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屋内消火栓設備の運用はどこまで柔軟に扱えるのか|水源の転用から制御盤の置き場所まで質疑応答5問を解説

屋上に設置された赤い消火栓箱と水槽、奥に制御盤の見える設備スペースの写真

屋内消火栓設備の基準は、水平距離や放水性能など細かい数値がそろっています。
ところが、既存の設備を転用したいときや、新しい形状のノズルを使いたいときなど、数値だけでは判断に迷う場面も出てきます。
消防庁の質疑応答には、水源に転用するタンク、放水試験の方法、ノズルの形状、制御盤の置き場所、基準の適用範囲について答えたものが残っています。
この記事では、その質疑を五つの論点に分け、現行の条文に照らして読みます。屋内消火栓設備の運用が、どこまで柔軟に扱えるのかを順に見ていきます。

屋内消火栓設備って、基準どおりの設備しか使えないんですよね。

質疑では、条件つきで柔軟に扱った例が残っています。
順番に見ていきましょう。

うちのビルだと、水源や制御盤の置き場所に悩んでいます。

では、質疑の答えと条文を見比べていきましょう。
番号は、現行の規則に合わせて引いています。

この記事の結論
  • 飲料水用に使っていたタンクローリーのタンクは、堅固に固定すれば水源に転用してよいと答えています
  • 各階での放水試験が難しいときは、屋上等に試験専用の2号消火栓を設けてよいと答えています
  • アスピレートノズルの放水は、棒状の放水として扱ってよいと答えています
  • 加圧送水装置の制御盤は、種別に応じて設置場所を使い分けてよいと答えています
  • 設置基準面積を緩和する倍読み規定は、外壁の防火戸までは求めていないと答えています

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屋内消火栓設備の運用はどこまで柔軟に扱えるのかとして、タンクローリーのタンクは水源に転用可、試験専用の2号消火栓は設置可、アスピレートノズルは棒状放水扱い、制御盤は種別で設置場所を使い分け、倍読み規定は防火戸不要、を並べた図解

飲料水用だったタンクローリーのタンクは、屋内消火栓の水源に転用できるのか

楕円形の大きなステンレスタンクが、コンクリート基礎台と鋼板製の架台の上に固定バンドで据え置かれているイメージ
屋内消火栓設備の水源は、規則第12条第1項に細目があるものの、容量の計算式が中心で、タンクそのものの構造や材質まで一つ一つ定めているわけではありません。老朽化した建物の建て替えなどで、別の用途に使っていたタンクを水源に転用したい場面が問われました。
問 消防法施行令別表第1(4)項の防火対象物に設置する屋内消火栓設備に係る水源として、厚さ4ミリメートルのステンレス製で、長さ6.00メートル、幅2.06メートル、高さ1.19メートルの楕円形、内容積12.76立方メートル、有効水量約9立方メートルの積載式タンクローリーのタンク(製造直後から屋外に設置し、飲料水用の貯槽として使用。危険物を貯蔵したことはなく、腐食・破損等による水漏れもない)の使用を認めて差し支えないか。また、このタンクを防火対象物(簡易耐火構造)の敷地内屋外に設置する場合、コンクリート基礎台4基の上に鋼板製架台を設けて据え置き、金属製固定バンド(幅10センチメートル、厚さ4ミリメートル)で架台とともに基礎台へ4箇所ずつ固定し、加圧送水装置の吸込管側に至る配管(50A)をフレキシブルメタルホース(長さ30センチメートル)で接続する方法は、規則第12条第1項第8号に規定する地震による震動等に耐えるための有効な措置として認めて差し支えないか。
(平成4年3月18日消防予第64号・和歌山県総務部長あて回答)
答 1 認めて差し支えない。
2 コンクリート基礎台を地盤面に堅固に固定した場合は、認めて差し支えない。
危険物を貯蔵したことがなく水漏れもない水槽であれば、飲料水用だったタンクでも水源に転用してよいと答えています。
ただし無条件ではなく、コンクリート基礎台を地盤面に堅固に固定することが地震対策の条件です。現行の規則第12条第1項第9号は「貯水槽、加圧送水装置、非常電源、配管等には地震による震動等に耐えるための有効な措置を講じること」と定めており、当時の第8号から番号が繰り下がっていますが、内容は同じ考え方を引き継いでいます。

