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救助袋はなぜ垂直式と斜降式で降下速度の基準が違うのか|構造材質強度の基準も解説

救助袋は垂直式と斜降式で基準が分かれていることを示すアイキャッチ画像

「救助袋」は、垂直式と斜降式の2つの型式があり、避難器具の中でもとくに部材の種類が多い設備です。
消防法施行規則第27条第1項第11号は、救助袋の構造そのものを消防庁長官が定める基準に委ねています。
その基準は避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第九に定められており、垂直式と斜降式で降下速度も強度試験の数値も別々に決められています。
この記事では、告示第九の条文にもとづいて救助袋の構造・材質・強度の基準を整理します。

うちの救助袋、垂直式なんですが、
斜降式とは基準が違うんでしょうか。

はい、垂直式と斜降式は基準そのものが別々に定められています。
降下速度や落下防止の構造まで変わってきます。

知りませんでした。
どこにその基準があるんですか。

消防庁告示の中に、構造・材質・強度がまとめて定められています。
1つずつ条文で見ていきましょう。

この記事の結論
  • 救助袋は施行規則第27条第1項第11号により垂直式と斜降式の両方が消防庁長官が定める基準に適合しなければならない
  • 告示の用語の意義では救助袋=垂直又は斜めに展張し袋本体の内部を滑り降りるものと定義されている
  • 構成は入口金具・袋本体・緩衝装置・取手・下部支持装置で、垂直式は下部支持装置を省略できる
  • 降下速度は垂直式が毎秒4メートル以下、斜降式が毎秒7メートル以下と型式で異なる
  • 布の引張強さは1キロニュートン以上、表示事項は種別など5〜6項目

救助袋の構造材質強度の基準を示す図解

救助袋とは何を根拠にどんな基準に従うのか

建物の壁から地上まで垂れ下がる垂直式救助袋の全景を示すイラスト
救助袋は、垂直式と斜降式の2種類があり、避難器具の中でもとくに部材の種類が多い設備です。
まずは、この設備がどの条文にもとづいて基準づけられているのかを確認します。
消防法施行規則第27条第1項 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目は、次のとおりとする。
第10号 救助袋は、次のイからニまでに定めるところにより設けること。
イ 救助袋の長さは、避難上支障がなく、かつ、安全な降下速度を保つことができる長さであること。
第11号 避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く。)は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第二 用語の意義
七 救助袋 使用の際、垂直又は斜めに展張し、袋本体の内部を滑り降りるものをいう。
救助袋は、垂直式と斜降式のどちらも同じ条文の委任構造にもとづいています。
施行規則第27条第1項第10号は、救助袋の設置場所(長さ・取付け部分・取付け具)を定め、第11号はその構造そのものを消防庁長官が定める基準に委任しています。
この委任を受けているのが、避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第九です。
告示第二の用語の意義では、救助袋は垂直式斜降式のどちらも「使用の際、垂直又は斜めに展張し、袋本体の内部を滑り降りるもの」と定義されています。
点検の際は、まず設置されている救助袋が垂直式か斜降式かを確認し、どちらの規定を見ればよいかを見極めます。

同じ救助袋でも型式で条文が変わるとは知りませんでした。
まずはうちの型式を確認します。

それがいちばんの近道です。
次は救助袋を構成する部材を見てみましょう。

救助袋はどんな部材で構成されているのか

救助袋の入口金具の構成を示すイラスト
救助袋は、単なる1枚の布ではなく、複数の部材が組み合わさってできています。
まずは基本構造と、垂直式・斜降式で何が違うのかを確認します。
避難器具の基準 第九 救助袋の構造、材質及び強度
一 救助袋の構造は、次に定めるところによる。
(一)救助袋は、安全、確実かつ容易に使用される構造のものであること。
(二)救助袋は、入口金具、袋本体、緩衝装置、取手及び下部支持装置等により構成されるものであること。ただし、降着の際強い衝撃を受けるおそれのないものにあつては緩衝装置を、垂直式の救助袋にあつては下部支持装置を設けないことができる。
救助袋は、入口金具・袋本体・緩衝装置・取手・下部支持装置の5つで構成されます。
垂直式の救助袋は、地面側の固定を必要としないため下部支持装置を設けないことができますが、斜降式は角度を保つためにこの装置が欠かせません。
降着の際に強い衝撃を受けるおそれがない設置環境では、緩衝装置を省略できる場合もあります。
つまり同じ「救助袋」でも、垂直式と斜降式では部材の組み合わせそのものが変わってくるということです。
点検では、設置されている型式ごとに、本来あるべき部材がそろっているかをまず確認します。

下部支持装置が要らない場合があるんですね。
うちの救助袋の部材を数えてみます。

ぜひ確認してみてください。
続いて降下速度の基準を見ていきましょう。

垂直式と斜降式では降下速度と落下防止の基準はどう違うのか

垂直式と斜降式の救助袋を比較するイラスト
垂直式と斜降式は、降下する向きが違うだけでなく、速度や落下防止の基準も別々に定められています。
ここが救助袋の基準の中でもとくに重要な分かれ道です。
避難器具の基準 第九
一(三)垂直式の救助袋にあつては、次によること。
ハ 袋本体は、連続して滑り降りることができるものであり、かつ、平均毎秒4メートル以下の速度で途中で停止することなく滑り降りることができるものであること。
ト 袋本体の滑降部は、落下防止のため、布を重ねた二重構造のもの又は外面に網目の辺の長さが5センチメートル以下の無結節の網を取り付けたものであること。ただし、構造上落下防止の性能を有する袋本体にあつては、この限りでない。
(四)斜降式の救助袋にあつては、(三)、イ、ロ及びニからトまでによるほか、次によること。
ロ 袋本体は、連続して滑り降りることができるものであり、かつ、平均毎秒7メートル以下の速度で途中で停止することなく滑り降りることができるものであること。
降下速度の上限は、垂直式が毎秒4メートル、斜降式が毎秒7メートルと定められています。
垂直式は真下に落ちる分だけ速度をおさえ、斜降式は角度がついて自然に減速する分、上限が高く設定されているとみられます。
落下防止の構造も型式で条文が分かれており、垂直式は二重構造の布または網目5センチメートル以下の無結節の網のいずれかを備える必要があります。
斜降式は滑り降りる方向の縫い合わせ部を設けない構造とし、緩衝装置として受布と保護マットを取り付けることが求められます。
点検では、速度の実測はできなくても、二重構造や網の破れ、縫い合わせ部の状態を目視で確認できます。

