窓を省エネのガラスに替えたら、無窓階の判定に響くのではないかと気になりませんか。
平成23年12月28日、消防庁予防課は事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」で、低放射ガラスの取扱いを示しました。
この記事では、質疑の内容、薄膜の厚み、参考の破壊試験の結果、実務の確認点を、消防庁の通知と現行の条文をもとに解説します。
省エネのために、窓を低放射ガラスに替えようと思います。
無窓階の判定に響きませんか。
通知は、基板と同等に扱ってよいと答えています。
まず質疑の中身から順に確かめましょう。
低放射ガラスは、普通のガラスと何が違うのですか。
表面に、とても薄い膜が付いたガラスです。
次の章から、詳しく見ていきます。
- 消防庁予防課は平成23年12月28日の事務連絡で、低放射ガラスを開口部に用いた場合の取扱いを質疑応答に示しました。
- 答えは、パイロティック製法でもスパッタリング製法でも、基板と同等なものとして取り扱ってさしつかえないというものです。
- 薄膜の厚みは、通知の質問文によると、パイロティック製法で約350nm、スパッタリング製法で約179nmです。
- 参考の破壊試験の結果表は全16体で、二次破壊試験で規定の開口を確保できなかったのは1体です。
- 無窓階の開口部の要件は、現行の規則では第5条の5で確かめます。
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目次
低放射ガラスの窓は、なぜ無窓階の判定で質問されたのか

要件の一つが、外から開けるか、破って入れるかです。
低放射ガラス(通称Low-Eガラス)とは、基板(板ガラス等)に金属粒子を一様に薄く付着させて表面に薄膜を形成し、日射熱を反射し紫外線の透過を抑さえたガラスである。
前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物の地階(地下建築物にあつては、その各階をいう。以下同じ。)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの
質問は、低放射ガラスを開口部に用いた場合の、消防法施行規則の第5条の2第2項第3号後段の取扱いを尋ねています。
現行の規則で、同じ文言が置かれているのは第5条の5第2項第3号です。
だから、通知の条番号は、現行の条文と照らして読むことになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通知 | 事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(平成23年12月28日、消防庁予防課設備係)別添の問2 |
| 問われたガラス | 基板の表面に薄膜を形成した低放射ガラス |
| 質問が引く条文 | 消防法施行規則第5条の2第2項第3号後段(通知の表記) |
| 現行の同じ文言 | 消防法施行規則第5条の5第2項第3号(e-Govで確認) |
| 問われた点 | 「外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるもの」の取扱い |
無窓階は、窓の数だけで決まるのですか。
窓の数だけでは決まりません。
開口部の要件を満たすかで決まります。
通知の答えは、何を認めているのか

認めているのは、薄膜の有無で基板の扱いを変えないことです。
(問)当該低放射ガラスを開口部に用いた場合に係る消防法施行規則第5条の2第2項第3号後段「外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるもの」の取扱いについては、いずれの製法による場合においても薄膜が基板の強度を変えるものではないと判断し、基板と同等なものとして取り扱ってよろしいか。
(答)いずれの製法による場合においても、基板と同等なものとして取り扱ってさしつかえない。
開口部は、格子その他の内部から容易に避難することを妨げる構造を有しないものであり、かつ、外部から開放し、又は容易に破壊することにより進入できるものであること。
答えは、パイロティック製法でもスパッタリング製法でも、基板と同等と取り扱ってさしつかえないというものです。
通知は、低放射ガラスの窓がすべて開口部として認められる、とは述べていません。
基板にどんなガラスを使っているかは、この答えの外の話です。
| 区分 | 通知の内容 |
|---|---|
| 質問の前提 | 薄膜は基板の強度を変えるものではない |
| 答え | いずれの製法でも、基板と同等なものとして取り扱ってさしつかえない |
| 答えの範囲 | 薄膜の有無の取扱い。基板の種類ごとの判断は述べられていない |
低放射ガラスなら、必ず開口部として認められるのですか。
いいえ。
通知が答えたのは、薄膜の有無で基板の扱いを変えないという点です。
薄膜の厚みと製法は、どう説明されているのか

どちらも、基板に比べてごく薄い膜です。
薄膜は、「パイロティック製法」によるものと、「スパッタリング製法」によるものがあり、いずれも基板の表面に非常に薄く形成されている。「パイロティック製法」は、ガラスの製造工程において基板に金属(酸化すず)の薄膜を形成するもので、「スパッタリング製法」は、製造された基板に金属の薄膜(酸化亜鉛・銀)を形成する方式である。
形成された薄膜の厚みは、「パイロティック製法」によるものについては、約350nm、「スパッタリング製法」によるものについては、約179nm程度の非常に薄いものである。
パイロティック製法は、ガラスの製造工程で膜をつけます。
スパッタリング製法は、製造された基板に膜をつけます。
1nmは、1ミリメートルの百万分の1です。
つまり、約350nmは約0.00035ミリメートル、約179nmは約0.000179ミリメートルです。
参考の試験で使われた低放射ガラスの基板は、呼び厚6ミリです。
その基板と比べて、どちらの膜も1万分の1より薄いことになります。
| 製法 | 膜のつけ方と材料 | 通知が示す膜の厚み |
|---|---|---|
| パイロティック製法 | ガラスの製造工程で、基板に金属(酸化すず)の薄膜を形成する | 約350nm |
| スパッタリング製法 | 製造された基板に、金属(酸化亜鉛・銀)の薄膜を形成する | 約179nm |
膜の厚みは、どのくらいなのですか。
通知の質問文では、約350nmと約179nmと書かれています。
ミリに直すと、ごく薄い膜です。
参考の破壊試験の結果には、何が書かれているのか

