共同住宅用自動火災報知設備の警戒区域には、ふつうの建物には無い細かい線引きがあります。
一の警戒区域は、原則として建物の二以上の階にまたがってはいけないという決まりがあるためです。
ただし階段室型か廊下型かという建物の型によって、警戒区域の切り方そのものが変わってきます。
今回は共同住宅用自動火災報知設備の警戒区域がなぜ二以上の階にわたれないのか、どんなときなら例外が認められるのかを、省令と告示の条文から解説します。
うちのマンションの受信機、警戒区域がどう区切られているか気にしたことがなかったです。
警戒区域には階をまたげるかどうかという決まりがあるんです。
階をまたぐと何かまずいことがあるんですか。
はい、順番に確認していきましょう。
- 共同住宅用自動火災報知設備の警戒区域は、原則として防火対象物の二以上の階にわたらないものとされている
- 一の警戒区域の面積は千五百平方メートル以下、一辺の長さは五十メートル以下が原則で、特定の建物では百メートル以下に緩和されることがある
- 警戒区域が二以上の階にわたってよいのは、面積が住戸等で百五十平方メートル、その他の部分で五百平方メートル以下で、かつ二の階にわたる場合か煙感知器を設ける場合に限られる
- 階段室型特定共同住宅等では、一の階段室等に主たる出入口が面する住戸等とその階段室等を単位に、六以上の階にわたらない部分を一の警戒区域にできる
- 廊下型特定共同住宅等では、階段室等ごとに一の警戒区域とすることとされている
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目次
警戒区域はなぜ原則、二以上の階にわたれないのか

まずこの警戒区域が、建物のどこまでの範囲を指すのかを条文から確認します。
火災が起きた区域を受信機の表示だけで特定できるようにするには、区域が階をまたいでいると場所の絞り込みが甘くなってしまいます。
ただし条文の後段には消防庁長官が定める基準に適合する場合はこの限りでないというただし書があり、実際には例外が用意されています。
この後段のただし書がどんな条件を指すのかを、これから一つずつ確認していきます。
警戒区域って、階ごとに必ず分かれているものだと思っていました。
はい、それが原則ですが、実は例外もあるんです。
一の警戒区域の面積と一辺の長さはどこまで認められるのか

面積と一辺の長さ、それぞれの上限を確認します。
ただし条文には特定共同住宅等という限定付きの緩和があり、主たる出入口が階段室等ではなく廊下等に面する建物に限って、一辺の長さを百メートルまで延ばせます。
この緩和が使えるのは、後で確認する廊下型特定共同住宅等に当てはまる建物です。
どちらの数値も、受信機の表示だけで火災の起きた区域をどこまで絞り込めるかを左右する基準です。
百メートルまで延ばせるのは、どんな建物でもいいわけじゃないんですね。
はい、建物の型によって条件が変わってきます。
警戒区域が二以上の階にわたってよいのはどんな場合か

実際にどんな条件がそろえば、警戒区域を二の階にまたがせてよいのかを確認します。
住戸・共用室・管理人室は百五十平方メートル以下、それ以外の部分は五百平方メートル以下に収まっていることがまず必要です。
そのうえで、警戒区域が二の階にわたる場合か、階段や傾斜路・エレベーターの昇降路等のように煙感知器だけで構成される場所であることのどちらかを満たさなければなりません。
面積を絞り込むことで、階をまたいでも火災の場所を見誤りにくくしていると考えられます。
面積を狭くする代わりに、階をまたぐことを認めているんですね。
はい、そのバランスで例外が成り立っています。
階段室型特定共同住宅等では警戒区域をどう切るのか

まず階段室型特定共同住宅等の場合を確認します。
一の階段室に出入口が面している住戸等と、その階段室そのものをひとまとめにして、六以上の階にわたらない範囲を一の警戒区域とする考え方です。
各住戸が独立した階段からしか出入りできない構造だからこそ、階段室ごとにまとめて管理できると考えられます。
面積じゃなくて、階段室で区切るという発想なんですね。
はい、建物の構造に合わせた切り方です。
廊下型特定共同住宅等では警戒区域をどう切るのか

階段室型とはどう違うのかを見ていきます。
この型では階段室等を住戸とひとまとめにはせず、階段室等ごとに単独で一の警戒区域とします。
廊下でつながる部分と階段室という縦の動線とを、あえて別の警戒区域に分けている形です。
先ほどの一辺百メートルへの緩和も、この廊下型特定共同住宅等を対象にした規定でした。
階段室型と廊下型で、考え方がまったく逆なんですね。
はい、建物の型を確認することが最初の一歩です。
よくある質問
まとめ
共同住宅用自動火災報知設備の警戒区域の切り方がよくわかりました。
図面上の階段室型か廊下型かをまず確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成十七年総務省令第四十号)第三条第三項第三号
- 共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準(平成十八年五月三十日消防庁告示第十八号)第三第一号
- 特定共同住宅等の構造類型を定める件(平成十七年消防庁告示第三号)第二第四号・第五号
※本記事は公表されている法令および告示に基づく一般的な解説です。設計・施工に関する個別の判断は、所轄消防署または消防設備士にご確認ください。





