スプリンクラー設備のある建物には、配管のいちばん端に手回しの弁が付いています。
これは水を止めるための弁ではなく、火災のときに警報が鳴るかどうかを試すための末端試験弁です。
点検のたびに開け閉めするものなので、前に物が積まれていると点検そのものができなくなります。
この記事では末端試験弁をどこにいくつ設けることになっているのかを条文から整理します。
うちのビルの廊下の天井に赤い配管と小さな手回しのハンドルが付いています。
あれは何をするものなのでしょうか。
スプリンクラー設備の末端試験弁です。
水がきちんと流れて警報が鳴るかを試すための弁です。
試すだけの弁なら普段は誰も触らないということですね。
その手前に台車を置いてしまっています。
そこが立入検査でよく指摘される点です。
弁には標識を出すことまで規則で決められています。
- 末端試験弁は流水検知装置や圧力検知装置の作動を試験するための弁です
- 閉鎖型ヘッドを使うスプリンクラー設備の配管の末端に設けることとされています。
- 設ける数は配管の系統ごとに一個ずつです
- 置く場所は放水圧力が最も低くなると予想される配管の部分です。
- 弁の直近の見やすい箇所に末端試験弁である旨の標識を設けます
▼

目次
配管の端に付いている手回しの弁はなんのためにあるのか

その水の流れをつかまえて警報を出す役目を担うのが流水検知装置です。
条文が「作動を試験するための弁」と書いているとおり、末端試験弁は水を止めるための弁ではありません。
弁を開くと配管の末端から水が流れ、その流れを流水検知装置が拾って警報が鳴ります。
ヘッドが一つ開いたのと同じ状態を、人の手で作り出すための仕掛けだと考えてください。
自分の建物の弁がどこに付いているのかを、まず点検を頼んでいる業者に聞いておいてください。
水を止める弁ではないのですね。
てっきり掃除のときに閉める弁だと思っていました。
閉めるための弁は制御弁のほうです。
末端試験弁は開いて試すための弁だと覚えてください。
どのスプリンクラー設備に末端試験弁が要るのか

どの種類のヘッドを使う設備なのかで扱いが変わります。
柱書きは閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備と限っています。
舞台部などに使う開放型ヘッドの設備については、同じ規則第14条第1項第1号ニに、一定の防火対象物に限って一斉開放弁の作動を試験するための装置を設けることが別に定められています。
また小規模な福祉施設などで使う特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、放水圧力と放水量を測定することができるものであれば末端試験弁を省けます。
自分の建物のヘッドが閉鎖型なのか開放型なのかは、点検結果報告書の設備の種別からたどれます。
うちは事務所ビルなので閉鎖型のはずです。
やはり末端試験弁が要るということですね。
閉鎖型なら配管の末端に付いているはずです。
まず点検結果報告書で設備の種別をご覧ください。
末端試験弁はどこにいくつ設けることになっているのか

規則が系統ごとの数と、置く場所の条件まで定めています。
発信部となる流水検知装置は、同じ規則第14条第1項第4号ロで各階または放水区域ごとに設けることとされています。
その系統ごとに末端試験弁が一個ずつ要るので、階数の多い建物ほど弁の数も増えていきます。
置く場所は放水圧力が最も低くなると予想される配管の部分で、条文は具体的な階や部屋までは指定していません。
いちばん条件の悪いところで基準どおりの圧力が出ていることを確かめる仕組みだと考えてください。
系統の数だけあるということですね。
建物が大きいほど弁も増えるわけですね。
そのとおりです。
点検の立ち会いのときに弁の位置を全部教えてもらってください。
実務で見落としやすいのはどこか

規則は弁の前後に何を取り付けるかと、標識のことまで定めています。
ハは直近の見やすい箇所と書いているので、標識が棚や段ボールでふさがれていれば、それだけで維持の状態が崩れます。
ロの試験用放水口は、スプリンクラーヘッドと同じだけ水が出る穴のことです。
これが付いていないと、弁を開いても本物のヘッドが開いたときと同じ量の水が流れず、試験になりません。
弁の前に物を置かないことと、標識が読める状態かどうかを日常の見回りに加えてください。
弁の前に台車を置いたままにしていました。
今日のうちにどかします。
それがいちばん早い改善です。
標識が読めるところまで空けておいてください。
明日からなにを確かめればよいのか

消防法は設置と維持の両方を関係者の義務としています。
条文は設置し、及び維持と並べて書いているので、付いていても使えない状態なら基準に従っていないことになります。
そのうえで消防法第17条の3の3が、定期に点検してその結果を消防長または消防署長に報告することを求めています。
点検のときには弁を開いて実際に水を流すので、排水の経路がふさがっていないかも合わせて見てください。
まずは末端試験弁の位置と標識、そして弁の前が空いているかの三点を確かめるところから始めてください。
設置だけでなく維持まで書いてあるのですね。
付いてさえいればよいと思っていました。
そこが消防法第17条第1項の要点です。
点検を頼むときに末端試験弁まで見てもらえているか確かめてください。
よくある質問
まとめ
まずは標識の前を空けるところから始めます。
点検の立ち会いでも弁を見てみます。
その順番で十分です。
スプリンクラー設備の維持でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条第1項・第17条の3の3
- 消防法施行令第12条
- 消防法施行規則第13条の6・第14条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





