非常放送のスピーカーは、原則として壁や戸で区切られた部屋ごとに付けます。
ただし国の基準には、狭い部屋なら隣の部屋や廊下のスピーカーで足りるとして、スピーカーを付けないことができる決まりがあります。
その広さの上限は、部屋が「居室」かどうかで6平方メートルと30平方メートルに分かれます。
堺市消防局の審査基準は、この居室の見分け方を建築基準法に結びつけ、例の表と図まで載せています。
この記事では、国の基準と堺市の運用を分けて読み、大阪市・東大阪市の書き方と比べます。
堺市で、12階建ての事務所ビルの改修を計画しています。
倉庫や応接室を細かく区切るのですが、スピーカーを全部の部屋に付けないといけないのでしょうか。
狭い部屋なら、隣の区域のスピーカーから8メートル以内であることなどを条件に付けないことができます。
ただ、その部屋が居室かどうかで面積の上限が変わります。
応接室と倉庫で、扱いが違うかもしれないのですね。
はい、堺市は居室と非居室の例を表にしています。
根拠を順にたどっていきましょう。
- 国の基準(消防法施行規則第25条の2第2項第3号ロ(ロ)ただし書)は、居室と主たる廊下等は6平方メートル以下、その他の部分は30平方メートル以下の放送区域で、隣の区域のスピーカーまで8メートル以下ならスピーカーを付けないことができるとしています
- 堺市の審査基準は、居室・主たる廊下等・その他の部分の区分を建築基準法によることとし、★(堺市独自の指導基準)を付けています
- 居室と非居室の例は第16-1表にあり、住宅の小さな台所・住宅の浴室・人が常駐しない倉庫などの扱いが注記されています
- スピーカーを付けなくてよい部屋の例は第16-7図〜第16-9図に示され、省いた部屋も含めた合計面積でスピーカーの種類を選びます
- 大阪市は合計面積の考え方は同じですが、カラオケボックスなど遮音性の高い室は1つの放送区域としてスピーカーを設けると書いています。東大阪市の公開資料には放送設備の基準がありません
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目次
国の基準でスピーカーを付けなくてよいのはどんな部屋か

放送設備がいる建物は消防法施行令第24条第3項が決めていて、地階を除く階数が11以上の建物や、収容人員が一定以上の店舗・ホテル・病院などが対象です。
スピーカーの付け方は、消防法施行規則第25条の2第2項第3号ロが決めています。
(イ)は「放送区域」を、2以上の階にわたらず、床・壁・戸(障子・ふすまなど遮音性能の著しく低いものを除く)で区画された部分と定めています。
そのうえで(ロ)が、スピーカーの間隔と、付けなくてよい場合を書いています。
| 部屋の区分 | スピーカーを付けないことができる広さ | 距離の条件 |
|---|---|---|
| 居室、居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路 | 6平方メートル以下 | 部屋の各部分から隣の放送区域のスピーカーまで水平距離8メートル以下 |
| その他の部分 | 30平方メートル以下 | 同上 |
つまり、その部屋が居室かどうかが結論を分けます。
スピーカーの種類(L級・M級・S級)の選び方は放送設備のスピーカーの種類の記事で解説しています。
同じ広さでも、居室かどうかで答えが変わるのですね。
はい、ここが自治体の運用で差が出やすいところです。
その前に、堺市が「部屋の区切り」をどう見ているかを確かめましょう。
- 消防法施行令第24条第3項が、放送設備がいる建物を決める
- 消防法施行規則第25条の2第2項第3号ロ(イ)が放送区域を定め、(ロ)ただし書が6平方メートル・30平方メートル・8メートルの条件でスピーカーを省けるとする
- 堺市の審査基準 第16 Ⅱ1(2)ア(ア)〜(ウ)が、間仕切壁やカーテンで放送区域が分かれるかを決める
- (エ)が居室などの区分を建築基準法に借り、第16-1表で例を示す
- 建築基準法第2条第4号の「居室」の定義(継続的に使用する室)に当てはめる
- (オ)の第16-7図〜第16-9図で省ける部屋を確かめ、(カ)で省いた部屋も含めた合計面積からスピーカーの種類を選ぶ
堺市では放送区域をどう区切るのか

堺市の審査基準は、第16 Ⅱ 細目 1 放送設備 (2) スピーカー ア 放送区域で、次のように書いています。
ただし、アコーディオンカーテンは含まないものであること。★
◆①は、通知一覧で平成6年2月1日消防予第22号「放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について」とされています。
つまり、移動式の間仕切りも壁として扱い、カーテンやついたては区切りにならない、というところまでは国の通知に沿った扱いです。
そのうえで堺市は、アコーディオンカーテンはカーテンに含めない、つまりアコーディオンカーテンで仕切ると別の放送区域になると★で上乗せしています。 大きな会議室をアコーディオンカーテンで2つに分けて使うと、それぞれが別の放送区域になり、片側が6平方メートルを超える居室ならスピーカーが必要です。
壁と戸の判定の全体像は放送区域の判定の記事で解説しています。
アコーディオンカーテンは、カーテンと同じだと思っていました。
堺市では別の放送区域として数えると読めます。
次は、その区域が居室かどうかの見分け方です。
堺市では居室と非居室をどう見分けるのか