タンクは新品でないと水源には使えないと思っていました。

答えは水漏れがなければ転用も可です。
固定方法の確認が前提になります。

放水試験のために、屋上等へ試験専用の2号消火栓を設けてよいのか

屋上に設置された赤い試験用の2号消火栓箱と、見やすい位置に掲げられた標識のイメージ
点検では、実際に放水して性能を確認する試験が欠かせません。しかし高層階や密集した室内に設置された2号消火栓は、各階でそのまま放水すること自体が難しい場合があります。
問 2号消火栓設備の点検等の際に放水試験を実施し、放水性能を確認することとされているが、各階に設置されている2号消火栓により放水することが困難である場合がある。このため、屋上等に、あらかじめ各階に設置されている2号消火栓と同等のものを設け、この2号消火栓を用いて放水試験を行うこととしてもよいか。
(平成元年10月3日消防予第110号・各都道府県消防主管部長あて回答)
答 各階に設置されている2号消火栓により放水することが困難であると認められる場合にあっては、次により試験用の2号消火栓を設け、この試験用の2号消火栓を用いて、放水試験を行うことができるものである。
(1) 試験用の2号消火栓は、配管の系統のうち放水圧力が最も低くなると予想される配管の部分に設けること。
(2) 試験用の2号消火栓は、各階に設置されている2号消火栓と同等のものであること。
(3) 直近の見やすい箇所にその旨の表示をした標識を設けること。
各階の放水が難しいなら、屋上等に試験専用の2号消火栓を設けて試験してよいと答えています。
ただし配管の系統のうち放水圧力が最も低くなると予想される部分に設けることが条件です。一番条件の厳しい場所で試験することで、他の階の消火栓も問題なく性能を発揮できると確認する考え方です。設置場所には標識も必要です。

試験のたびに各階で水浸しになるのは困っていました。

答えは条件つきで試験栓の新設も可です。
圧力が最も低い系統に設けます。

アスピレートノズルの放水は「棒状の放水」として扱ってよいのか

先端が広がった形状のアスピレートノズルから、棒状と噴霧の中間のような水が放たれているイメージ
近年は、操作しやすさを重視した新しい形状のノズルが登場しています。アスピレートノズルは、棒状と噴霧状の中間的な放水形状になるため、基準上どちらの扱いになるのかが問われました。
問 アスピレートノズルにおける放水は、棒状と噴霧状の中間的な放水形状となるが、当該放水については、消火能力が棒状放水と同等以上の性能を有していることが確認された(「初期消火器具等のユニバーサルデザイン化に関する調査研究報告書」平成24年3月)ことから、2号告示第12第3(2)イに規定する「棒状の放水」に該当するものとして取り扱ってよいか。
(平成26年3月31日消防予第137号・各都道府県消防防災主管部長あて通知)
答 お見込みのとおり。
形状が中間的でも、性能が棒状放水と同等以上と確認できれば棒状の放水として扱ってよいと答えています。
判断の根拠は見た目の形状ではなく、調査研究報告書で裏づけられた消火能力の実測値にあります。「屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準」(平成25年消防庁告示第2号)は2号消火栓のノズルについて棒状放水の性能を求めており、その枠組みの中で判断されています。

見慣れない形のノズルは、使ってよいのか不安になります。

答えは性能が同等なら棒状扱いで可です。
形より実測データが決め手です。

加圧送水装置の制御盤は、どこに設置できるのか

機械室の壁に設置された灰色の制御盤と、不燃材料で区画された部屋を示す点線枠のイメージ
令第11条第3項第1号ホ及び第2号イ(6)・ロ(6)は、水源に連結する加圧送水装置について「点検に便利で、かつ、火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けること」と定めています。この抽象的な条件を、制御盤の種別ごとにどう当てはめるかが問われました。
問 屋内消火栓設備の加圧送水装置は、消防法施行令第11条第3項第1号ニ及び第2号ニにおいて「火災等の災害による被害を受けるおそれが少ない箇所に設けること」とされているが、加圧送水装置の基準(平成9年消防庁告示第8号)第6に規定する制御盤については、次により取り扱うこととしてよいか。
第1種制御盤=特に制限なし/第2種制御盤=不燃室/その他=不燃室(電気室、機械室、中央管理室、ポンプ専用室その他これらに類する室に限る)
(不燃室とは、不燃材料で造られた壁、柱、床及び天井で区画され、かつ、窓及び出入口に甲種防火戸又は乙種防火戸を設けた室をいう)
(平成10年5月1日消防予第67号・執務資料)
答 お見込みのとおり。
第1種制御盤は設置場所に特に制限がなく、第2種制御盤やその他の制御盤は不燃室に設けることで条件を満たすと答えています。
「その他」の不燃室は、電気室や機械室、中央管理室、ポンプ専用室その他これらに類する室に限られる点に注意が必要です。制御盤の性能そのものの差が、置き場所の自由度の差につながっています。

