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特定共同住宅で消防用設備を代替するにはどんな建築構造が要るのか|耐火構造や防火戸そして配管の貫通部まで解説

共用廊下の防火戸を確認している技術者のイメージ

住戸が集まる共同住宅では、通常の消防用設備等をそのまま設置すると住戸ごとの点検や配線の負担が大きくなります。
そこで平成17年総務省令第40号は、一定の建築構造を満たした「特定共同住宅等」に限り、消火器具や共同住宅用スプリンクラー設備といった代替の設備に置き換えることを認めています。
ただしこの代替は無条件に使えるわけではなく、耐火構造の壁や防火戸、配管の貫通部の処理まで、建物側にも細かな構造基準が求められます。
本記事では特定共同住宅等として認められるために必要な建築構造上の要件を、平成17年消防庁告示第2号に沿って整理します

うちのマンションは階数が多くて、消防用設備の負担がとても大きいんです。

そのための代替設備の制度がありますが、建物の構造がいくつかの条件を満たしている必要があります。

構造の条件というと、具体的にはどんなところを見られるんですか。

耐火構造の壁や防火戸、配管の貫通部の処理まで、順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 特定共同住宅等として代替設備を使うには主要構造部が耐火構造であることが前提になります
  • 共用部分の壁や天井は準不燃材料で仕上げる必要があります
  • 住戸と住戸の間は開口部のない耐火構造の床又は壁で区画するのが原則です
  • 住戸と共用部分の間の開口部には防火戸を設け、面積にも上限があります
  • 壁を貫通する配管はすき間を不燃材料で埋めることまで求められます

特定共同住宅の建築構造要件として耐火構造や防火戸そして配管の貫通部の措置を示した図解

特定共同住宅で代替設備を使うにはどんな建築構造が要るのか

主要構造部が耐火構造であることを示すイメージ
消火器具や共同住宅用スプリンクラー設備といった代替設備は、どんな建物にも使えるわけではありません。
まず建物そのものが一定の構造基準を満たしていることが前提になります。
特定共同住宅等の位置、構造及び設備を定める件(平成17年消防庁告示第2号)第3第1号 主要構造部が、耐火構造(建築基準法第2条第7号に規定する耐火構造をいう。)であること。
同第3第2号 共用部分の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でしたものであること。
まず建物の骨組みと内装の仕上げが問われます
主要構造部が耐火構造でなければ、そもそも代替設備を使う対象になりません。
共用部分の壁や天井も、燃え広がりにくい準不燃材料で仕上げる必要があります。
この2つは特定共同住宅等のすべての類型に共通する土台の条件です。
図面や仕上げ表を確認するときは、まずこの2点から見ていくと効率的です。

うちの建物は柱も梁も鉄筋コンクリートですが、それだけで耐火構造と言えるんでしょうか。

建築確認や検査済証に耐火構造である旨の記載があれば大丈夫です。
念のため確認しておきましょう。

住戸と住戸の間はどんな防火区画にするのか

住戸と住戸の間を耐火構造の壁で区画することを示すイメージ
隣り合う住戸同士は、火が燃え移らないようにしっかり区切っておく必要があります。
原則の形と、やむを得ない場合の代わりの措置の両方を見ておきましょう。
同告示第3第3号 特定共同住宅等の住戸等は、開口部のない耐火構造の床又は壁で区画すること。ただし、床又は壁並びに配管等の貫通部が定める基準に適合する場合は、この限りでない。
同号(1) 床又は壁は、耐火構造であること。
同号(2) 住戸等の外壁に面する開口部は、外壁面から0.5メートル以上突出した耐火構造のひさし等で防火上有効に遮られていること。
住戸同士は原則として耐火構造の壁で完全に仕切ります
開口部のない耐火構造の床又は壁で区画するのが基本の形です。
やむを得ず外壁側に開口部が並ぶ場合は、外壁面から突き出した耐火構造のひさし等で炎の回り込みを防ぎます。
ひさし等を設けない場合は、開口部同士の距離や防火戸の設置など、別の基準を満たす必要があります。
隣の住戸の窓とどれだけ距離があるかは、設計段階で図面を確認しておく価値があります。

うちのマンションはベランダの窓が横に並んでいるんですが、これも対象になりますか。

外壁の開口部同士の距離やひさしの有無で扱いが変わります。
設計図で位置関係を確認しましょう。

住戸と共用部分を仕切る防火戸はどんな基準か

住戸と共用部分を区切る防火戸と換気口を示すイメージ
住戸の玄関側は、廊下などの共用部分との境目になります。
ここにも開口部の措置と面積の上限が定められています。
同告示第3第3号(3) 住戸等と共用部分を区画する壁は、次に定めるところによること。
イ 開口部には、防火設備である防火戸(主たる出入口に設けられるものは自動閉鎖装置付のものに限る。)が設けられていること。
ロ 開口部の面積の合計が一の住戸等につき4平方メートル(共用室にあっては、8平方メートル)以下であること。
ハ 一の開口部の面積は、2平方メートル以下であること。
住戸の玄関側は防火戸で共用部分と区切ります
主たる出入口の防火戸には、自動的に閉まる自動閉鎖装置が求められます。
換気口のような小さな開口部は、大きさや面する共用部分の性質によって扱いが分かれます。
開口部の面積にも上限があり、住戸等ごとに合計4平方メートル、共用室は8平方メートルまでとされています。
一つひとつの開口部も2平方メートルを超えないようにする必要があります。

