共同住宅は一つの建物の中に多数の住戸が集まっているため、消防用設備等の設計も一般のビルとは違う考え方が使われています。
共同住宅用スプリンクラー設備や共同住宅用自動火災報知設備は、住戸ごとに機器を分けたり、複数の受信機を組み合わせたりする独自の仕組みを持っています。
試験結果報告書にも、住戸ごとの実測値や機器同士の連携状況といった、この仕組みならではの記載欄が並びます。
今回は共同住宅用スプリンクラー設備と共同住宅用自動火災報知設備の試験結果報告書に何がどう書き込まれるのか、根拠となる基準とあわせて解説します。
うちのマンションはスプリンクラーが無い階もあるんですが、大丈夫なんでしょうか。
共同住宅用スプリンクラー設備は階数や面積の条件で設置範囲が決まる設備です。
試験結果報告書を見れば、うちの建物がどういう設計なのか分かるんですね。
はい、住戸ごとの実測値まで書き込まれています。
- 共同住宅用スプリンクラー設備は十一階以上の階など一定の条件に当てはまる部分だけに設置義務が生じる
- 放水性能は四個同時使用で放水圧力〇・一メガパスカル以上・放水量五十リットル毎分以上と定められている
- 戸外表示器はスプリンクラー設備と自動火災報知設備で共用でき、報告書の個数もまとめて数える
- 相互作動試験は住棟受信機と共同住宅用受信機が正しく連携しているかを確認する試験
- 遠隔試験機能を使えば住戸の外から警報を鳴らさずに機器の異常を確認できる
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目次
共同住宅用スプリンクラー設備はなぜ上層階だけに設置されるのか

ただしどの建物にも一律に設置するわけではなく、条件があります。
このほか、住戸利用施設の床面積の合計や、各部分の床面積に応じて設置対象になる部分も定められています。
記載例で見た地上十五階地下一階・全住戸数八十六戸の建物で、設置住戸数が二十六戸にとどまっていたのは、この条件によって上層階のまとまりだけが対象になったためと考えられます。
つまり設置戸数が少ないからといって、それだけで基準違反とは限らないということです。
設置されている戸数が少なくても、それだけで問題があるとは限らないんですね。
はい、階数と床面積の条件に沿っているかで判断します。
共同住宅用スプリンクラー設備の放水性能はどう定められているか

放水圧力と放水量には、下限となる数値が定められています。
記載例の住戸別一覧表では、階ごとの各住戸の放水圧力が〇・五四から〇・六〇メガパスカル、放水量が百十六から百二十二リットル毎分の範囲でばらついて記入されていました。
どちらも基準の数値を大きく上回っていて、実測値は下限からどれだけ余裕があるかを示す数字だと分かります。
共同住宅用スプリンクラー設備は住戸ごとに自動警報装置の発信部を分けて設ける設計のため、この性能確認も住戸単位で行われるのが特徴です。
普通のスプリンクラー設備と違って、住戸ごとに数値が分かれているんですね。
はい、住戸ごとの発信部で管理している設備だからです。
共同住宅用受信機や戸外表示器の設置個数はどう数えるか

試験結果報告書の設置個数の欄は、この共有関係を踏まえて数えます。
つまり一つの戸外表示器が、両方の設備の役割を同時に果たしていることがあるということです。
記載例で「共同住宅用受信機及び戸外表示器の設置個数は、共同住宅用スプリンクラー設備部分を含みます」と備考が付いていたのは、この共用関係を報告書の数字にも反映させるためだったと考えられます。
設置個数だけを見て設備の規模を判断すると、共用の分を見落とすおそれがあるということです。
表示器の数だけ見て、設備の規模を勘違いしそうです。
はい、共用の有無を報告書の備考で確認するのが確実です。
相互作動試験とは何を確認する試験か

この二つがきちんと連携しているかを確かめる試験があります。
一方の住棟受信機も、共同住宅用受信機から信号を受け取ると建物全体に火災表示を行う機能を持つと定められています。
相互作動試験は、この二方向の連携がどちらも正しく働くかを、実際に信号をやり取りさせて確認する試験だということです。
片方向だけ確認して終わりにすると、もう一方の不具合を見逃すおそれがあります。
片方向だけ確認しても、意味が無いということですね。
はい、双方向の連携を確かめて初めて意味を持ちます。
遠隔試験機能を使った試験中は警報を鳴らさないようにできるのか

遠隔試験機能は、この負担を減らすための仕組みです。
つまり点検の担当者は、住戸の外にいながら機器の異常の有無を確認でき、入居者は警報音に驚かされずに済みます。
ただし戸外表示器の警報まで止めるわけではないので、建物の外からの確認そのものはできる仕組みになっています。
入居者の生活に配慮しながら、必要な点検はきちんと行えるように作られた規定だということです。
点検のたびに部屋に入られなくて済むのはありがたいです。
はい、戸外表示器の警報は動くので確認自体は行えます。
よくある質問
まとめ
うちの建物の試験結果報告書を見返してみます!
読み方に迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令第二十九条の四
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成十七年総務省令第四十号)第二条・第三条
- 共同住宅用スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成十八年消防庁告示第十七号)
- 共同住宅用自動火災報知設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成十八年消防庁告示第十八号)
※本記事の内容は記事執筆時点の法令に基づいています。個別の建物における設置義務の有無や試験・点検の具体的な方法については、必ず所轄の消防署にご確認ください。





