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共同住宅用の消防用設備等はなぜ点検の内容が設備ごとに違うのか|共同住宅用非常コンセント設備だけ総合点検が不要な理由を解説

共同住宅の設備点検のイメージ

老朽化したマンションでも導入しやすいように、消防法令には共同住宅専用の代替設備が用意されています。
共同住宅用スプリンクラー設備や共同住宅用自動火災報知設備など、名前に「共同住宅用」と付く設備は全部で6種類あります。
ところがこの6種類、点検要領が求める点検の中身は実は一律ではありません。
共同住宅用非常コンセント設備だけ、総合点検が要らないという違いがあります。

うちのマンションには共同住宅用の設備がいくつも入っているんですが、点検は全部同じでいいんでしょうか。

実は1つだけ扱いが違う設備があるんです。
順番に見ていきましょう。

共同住宅用と付く設備は、まとめて同じ扱いだと思っていました。

名前が似ていても中身は別物です。
まず制度の成り立ちから確認しますね。

この記事の結論
  • 共同住宅の老朽化対策として認められた代替設備(共住省令)には、点検要領の中に固有の点検区分が用意されています。
  • 対象になるのは共同住宅用スプリンクラー設備・共同住宅用自動火災報知設備・住戸用自動火災報知設備・共同住宅用非常警報設備・共同住宅用連結送水管・共同住宅用非常コンセント設備の6種類です。
  • このうち5種類は機器点検(6か月に1回)と総合点検(1年に1回)の両方が必要です。
  • 共同住宅用非常コンセント設備だけは、通常の非常コンセント設備と同じ扱いで機器点検のみで足ります。
  • 建物全体が共同住宅(令別表第一(5)項ロ)であれば、消防署への点検結果の報告は3年に1回で足ります。

共同住宅用の消防用設備6種類の点検区分をまとめた図解

共同住宅用の設備はなぜ点検要領に加わったのか

老朽化した共同住宅の代わりの設備を定めた省令が公布される様子のイラスト
古いマンションに新しい設備を後付けするのは、配管スペースや電源の確保が難しく簡単ではありません。
そこで生まれたのが、共同住宅の構造をいかして負担を軽くした代替設備です。
「消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件の一部を改正する件」(平成18年消防庁告示第32号)が平成18年7月3日付けで公布されました。今回の改正は、(略)「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成17年総務省令第40号。以下「共住省令」という。)により、共同住宅用連結送水管及び共同住宅用非常コンセント設備の技術上の基準が示されるとともに、今般「共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準」(平成18年消防庁告示第17号)、「共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準」(平成18年消防庁告示第18号)、「住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備の設置及び維持に関する技術上の基準」(平成18年消防庁告示第19号)が新たに定められたことから、これらの消防用設備等について点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法(略)を定めたものです。
新しい設備を作っただけでは終わらず、点検のルールまでセットで整える必要がありました。
共住省令が平成17年に共同住宅用の代替設備を認めたことで、既存の点検要領には無い設備が一気に生まれました。
設置の基準だけ決めて点検の基準を後回しにすると、現場では「どう点検すればよいか分からない」設備が残ってしまいます。
そこで平成18年の告示改正で、これらの設備専用の点検の期間・方法が点検要領に書き加えられました。

設備を作った省令と、点検を決めた告示は別物なんですね。

そのとおりです。
設備を認める省令と、点検の中身を決める告示は別物です。

点検要領に加わった6種類の設備とはなにか

共同住宅用の6種類の消防用設備を並べたイラスト
対象になる設備は、共住省令が生んだ代替設備の一群です。
まずはこの6種類の顔ぶれを確認しておきましょう。
共住省令において新たに規定された必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等(共同住宅用スプリンクラー設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、共同住宅用非常警報設備、共同住宅用連結送水管及び共同住宅用非常コンセント設備)の点検の期間、点検の内容及び方法について定めたこと。
点検要領に加わったのは、通知本文が名前を挙げているこの6種類だけです。
共同住宅用スプリンクラー設備・共同住宅用自動火災報知設備・住戸用自動火災報知設備・共同住宅用非常警報設備・共同住宅用連結送水管・共同住宅用非常コンセント設備の6種類が、共住省令に基づいて設置される代表的な設備です。
いずれも一般的な消防用設備等(スプリンクラー設備、自動火災報知設備、非常警報設備、連結送水管、非常コンセント設備)の代わりに、共同住宅の構造に合わせて基準を緩和した設備という位置づけです。
逆にいえば、共住省令に基づかない一般の消防用設備等がそのまま設置されている場合は、この専用区分ではなく通常の点検区分が適用されます。

うちのマンションにある設備がどちらなのか、名称で確認できそうです。

点検票や銘板に書かれた設備の名称を見れば分かりますよ。

6種類の設備はどんな点検を求められているのか

点検のチェックリストとカレンダーで機器点検と総合点検の周期を示すイラスト
点検には機器点検と総合点検の2種類があり、それぞれ求められる頻度が違います。
共同住宅用の設備も、この枠組みの中に位置づけられています。
消防用設備等の種類等(略)共同住宅用スプリンクラー設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、共同住宅用非常警報設備、共同住宅用連結送水管(略) 点検の内容及び方法 機器点検 点検の期間 6月 点検の内容及び方法 総合点検 点検の期間 1年(消防法施行規則の規定に基づき消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件・平成16年消防庁告示第9号・平成18年消防庁告示第32号による改正後の第3)
共同住宅用スプリンクラー設備・共同住宅用自動火災報知設備・住戸用自動火災報知設備・共同住宅用非常警報設備・共同住宅用連結送水管の5種類は、一般のスプリンクラー設備や自動火災報知設備と同じ周期です。
機器点検は6か月に1回、外観や簡易な操作で確認できる範囲を見ます。
総合点検は1年に1回、実際に設備を作動させて総合的な機能を確かめます。
名前に「共同住宅用」と付いていても、点検の重さそのものが軽くなっているわけではありません。