制御盤はどこでも同じ扱いだと思っていました。

答えは種別によって使い分けるです。
第1種以外は不燃室が条件です。

耐火構造の建物でも、外壁の開口部に防火戸は必要なのか

耐火構造のビルの外壁に並ぶ窓と、防火戸のない開口部を示すイメージ
令第11条第2項は、特定主要構造部を耐火構造とし、壁や天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料にした防火対象物について、設置基準面積を3倍または2倍に緩和する「倍読み規定」を定めています。この緩和を受ける建物に、外壁の開口部まで防火戸等の設置を求めるのかが問われました。
問 消防法施行令第11条第2項において、主要構造部を「耐火構造とし」又は「建築基準法第2条第9号のイ若しくはロのいずれかに該当し」という表現が用いられているが、ここでは、建築基準法第2条第9号の2の「耐火建築物」又は同条第9号の3の「簡易耐火建築物」と同様に、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の防火設備の設置を要するのか。
(平成4年12月17日消防予第249号「4」・予防課長から各都道府県消防主管部長あて)
答 必要としないものである。
倍読み規定の適用にあたり、外壁の開口部への防火戸その他の防火設備の設置は必要ないと答えています。
倍読み規定が緩和の条件とするのは特定主要構造部の耐火性能と内装の難燃化であり、開口部の防火設備までは条件に含まれていません。現行の令第11条第2項も、特定主要構造部を耐火構造とし、または建築基準法第2条第9号の3イ若しくはロに該当し、かつ内装を難燃材料で仕上げた場合に数値を緩和する構成で、この質疑の考え方と同じ方向にあります。

設置基準面積が緩和されるなら、他にも条件が増えるのかと思っていました。

答えは防火戸までは不要です。
条件は耐火性能と内装仕上げだけです。

よくある質問

Qタンクを水源に転用するとき、容量は自由に決めてよいのですか?
A容量は、令第11条第3項が定める設置個数に応じた必要水量の計算式を満たす必要があります。質疑が認めたのは、その水量を満たすタンクの転用と固定方法についてです。
Q試験用の2号消火栓は、どの建物でも設けてよいのですか?
A質疑の答えは、各階での放水が困難であると認められる場合に限っています。設けられるかどうかは、所轄の消防署の判断によります。
Q制御盤の「第1種」「第2種」は、どこで見分けられますか?
A制御盤には製造者名や品名、第1種か第2種かの区分などを見やすい箇所に表示することになっています。盤面の表示を確認してください。
Q質疑の回答は、今もそのまま使えますか?
A質疑は平成元年から平成26年にかけてのものです。その後の改正で条文の番号や言葉づかいが変わっている箇所があります。現行の条文、告示と、所轄の消防署の運用に確かめてください。

まとめ

✔飲料水用だったタンクローリーのタンクは、堅固に固定すれば水源に転用してよいとされた
✔各階での放水試験が難しいときは、圧力が最も低い系統に試験専用の2号消火栓を設けてよいとされた
✔アスピレートノズルの放水は、性能が同等以上なら棒状の放水として扱えるとされた
✔加圧送水装置の制御盤は、第1種なら制限なし、第2種やその他は不燃室に設けるとされた
✔倍読み規定の適用にあたり、外壁の開口部への防火戸の設置までは求められないとされた
✔質疑は平成元年から平成26年のもの。現行の条文と運用は、その後の改正で変わっている場合がある
✔自分の建物の設備の扱いは、所轄の消防署に確かめる

屋内消火栓設備も、条件つきで柔軟に扱える場面があるんですね。
まずは、うちの設備がどれに当たるか確かめてみます!

進める前に、所轄の消防署へ確かめておくのが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第11条第2項、第3項第1号ホ・第2号イ(6)・ロ(6)
  • 消防法施行規則第12条第1項第9号
  • 「屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準」(平成25年消防庁告示第2号)、加圧送水装置の基準(平成9年消防庁告示第8号)
  • 消防庁の通知・回答(平成元年10月3日消防予第110号、平成4年3月18日消防予第64号、平成4年12月17日消防予第249号、平成10年5月1日消防予第67号、平成26年3月31日消防予第137号)

※本記事は公表されている法令および通知に基づく一般的な解説です。掲載した回答は発出当時のもので、条番号や言葉づかい等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄の消防署にご確認ください。

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