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燃料電池設備はなぜキュービクル式に限られるのか|外箱の構造基準と改質器の防食処理を解説

燃料電池設備はなぜキュービクル式に限られるのかを示すキュービクル式外箱のアイキャッチ画像

燃料電池設備は、屋内消火栓設備などの非常電源として自家発電設備や蓄電池設備と並んで認められている設備です。
ただし条文には「キュービクル式のものであること」という限定と、消防庁長官が定める基準への委任が置かれています。
その基準(平成18年消防庁告示第8号)には、外箱の構造から燃料供給の安定性まで細かい要件が定められています。
この記事では条文の委任構造から外箱の基準、表示の見方まで順番に解説します。

うちの建物では、非常用の電源として燃料電池を使った設備が入っていると聞きました。
自家発電設備や蓄電池設備とは何が違うんでしょうか。

燃料電池設備はキュービクル式に限るなど、専用の基準が定められています。
まずは条文の委任構造から見てみましょう。

燃料電池は発電機や蓄電池とはしくみが違いますよね。
非常電源としての基準も特別なんですか。

はい、燃料供給の安定性や外箱の構造など、燃料電池ならではの基準があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 燃料電池設備を屋内消火栓設備などの非常電源に使う場合は、キュービクル式のものに限られます。
  • その構造及び性能の基準(平成18年消防庁告示第8号)は消防法施行規則第12条第1項第4号ニ(ロ)に基づいて定められています。
  • 常用電源が停電してから電圧確立及び投入までは四十秒以内であることが求められます。
  • 燃料電池への燃料供給は燃料容器保有型ガス事業者供給型のいずれかで安定して確保しなければなりません。
  • 外箱は材料・板厚・防火戸・換気口の面積比率まで細かく定められています。

燃料電池設備の基準をキュービクル式限定四十秒以内投入燃料供給の安定性表示で確認の4段階でまとめた図解

燃料電池設備を非常電源に使うとはどのような扱いになるのか

キュービクル式の外箱と電気設備との接続を示す図
屋内消火栓設備の非常電源には、非常電源専用受電設備・自家発電設備・蓄電池設備のほかに燃料電池設備も選べます。
ただし燃料電池設備だけは、他の非常電源と違う専用の限定が条文に置かれています。
消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号ニ 燃料電池設備は、イ((ホ)及び(ト)を除く。)並びにロ(イ)及び(ロ)の規定の例によるほか、次の(イ)及び(ロ)に定めるところによること。(イ)キュービクル式のものであること。(ロ)消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
燃料電池設備は非常電源専用受電設備や自家発電設備の一部規定を準用しつつ、キュービクル式に限定されています。
「イ」は非常電源専用受電設備、「ロ」は自家発電設備の規定を指しており、燃料電池設備はそれぞれの一部を借りて成り立つ構造です。
そのうえでキュービクル式のものという独自の限定が付け加えられています。
さらに(ロ)で「消防庁長官が定める基準」への委任があり、これが平成18年消防庁告示第8号にあたります。
では、告示が定める具体的な性能とはどのようなものでしょうか。

キュービクル式に限られるなんて、初めて知りました。
屋外に置く燃料電池設備でもそうなんですか。

はい、屋外用も屋内用も外箱に収める構造が前提になっています。
次は具体的な性能の中身を見てみましょう。

燃料電池設備にはどのような基本性能が求められるのか

保護された充電部と四十秒以内の電圧確立投入を示す図
告示はまず、燃料電池設備そのものが備えるべき基本的な安全性能を定めています。
中でも停電が起きたときの反応の速さは、非常電源として最も重要な条件です。
燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)第二 構造及び性能 一 燃料電池設備の構造及び性能は、次に定めるところによる。(一)外部から容易に人が触れるおそれのある充電部及び高温部は、安全上支障のないように保護されていること。(二)常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間は、四十秒以内であること。(三)常用電源が停電した場合、燃料電池設備に係る負荷回路と他の回路とを自動的に切り離すことができるものであること。ただし、停電の際燃料電池設備に係る負荷回路を他の回路から自動的に切り離すことができる常用の電源回路に接続するものにあっては、この限りではない。
充電部と高温部は容易に人が触れないよう保護し、停電から四十秒以内に電圧を確立して投入しなければなりません。
これは自家発電設備の自動投入と同じ時間の条件で、非常電源として共通する速さの基準です。
さらに停電時には、燃料電池設備に係る負荷回路を他の回路から自動的に切り離すことが原則になっています。
ただし、その負荷回路自体が他の回路から自動的に切り離せる常用の電源回路につながっている場合は、この限りではありません。
これらの性能は、電圧計・電流計の設置や連続運転可能時間の確保ともあわせて定められています。