玄関のドアが防火戸になっていれば、それだけで基準は満たしていますか。

ドアだけでなく、自動閉鎖装置の有無や換気口の面積も合わせて確認する必要があります。

壁を貫通する配管はどこまで対策が要るのか

壁を貫通する配管のすき間を不燃材料で埋めることを示すイメージ
給排水管や空調の配管は、区画された壁や床を貫通して通されることがよくあります。
この貫通部の処理を怠ると、区画そのものの意味がなくなってしまいます。
同号(4) 床又は壁を貫通する配管等及びそれらの貫通部は、次に定めるところによること。
イ 配管の用途は、給排水管、空調用冷温水管、ガス管、冷媒管、配電管その他これらに類するものであること。
ロ 配管等の呼び径は、200ミリメートル以下であること。
ハ 配管等を貫通させるために設ける開口部は、内部の断面積が直径300ミリメートルの円の面積以下であること。
ホ (略)当該配管と当該配管を貫通させるために設ける開口部とのすき間を不燃材料で埋めること。
配管が壁を貫通する部分は見落としやすい急所です
給排水管や空調の配管が住戸等の床や壁を通り抜けるとき、そのすき間から煙や炎が伝わってしまっては区画の意味がありません。
呼び径は200ミリメートル以下、貫通させる開口部も直径300ミリメートル相当の円の面積以下に収める必要があります。
配管とすき間の部分は不燃材料でしっかり埋め、可燃物が配管に触れないような措置も欠かせません。
配管ルートを決める設計段階から、この基準を意識しておくと手戻りを防げます。

リフォームでエアコンの配管を増やすとき、この基準は気にしたことがなかったです。

壁を貫通させる工事は区画の性能に直結します。
事前に呼び径とすき間の処理を確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が図面とチェックリストで構造を確認するイメージ
ここまでの基準は、図面や現地を見れば確認できるものばかりです。
最後に、確認の順番を整理しておきます。
  • 建築確認や検査済証で主要構造部が耐火構造であることを確認する
  • 共用部分の仕上げ表で準不燃材料が使われているかを確認する
  • 住戸間の壁に開口部が無いか、あればひさし等の措置があるかを図面で見る
  • 住戸の玄関側の防火戸に自動閉鎖装置が付いているかを確認する
  • 配管の貫通部にすき間が残っていないかを現地で目視する
特別な検査機器がなくても確認できる項目がほとんどです
図面で分からない部分は、建築確認時の書類や検査済証を管理会社や施工会社に確認してもらいましょう。
増改築やリフォームで壁に開口部を新設するときは、この基準に戻って再確認することをおすすめします。

自分たちの建物がどの条件を満たしているか、まずは図面から確認してみます。

分からないところがあれば、㈱防災屋にご相談ください。

よくある質問

Q耐火構造かどうかは自分たちでも確認できますか?
A新築時の建築確認済証や検査済証に構造の記載があります。耐火構造である旨の記載を確認すれば足ります。
Q住戸間の壁に窓があるマンションは対象外になりますか?
A対象外にはなりません。外壁面から突出したひさし等で遮る、または開口部同士の距離を確保するなど、代わりの基準を満たせば認められます。
Q玄関の扉はすべて防火戸にしなければなりませんか?
A住戸等と共用部分を区画する壁の開口部が対象です。主たる出入口には自動閉鎖装置付きの防火戸が求められます。
Qリフォームで壁に配管を新しく通す場合も基準がありますか?
Aあります。配管の呼び径や貫通部の開口部の大きさに加え、すき間を不燃材料で埋める措置が必要です。

まとめ

代替設備を使うには建物の主要構造部が耐火構造であることが前提です
共用部分の壁と天井の仕上げは準不燃材料にします
住戸間は開口部のない耐火構造の床又は壁で区画するのが原則です
やむを得ず外壁に開口部が並ぶ場合はひさし等で遮ります
住戸と共用部分の間の開口部には自動閉鎖装置付きの防火戸を設けます
開口部の面積は住戸等で4平方メートル、共用室で8平方メートルまでです
壁を貫通する配管は呼び径や開口部の大きさが決められ、すき間は不燃材料で埋めます

図面から一つずつ確認していけば、思ったより難しくなさそうです!

図面の読み方や耐火構造の確認方法など、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)
  • 特定共同住宅等の位置、構造及び設備を定める件(平成17年消防庁告示第2号)
  • 建築基準法第2条第7号・建築基準法施行令第1条第5号

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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