給油取扱所に建物を増やしたり、へいの一部を免除してほしいと相談されたとき、どこまで認められるのか迷うことがあります。
危険物の規制に関する政令第17条は建築物の用途やへいの高さまで細かく定めていますが、現場では埋立地や会議室といった想定外の相談が次々と出てきます。
本記事では、消防庁の執務資料をもとに、給油取扱所の建築物とへいの基準がどこまで緩められるのかを五つの質疑応答から解説します。
給油取扱所の建築物は、給油業務のための建築物という枠に収まる範囲でだけ認められます。
給油取扱所の裏の事務所に、会議室を増築してもいいのか気になってます。
給油取扱所の建築物は、政令第17条で用途まで決まっているんです。
用途まで決まってるんですか。
へいを免除してもらうのも無理そうですね。
へいにも特例があります。
今日は五つの質疑応答で見ていきましょう。
- 給油取扱所に設ける建築物は、その使途からみて給油取扱所の一部として構造上の規制が加えられています
- 埋め立てた土地でも一般の交通の用に供しない状態を確保すれば給油取扱所の空地と認めてよいとされています
- 事務室以外に会議室を置く場合は、耐火構造・水平垂直の遮断・防火戸・出入口の位置という4条件を満たせば差し支えありません
- オイルサービス室のピットは、ふちの高さ15センチメートル以上という条件で政令第23条の特例を適用して認めてよいとされています
- 事務所等を耐火構造にした場合、裏側のへいは市町村長等が防火上有効と認めれば免除できます
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目次
給油取扱所の建築物はなぜ用途まで規制されるのか

ところが、給油取扱所に設ける建築物だけは、他の施設とは違う扱いを受けています。
危険物の規制に関する政令第17条第1項第16号は、給油取扱所に設けてよい建築物を「給油その他の業務のための建築物」であって総務省令で定める用途に供するものに限ると定めています。
さらに同項第17号は、その建築物の壁・柱・床・はり・屋根を耐火構造又は不燃材料とし、窓・出入口に防火設備を設けることまで求めています。
製造所の事務所がここまで規制されないのは、製造所そのものが危険物を直接取り扱う施設であり、事務所部分は危険物の取扱いと一体ではないからです。
一方、給油取扱所は建物自体が給油空間と地続きになっているため、建築物の構造そのものが延焼防止の一部として組み込まれています。
同じ敷地の建物でも、扱いが違うんですね。
はい、給油空間と一体として規制されます。
次は埋め立てた土地の扱いを見てみましょう。
埋め立てた土地は給油取扱所の空地に数えられるか

では、道路として整備中の埋立地がある場合、その部分を空地として数えてよいのでしょうか。
当時の政令第17条第1項第1号は、現行法では第17条第1項第2号に引き継がれており、「間口10メートル以上、奥行6メートル以上の空地」という数字は今も変わっていません。
回答のポイントは、土地の所有区分ではなく、一般の交通の用に供しない状態が確保されているかどうかという実際の使われ方で判断している点です。
埋立部分が事実上給油取扱所の敷地として機能しているなら、政令第23条の基準の特例を適用して、固定給油設備の位置の基準も同様に緩和できるとされました。
境界線の図面だけで判断せず、現地でどちらの用途に使われているかを確認する姿勢が読み取れます。
境界線より、実際の使われ方を見るんですね。
はい、使われ方が条件を満たせば認められます。
次は会議室の話をしましょう。
給油取扱所の建築物に会議室やボイラーを置けるか

地下室のボイラーや2階の会議室は、認められるのでしょうか。
現行の政令第17条第1項第16号は、給油取扱所の係員以外の者が出入りする建築物の部分の床面積の合計についても総務省令で定める面積を超えてはならないと定めており、昭和の回答よりも床面積の上限が明確になっています。
回答が示した耐火構造の壁・柱、水平垂直の遮断、防火戸と網入ガラス、敷地外への出入口という4条件は、現行の第17条第1項第17号が求める開口部のない耐火構造の床又は壁による区画の考え方とそのまま重なります。
会議室やボイラー室を置くこと自体より、給油空間と防火区画で切り離されているかが問われていることがわかります。
増築や用途変更を検討するときは、床面積の上限と区画の両方を所轄消防署に確認しましょう。
部屋を増やすたびに、区画の工事まで要るんですね。
はい、面積と区画の両方が条件です。
次はピットの扱いを見てみましょう。
オイルサービス室のピットは特例で認められるか

このピットは、通常の空地の基準にそのまま当てはまるのでしょうか。
ピットは床を掘り込んだ構造のため、漏れた危険物や可燃性の蒸気がたまりやすく、通常の床面を前提にした基準とは相性がよくありません。
回答は、ピットの周囲にふちを設け、その上辺を室外の空地より15センチメートル以上高くするという具体的な寸法だけで、政令第23条の「同等以上の効力」を認めました。
高さという一点に絞った単純な条件であるため、現場で再現しやすく、今も通用する判断の仕方です。
特例を使うときは、形式的に政令第23条を名乗るだけでなく、何が同等以上の効力を生んでいるのかを具体的な寸法や構造で示すことが欠かせません。
高さの条件だけでいいなら、わかりやすいですね。
はい、同等以上の効力を具体的に示すことが大事です。
最後はへいの免除を見てみましょう。
事務所を耐火構造にすればへいは免除されるか

では、事務所の壁そのものが十分に強い構造であれば、その裏側のへいは要らなくなるのでしょうか。
現行の政令第17条第1項第19号は、給油取扱所の周囲に高さ2メートル以上の耐火構造又は不燃材料で造られたへい又は壁を設けることを求めていますが、これは延焼を防ぐという目的のための手段にすぎません。
事務所の壁がすでに耐火構造又は不燃材料で造られているなら、その裏側に重ねてへいを設けても、防火上の効果は変わりません。
回答は、この考え方を製造所等における位置規制上のへいにも同じ措置を認めるとしており、政令第23条の基準の特例が及ぶ範囲の広さを示しています。
ただし免除が認められるのは市町村長等が防火上有効で安全と認めた場合に限られるので、自己判断で省略してはいけません。
壁があれば自動的に免除、ではないんですね。
はい、市町村長等の判断が要ります。
よくある質問もあわせて確認しましょう。
よくある質問
まとめ
うちの増築計画も、もう一度見直してみます!
増築や特例の相談は、図面や寸法をそろえたうえでご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第17条第1項第2号・第16号・第17号・第19号(給油取扱所の基準)・第23条(基準の特例) e-Gov法令検索
- 「危険物規制事務に関する執務資料の送付について」(消防庁予防課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年10月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の施設計画が基準に適合するかどうかの判定は、図面・寸法等をそろえたうえで所轄消防署にご確認ください。