堺市は、この定義に当てはめた例を第16-1表にまとめています(ページ画像で確認)。
| 区分 | 第16-1表に挙がっている例 |
|---|---|
| 一般的な居室の例 | 居間、寝室、台所、食堂、書斎、応接間、事務室、売場、会議室、作業室、病室、診療室、宿泊室、観覧席、調理室※1、客室、控室、喫煙室等 |
| 一般的な非居室の例 | 玄関、廊下、階段室、便所、洗面室、浴室・脱衣室※2、倉庫※3、納戸、無人機械室、更衣室、湯沸室、自動車車庫、リネン室等 |
※2 住宅の場合は、浴室・脱衣室を居室とみる必要はないが、公衆浴場や温泉の共同浴場のように継続して使用するものは居室とみる。
※3 倉庫や機械室でも、人が常駐している部分は居室とみなすことがある。
冒頭の例でいえば、5平方メートルの応接室は居室なので6平方メートル以下の枠、倉庫や更衣室は非居室なので30平方メートル以下の枠で考えることになります。
ただし注記のとおり、同じ「倉庫」でも人が常駐していれば居室とみなすことがあるので、部屋の名前だけで決めず、実際の使い方で判断します。
(エ)の「一般的な名称だけでは区分できない場合がある」という一文は、このことを指していると読めます。
うちの倉庫は、出荷担当が一日中作業しているのですが……。
それなら居室とみなされる可能性があります。
図面の室名だけでなく、使い方を消防署に説明できるようにしておきましょう。
堺市の図でスピーカーを省ける部屋はどう読むのか

| 図 | 省ける部屋の例 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 第16-7図 | リネン室(10平方メートル) | 非居室なので30平方メートル以下の枠。廊下のスピーカーから部屋の奥まで8メートル以下 |
| 第16-8図 | 応接室(5平方メートル) | 居室なので6平方メートル以下の枠。隣の事務所(25平方メートル)のスピーカーから8メートル以下 |
| 第16-9図 | 倉庫とパイプシャフト(PS・EPS) | 廊下に面して2室が奥に続いていても、奥の部屋の端まで8メートル以下なら2室とも省ける例 |
国の条文も「当該放送区域の各部分から」と書いているので、部屋の奥の角までの距離で確かめます。
さらに(カ)は、省いた部屋の面積の扱いを決めています。
国の基準では、50平方メートル以下ならL級・M級・S級のどれでもよく、50平方メートルを超えるとM級以上、100平方メートルを超えるとL級です。
省いた部屋を足すと50平方メートルや100平方メートルの境目を超えることがあるので、種類を選ぶ前に合計を出します。
小さな部屋を省いた分、廊下や隣の部屋のスピーカーを大きくすることもあるのですね。
はい、省いた部屋の面積も足して種類を選ぶのが堺市の扱いです。
最後に、大阪市と東大阪市を見ます。
大阪市や東大阪市でも同じ扱いなのか

合計面積でスピーカーの種類を選ぶ点も同じですが、大阪市はカラオケボックスなど遮音性の高い室は1つの放送区域としてスピーカーを設けると◆(行政指導基準)で加えています。
堺市の第16の該当箇所に、カラオケ室のこの扱いは見当たりませんでした(堺市のカラオケボックスの指針にも放送設備の記述はありません)。
一方、居室と非居室の例の表や、省ける部屋の図は、大阪市の運用基準には見当たりませんでした。 また、両市とも別記の「放送設備のスピーカーの性能に応じた設置ガイドライン」で、音圧を計算して設置する方法(規則第25条の2第2項第3号ハ)を使った放送区域の隣の区域は、ただし書でスピーカーを省くことは一般的には認められないとしています。
東大阪市は、公開している6つの運用基準(避難器具・自動火災報知設備・非常コンセント・連結送水管・消火器具・誘導灯)にスピーカーの設置や省略の基準がなく、比べることができませんでした。
3市を並べると、次のとおりです。
| 比べる点 | 堺市(審査基準 第16) | 大阪市(運用基準 第2章 第6節) | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 移動式の間仕切りは壁として扱う | (ア)で扱う(◆①) | (10)で扱う(無印) | 公開資料に基準なし |
| アコーディオンカーテン | 区切りになる((イ)ただし書・★) | 区切りになる((10)・無印) | ― |
| 居室・非居室の区分 | 建築基準法による・第16-1表の例(★) | 例の表なし | ― |
| 省ける部屋の図 | 第16-7図〜第16-9図(◆①★) | 図なし | ― |
| 省いた部屋を含めた合計面積で種類を選ぶ | (カ)(◆①) | (11)(◆) | ― |
| カラオケ室など遮音性の高い室 | 第16に記載なし | 1つの放送区域としてスピーカーを設ける(◆) | ― |
| 音圧計算で設置した区域の隣 | 別記で一般的には省けない | 別記で一般的には省けない | ― |
細かく区切った部屋が多い計画では、部屋ごとに居室かどうかと8メートルの範囲を図面に書き込んで、所轄の消防署と協議するのが確実です。
同じ大阪府内でも、市によって書いてあることが少しずつ違うのですね。
はい、建物がどの市にあるかで読む基準が変わります。
よくある質問で整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず図面に部屋ごとの面積と使い方を書き込んで、居室か非居室かを仕分けます。
アコーディオンカーテンで仕切る会議室も、別の区域として数えておきます!
同じ広さの部屋でも、居室かどうかでスピーカーの要否が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第3章 第1節 第16 非常警報設備 Ⅱ 細目 1(2)ア(ア)〜(カ)・第16-1表・第16-7図〜第16-9図・別記・通知一覧、第1章 総則 4 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第2章 第6節 非常警報設備(放送設備)第3 2(10)(11)・別記、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第24条
- 消防法施行規則 第25条の2
- 建築基準法 第2条第4号
- 平成6年2月1日 消防予第22号「放送設備の設置に係る技術上の基準の運用について」
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





