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給油タンク車の給油設備はなぜ配管から結合金具まで基準が細かいのか|静電気除去装置とホースの水圧試験も解説

給油タンク車のホースリール脇で作業着姿の男性が結合金具を確認している様子

空港で航空機に燃料を運ぶタンクローリーや、港で船舶に給油するタンクローリーは、ふつうの移動タンク貯蔵所とは別に専用の基準が定められています。
これらは「給油タンク車」と呼ばれ、燃料タンクへ直接ホースをつないで給油する設備を備えている点が特徴です。
配管の水圧試験からホース先端の弁、緊急停止装置、静電気を除去する装置まで、通常の移動タンク貯蔵所には無い基準が細かく積み重なっています。
この記事では、給油タンク車の給油設備に上乗せされる構造基準を条文から順に整理します。

給油タンク車って、ふつうのタンクローリーと何が違うんですか。

航空機や船舶の燃料タンクに直接給油できる設備を備えた移動タンク貯蔵所です。

ホースや弁にも基準があるんですか。

はい、配管の水圧試験から結合金具まで細かく定められています。

この記事の結論
  • 給油タンク車は、危険物の規制に関する政令第十五条第三項の委任を受け、規則第二十四条の六で航空機・船舶への直接給油設備に専用の構造基準を定めています。
  • 配管は最大常用圧力の一・五倍以上、給油ホースは二倍以上の圧力で十分間の水圧試験を行い、漏えい等がないことが必要です。
  • ホース先端の弁は危険物の漏れを防止できる構造とし、外装は難燃性を有する材料で造らなければなりません。
  • 給油設備には移送を緊急に止められる装置と、自動閉鎖の開閉装置・結合金具を備え、航空機用の手動開閉ノズルには例外があります。
  • 給油ホース先端には静電気を有効に除去する装置を設け、船舶用ホースは著しい引張力による損傷を防ぐ措置が必要です。

給油タンク車の配管とホースの水圧試験弁の構造と外装の難燃性緊急停止装置と結合金具静電気を除去する装置をまとめた図解

給油タンク車の給油設備にはなぜ専用の基準があるのか

コイル状のホースを備えた給油タンク車が航空機のそばに停まっているイメージ
まずは、給油タンク車という区分がなぜ設けられているかを確認します。
通常の移動タンク貯蔵所との違いが出発点です。
危険物の規制に関する政令第十五条第三項 航空機又は船舶の燃料タンクに直接給油するための給油設備を備えた移動タンク貯蔵所については、総務省令で、第一項に掲げる基準の特例を定めることができる。 危険物の規制に関する規則第二十四条の六第一項 航空機又は船舶の燃料タンクに直接給油するための給油設備を備えた移動タンク貯蔵所(以下「給油タンク車」という。)に係る令第十五条第三項の規定による同条第一項に掲げる基準の特例は、この条の定めるところによる。
燃料タンクへ直接給油する設備を備えた移動タンク貯蔵所を、規則は「給油タンク車」と呼びます。
政令第十五条第三項がこの特例を認め、規則第二十四条の六が具体的な基準を定める、という委任の関係になっています。
給油タンク車は、注入口を持つ通常のタンクと違い、ホースの先で危険物を直接受け渡す構造を持つ点が特殊です。
そのため配管・ホース・弁・結合金具のそれぞれに、通常のタンクには無い上乗せの基準が置かれています。

ホースの先で直接受け渡すから、基準が細かいんですね。

はい、配管からホースの先端まで一連の基準があります。

給油設備の配管とホースにはどんな水圧試験基準があるのか

給油タンク車のホースリールと金属配管を示すイメージ
続いて、給油設備を構成する配管とホースそのものの強度基準です。
どちらも水圧試験の圧力倍率が定められています。
危険物の規制に関する規則第二十四条の六第三項第三号 給油設備は、次に定める構造のものであること。イ 配管は、金属製のものとし、かつ、最大常用圧力の一・五倍以上の圧力で十分間水圧試験を行つたとき漏えいその他の異常がないものであること。ロ 給油ホースは、最大常用圧力の二倍以上の圧力で水圧試験を行つたとき漏えいその他の異常がないものであること。
配管は金属製とし、最大常用圧力の一・五倍以上の圧力で十分間の水圧試験に耐えなければなりません。
給油ホースはさらに厳しく、最大常用圧力の二倍以上の圧力で同じ十分間の試験を行います。
どちらも試験中に漏えいその他の異常が生じないことが条件です。
配管とホースで倍率が違うのは、ホースが可撓性を持ち劣化しやすい部材だからです。

ホースのほうが試験の圧力が高いんですね。

はい、配管の一・五倍に対しホースは二倍です。

ホース先端の弁と外装にはどんな構造が求められるのか

給油ホース先端の弁と給油タンク車の外装を示すイメージ
次は、ホースの先端に付いている弁と、給油タンク車の外装の基準です。
どちらも漏れと延焼を防ぐための構造です。
危険物の規制に関する規則第二十四条の六第三項第三号 ハ 給油ホースの先端に設ける弁は、危険物の漏れを防止することができる構造とすること。ニ 外装は、難燃性を有する材料で造ること。
給油ホースの先端に設ける弁は、危険物の漏れを防止できる構造でなければなりません。
給油を終えてホースを外した瞬間に、内部に残った危険物が垂れ流しにならないようにする役目です。
外装は難燃性を有する材料で造ることが定められています。
万一の火災でも外装自体が燃え広がりの経路にならないようにする基準です。
弁の閉止状態と外装の劣化は、いずれも日常点検で目視できる部位です。

