コンビニのような小さな路面店は、避難口誘導灯を付けなくてもよいことがあります。
消防法施行規則は、避難階にある居室が、避難口まで30メートル以下などの条件に当てはまれば、避難口誘導灯を要しないと定めています。
ただし、「主として当該居室に存する者が利用する避難口」とはどの出入口か、蓄光式誘導標識をどう付けるかは、規則だけでは分かりません。
埼玉県央広域消防本部の審査基準を、国の規則と通知から番号つきでたどり、鈴鹿市・堺市・大阪市・東大阪市とも比べます。
コンビニのような小さなお店でも、誘導灯は全部付けるものでしょうか。
付けなくてよい場合が、規則にあります。
ただし、蓄光式誘導標識を付けることなどが条件です。
その条件は、国が全部決めているのですか。
規則は大枠だけです。
細かい読み方は、国の通知と各本部の基準にあります。
- 消防法施行規則 第28条の2 第1項 第3号は、避難階にある居室が、避難口・30メートル以下の見とおし・蓄光式誘導標識の三つに当てはまれば、避難口誘導灯を要しないと定めている
- 免除を見る単位は階ではなく居室で、前提になるのは、主として当該居室に存する者が利用する避難口をその居室が持っていることである
- 県央広域は、その避難口を、他の部分の人が避難する動線に当たらないものと説明し、コンビニの売場の出入口を例に挙げている
- 蓄光式誘導標識の明るさは、国の通知が歩行距離おおむね15メートル以上で300ミリカンデラ毎平方メートルを目安とし、堺市は10メートル以上から上げている
- 地階や無窓階にある居室も、要件に適合すれば対象になると、国の通知と県央広域・鈴鹿市が書いている。最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認する
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目次
小規模な路面店は階ではなく居室ごとに誘導灯の免除を見るのか

そのうち第1号は「階」を単位にし、第3号は「居室」を単位にしています。
一 …階のうち、居室の各部分から主要な避難口…を容易に見とおし、かつ、識別することができる階で、当該避難口に至る歩行距離が避難階にあつては二十メートル以下、避難階以外の階にあつては十メートル以下であるもの
三 前二号に掲げるもののほか、…防火対象物の避難階にある居室で、次のイからハまでに該当するもの
第1号は、階の中のどの居室からも主要な避難口が見え、避難階なら20メートル以下、それ以外の階なら10メートル以下の階が対象です。
第3号は、避難階にある居室ごとに、避難口・見とおし・蓄光式誘導標識の三つを見ます。
県央広域の第13は、第1号について、単位は階で、適合性も階ごとに判断すると書き、第3号は「小規模な路面店等」として別の項に分けています。 規則の文は「避難階にある居室で」と書いているので、建物の一部にある店舗も、居室として判断の対象になります。
だから、テナントとして入る店舗は、建物全体ではなく、その店舗の居室が三つの条件に当てはまるかを先に確かめます。
建物全体で見るのか、お店だけで見るのかが分かれるのですね。
はい、第1号は階ごと、第3号は居室ごとに見ます。
お店ごとに確かめましょう。
路面店の免除で求められる避難口はどの出入口を指すのか

この避難口は、規則 第28条の3 第3項 第1号イに掲げる避難口のことです。
屋内から直接地上へ通ずる出入口(附室が設けられている場合にあつては、当該附室の出入口)
「主として当該居室に存する者が利用する」の意味は、国の通知が書いています。
…「主として当該居室に存する者が利用する」避難口とは、当該居室に存する者が避難する際に利用するものであって、他の部分に存する者が避難する際の動線には当たっていないものをいうものであること(例えば、一階層のコンビニエンスストアにおける売場部分の出入口等)。
第16の2の設置例には、「他の部分の避難経路は独立していること」という注記もあります。
鈴鹿市の第13 1⑵も同じ意味を書き、第13-2図で、コンビニの売場から出る避難口と、共同住宅の居住者の避難経路を、別々に示しています。
大阪市と東大阪市は、運用基準の5⑴で「当該居室に存する者が避難する際に利用する避難口であること」と短く書いています。
堺市は(ア)に、規則と同じ「主として当該居室に存する者が利用するものに限る」を括弧書きで置いています。 だから、共同住宅の1階にコンビニが入る場合は、店の出入口が住戸の人の避難にも使われていないかを、図面で先に確かめます。
お店の出入口が、上の階の人の避難にも使われていたらどうでしょう。
通知は、他の部分の人の避難の動線に当たらないものと書いています。
動線が重なっていないかを確かめましょう。
地階や無窓階にある店舗でも免除の対象になるのか