共同住宅用だから点検も簡単になっていると思っていました。

設置の基準は軽くなっていますが、点検の周期は一般設備と同じですよ。

なぜ共同住宅用非常コンセント設備だけ総合点検が要らないのか

共同住宅用非常コンセント設備だけ点検の範囲が小さいことを示すイラスト
6種類のうち1つだけ、実は違うグループに分類されている設備があります。
見落とすと点検の抜け漏れにつながるので、ここが今回いちばんの落とし穴です。
消防用設備等の種類等 消火器具、消防機関へ通報する火災報知設備、誘導灯、誘導標識、消防用水、非常コンセント設備、連結散水設備、無線通信補助設備及び共同住宅用非常コンセント設備 点検の内容及び方法 機器点検 点検の期間 6月(同告示第3。総合点検の定めなし)
共同住宅用非常コンセント設備だけは、通常の非常コンセント設備・誘導灯・消火器具などと同じグループに入っています。
このグループは機器点検(6か月に1回)だけが定められており、総合点検の欄には記載がありません。
一方で残り5種類(共同住宅用スプリンクラー設備など)は、屋内消火栓設備や自動火災報知設備と同じグループで機器点検と総合点検の両方が必要です。
「共同住宅用」という名前だけを見て一律に扱うと、非常コンセント設備の点検計画を必要以上に重く見積もってしまったり、逆に他の5種類の総合点検を漏らしてしまったりしかねません。

非常コンセント設備だけ仲間はずれになっているのはなぜでしょう。

通常の非常コンセント設備と同じく、外観や導通を見れば足りる設備という扱いだからです。

明日からなにを確認すればよいのか

防火管理者が共同住宅用の設備を点検票と照らし合わせて確認するイラスト
点検の抜け漏れを防ぐには、まず自分のマンションにどの設備があるかを正しく把握することから始まります。
そのうえで、設備ごとに求められる点検の中身を点検票と突き合わせましょう。
第十七条の三の三 第十七条第一項の防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等(略)について、総務省令で定めるところにより、定期に、(略)点検させ、(略)その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
まずは設置されている設備の名称を点検票や銘板で確認することから始めます。
「共同住宅用」と付く名称であれば、今回の6種類のどれに当たるかを確かめてください。
共同住宅用非常コンセント設備であれば機器点検のみ、それ以外の5種類であれば機器点検と総合点検の両方が必要です。
なお建物全体が共同住宅(令別表第一(5)項ロ)であれば、点検結果を消防署へ報告する周期は3年に1回で足りますが、店舗など他用途を含む建物では周期が変わることがあるため、判断に迷ったら所轄消防署へ相談してください。

うちの点検票を見直して、設備の名称からもう一度確認してみます。

迷ったところは点検業者にも確認してもらうと安心ですよ。

よくある質問

Q共同住宅用スプリンクラー設備の点検は、一般のスプリンクラー設備と同じ頻度でよいか?
Aはい。共同住宅用スプリンクラー設備も点検の期間は他の多くの消防用設備等と同じく機器点検6か月・総合点検1年です。設備の名前が専用でも、点検の周期が特別に短縮・延長されているわけではありません。
Q共同住宅用非常コンセント設備と普通の非常コンセント設備は、点検方法も違うのか?
A点検要領上は同じグループに区分されており、機器点検のみ・6か月に1回という扱いも共通です。共同住宅用かどうかで点検方法が別枠になっているわけではありません。
Qマンションに共同住宅用の設備が複数種類設置されている場合、点検票はまとめて1枚でよいか?
A設備の種類ごとに点検内容と方法が定められているため、設備ごとに点検票を作成する必要があります。まとめて1回の訪問で行うこと自体は可能ですが、報告書は設備の種類等に応じて分けて作成してください。
Q建物の一部が店舗で残りが共同住宅の場合も、消防署への報告は3年に1回でよいか?
A報告の周期は防火対象物の用途区分で決まるため、共同住宅以外の用途を含む建物では1年に1回の報告が必要になることがあります。混在する用途がある場合は所轄消防署に確認してください。

まとめ

共同住宅の代替設備(共住省令)は平成17年に誕生しました。
平成18年の告示改正で、点検要領に固有の区分が加わりました。
対象は共同住宅用スプリンクラー設備など6種類です。
うち5種類は機器点検(6か月)と総合点検(1年)の両方が必要です。
共同住宅用非常コンセント設備だけは総合点検が不要です。
これは通常の非常コンセント設備と同じグループとして扱われているためです。
建物全体が共同住宅なら、消防署への報告は3年に1回で足ります。

点検票を見直して、うちの設備の名称から確認します!

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㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件の一部を改正する件(平成18年消防庁告示第32号・平成18年7月3日公布・消防庁予防課長通知)
  • 消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件(平成16年5月31日消防庁告示第9号・令和2年12月25日消防庁告示第19号による改正後)第3
  • 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)
  • 消防法第17条の3の3、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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