給油取扱所は、敷地の形や周りの環境が一つひとつ違います。
隣に川や用水路が流れていたり、敷地の隣に駐車場があったり、冬の凍結が心配な地域だったりします。
昭和40年から42年にかけての消防庁の質疑応答には、こうした敷地の事情に関する問い合わせが残っています。
この記事では、そのうちの五つの論点を取り上げ、現行の危険物の規制に関する政令や規則と照らして読みます。
どこまでが認められ、どこからが認められないのかを、順に確かめます。
給油取扱所の敷地って、川の上にまで広げられるものなんでしょうか。
はい。
条件つきで認められた例があるので、条文と合わせて確かめます。
昔の質疑応答は、今の政令とどうつながるんでしょうか。
一つずつ確かめます。
現行の条番号に読み替えながら読みます。
- 敷地の一部が河川の上にかかる場合も、その部分が車の荷重に十分耐え、危険物が河川に流入しないものなら、給油取扱所の空地とみなして差し支えないとされました
- 用水路の上にコンクリートのスラブを打って出入口を設ける場合は、厚さ9ミリメートルの鉄板で覆えば間口10メートルと解してよいと答えています
- 隣家の採光のために、へいの一部にガラスブロックを使うことは、政令第23条の基準の特例として認められました
- 駐車場へ出入りする通行路は「自動車等の出入りする側」に当たらず、境には防火へいを設けさせるべきだとされました
- ロードヒーティングは、漏電検知装置・自動温度調整装置・絶縁抵抗の測定などを条件に、設置が認められました
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目次
河川の上にかかる敷地は、給油取扱所の空地として認められるのか

政令第17条第1項第2号は、固定給油設備のホース機器の周囲に、間口10メートル以上、奥行6メートル以上の空地(給油空地)を保有することを求めています。
敷地のすぐ横を川が流れていて、川をまたいで隣の土地まで広げたい、という相談がありました。
(昭和40年3月22日 自消丙予発第43号 予防課長から回答)
答えが挙げた条件は、現行の規則にも対応する定めがあります。規則第24条の16は、給油空地の舗装に想定される自動車等の荷重により損傷するおそれがないことを求めています。また、政令第17条第1項第5号は、漏れた危険物が空地以外の部分に流出しないための措置を求めています。
上げ蓋を設けさせないという答えは、川の上の床版に開口を作れば、そこから危険物が河川へ流れ込むおそれがあるため、と読めます。ただし、河川の占用の許可は河川管理者の権限で、消防の基準とは別に必要です。
川の上でも、荷重と流入を防げば空地になるんですね。
はい。
床版の強さと、河川への流入防止がポイントです。
用水路をコンクリートのスラブでふさいだ出入口は、間口10メートルに数えられるのか

この用水路の上に、幅3メートルの鉄筋コンクリートのスラブを打ち、出入口を4か所設ける計画です。給油空地の間口10メートルの規定との関係が問われました。
(昭和40年4月9日 自消丙予発第64号 予防課長から回答)
間口10メートルは、政令第17条第1項第2号の数字です。現行の規則第24条の14は、給油空地に、自動車等が安全かつ円滑に出入りすることができる幅で道路に面していることを求めています。
答えの最後にある政令第23条は、市町村長等が、周囲の状況などから判断して、基準によらなくても火災の発生と延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときに、基準を適用しない特例です。ただし、図面の寸法が違えば結論も変わりうるため、実際の敷地では所轄の消防機関に図面を見せて確かめます。
用水路の上でも、覆えば出入口に数えられるんですね。
はい。
出入口の幅を、どこまで数えるかが論点でした。
隣家の日当たりのために、へいの一部をガラスブロックにしてもよいのか

