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温泉施設の爆発事故はなぜ全国の温泉施設に暫定対策を迫ったのか|屋内源泉の把握と24時間換気という応急対応を解説

屋根から湯気が上がる伝統的な温泉旅館の建物外観

温泉に含まれる可燃性ガスが、目に見えないまま室内にたまり爆発した事故がありました。
平成19年6月19日、東京都渋谷区の温泉施設で起きたこの事故は、全国の温泉施設に共通する危険を浮かび上がらせました。
恒久的な法制度が整うまでの間、施設は何をすればよいのか。環境省と消防庁が連携し、暫定対策を都道府県に通知しました。
屋内や地下室に源泉がある施設なら、この暫定対策と今の法基準を知っておく必要があります。

屋内に源泉の設備がある温泉施設なんですが、この暫定対策と関係あるんでしょうか。

屋内又は地下室に源泉等がある施設は対象になり得ます。
まずは源泉の場所を確認しましょう。

個人で使っている温泉でも対象になるんですか。

対象になります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成19年の温泉施設爆発事故を受け、環境省と消防庁が連携し可燃性ガス対策の暫定対策を通知しました
  • 屋内又は地下室に源泉等がある温泉施設が対象になります
  • 換気・検知器・火気禁止・安全担当者の4点が施設側への基本要請でした
  • 可燃性ガスの有無は深度によって異なるため一律に安全とは判断できません
  • 現在は消防法施行令第21条の2第1項第3号によりガス漏れ火災警報設備の設置が義務化されています

温泉施設の可燃性ガス事故が暫定対策を経て恒久対策の法制化に至った流れを示した図解

温泉施設の爆発事故はなぜ暫定対策の通知を招いたのか

屋根に湯気を上げる温泉施設の建物を点検する作業服姿の人物

目に見えず匂いもしない可燃性ガスが、温泉施設の建物内にたまることがあります。
実際に起きた事故が、全国の温泉施設に共通する対策を促すきっかけになりました。

消防予第275号(平成19年7月24日 消防庁予防課長)「温泉施設において発生する可燃性ガスに関する当面の暫定対策について」 去る平成19年6月19日の東京都渋谷区温泉施設爆発火災を受け、貴殿におかれましては、温泉施設において発生する可燃性ガスによる火災の予防について注意喚起を図られているところと存じますが、このほど環境省において、別添のとおり温泉施設において発生する可燃性ガスに関する当面の暫定対策について各都道府県あて通知されることとなりました。

爆発事故が、全国の温泉施設に共通する対策の引き金になりました。
平成19年6月19日、東京都渋谷区の温泉施設で爆発事故が発生しました。
これを受け環境省は、温泉法の改正も含めた法制度の見直しを進める一方、恒久対策が施行されるまでの暫定的な対策を都道府県あてに通知しました。
この通知は消防予第275号として消防庁予防課長からも各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長へ発出され、環境省の要請を消防機関にも周知する形をとっています。
つまりこの通知は、事故から恒久的な法律ができるまでの空白を埋めるためのものでした。

事故がきっかけであんな通知が出たんですね。

そのとおりです。
次は対象になる施設を見ていきましょう。

どの温泉施設のどんな設備が対象になるのか

地下の配管とタンクが並ぶ温泉の源泉設備の断面図

暫定対策は、すべての温泉施設に一律にかかるわけではありません。
対象になる地域と設備の範囲は、あらかじめ決められた手順で絞り込まれます。

消防予第275号 別添 環自総発第070724001号(平成19年7月24日 環境省自然環境局長) 各都道府県においては、(1)の対象地域内にある利用中の温泉のうち、源泉等が屋内又は地下室に設置されているものを把握していただきたい。「利用中の温泉」とは、利用許可がされている温泉だけでなく、個人利用の温泉も含む。「源泉等」とは、可燃性ガスが完全に分離される前の温泉又は分離された後の可燃性ガスを取り扱う設備とする。具体的には、源泉、ガス分離器(セパレーター)、ガスの排出口、源泉タンク及びこれらの間の配管等が該当する。「屋内又は地下室」とは、空間が壁及び天井で閉鎖されている構造のものとする。

対象地域は、地質の情報から機械的に絞り込まれます。
対象となる地域は、「日本油田・ガス田分布図」に示された油田・ガス田・産ガス地帯などをもとに、都道府県内の地質に関する知見を有する者の助言も受けながら抽出するとされています。
そのうえで対象地域内にある屋内又は地下室に設置された源泉等が把握の対象になります。
「源泉等」には源泉本体だけでなく、ガス分離器や源泉タンク、配管まで含まれ、個人利用の温泉も対象から外れません。
まずは自分の施設の源泉等が屋内や地下室にあるかどうかを確認することが、最初の一歩になります。

屋外にある源泉なら関係ないということですか。

屋外の源泉は対象外とされています。
次は施設に求められた中身を見ていきましょう。

暫定対策は施設に何を求めたのか

壁の換気扇とガス検知器、注意書きの掲示がある室内

対象になった施設には、具体的にどんな対応が求められたのでしょうか。
暫定対策が挙げた要請事項は、大きく4つに整理できます。

消防予第275号 別添 各都道府県においては、(1)により把握された源泉等の管理者に対し、十分な換気、ガス検知器の設置、周辺での火気の使用禁止及び安全担当者の配置を要請していただきたい。(略)また、要請に応じた措置を行わない施設については、さらに、温泉の汲上げの停止を要請していただきたい。

