行きます!
間隔と台数が分かれば、消火設備の要否もはっきりします。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第13条第1項(e-Gov法令検索)
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第2章 第3 建築物の床面積及び階の取り扱い 2 ⑷ウ・オ、第3-14図・第3-15図
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第3 建築物の床面積及び階の取り扱い 2 ⑷ウ・オ(令和6年4月1日制定、令和7年9月1日改正)
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第4 床面積、階及び高さの取扱い 4 収容台数の算定
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」1-14 駐車の用に供する部分等における床面積の取扱い・5-5 泡消火設備
※本記事は公表されている法令および各消防本部の審査基準・運用基準に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の建物の判断は所轄消防署にご確認ください。