四十秒以内というのは、自家発電設備と同じ条件なんですね。
燃料電池ならではの基準は別にあるんでしょうか。

はい、燃料の供給方法には燃料電池ならではの条件があります。
次はそこを見てみましょう。

燃料電池への燃料供給はどのように確保されなければならないのか

燃料容器保有型とガス事業者供給型の2つの燃料供給方式を示す図
発電機が燃料タンクを持つように、燃料電池設備にも燃料を安定して供給する仕組みが必要です。
その方法は大きく分けて2通りあり、それぞれに条件が定められています。
燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)第二 構造及び性能 一(七) 燃料電池への燃料供給は、次のいずれかによるものであること。イ 定格負荷における連続運転可能時間に消費される量以上の燃料が燃料容器に保有されるものであること。ロ ガス事業法(昭和29年法律第51号)第2条第11項に規定するガス事業者により供給されるガスを燃料とする燃料電池にあっては、次に定める方法により、燃料が安定して供給されるものであること。(イ)地表面水平加速度四百ガルの地震動が加えられた後であっても、燃料が安定して供給されるものであること。(ロ)導管が建築物の外壁を貫通する場合にあっては、次に定める緊急ガス遮断装置(危急の場合に建築物の外壁を貫通する箇所の付近で直ちにガスの供給を遮断することができるものをいう。)が設置されていること。a 当該導管の最高使用圧力を加えたときに漏れが生じない遮断性能を有するものであること。b ガスの供給を停止せずに点検することができる措置が講じられているものであること。
燃料供給は、燃料容器に必要量を保有する方法かガス事業者の導管から受ける方法のいずれかで確保します。
容器保有型は定格負荷における連続運転可能時間ぶんの燃料をあらかじめ蓄えておく、発電機の燃料タンクに近い考え方です。
ガス事業者供給型は導管がいつでも使えるとは限らないため、地震動が加わった後でも安定して供給されることまで求められます。
さらに導管が建築物の外壁を貫通する場合は、危急の際に手近な場所で遮断できる緊急ガス遮断装置の設置も条件になります。
どちらの方式を選ぶかで、点検時に確認すべきポイントも変わってきます。

ガスの導管を使う場合、地震のあとが特に心配ですね。
緊急ガス遮断装置はどこにでも要るんでしょうか。

導管が外壁を貫通する場合に限って設置が必要になります。
次は外箱そのものの基準を見てみましょう。

外箱の構造にはどのような細かい基準があるのか

外箱内部の区画と換気口を示す図
燃料電池設備はキュービクル式、つまりひとつの外箱に収める構造が前提です。
その外箱には、材料の板厚から換気の方法まで細かい基準が定められています。
燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)第二 構造及び性能 一(九) 外箱の構造は、次に定めるところによること。イ 外箱の材料は、鋼板とし、その板厚は、屋外用のものにあっては2.3ミリメートル以上、屋内用のものにあっては1.6ミリメートル以上又はこれと同等以上の防火性能及び耐食性を有するものであること。ロ 外箱の開口部には、防火戸(建築基準法第2条第9号の2ロに規定する防火設備であるものに限る。)が設けられていること。一(十一) 燃料電池設備には、次に定めるところにより換気装置が設けられていること。ロ 自然換気口の開口部の面積の合計は、外箱の一の面について、当該面の面積の3分の1以下であること。一(十三) 改質器は、燃料を改質する時に発生する圧力、振動及び熱により機能に異常を生じないものであり、かつ、腐食するおそれがある場合は有効な防食処理を施した材料で造られたものであること。
外箱は屋外用2.3ミリメートル以上・屋内用1.6ミリメートル以上の鋼板とし、開口部には防火戸を設けます。
外箱には表示灯や燃料配管など限定された部材以外を外部に露出させてはならないという細かい定めもあります。
自然換気口の面積は外箱の一の面の3分の1以下と決まっており、十分な換気が行えない場合は機械換気設備を設けます。
見落としやすいのは、燃料を改質する改質器そのものにも防食処理が求められている点です。
圧力・振動・熱にさらされる改質器が腐食すると機能に異常を生じるため、材料の段階から対策が組み込まれています。