求められたのは換気・検知器・火気禁止・安全担当者の4点でした。
換気は24時間常時行うこととされ、温泉を汲み上げない時間帯も止めてはならないとされました。
ガス検知器は、可燃性ガスが充満しやすい場所に、爆発下限濃度の10%以下の濃度で警報を発するものを設置するとされています。
あわせて周辺での火気の使用を禁止し、常時勤務する者の中から安全担当者を指名して、緊急時に温泉の汲み上げ設備を止める権限を持たせることも求められました。
これらの措置に応じない施設は、さらに温泉の汲み上げ自体の停止まで要請される仕組みでした。

ガス検知器さえ付ければ、それで対応は終わりでしょうか。

実はそう言い切れない点があります。
次は見落としやすい落とし穴を見ていきましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

検査済みの表示がある源泉タンクと表示のない源泉タンクを並べた比較

ここが実務でいちばん誤解しやすいところです。
暫定対策には、見た目だけでは分からない落とし穴が含まれています。

消防予第275号 別添 可燃性ガスの有無が深度により異なると考えられる場合は、対象とする温泉を深度により定めることもあり得る。(略)本暫定対策は、恒久対策が施行されるまでの間の暫定的な性格のものである。恒久対策は、対策を実施する温泉の範囲、対策の技術的内容等の面で、暫定対策を超えるものとなる可能性があることから、暫定対策による要請を行うに当たっては、それをもって可燃性ガス対策が完了するという誤解を受けないよう留意いただきたい。

見た目が同じ源泉でも、危険性が同じとは限りません。
可燃性ガスの有無は深度によって異なることがあり、隣り合う源泉でも一律に安全と判断することはできません。
検査により相当量の可燃性ガスを含まないと判明すれば、換気などの措置を行わなくてよいとされていますが、その判断は検査を経て初めて成り立ちます。
また、この暫定対策はあくまで恒久対策が施行されるまでのつなぎであり、これに応じたことをもって可燃性ガス対策が完了したと誤解しないよう注意が呼びかけられています。
「うちは検査していないが、たぶん大丈夫」という思い込みが、いちばんの見落としになります。

検査していない源泉は、とりあえず様子を見てもいいでしょうか。

それは避けたほうが安全です。
次は明日からの確認事項をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストを持ちガス警報機を確認する担当者

最後に、施設側で今すぐ確認できることを整理しておきましょう。
暫定対策のあと、対応の中身は現在の法律に引き継がれています。

消防予第275号 別添 各都道府県においては、必要に応じ温泉の利用許可を行う保健所設置市又は特別区と作業を分担するとともに、必要に応じ消防機関、都道府県労働局、労働基準監督署及び産業保安監督部(支部、事務所)との情報交換を図ること。
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条の2第1項第3号 前二号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物その他の工作物(収容人員が総務省令で定める数に満たないものを除く。)で、その内部に、温泉の採取のための設備で総務省令で定めるものが設置されているものには、ガス漏れ火災警報設備を設置するものとする。(略)

まずは自施設の源泉等が屋内や地下室にあるかを確認してください。
該当する場合は、検査により相当量の可燃性ガスを含むかどうかを確認しましょう。
この暫定対策で示された換気・検知器・火気禁止・安全担当者という考え方は、その後法制度に引き継がれました。
現在は消防法施行令第21条の2第1項第3号に基づき、温泉の採取のための設備がある防火対象物にガス漏れ火災警報設備の設置が義務付けられています。
自施設が現行の設置基準を満たしているかどうかは、記事末のリンクにある解説もあわせて確認しておきましょう。

まずは源泉の場所と検査の有無を確認してみます。

それが確実な第一歩です。
まとめで全体を振り返りましょう。

よくある質問

Q個人が自宅で利用している温泉も対象になりますか?
A対象になります。この暫定対策がいう「利用中の温泉」には、利用許可がされている温泉だけでなく、個人利用の温泉も含まれるとされています。
Q検査で可燃性ガスが検出されなければ何もしなくてよいのですか?
A検査により相当量の可燃性ガスを含まないと判明した場合は、換気やガス検知器の設置といった措置を行わなくてよいとされています。ただし可燃性ガスの有無は深度によって異なるため、施設の実情に応じた検査が前提になります。
Q換気やガス検知器を用意すればそれで対応は終わりですか?
Aこの暫定対策自体が、恒久対策(法制度)が整うまでのつなぎと位置付けられています。現在は消防法施行令第21条の2第1項第3号によりガス漏れ火災警報設備の設置が義務化されているため、現行の基準に沿っているかを確認する必要があります。
Q要請に応じない温泉施設はどうなりますか?
A換気やガス検知器の設置といった措置を行わない施設については、さらに温泉の汲み上げ停止が要請されるとされています。

まとめ

平成19年6月19日、東京都渋谷区の温泉施設で爆発事故が発生しました
環境省と消防庁が連携し、都道府県に暫定対策の通知(平成19年消防予275号)を発出しました
対象地域は「日本油田・ガス田分布図」等の地質情報から抽出されます
屋内又は地下室に設置された源泉等の把握が最初のステップになります
換気・検知器・火気禁止・安全担当者の4点が施設側への基本要請でした
措置に応じない施設には温泉の汲み上げ停止まで要請されました
現在は消防法施行令第21条の2第1項第3号でガス漏れ火災警報設備の設置が義務化されています

屋内の源泉から今の法基準までのつながりがよく分かりました!

まずは源泉の場所の確認から始めてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 温泉施設において発生する可燃性ガスに関する当面の暫定対策について(平成19年7月24日 消防予第275号 消防庁予防課長)
  • 温泉施設において発生する可燃性ガスに関する当面の暫定対策について(平成19年7月24日 環自総発第070724001号 環境省自然環境局長)
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条の2第1項第3号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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