水素で走る燃料電池自動車(FCV)に、給油取扱所でそのまま水素を充塡する。
その水素の一部を、施設内でメチルシクロヘキサンという原料から作り出す改質装置があります。
令和8年6月、この改質装置に絞った新しい基準が危険物の規制に関する規則に加わりました。
通知が示したのは廃油タンクと自動停止装置を備えれば指定数量の150倍まで扱えるという新しい線引きです。
改質装置に新しい基準ができたと聞きました。
うちの給油取扱所にも関係あるのでしょうか。
メチルシクロヘキサンで水素を作る改質装置なら関係します。
令和8年6月の改正で、専用の基準が加わりました。
普通のガソリンを使う改質装置とは、扱いが違うということですか。
はい、原料によって基準が変わります。
タンクの大きさと自動停止装置を含めて、順番に見ていきましょう。
- 令和8年6月29日、危険物の規制に関する規則にメチルシクロヘキサンから水素を製造する改質装置の特例基準が加わりました(消防危第156号)
- 対象は電気を動力源とする自動車等に水素を充塡する給油取扱所に、メチルシクロヘキサンから水素を製造する改質装置を設ける場合です
- 改質装置に接続する廃油タンクは容量3万リットル以下、指定数量の150倍未満まで扱えます
- メチルシクロヘキサン・水素・トルエンのいずれかが漏えいした場合に運転を自動的に停止させる装置が必要です
- 屋外設置やポンプの圧力上昇防止といった従来からの基準はそのまま適用されます
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目次
給油取扱所のメチルシクロヘキサン改質装置はなぜ新しい基準が必要になったのか

この水素を給油取扱所でその場で作り出す装置が、危険物から水素を製造するための改質装置です。
危険物から水素を製造するための改質装置は、圧縮水素を充塡できる給油取扱所(圧縮水素充塡設備設置給油取扱所)に設けることができる設備の一つです。
これまでも改質装置そのものの規定はありましたが、原料の種類までは区別されていませんでした。
メチルシクロヘキサンは、トルエンに水素を結合させて常温・常圧の液体として運べるようにした「有機ハイドライド」と呼ばれる原料の一つです。
令和8年6月の改正で、この原料に絞ってタンクの大きさや停止装置などの基準が新設されました。
有機ハイドライドと言われても、普通のガソリンとの違いがピンときません。
液体のまま常温で運べる水素の運び方、と考えてください。
使うときに再び水素を取り出すのが改質装置の役目です。
圧縮水素充塡設備設置給油取扱所のどんな改質装置が対象になるのか

規則の条文から、対象の範囲を確かめます。
対象になるのは、水素を充塡するための設備(圧縮水素を充塡するための設備)を備える給油取扱所で、そこに改質装置を追加で設ける場合です。
改質装置は自動車等が衝突するおそれのない屋外に設置することが土台の要件で、これはメチルシクロヘキサンを原料とするものも変わりません。
そのうえで、令和8年6月の改正はこの共通の枠組みの中に、メチルシクロヘキサンだけに当てはまる数値を書き加える形で進められました。
つまり新しい種類の許可ではなく、既存の改質装置の枠の中の特例だと理解すると位置づけが分かりやすくなります。
土台の基準は変わらなくて、原料ごとの数字が追加されたということですね。
そのとおりです。
次にその数字を具体的に見ていきましょう。
改質装置に何を備えればよいのか

タンクの容量、停止装置、そして取扱量の上限を順に見ます。
改質装置に接続する廃油タンクは、通常の改質装置では容量1万リットル以下とされていますが、メチルシクロヘキサンを原料とする場合に限り3万リットル以下まで認められます。
危険物の取扱量も同じ考え方で、通常の改質装置は指定数量の10倍未満までですが、メチルシクロヘキサンの改質装置は指定数量の150倍未満まで扱うことができます。
その代わり、原料のメチルシクロヘキサンだけでなく、水素や副産物のトルエンが漏えいした場合も、運転を自動的に停止させる装置を備えなければなりません。
大きな量を扱える分だけ、止める仕組みも幅広く備える、という組み合わせで基準が作られています。
扱える量が増えるぶん、止める仕組みも広くなっているんですね。
はい、量と安全装置はセットで見る必要があります。
次は普段の運用で見落としやすい点を確認しましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

ただし、緩んでいない部分も少なくありません。
自動車等が衝突するおそれのない屋外に設置することや、ポンプの吐出圧力が上がりすぎないようにする措置は、原料の種類にかかわらず共通してそのまま適用されます。
また、ガソリンや灯油を原料とする改質装置には、夜間の暖機運転を無人で行うための遠隔監視の仕組みが別に定められていますが、この仕組みがメチルシクロヘキサンの改質装置にそのまま当てはまるかは今回の通知に書かれていません。
自動停止装置の対象物質も、通常の改質装置は改質原料か水素の2つですが、メチルシクロヘキサンの改質装置は原料・水素・トルエンの3つが対象になる点が異なります。
150倍まで扱えるという数字だけを覚えるのではなく、何が共通で何が専用なのかを分けて確認しておくと現場で迷いません。
遠隔監視も同じように使えると思い込むところでした。
通知に書かれている範囲だけで判断するのが安全です。
迷ったら所轄の消防署に確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

新設・改修のどちらを検討している場合でも、確認する順番は同じです。 確認は原料・タンク・装置・数量の順で進めます。
まず、自社の給油取扱所に設ける、または設けている改質装置の原料がメチルシクロヘキサンかどうかを確認します。
そのうえで、接続する廃油タンクの容量が3万リットルの範囲に収まっているか、自動停止装置がメチルシクロヘキサン・水素・トルエンの3つの漏えいに対応しているかを確かめます。
最後に、改質装置で取り扱う危険物の量が指定数量の150倍未満に収まっているかを図面や仕様書で照合します。
新設を計画している場合は、この4点を設計の初期段階で所轄消防署と共有しておくと、許可申請の手戻りを防げます。
原料・タンク・装置・数量の順で確認すればいいんですね。
そのとおりです。
次に進む前に、この4点を書き出しておくと確実です。
よくある質問
まとめ
原料ごとに基準の数字が違う理由がよく分かりました!
タンクと停止装置、それに取扱量の3つを確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令等の公布について(令和8年6月29日 消防危第156号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する規則の一部を改正する省令(令和8年総務省令第83号)
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第25条・第27条の5
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