通知は、これを参考として添えています。
なお、「合わせガラスに係る破壊試験ガイドラインの策定及び無窓階の判定等運用上の留意事項について(通知)」(平成19年3月27日消防予第111号)第1に準じて実施された「ガラス破壊試験の結果」は参考のとおり。
一次破壊試験(×:無傷、△:1cm未満のクラック等、○:貫通又は1cm以上のクラック等)
二次破壊試験(×:規定の開口を確保することができなかった、○:規定の開口を確保することができた)
板硝子協会が、日本板硝子株式会社及び大阪市消防局の協力により平成23年10月18日~19日に試験実施。
一次破壊試験は、1体につき打撃を3回行っています。
低放射ガラス側を打撃した①から③は、3回とも△で、貫通は記録されていません。
非低放射ガラス側を打撃した④は△、網入り板ガラス側を打撃した⑤は3回とも○です。
二次破壊試験は、③の供試体③-3だけが×で、ほかの15体は○です。
通知は、この表について合否の判断を書いていません。
| 構成 | 打撃した面 | 供試体数 | 一次破壊試験(3回) | 二次破壊試験 |
|---|---|---|---|---|
| ① フロート板ガラス6ミリ(低放射)+空気層6ミリ+フロート板ガラス6ミリ | 低放射ガラス面 | 4体 | △△△ | 4体とも○ |
| ② フロート板ガラス6ミリ(低放射)+空気層6ミリ+網入り板ガラス6.8ミリ | 低放射ガラス面 | 4体 | △△△ | 4体とも○ |
| ③ フロート板ガラス6ミリ(低放射)+空気層6ミリ+耐熱ガラス5ミリ | 低放射ガラス面 | 6体 | △△△ | 5体が○、1体が× |
| ④ ①と同じ構成 | 非低放射ガラス面 | 1体 | △△△ | ○ |
| ⑤ ②と同じ構成 | 非低放射ガラス面(網入り板ガラス側) | 1体 | ○○○ | ○ |
試験の結果は、全部が問題なしなのですか。
全部ではありません。
耐熱ガラスの構成の1体は、二次破壊試験で規定の開口を確保できていません。
明日からなにを確認すればよいのか

そこで、通知と条文を踏まえた確認を、次の5点に整理します。
標記の件について、別添のとおり質疑応答をとりまとめたので、執務上の参考としてください。
令第十条第一項第五号の総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階は、十一階以上の階にあつては直径五十センチメートル以上の円が内接することができる開口部の面積の合計が当該階の床面積の三十分の一を超える階(以下「普通階」という。)以外の階、十階以下の階にあつては直径一メートル以上の円が内接することができる開口部又はその幅及び高さがそれぞれ七十五センチメートル以上及び一・二メートル以上の開口部を二以上有する普通階以外の階とする。
次の手順は通知に書かれた義務ではなく、通知と条文を踏まえた実務上のおすすめです。
判断が分かれる点は、所轄の消防本部に確認してください。
- 窓ガラスの構成(基板の種類と厚み、空気層、薄膜の有無と製法)を、仕様書や納品書で確かめる
- 基板がフロート板ガラス、網入り板ガラス、耐熱ガラス、合わせガラスのどれかを確かめ、基板そのものの扱いを別に確かめる
- 基板が合わせガラスなら、平成19年の消防予第111号の破壊試験ガイドラインに沿って確かめる
- 規則第5条の5第2項のほかの要件(床面から下端まで1.2メートル以内、格子等がないこと、常時良好な状態)を確かめる
- 開口部の大きさが、階の高さに応じた第1項の基準を満たすかを、所轄消防署で確認する
まず窓ガラスの仕様書を探してみます。
そうですね。
基板の種類も、一緒に確かめてください。
よくある質問
まとめ
窓ガラスの構成の確認から、始めます!
無窓階の判定の相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 事務連絡「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(平成23年12月28日 消防庁予防課設備係)別添問2
- 「合わせガラスに係る破壊試験ガイドラインの策定及び無窓階の判定等運用上の留意事項について(通知)」(平成19年3月27日 消防予第111号 消防庁予防課長通知)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第10条第1項第5号 e-Gov法令検索
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第5条の5 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





