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マージャン店で死者4人の火災が起きたあと消防庁は何を求めたのか|防火管理者の未選任などを指摘した通知の内容を解説

マージャン店火災の当日に出た通知は何を求めたのか

マージャン店で大きな火災が起きると、同じ業種のお店の経営者は「うちは大丈夫か」と落ち着かなくなるのではないでしょうか。
平成21年11月17日の未明、静岡県浜松市のマージャン店で火災があり、消防庁予防課長は同じ日に、消防予第497号で全国の消防へ防火安全対策の徹底を求めました。
ただし、この通知は新しい義務を作る法令ではなく、火災の原因も確定していない段階で出されています。
この記事では、通知が出された理由、対象、求めた内容、読むときの落とし穴、確認手順を、通知と現行の条文をもとに解説します。

マージャン店の火災があると、同業のうちも心配になります。
国は、そのとき何を求めるのですか。

消防庁は火災と同じ日に、防火安全対策の徹底を求める通知を出しました。
まず、通知の文面を確かめましょう。

法令が変わったのか、それとも別の話なのか知りたいです。

新しい義務を作る通知ではありません。
順番に整理します。

この記事の結論
  • 消防庁予防課長は平成21年11月17日の消防予第497号で、浜松市のマージャン店火災を受けて、類似の危険性を有する防火対象物への防火安全指導を徹底するよう求めました。
  • 通知に添付された第2報(11月17日14時30分現在)では、死者4人、負傷者3人とされ、火災原因は調査中でした。
  • 通知は、防火管理者の未選任など防火安全対策の不備が指摘されていると述べ、法令違反が認められた場合は違反処理規程等に基づき迅速に是正措置を講じるよう求めています。
  • 建物は(2)項ロのマージャン店で、最新の立入検査は平成15年11月6日、指摘事項は消火器一部未設置・誘導灯一部未設置・防火管理者未選任でしたが、通知は指摘事項と火災との関係を述べていません。
  • 現行の政令は、(2)項ロの遊技場について収容人員が30人以上なら防火管理者を定める防火対象物としています(令第1条の2第3項第1号ロ)。

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マージャン店の火災を受けた防火安全対策を、火災の発生、類似の危険性を有する建物という対象、防火安全指導の徹底、違反への迅速な是正措置、市町村への周知の五段階で示した図解

消防庁はなぜマージャン店の火災と同じ日に通知を出したのか

二階建ての商業ビルの右に、封筒と小さな炎の形が置かれたイラスト
この通知は、火災の当日に出された防火安全対策の徹底の依頼です。
まず、通知の書き出しで経緯を確かめます。
消防予第497号「マージャン店における火災を踏まえた防火安全対策の徹底について」(平成21年11月17日、消防庁予防課長)は、次のように述べています。
本日未明に発生した静岡県浜松市のマージャン店における火災によって、死者4人、負傷者3人の被害が発生しました(別添参照)。現在、この火災については関係当局により火災原因の究明が行われているところですが、同店に関しては、防火管理者の未選任など、防火安全対策の不備が指摘されているところです。
通知は、火災の当日に出された防火安全対策の徹底の依頼です。
宛先は、各都道府県消防主管部長、東京消防庁、政令指定都市消防長です。
通知には、消防庁がまとめた火災の第2報(平成21年11月17日14時30分現在)が別添として付いています。
別添の火災原因の欄は「調査中」で、通知の時点では原因が分かっていません。
なお、別添は建物名や住所も記していますが、この記事では載せません。
項目別添(第2報)の内容
火災の日時平成21年11月17日、覚知は3時29分、鎮圧は4時16分、鎮火は4時59分
被害死者4人(すべて男性)、負傷者3人(中等症2人、軽症1人)
建物の用途マージャン店(消防法施行令別表第一(2)項ロ)
建物の規模鉄骨造、地上2階、建築面積117.53平方メートル、延べ面積211.05平方メートル、焼損程度は全焼
最新の立入検査平成15年11月6日、指摘事項は「消火器一部未設置・誘導灯一部未設置・防火管理者未選任」
火災原因調査中