政令第17条第1項第19号は、自動車等の出入りする側を除き、高さ2メートル以上の塀又は壁で、耐火構造のもの又は不燃材料で造られたものを設けることを求めています。
隣の家が2階建てだと、2メートル以上の塀が日当たりをさえぎるため、透光性のある材料を使いたいという相談がありました。
(昭和40年6月21日 自消丙予発第110号 予防課長から回答)
当時の第13号(現行の第19号)が求める材料の範囲を外れる材料であるため、基準どおりではなく、特例で認めるという形をとっています。
現行の規則第25条の4の2は、給油取扱所の塀又は壁に、開口部を有しないことを求めています。ただし、防火設備のはめごろし戸で、ガラスを用いるなら網入りガラスのものは、開口部から除かれています。さらに、告示で定める火災が発生した場合の輻射熱の要件もあります。
現行の規則では、ガラスブロックがどう扱われるかは条文だけでは読み切れません。同じ計画を考えるときは、事前に所轄の消防機関に確認します。
ガラスブロックも、特例で認められたんですね。
はい。
今の規則は開口部に厳しいので、事前の確認が欠かせません。
駐車場へ出入りする通行路との境に、防火へいは要らないのか

駐車場に出入りする車が、給油取扱所の空地を通り抜ける状態になっており、消防機関は、境界に防火へいを設けるよう指導していました。事業者は、車の転回や出入りに支障が出ると反対していました。
(昭和40年8月26日 自消丙予発第139号 予防課長から回答)
現行の政令第17条第1項第19号は、自動車等の出入りする側を除き、周囲に塀又は壁を設けることを求めています。この「出入りする側」は、給油取扱所へ給油のために出入りする側を指すと読むのが自然です。駐車場へ向かうだけの通行路は、これに当たらないというのが答えの筋道です。
三方を開放し、条件をつけて防火へいを省く案(4)は、この答えによって、(3)と同じく認められない扱いになっています。
駐車場の通り道は、出入りする側には入らないんですね。
はい。
給油のための出入口だけが、へいの例外です。
給油空地の地面にロードヒーティングを設けるには、どんな条件があるのか

地面に電熱ケーブルを埋めて融雪する設備について、二度にわたり回答が示されています。
(昭和40年10月12日 自消丙予発第157号 予防課長から回答)
(昭和42年7月25日 自消丙予発第55号 予防課長から回答)
当時の第14号にあたる電気設備の規定は、現行の政令では第17条第1項第21号です。これは、電気設備を、製造所の電気設備の例により、電気工作物に係る法令の規定によるものとしています。
一度目の回答は、ケーブルの荷重、漏電の検知、温度調整、絶縁抵抗の測定を挙げています。二度目の回答は、ケーブルを埋める深さや、マンホールなどからの離隔を数字で示し、その位置での設置を認めました。
ヒーティングは、地下タンクの直上に近い位置に電気を通す設備を置くことになります。そのため、漏電の検知や温度の制御という、電気の事故を早く止める仕組みが条件の中心になっています。
電気の設備は、検知と制御がセットなんですね。
はい。
漏電の検知・温度の制御・絶縁の測定が、条件の柱でした。
よくある質問
まとめ
質疑応答が、条文とつながりました。
うちの敷地も、今の政令で確かめてみます!
質疑応答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第17条・第23条
- 危険物の規制に関する規則第24条の14・第24条の16・第25条の4の2
- 昭和40年3月22日 自消丙予発第43号(敷地の一部が河川上にかかる危険物給油取扱所の取り扱いについて)
- 昭和40年4月9日 自消丙予発第64号(用水路上の鉄筋コンクリートスラブと間口について)
- 昭和40年6月21日 自消丙予発第110号(給油取扱所のへいにガラスブロックを使用することについて)
- 昭和40年8月26日 自消丙予発第139号(給油取扱所の敷地内を通行路としている駐車場について)
- 昭和40年10月12日 自消丙予発第157号・昭和42年7月25日 自消丙予発第55号(給油取扱所におけるロードヒーティングの取り扱いについて)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