ところが、国の通知は、この「居室」の範囲を少し広げて書いています。
…誘導灯等の設置免除の適用単位は「居室」であり、地階及び無窓階に存する居室(例えば、傾斜地において階全体としては地階扱いとなるが、当該居室は直接地上に面しているもの等)も、当該規定の要件に適合すれば免除対象となるものであること。
県央広域の第13 3⑴と鈴鹿市の第13 1⑴は、この文を同じ形で書いています。
両方の第13-7図(県央広域)・第13-1図(鈴鹿市)は、斜面に建つ建物の断面図で、1階と地下1階の居室を、どちらも免除の対象となる例として示しています。
あわせて載せた地下1階の平面図には、「地下1階以外の居室に存する者が避難に利用する階段がないこと」という注があります。
大阪市の運用基準は、表の注で「避難階」に、傾斜地等により地階扱いとなるもので、その居室から直接地上へ通ずる出入口のある階を含めています。 規則の文では、避難口は「屋内から直接地上へ通ずる出入口」でした。
だから、地階の店舗は、居室が直接地上に面しているかと、他の階の人がその階を避難に通らないかを、図面で確かめます。
地階のお店は、あきらめるしかないと思っていました。
通知は、直接地上に面する居室を例に挙げています。
地上に面しているかを確かめましょう。
歩行距離30メートルと見とおしはどう確かめるのか

同じ30メートルは、通路誘導灯の免除(第2項第2号)と誘導標識の免除(第3項第3号)にも出てきます。
ロ 室内の各部分から、次条第三項第一号イに掲げる避難口を容易に見とおし、かつ、識別することができ、室内の各部分から当該避難口に至る歩行距離が三十メートル以下であること。
ハ 燐光等により光を発する誘導標識(…「蓄光式誘導標識」という。)が消防庁長官の定めるところにより設けられていること。
同じ県央広域の階の免除(第13 2⑴ア)は、避難口が見える階で、避難階は20メートル以下、避難階以外は10メートル以下です。
路面店の30メートルは、それとは別に、蓄光式誘導標識とセットで認められる距離です。 歩行距離の測り方は、大阪市と東大阪市の運用基準が書いています。
前表に定める「歩行距離」の測定は、居室の各部分から蓄光式誘導標識を設ける避難口へ至る直線距離ではなく、歩行距離が最も長くなる箇所から居室の壁等に平行又は垂直となる経路の距離とすること。
だから、管轄が大阪市や東大阪市なら、店内を斜めに突っ切る線ではなく、壁に沿って曲がる通路の長さで測って確かめます。
次に、「容易に見とおし、かつ、識別することができる」の意味です。県央広域の第13 1の用語の定義の中にあります。
「容易に見とおし、かつ、識別することができる」とは、建築物の構造、什器等の設置による主要な避難口の視認の障害がないことをいう。…ただし、避難施設又は誘導灯が障害物により視認できない場合であっても、人が若干移動(おおむね5m以内)することにより主要な避難口を視認できる場合は、この限りでない。
路面店の項(第13 3⑴イ)は、同じ言葉を最終避難口について使っていますが、この定義がそのまま使えるとは書かれていません。
だから、店内の棚の高さと並べ方が、出入口までの見通しをさえぎらないかを図面で確かめ、迷う点は消防署に聞きます。
30メートルは、お店の一番奥から測るのですね。
はい、居室の各部分からです。
一番遠い場所から測って確かめましょう。
蓄光式誘導標識は何をどこに付ければよいのか

