救急業務は消防法上、市町村の事務として整理されています。
しかし、財政や体制の事情で、救急業務を行っていない市町村も実際にあります。
交通事故が起きやすい道路や、長く延びる高速道路ではどうなるのでしょうか。
消防法は、こうした道路の救急業務を都道府県が引き受ける仕組みを定めています。
うちの町、救急車が来るまでなんか時間かかる気がするんですよね。
実は、救急業務を行っていない市町村も法律上は想定されているんです。
え、そんな市町村があるんですか。
はい、そのときに道路をどう守るか、消防法に仕組みがあるんです。
- 救急業務を行っていない市町村の道路でも、一定の条件で救急業務が確保されます
- 交通事故が頻発する道路については、都道府県知事が他の市町村へ実施を要請できます
- 高速自動車国道・一般国道の政令で定める区間は、都道府県が自ら救急業務を行います
- この区間に従事する都道府県の職員は、地方公務員法の適用について消防職員とみなされます
- 救急隊には第二十七条の緊急通行権や、市町村との相互応援の仕組みも準用されます
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目次
救急業務を行っていない市町村の道路はどうなるのか

しかし、交通事故が頻発する道路を抱えながら、救急業務そのものは行っていない市町村も想定されています。
対象になるのは、救急業務を行っていない市町村の区域にある道路のうち、交通事故の発生が頻繁だと認められる区間です。
都道府県知事は、関係する市町村の意見を聴いたうえで、すでに救急業務を行っている近くの市町村へ実施を要請します。
要請を受けた市町村は、その要請に係る救急業務を行うことができるという立場であり、必ず応じなければならないわけではありません。
まずはこの要請の仕組みが、道路の救急業務の穴を埋める第一の手段になっています。
うちの近くの国道も、もしかしてそうなんですかね。
可能性はあります。
第三十五条の九が、その穴をどう埋めるか定めています。
高速道路や国道ではなぜ都道府県が自ら救急業務を担うのか

高速道路や主要な国道では、都道府県自身が救急業務を担う区間があります。
対象は、救急業務を行っていない市町村の区域に係る高速自動車国道又は一般国道のうち、政令で指定された区間に限られます。
前の節の要請によって、すでに他の市町村が救急業務を行っている道路の区間は、この直接実施の対象から除かれます。
ここでの都道府県の実施は「行うことができる」ではなく「行うものとする」という言い方で定められており、要請の仕組みよりも義務的な性格を持っています。
高速道路を使うときに、どの行政主体が救急業務を担っているかを意識する場面は多くありませんが、法律上はこのように整理されています。
都道府県が、よその市町村にお願いするのとは別の話なんですね。
そうです。
高速道路では、都道府県が自分で担う形になっています。
都道府県の救急業務にあたる職員はどんな身分になるのか

通常の市町村の救急隊員とは、所属する組織が異なります。
通常、都道府県と市町村の職員は別の組織に属していますが、この規定により地方公務員法の適用関係に限って読み替えが生じます。
高速道路の救急業務を直接実施する都道府県の職員を、制度上は市町村の消防職員と同じ枠に置くことで、身分上の扱いを整えています。
消防職員としての扱いが及ぶのは地方公務員法の適用に関する部分であり、どの業務でもすべて同じ扱いになるわけではありません。
高速道路で救急業務にあたる都道府県の職員を見かけたときは、このような身分上の整理がされていることを知っておくとよいでしょう。
都道府県の職員さんなのに、消防職員って呼ばれるのは不思議ですね。
地方公務員法の適用に限った読み替えなんです。
都道府県の救急隊には消防隊と同じ通行の権限が及ぶのか

これにも消防法上の根拠があります。
もとになる第二十七条は、消防隊が火災の現場に到着するために緊急の必要があるとき、一般交通の用に供しない通路や公共の用に供しない空地・水面を通行できると定めた規定です。
第三十五条の十一第一項は、この規定の「火災の現場に到着する」を「救急業務を実施する」と読み替えて、救急隊にも同じ権限を及ぼしています。
つまり、救急業務を実施するために緊急の必要があるときは、救急隊も通常の通行ルールにとらわれずに現場へ向かうことができます。
これは都道府県の救急隊に限った話ではなく、市町村の救急隊にも同じように及ぶ準用です。
救急車が渋滞をよけて走ってるのも、法律の話なんですか。
はい。
第二十七条が準用されて、緊急時は私道も通れるんです。
都道府県と市町村はどうやって救急業務で連携すればよいのか

消防組織法にある市町村どうしの仕組みが、ここにも関わってきます。
もとになる消防組織法第三十九条は、市町村どうしが必要に応じて消防に関し相互に応援するよう努め、市町村長が協定を結べると定めた規定です。
第三十五条の十一第二項は、この「市町村」を「市町村及び都道府県」、「消防」を「救急業務」、「市町村長」を「市町村長及び都道府県知事」と読み替えて準用しています。
これにより、都道府県が直接実施する救急業務についても、周辺の市町村と相互に応援し合う努力義務や、協定を結ぶ道が開かれています。
自分の地域の救急体制が気になる場合は、まず所轄の消防本部や都道府県の担当窓口に、どの道路の区間が対象になっているかを確認するのがよいでしょう。
都道府県とうちの市町村、ちゃんと連携できてるのか気になります。
相互に応援する努力義務も準用されています。
気になるときは消防本部に確認してみてください。
よくある質問
まとめ
道路の救急業務の仕組みがわかって安心しました!
気になる区間は、消防本部や都道府県の窓口で確認できます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第三十五条の九・第三十五条の十一(e-Gov法令検索)
- 消防法第二十七条(e-Gov法令検索)
- 消防組織法第三十九条(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