火災の原因がまだ分からない段階で、通知が出たのですね。

はい。
原因の究明を待たずに、類似の建物へ防火安全対策の徹底を呼びかけています。

通知の対象になる「類似の危険性を有する防火対象物」とはどんな建物なのか

同じ形の小さな店舗が三つ並び、その右に白紙の看板が立つイラスト
通知は、対象を「類似の危険性を有する防火対象物」と書いています。
令別表第一の用途区分と合わせて確かめます。
消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)別表第一(二)項ロ
遊技場又はダンスホール
通知は「類似の危険性を有する防火対象物」と書くだけで、範囲を定義していません。
別添は、火災のあったマージャン店の用途を令別表第一の(2)項ロと記しています。
つまり、同じ区分の遊技場を営む方は、通知を読んでおく価値があります。
ただし、どこまでが「類似の危険性を有する」建物にあたるかは、通知に書かれていません。
項目通知や別添での扱い
火災のあった建物の用途マージャン店(令別表第一(2)項ロ)と記載
建物の構造・階数鉄骨造、地上2階(延べ面積211.05平方メートル)
通知の対象類似の危険性を有する防火対象物。範囲は通知に書かれていない

うちが(2)項ロなら、まず対象として読んでおけばよいですね。

はい。
通知の範囲は書かれていないので、自分の建物の用途から確かめてください。

通知は消防機関にどんな対応を求めたのか

白紙のチェック表の右に、消火器と緑の避難口誘導灯が並んだイラスト
求めは三つあります。
通知の後半の文章で確かめます。
消防予第497号(平成21年11月17日)の後半は、次のように述べています。
各消防機関においては、このような火災の発生を防止するため、類似の危険性を有する防火対象物に対する防火安全指導を徹底するとともに、消防法令違反が認められた場合には違反処理規程等に基づき迅速に是正措置を講じるなど、防火安全対策のより一層の徹底を図られるようお願いします。各都道府県においては、貴都道府県内の市町村に対してこの旨周知をお願いします。
通知が求めたのは、防火安全指導の徹底、迅速な是正措置、市町村への周知の三つです。
一つ目は、類似の危険性を有する防火対象物に対する防火安全指導を徹底することです。
二つ目は、消防法令違反が認められた場合に、違反処理規程等に基づいて迅速に是正措置を講じることです。
三つ目は、都道府県が、それぞれの都道府県内の市町村へこの旨を周知することです。
いずれも消防機関や都道府県への依頼で、店の経営者への義務を新しく書いたものではありません。
求め通知の言葉誰への求めか
防火安全指導の徹底類似の危険性を有する防火対象物に対する防火安全指導を徹底各消防機関
迅速な是正措置消防法令違反が認められた場合には違反処理規程等に基づき迅速に是正措置を講じる各消防機関
市町村への周知貴都道府県内の市町村に対してこの旨周知各都道府県

国が直接お店に点検を義務づけるのではなく、消防が指導するのですね。

そのとおりです。
通知は消防機関あてに出されています。

通知を読むときに見落としやすいのはどこか

印が押された白紙の書類の右に、白紙の名札と掲示板が並んだイラスト
見落としやすい点は四つあります。
通知の性格、原因の扱い、立入検査の指摘、防火管理者の選任義務です。
消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第一条の二第三項第一号ロ(現行)
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(略)に掲げる防火対象物(略)で、収容人員が三十人以上のもの
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第八条第三項(現行)
消防長又は消防署長は、第一項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
一つ目は、通知が消防機関あての助言だという点です。
通知の末尾には、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出すると書かれています。
二つ目は、火災の原因が調査中だった点で、通知は原因を述べていません。
三つ目は、通知が「防火管理者の未選任など、防火安全対策の不備が指摘されている」と述べる一方で、その不備と火災との関係は書かれていない点です。
四つ目は、防火管理者を定める義務が、マージャン店だからと一律に決まるのではなく、用途と収容人員で決まる点です。
別添には収容人員の記載がないので、この建物が選任義務の対象だったかどうかは、通知だけでは分かりません。
見落としやすい点通知や条文の書き方確認のしかた
通知の性格消防組織法第37条の規定に基づく助言新しい義務ではなく、既存の義務を確かめる機会と読む
火災原因調査中原因を断定した説明をしない
立入検査の指摘別添の最新の立入検査の指摘事項に「防火管理者未選任」などとある火災との関係は通知に書かれていないと押さえる
選任義務の対象令第1条の2第3項第1号ロは(2)項ロを収容人員30人以上と定める自分の建物の用途と収容人員を確かめる