板厚や換気口の面積比率まで決まっているとは思いませんでした。
改質器というのも初めて聞く言葉です。

燃料電池の中でガスを水素に作り替える装置のことです。
次は現場での確認方法を見てみましょう。

現場で確認すべき表示はなにか

燃料電池設備の表示と点検チェックリストの図
外箱の内部構造まで点検で確かめるのは難しいため、まずは表示から状態を確認します。
燃料電池設備にも、他の非常電源設備と同じように表示義務が定められています。
燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)第三 表示 燃料電池設備には、次に掲げる事項をその見やすい箇所に容易に消えないように表示するものとする。一 製造者名又は商標 二 製造年 三 定格出力 四 型式番号 五 燃料消費量 六 定格負荷における連続運転可能時間
  • 外箱に製造者名・製造年・型式番号の表示があるかを確認する
  • 定格出力・燃料消費量・連続運転可能時間の表示があるかも見る
  • 燃料供給が容器保有型かガス事業者供給型かを外観で確認する
  • ガス事業者供給型であれば緊急ガス遮断装置の位置を確認する
  • 外箱の換気口が金網や防火ダンパーでふさがれていないかを見る
表示の確認こそが、告示の基準を満たしているかどうかの手がかりになります。
外箱の内部までは開けて見えなくても、表示と外観からある程度の状態は把握できます。

表示を見るだけでも、これだけのことが分かるんですね。

まずは外箱の表示から確認してみてください

よくある質問

Q燃料電池設備を非常電源に使うとき、屋外に置いてもキュービクル式にしなくてよいですか?
Aいいえ、屋外用・屋内用のいずれでもキュービクル式のものという限定が及びます。板厚など細部の要件は屋外用と屋内用で異なります。
Q停電から電圧確立・投入までの四十秒以内というのは、どの設備にも共通ですか?
Aこの四十秒以内という条件は燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)自体に定められたものです。自家発電設備の基準にも同種の条件がありますが、根拠となる告示は別です。
Q燃料容器保有型とガス事業者供給型は、どちらか一方を選べばよいですか?
Aはい、告示は「次のいずれかによるものであること」としており、いずれかの方式で燃料が安定して供給されれば足ります。
Q改質器の防食処理は、どんなときに必要になりますか?
A腐食するおそれがある場合に、有効な防食処理を施した材料で造ることが求められます。

まとめ

燃料電池設備を非常電源に使う場合は、消防法施行規則第12条第1項第4号ニによりキュービクル式のものに限られます。
構造及び性能の基準(平成18年消防庁告示第8号)は、同号ニ(ロ)の「消防庁長官が定める基準」にあたります。
充電部・高温部の保護に加え、停電から四十秒以内の電圧確立・投入と負荷回路の自動切離しが求められます。
燃料供給は燃料容器保有型ガス事業者供給型のいずれかで安定して確保します。
外箱は屋外用2.3ミリメートル以上・屋内用1.6ミリメートル以上の鋼板とし、開口部には防火戸を設けます。
改質器は圧力・振動・熱に耐え、腐食するおそれがある場合は防食処理を施した材料で造ります。
現場では製造者名・定格出力・燃料消費量・連続運転可能時間などの表示を確認しましょう。

燃料電池設備の基準がここまでよく分かりました!

まずは外箱の表示を見比べるところから始めましょう
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第12条第1項第4号ニ
  • 燃料電池設備の基準(平成18年消防庁告示第8号)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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