斜降式のほうが速く滑ってよいんですね。
次回点検で二重構造の状態を見てみます。

はい、ぜひ確認してみてください。
次は強度試験の数値を見ていきましょう。

救助袋の強度試験はどんな数値で定められているのか

救助袋の布地を引張試験機にかける様子を示すイラスト
救助袋は、人の体重を支えながら滑り降りる設備なので、部位ごとに強度の基準があります。
ここでは、布そのものの強度試験の数値を確認します。
避難器具の基準 第九
三 救助袋の強度は、次に定めるところによる。
(一)救助袋に用いる布は、JIS L 一〇九六(一般織物試験方法)の引張強さの試験及び引裂強さの試験を行つた場合、引張強さについては1キロニュートン(覆い布にあつては0.8キロニュートン)以上、引裂強さについては0.12キロニュートン(覆い布にあつては0.08キロニュートン)以上の強度を有するものであること。
(二)救助袋は、入口金具、展張部材、下部支持装置、袋本体と下部支持装置との結合部分、本体布と袋取付枠との結合部分、展張部材と袋取付枠との結合部分及び展張部材相互の結合部分に作用する救助袋の自重、積載荷重、風圧等に対して、構造耐力上安全なものであること。
布そのものの引張強さは1キロニュートン以上、覆い布は0.8キロニュートン以上が条件です。
引裂強さは0.12キロニュートン以上(覆い布は0.08キロニュートン以上)と、引張強さより小さな数値で定められています。
さらに入口金具・展張部材・下部支持装置など各部の結合部分は、救助袋の自重・積載荷重・風圧等に対して構造耐力上安全でなければなりません。
縫糸や縫い合わせ部にも十分な引張強さ・引掛強さが求められ、緩みが生じないことも条件です。
点検では、布の摩耗やほつれ、縫い目のゆるみがないかを、とくに折り目や結合部分を中心に確認します。

結合部分まで基準があるとは知りませんでした。
折り目のあたりを重点的に見てみます。

ぜひお願いします。
最後に表示事項を確認しましょう。

救助袋に表示すべき事項はどこまで求められるのか

救助袋の表示板を確認するイラスト
最後に、救助袋に表示しておくべき事項を確認します。
垂直式と斜降式で、表示項目が1つだけ変わります。
避難器具の基準 第九
四 救助袋には、次に定める事項を、その見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。
(一)種別
(二)製造者名又は商標
(三)製造年月
(四)製造番号
(五)設置階数
(六)展張方向(斜降式の救助袋に限る。)
表示事項は種別・製造者名又は商標・製造年月・製造番号・設置階数の5項目が基本です。
これに加えて、斜降式の場合は展張方向の表示も必要で、あわせて6項目になります。
垂直式には展張方向の表示は求められていないため、型式によって確認すべき項目が変わる点に注意します。
表示が見やすい箇所にあるか、消えかけていないかも点検のたびに確かめておきたいポイントです。
日頃の点検では、構造・材質・強度・表示の4点をあわせて見ておくと確認漏れを防げます。

垂直式には展張方向の表示が要らないんですね。
今度の点検で表示項目も数えてみます。

はい、ぜひ確認してみてください。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q救助袋は施行規則のどの規定にもとづいていますか?
A施行規則第27条第1項第10号が設置場所の基準、第11号が構造の基準を消防庁長官が定める基準に委任しており、その内容が避難器具の基準(告示)第九に定められています。
Q垂直式の救助袋に下部支持装置は必ず必要ですか?
A必須ではありません。垂直式の救助袋は下部支持装置を設けないことができると告示に定められており、地面側の固定が不要な構造です。
Q垂直式と斜降式で降下速度の基準に違いはありますか?
Aあります。垂直式は平均毎秒4メートル以下、斜降式は平均毎秒7メートル以下と、それぞれ別の速度が定められています。
Q救助袋の展張方向の表示が必要なのはどんなときですか?
A斜降式の救助袋のときです。垂直式には展張方向の表示は求められていません。

まとめ

救助袋は施行規則第27条第1項第11号により消防庁長官が定める基準に適合しなければならない
対象は避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)第九が定める垂直式・斜降式の救助袋
構造は入口金具・袋本体・緩衝装置・取手・下部支持装置で構成され、垂直式は下部支持装置を省略できる
降下速度は垂直式が毎秒4メートル以下、斜降式が毎秒7メートル以下
落下防止は二重構造の布または網目5センチメートル以下の無結節の網で確保する
布の引張強さは1キロニュートン以上(覆い布は0.8キロニュートン以上)
表示事項は種別・製造者名又は商標・製造年月・製造番号・設置階数に加え、斜降式は展張方向も必要

垂直式と斜降式で基準がここまで違うことがよく分かりました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則第27条第1項第10号・第11号(e-Gov法令検索)
  • 避難器具の基準(昭和53年3月13日消防庁告示第1号、最終改正令和元年6月28日消防庁告示第2号)第二・第九 救助袋の構造、材質及び強度

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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