未選任の指摘が、火災の原因だったわけではないのですね。

通知は、そこまでは述べていません。
事実として書かれたことだけを読みましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

白紙の書類の束と丸い印、白紙のカレンダー、小さな建物の模型が並んだイラスト
通知は、事業者向けの手順書ではありません。
そこで、通知と条文から、確認したい点を五つに整理します。
消防予第497号(平成21年11月17日)は、対応を次のように求めています。
類似の危険性を有する防火対象物に対する防火安全指導を徹底するとともに、消防法令違反が認められた場合には違反処理規程等に基づき迅速に是正措置を講じる
確認の順番は、防火管理者、消防用設備等、点検記録、避難、相談の五つです。
次の手順は通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
個別の適否は、所轄の消防署で確かめてください。
  • 自分の建物が令第1条の2第3項の対象か、用途と収容人員から確かめ、対象なら防火管理者を定めて所轄の消防署へ届け出ているか見直す
  • 消火器と誘導灯が、必要な場所すべてに設置され、正常に使えるかを実際に見て回る
  • 消防用設備等の点検記録を確かめ、古いままの記録があれば点検の時期を決める
  • 営業時間中も閉店後も、避難の通路に物を置いていないか確かめる
  • 不明な点は、消防の指導を待たずに所轄の消防署へ相談する

まず、防火管理者が必要な建物かどうかを確かめます。

それが入り口です。
用途と収容人員から見てください。

よくある質問

Qこの通知でマージャン店に新しい義務が生まれたのですか?
Aいいえ。通知は消防機関あての助言で、内容は類似の危険性を有する防火対象物への防火安全指導の徹底などを求めるものです。義務は法令に書かれた範囲のままです。
Q火災の原因は防火管理者の未選任だったのですか?
A通知の時点では原因は調査中で、防火管理者の未選任などの不備が指摘されている、と書かれているだけです。通知は原因を断定していません。
Qマージャン店なら、防火管理者は必ず必要ですか?
A令第1条の2第3項第1号ロは、(2)項ロを含む防火対象物のうち収容人員が30人以上のものを対象にしています。収容人員などで決まるので、自分の建物で確かめてください。
Q防火管理者を定めていないと、消防はどうするのですか?
A消防法第8条第3項は、消防長又は消防署長が防火管理者を定めるべきことを命ずることができると定めています。通知はそのほか、違反が認められた場合の迅速な是正措置を消防機関に求めています。

まとめ

✔消防庁予防課長は平成21年11月17日の消防予第497号で、類似の建物への防火安全指導の徹底を求めた
✔別添の第2報では、死者4人、負傷者3人、火災原因は調査中とされていた
✔通知は、防火管理者の未選任など防火安全対策の不備が指摘されていると述べた
✔消防機関には、違反が認められた場合に違反処理規程等に基づき迅速に是正措置を講じるよう求めた
✔別添の立入検査の欄にある「防火管理者未選任」などと火災との関係は、通知に書かれていない
✔現行の令は、(2)項ロの遊技場について収容人員30人以上なら防火管理者を定める防火対象物とする
✔通知は助言で、自分の建物の用途と収容人員の確認は所轄の消防署と進める

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第497号「マージャン店における火災を踏まえた防火安全対策の徹底について」(平成21年11月17日 消防庁予防課長)別添「浜松市マージャン店火災(第2報)」
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条 e-Gov法令検索
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(2)項ロ、第1条の2 e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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