弁と外装、どちらも見た目で確認できそうですね。

はい、弁の締まり具合と外装の傷みを見てください。

緊急停止装置と結合金具にはどんな例外があるのか

給油タンク車の緊急停止ボタンと航空機用結合金具を示すイメージ
続いて、給油を止める装置と、ホース先端をつなぐ結合金具の基準です。
結合金具には航空機ならではの例外があります。
危険物の規制に関する規則第二十四条の六第三項第四号 給油設備には、当該給油設備のポンプ機器を停止する等により移動貯蔵タンクからの危険物の移送を緊急に止めることができる装置を設けること。 第五号 給油設備には、開放操作時のみ開放する自動閉鎖の開閉装置を設けるとともに、給油ホースの先端部には航空機又は船舶の燃料タンクの給油口に緊結できる結合金具(真ちゆうその他摩擦等によつて火花を発し難い材料で造られたものに限る。)を設けること。ただし、航空機の燃料タンクに直接給油するための給油設備の給油ホースの先端部に手動開閉装置を備えた給油ノズルを設ける場合は、この限りでない。
給油設備には、ポンプを停止するなどして危険物の移送を緊急に止められる装置が必要です。
給油ホースの先端は、開放操作のときだけ開く自動閉鎖の開閉装置と、真ちゅうなど火花を発しにくい材料の結合金具を備えます。
ただし、航空機用で手動開閉装置付きの給油ノズルを使う場合は、この自動閉鎖・結合金具の規定は適用されません。
これは航空機の給油口の規格に合わせた例外で、船舶用には認められていません。
現場でこの例外を船舶用にも当てはめてしまうと、基準違反になります。

手動開閉ノズルの例外は、船舶にも使えますか。

いいえ、航空機用の給油設備だけの例外です。

静電気除去装置と船舶用ホースの引張力対策は何を確認すればよいのか

給油ホース先端の静電気除去クリップと船舶の燃料タンクに接続されたホースを示すイメージ
最後に、静電気対策と、船舶用ホースならではの構造基準です。
どちらも点検で見落としやすい部位です。
危険物の規制に関する規則第二十四条の六第三項第六号 給油設備には、給油ホースの先端に蓄積される静電気を有効に除去する装置を設けること。 第七号 船舶の燃料タンクに直接給油するための給油設備の給油ホースは、著しい引張力が加わつたときに当該給油タンク車(当該給油ホースを除く。)に著しい引張力を加えず、かつ、当該給油ホース等の破断による危険物の漏れを防止する措置が講じられたものであること。
給油ホースの先端には、蓄積された静電気を有効に除去する装置を設けなければなりません。
給油の摩擦で発生する静電気の放電が引火源にならないようにする基準です。
船舶用の給油ホースには、さらに著しい引張力への対策が求められます。
船が波で動いてホースが強く引っ張られても、車体側に力を伝えず、破断しても漏れを防ぐ措置が必要です。
明日からは、静電気除去装置の状態と、船舶用ホースの破断防止措置を、点検のたびに実際に確認してください。

船は揺れるから、ホースへの負担も特別なんですね。

はい、破断しても漏れない措置まで求められます。

よくある質問

Q配管とホースの水圧試験は、同じ圧力で行えばよいですか?
Aいいえ。規則第二十四条の六第三項第三号イ・ロにより、配管は最大常用圧力の一・五倍以上、給油ホースは二倍以上の圧力で、それぞれ十分間の水圧試験を行う必要があります。
Q外装が難燃性でなければならないのはなぜですか?
A規則第二十四条の六第三項第三号ニが求める基準です。給油中に万一の火災が起きても、外装自体が燃え広がりの経路にならないようにするためです。
Q自動閉鎖の開閉装置と結合金具は、すべての給油タンク車に必要ですか?
Aいいえ。規則第二十四条の六第三項第五号ただし書きにより、航空機用で手動開閉装置付きの給油ノズルを設ける場合は、この規定は適用されません。船舶用には例外がありません。
Q静電気除去装置は給油タンク車のどこに設ければよいですか?
A規則第二十四条の六第三項第六号により、給油ホースの先端に蓄積される静電気を有効に除去する装置を設けなければなりません。

まとめ

給油タンク車は政令第十五条第三項の委任を受け、規則第二十四条の六で給油設備に専用の構造基準が定められています
配管は最大常用圧力の一・五倍以上、給油ホースは二倍以上の圧力で水圧試験を行います
ホース先端の弁は漏れを防止できる構造とし、外装は難燃性を有する材料で造ります
給油設備には緊急に止められる装置と、自動閉鎖の開閉装置・結合金具を備えます
航空機用で手動開閉装置付きの給油ノズルを設ける場合は、自動閉鎖・結合金具の規定は適用されません
給油ホースの先端には静電気を有効に除去する装置を設けます
船舶用の給油ホースは、著しい引張力が加わっても車体に力を伝えず破断による漏れを防ぐ措置が必要です

配管からホースの先端まで、よく分かりました。
次の点検で確認します

まずは弁の締まり具合と静電気除去装置から確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十五条第三項(移動タンク貯蔵所の基準の特例)
  • 危険物の規制に関する規則第二十四条の六(給油タンク車の基準の特例)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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