給油取扱所には、給油空地や注油空地、ポンプ室のほかに、洗車場や本社事務所など、用途の境界があいまいになりやすい部分がいくつもあります。
平成元年の消防庁の質疑応答には、空地の規模・建物の用途区分・排出設備の「屋外」の範囲をめぐる照会がまとまって残っています。
この記事では、そのうちの五つの論点を取り上げ、現行の危険物の規制に関する政令・規則と照らして読みます。
どこまでが「対象」で、どこからが「対象外」なのかを、順に確かめます。
うちの灯油用の注油設備、周りの空地が何平方メートル必要なのか、数字で決まってないんですか。
そこは平成元年の質疑応答に、まさにその照会が残っています。
固定の数字ではなく、取扱いの形態に応じた考え方が示されています。
建物の用途区分や排出設備の範囲も、似たような話ですか。
一つずつ確かめます。
空地・建物・設備、それぞれの境界線がどこにあるかを見ていきましょう。
- 灯油用固定注油設備の周囲の空地(注油空地)は、数値ではなく取扱いの形態に応じて確保すべき広さとされました
- 給油・灯油詰替え作業場と一体で壁等で区画されていない洗車場等は、主たる用途である作業場の用途に属すると解されました
- 構造設備明細書の用途別面積欄は、ポンプ室・油庫・コンプレッサー室は作業場、便所は事務所の欄に記入するとされました
- 本社事務所等との区画部分には、避難口としての開口部も認められないとされました
- 可燃性蒸気を屋外に排出する設備の「屋外」には、給油空地に面した部分も含まれるとされました
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目次
灯油用固定注油設備の周囲に必要な空地の規模はどれくらいか

平成元年には、灯油用固定注油設備を設ける場合に必要な注油空地の規模はどれくらいかという照会がありました。
(平成元年5月10日 消防危第44号 消防庁危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
現行の危険物の規制に関する規則第24条の15は、注油空地の広さを「容器を安全に置くことができ、かつ、安全かつ円滑に詰め替えることができる広さ」「タンクを固定した車両が空地からはみ出さず、安全かつ円滑に注入することができる広さ」という機能的な基準で定めています。これに加えて、政令第27条第6項第1号ホは、容器や車両の一部でも注油空地からはみ出したまま詰め替え・注入をしないことを取扱いの基準として課しており、平成元年当時の回答が引用した「第1号ニ」(給油空地側の規定)は、現行では注油空地側の「ホ」に相当します。
数字で決まっているわけではなく、はみ出さず安全に使える広さが基準なんですね。
はい。
はみ出さず安全かつ円滑に使えるかが基準です。
仕切りのない洗車場やオートリフトは作業場の用途に含まれるか

平成元年には、給油又は灯油の詰替えのための作業場と一体となった専用室ではない洗車場等の部分は、規則第25条の4第1項第3号(自動車等の点検・整備を行う作業場)及び第4号(自動車等の洗浄を行う作業場)の用途に供する部分と解してよいかという照会がありました。
(平成元年5月10日 消防危第44号 消防庁危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
現行の規則第25条の4第1項は、給油取扱所の建築物の用途を一号(給油・詰替え作業場)、二号(事務所)、三号(点検・整備作業場)、四号(洗浄作業場)など6種類に限定しており、政令第17条第1項第16号はこれら以外の建築物を設けることを禁止しています。区画されていないオートリフトや洗車機のスペースをその都度別用途として数えると、作業場の面積計算が煩雑になるため、壁等による区画の有無を基準に、区画されていなければ主たる用途(作業場)としてまとめて扱う整理がとられています。
壁で仕切ってなければ、わざわざ別の用途として数えなくていいんですね。
はい。
壁等で区画されているかがポイントです。
構造設備明細書の用途別面積欄はどう記入するか

平成元年には、ポンプ室・油庫・便所・事務所と販売室が兼用された一室・規則第25条の4第1項第5号の用途の部分・区画されていない整備作業場・コンプレッサー室の7区分は、それぞれどの欄に記入するのかという照会がありました。
(平成元年5月10日 消防危第44号 消防庁危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
現行の規則第25条の4第1項が定める6つの用途区分(作業場・事務所・点検整備作業場・洗浄作業場・居住用住居等事務所・その他防火対象物の用途)に当てはめると、次のように整理できます。
| 記入が必要な室・部分 | 記入する用途区分 |
|---|---|
| ポンプ室 | 給油又は灯油の詰替えのための作業場 |
| 油庫 | 給油又は灯油の詰替えのための作業場 |
| 便所 | 給油取扱所の業務を行うための事務所 |
| 事務所と販売室が兼用された一室 | 主たる用途による |
| 規則第25条の4第1項第5号の用途の部分 | その他の給油取扱所の部分 |
| 区画されていない整備作業場 | 給油又は灯油の詰替えのための作業場 |
| コンプレッサー室 | 給油又は灯油の詰替えのための作業場 |
便所だけ事務所の欄になるのは、ちょっと意外でした。
はい。
室の名前ではなく、実際の用途区分で振り分けます。
本社事務所等との区画部分に避難口は設けられるか

平成元年には、本社事務所等との区画部分には、避難口として必要最小限の開口部も認められないのかという照会がありました。
(平成元年5月10日 消防危第44号 消防庁危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
政令第17条第1項第17号は「当該建築物の総務省令で定める部分は、開口部のない耐火構造の床又は壁で当該建築物の他の部分と区画され、かつ、防火上必要な総務省令で定める構造としなければならない」と定めています。区画対象となる部分は規則第25条の4第2項により事務所・点検整備作業場・その他防火対象物の用途に供する床又は壁で区画された部分(300平方メートルを超えるもの等)とされ、この区画は「開口部のない」ことが条文上の要件そのものであるため、避難用であっても開口部を設けると区画の要件を満たさなくなる、という整理です。
避難のためでも、区画に穴を開けたら要件を満たさなくなるんですね。
はい。
開口部のない区画そのものが要件です。
屋外に排出する設備の「屋外」に給油空地は含まれるか

平成元年には、「可燃性の蒸気を屋外に排出する設備」にいう屋外には、給油取扱所の給油空地に面した部分も含まれるかという照会がありました。
(平成元年5月10日 消防危第44号 消防庁危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
政令第17条第1項第20号ハは「可燃性の蒸気が滞留するおそれのあるポンプ室等には、その蒸気を屋外に排出する設備を設けること」と定めており、ここでの「屋外」はポンプ室等という室の内部に対する外部という意味です。給油空地は屋根のない屋外の空地であるため、ポンプ室等の排出設備がそこに面して蒸気を排出する構造であっても、条文上の「屋外」の要件を満たすことになります。
「屋外」って、敷地の外まで飛ばす意味だと思ってました。
はい。
室の外という意味です。
よくある質問
まとめ
空地も建物も、「どこまでが対象か」を一つずつ確認する大切さが分かりました。
うちの敷地も、一度見直してみます!
境界線の判断は、所轄消防機関への確認が一番確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第17条第1項第3号・第16号・第17号・第20号ハ
- 危険物の規制に関する規則第24条の15・第25条の4
- 危険物の規制に関する政令第27条第6項第1号ホ
- 平成元年5月10日 消防危第44号(危険物規制事務に関する執務資料(給油取扱所関係)の送付について)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





