地震のとき建物の揺れを抑える免震装置や制振装置に、オイルダンパーという部品が使われているのをご存じでしょうか。
その筒の中には、実は消防法上の危険物(石油類)が密閉されています。
1棟の建物に何十基も設置されていることがあり、合計すると指定数量を超えてしまう例も少なくありません。
消防庁が示したのは1基ごとの量と構造が要件を満たせば、危険物施設としての許可はいらないという線引きです。
うちのビルの地下に免震ダンパーがたくさん並んでいるんですが、
あの中に石油みたいな危険物が入っているって本当ですか。
本当です。オイルダンパーの中身は消防法上の危険物にあたります。
ただし条件を満たせば特別な許可はいりません。
建物全体だと結構な量になりそうですが、それでも許可はいらないんですか。
そこが今回のポイントです。
量、種類、構造の3つを順番に見ていきましょう。
- 免震・制振用オイルダンパーの内部には第三石油類等の危険物(高引火点危険物)が密閉されています
- 建物全体のダンパーが扱う危険物量を合計すると指定数量以上になる場合があります
- 1基あたりの量が指定数量の5分の1未満かつ高引火点危険物で、円筒状の鋼製シリンダーに密閉されていれば、ダンパー1基を一の取扱場所として扱ってよいとされています
- この取扱いは平成28年3月23日 消防危第42号の通知にもとづきます
- ダンパーの増設や劣化があれば、そのつど要件を満たすか確認する必要があります
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目次
免震用オイルダンパーはなぜ消防庁の通知が必要になったのか

この部品がなぜ消防庁の通知の対象になったのでしょうか。
免震用オイルダンパーは、国土交通大臣の認定を受けた免震材料のうち、振動を抑えるための流体(オイル)を円筒の中に密閉して使うタイプの部材です。このオイルには第三石油類等の危険物が使われています。
1棟の建物には数十基から時には百基を超えるオイルダンパーが設置されることがあり、1基ごとは指定数量未満でも建物全体で合計すれば指定数量以上になりうることが、この通知が出された背景です。
指定数量以上の危険物を貯蔵・取り扱う施設は、原則として市町村長等の許可を受けた危険物施設にする必要があります。免震ダンパーのために建物全体を危険物施設として許可を取り直す、というのは現実的ではありません。
そこで消防庁は、一定の条件を満たすオイルダンパーについて、合算せずに扱ってよいという整理を示しました。
免震ダンパーが危険物施設の扱いになったら、うちのビルも許可が必要になっていたということですか。
そのままだと理屈のうえではそうなります。
そこを整理したのがこの通知です。
対象になるのはどんな免震ダンパーなのか

通知が扱う範囲を、種類と中身の危険物の両面から確認しましょう。
どちらも中身が第三石油類等の危険物であることが前提で、これは引火点が100度以上の第四類の危険物=高引火点危険物にあたります。灯油や軽油よりも火がつきにくい性質の油です。
免震・制振のどちらの装置であっても、中に入っている危険物の種類と、次に見る量・構造の要件を満たすかどうかが判断の分かれ目になります。
免震だけかと思っていましたが、制振ダンパーも同じ扱いなんですね。
はい、中身の危険物と要件が同じなら同様に扱われます。
まずは設備図面で種類を確認しましょう。
通知は具体的に何を求めているのか

通知が挙げる2つの要件を確認しましょう。
1つ目は、1基が取り扱う危険物が指定数量の5分の1未満の高引火点危険物であること。2つ目は、円筒状の鋼製シリンダー及びその付属部分に危険物が密閉されていることです。
この2つを満たすオイルダンパーは、耐圧性能が高く、地震や強風時以外は作動せず、引火点の高い危険物のみを扱うため火災危険性が小さいと判断されています。
その結果、建物に何基設置されていても、1基ずつを独立した取扱場所として扱ってよく、建物全体で数量を合算して危険物施設の許可を取る必要はないとされています。
うちのダンパーが要件を満たしているかどうかは、どこを見ればわかりますか。
メーカーが発行する技術資料に数量と引火点が載っています。
竣工図書を一度確認してみましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

時間がたつと前提が崩れることがあるので、見落としやすい点を確認しましょう。
オイルダンパーは工業製品なので、シール部分の劣化やオイル漏れが起きる可能性があります。密閉性が損なわれれば、この特例の前提そのものが成立しなくなります。
また、改修工事でダンパーを増設・交換する場合も注意が必要です。新しいダンパーの危険物量や引火点が要件からずれていないか、そのつど確認しなければなりません。
建物の防火管理者がオイルダンパーの存在自体を把握していないケースも見受けられます。設備台帳に免震・制振ダンパーの基数と仕様を記録しておくと、増設や点検のたびに条件を確認しやすくなります。
正直、免震ダンパーの中身が危険物だという意識が今までありませんでした。
多くの建物でそうだと思います。
まずは台帳に記録するところから始めましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

明日からできる手順を整理します。
次に、メーカーの技術資料で1基あたりの危険物量と引火点、シリンダーが円筒状の鋼製で密閉構造かどうかを確認します。指定数量の5分の1未満・引火点100度以上・密閉構造の3点がそろっているかがチェックの中心です。
確認できたら、基数・仕様・確認日を設備台帳や消防計画の別紙に記録しておきます。増設や改修があれば、そのたびに同じ確認を繰り返します。
自分たちだけで判断がつかない場合は、竣工図書一式を持って所轄消防署の予防課か、㈱防災屋のような専門業者に相談するのが確実です。
まずは図面でダンパーの基数を数えるところから始めればいいんですね。
そのとおりです。
技術資料と突き合わせれば、そのまま台帳になります。
よくある質問
まとめ
さっそく設備台帳を作って、ダンパーの仕様を確認してみます!
竣工図書の読み解きからお手伝いできます。
要件に合うかどうかも一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築物に設置された免震用オイルダンパーの取扱いについて(平成28年3月23日 消防危第42号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令第9条第2項
- 消防法別表第一(第四類の危険物の区分)
- 建築物の基礎、主要構造部等に使用する建築材料並びにこれらの建築材料が適合すべき日本工業規格又は日本農林規格及び品質に関する技術的基準を定める件(平成12年建設省告示第1446号)第1第九号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