付け方は消防庁長官が定めるとされ、国の通知と各本部の基準が目安を示しています。
県央広域の第16の2 4⑵ウは、その目安を四つに分けて書いています。
(ア) 最終避難口の上部又はその直近の避難上有効な箇所に設けること。
(イ) 性能を保持するために必要な照度が採光又は照明により確保されている箇所に設けること。
(ウ) 蓄光式誘導標識の周囲には、…広告物、掲示物等を設けないこと。
(エ) …歩行距離がおおむね15m以上となる場合において、…D≦150×h…
明るさは、国の通知が数字で目安を示しています。停電等で照明が消えてから20分たった表示面で、おおむね100ミリカンデラ毎平方メートル以上です。
避難口から居室の最も遠い箇所までの歩行距離がおおむね15メートル以上になるときは、おおむね300ミリカンデラ毎平方メートル以上が目安です。
大きさは、15メートル以上のとき、歩行距離D(メートル)が、150に表示面の縦寸法h(メートル)をかけた値以下になるようにします。
この式に当てはめると、歩行距離が30メートルなら、縦寸法は0.2メートル以上です。 各本部の書き方を、項目ごとに並べます。
| 項目 | 埼玉県央広域 | 堺市 | 大阪市・東大阪市 | 鈴鹿市 |
|---|---|---|---|---|
| 定めの場所 | 第13 3・第16の2 4⑵ | 第18 誘導灯及び誘導標識 2⑴イ | 運用基準 第5 誘導標識 2・5 | 第13 1⑴⑵・2⑷ |
| 避難口の意味 | 通知と同文(動線に当たらない) | (ア)に規則と同じ括弧書き | 「避難する際に利用する避難口」と短く書く | コンビニの売場を例に同趣旨 |
| 歩行距離30メートル | 第13 3⑴イに書く | (イ)に書く | 路面店の項には見当たらない | 第13には見当たらない |
| 歩行距離の測り方 | 見当たらない | 見当たらない | 直線でなく壁に平行又は垂直な最長の経路 | 見当たらない |
| 置き場所と周囲の物 | (ア)最終避難口の上部か直近・(ウ)広告物等を置かない | (ウ)避難口の上部か直近・(カ)広告物等を置かない | 見当たらない | 第16の2の例による(本文は未確認) |
| 300ミリカンデラの境目 | 15メートル以上 | 10メートル以上★ | 15メートル以上 | 見当たらない |
| 縦寸法 D≦150×h | 15メートル以上 | 15メートル以上 | 15メートル以上 | 見当たらない |
| 通路にも標識を付ける | 見当たらない | 10メートル以上なら通路にも1以上★ | 見当たらない | 見当たらない |
堺市は(エ)に10メートル以上と書き、★を付けています。国の通知では、同じ場所が15メートルです。
堺市はさらに(ウ)で、避難口まで10メートル以上なら通路にも標識を付けるとし、これにも★を付けています。
鈴鹿市は、第13の2⑷で、設置方法を第4章 第16の2の規定の例によるとしています。この記事では第16の2の本文を確認できなかったので、数値の比較には入れていません。
津市と四日市市は、手元の資料に小規模な路面店の項が見当たらず、ここでは比べていません。 店舗の改修では、管轄の本部の数字で、標識の明るさと大きさを決めます。
堺市は、10メートルから条件が厳しくなるのですね。
はい、管轄が堺市なら通路にも標識が条件です。
数字は所管の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
居室ごとに、避難口と見とおしと標識の三つを確かめます!
迷う点は、早めに消防署へ相談しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第28条の2・第28条の3(e-Gov法令検索・現行条文)
- 蓄光式誘導標識等に係る運用について(平成22年4月9日 消防予第177号・総務省消防庁)
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第3章 第13 誘導灯の設置を要しない部分の取り扱い・第4章 第16の2 誘導標識
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第3章 第13 誘導灯の設置を要しない部分の取り扱い
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第18 誘導灯及び誘導標識
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5 誘導標識
- 東大阪市消防局「消防用設備等の運用基準」誘導灯及び誘導標識
※本記事は各消防本部が公表している基準と、消防法令・消防庁の通知に基づく一般的な解説です。堺市の★は市独自の指導基準を表し、記号は原本の画像で確かめました。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」としたものは公表資料を確認した範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





