EVの普及とともに、駐車場やビルの片隅で急速充電器を見かけることが増えました。
以前は大きな出力の充電器ほど変電設備の一種として扱われていましたが、令和5年の見直しで区分が整理されました。
対象になるかどうかは、出力と充電のしくみで機械的に決まります。
消防庁の通知が示したのは全出力20キロワットという一本の線引きです。
うちのビルの駐車場に急速充電器を置きたいと言われたのですが、消防の基準がかかるかどうかは何で決まるのですか。
出力が20キロワットを超えるかどうかが最初の分かれ目です。
令和5年の通知で、これまでの上限が撤廃されて下限だけの整理になりました。
うちの充電器がどちらに当たるのか、正直わかっていません。
それなら確かめましょう。
出力とコネクターの形、そして本体と充電ポストが分かれているかどうかを、順番に見ていきます。
- 全出力が20キロワットを超える急速充電設備が対象火気設備等になります
- 以前あった全出力200キロワットの上限は撤廃されました
- 対象になるのはコネクターを使う「コネクター型」に限られます
- 分離型の充電ポストは距離や不燃筐体の基準が一部除かれます
- 設置の届出が必要になるのは全出力50キロワットを超える場合です
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目次
なぜ急速充電設備の出力上限が撤廃されたのか

結論は、多くの人が予想したものとは逆でした。
内閣府の規制点検タスクフォースがEV普及のための充電インフラ整備を求めたことがきっかけです。
消防庁が高出力機の実態を調べたところ、出力が大きいこと自体が新たな火災リスクにはつながらないとわかりました。
そこで全出力200キロワットという上限を無くし、全出力20キロワットという下限だけを対象の境目にする改正が、令和5年10月1日に施行されました。
以前は高出力の充電器を変電設備の一種として扱っていたため、この改正で急速充電設備という独立区分に整理し直されたことになります。
出力が大きいほど危険だと思っていました。
実際には出力そのものより、絶縁確認や自動停止の仕組みがあるかどうかの方が重要だと分かったんです。
まずは自分の設備が対象になるかを次で確認しましょう。
どこからが対象火気設備等になる急速充電設備なのか

条例(例)の定義を見れば、境目は一つの数字と一つの言葉に集約されています。
全出力が20キロワット以下の充電器は、そもそも対象火気設備等になりません。
20キロワットを超えていても、電気自動車等にコネクターを差し込んで充電する「コネクター型」でなければ対象外で、その場合は変電設備として扱われます。
充電できる対象も、令和5年の改正で自動車や原動機付自転車だけでなく船舶や航空機まで広がりました。
屋外に設ける出力50キロワット超の設備は、建築物から3メートル以上の距離を保つことも条例(例)の基準に含まれています。
うちの駐車場の充電器は一体型なので、コネクター型に当たりそうです。
それなら対象です。
次は設備本体と充電ポストが分かれる分離型の扱いを見てみましょう。
分離型の急速充電設備はなぜ充電ポストだけ基準が緩むのか

この分離型には、通常の急速充電設備とは違う扱いが用意されています。
分離型は、変圧する機能を持つ設備本体と、コネクターと充電用ケーブルを収納するだけの充電ポストに分かれます。
充電ポストは変圧しないぶん出火の危険性が低いとされ、建築物からの距離や不燃材料の筐体という基準は充電ポストには適用されません。
ただし基準が外れるのは充電ポストの構造だけの話で、ポストの中に蓄電池を内蔵してよいわけではありません。
保安のために設ける蓄電池を除き、充電ポストへの蓄電池の内蔵は条例(例)で禁じられています。
本体と離れた場所にポストだけ置けば、それだけ基準が甘くなるということですか。
甘くなるのはポストの構造基準だけです。
本体側は変圧する設備として、これまでどおりの基準がかかります。
実務で見落としやすいのはどこか

ここを混同すると、届出のタイミングを誤ります。
対象火気設備等になるのは全出力20キロワットを超える急速充電設備ですが、あらかじめ消防長へ設置の届出をしなければならないのは、そのうち全出力50キロワットを超えるものに限られます。
つまり全出力20キロワット超50キロワット以下の急速充電設備は、位置・構造・管理の基準は満たす必要がある一方で、設置前の届出そのものは義務付けられていません。
分離型を導入する場合は、電気設備室の床面積を計算するときに設備本体だけを数え、充電ポストの床面積は含めないという点も見落としやすいところです。
給油取扱所に設置する場合は可燃性蒸気が滞留する範囲という危険物側の基準がさらに加わるため、置き場所を決める前に別の基準も確認しておく必要があります。
対象になる基準と届出が要る基準が違うなんて、混同していました。
よくある勘違いです。
出力を20キロワットと50キロワットの両方で確かめるくせをつけておいてください。
明日からなにを確認すればよいのか

数字を2つ、種類を2つ、この4点を押さえれば大きく外しません。
まず全出力を確認し、20キロワット以下なら対象外、20キロワットを超えていれば対象火気設備等になります。
次にコネクターを使って充電する「コネクター型」かどうかを確認し、分離型であれば充電ポストと設備本体のどちらに機能があるかを図面で確かめます。
蓄電池を内蔵している場合は、それが保安のために設けるものかどうかで基準が変わるため、施工業者に確認してください。
そのうえで全出力が50キロワットを超えるようであれば、設置前に消防長(消防署長)への届出を済ませておきます。
出力と型式さえ確認すれば、あとは業者に任せて大丈夫そうです。
それで十分です。
次はよくある質問で、細かい確認ポイントをまとめておきます。
よくある質問
まとめ
出力と型式を確認するところから始めればいいと分かりました!
対象かどうかの見極めと届出のタイミングを、20キロワットと50キロワットという2つの数字で押さえれば手戻りはありません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 改正火災予防条例(例)の運用について(通知)(令和5年2月21日 消防予第113号 消防庁予防課長)
- 急速充電設備等に係る運用について(通知)(令和5年2月28日 消防予第126号 消防庁予防課長)
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日 自消甲予発第73号 消防庁長官)第11条の2・第44条
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





