劇場やホールの舞台部には、広さによって開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備がいります。
開放型は、感知器などと連動して自動で起動させるのが国の規則の原則です。
ただし規則にはただし書があり、火災時に直ちに手動で起動できる場合は自動式の起動装置を設けなくてよいとされています。
何をもって「直ちに」とするかは規則に書かれていませんが、大阪市消防局の運用基準は防災センター等から手動起動装置までの歩行距離で線を引いています。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、借りている規定を順にたどって、堺市・東大阪市と比べます。
大阪市で、多目的ホールの舞台にスプリンクラー設備を計画しています。
開放型は感知器と連動する自動の起動装置が必ずいるのですか?
国の規則は自動の起動装置が原則です。
ただ大阪市の運用基準は、同じ階で歩行距離70メートル以下なら設置しないことができるとしています。
防災センターと舞台が別の階にあるときも同じですか?
別の階なら歩行距離30メートル以下が目安です。
根拠を順にたどっていきましょう。
- 国の基準では、一定の広さの舞台部にスプリンクラー設備がいり、ヘッドは開放型です。起動装置は感知器などと連動する自動式が原則です(消防法施行規則第14条第1項第8号イ(イ))
- 規則のただし書は、受信機などが防災センター等にあり、火災時に直ちに手動で起動できる場合を自動式の原則から外していますが、距離などの目安は書いていません
- 大阪市の運用基準は、防災センター等から舞台部の手動起動装置までの歩行距離が同一階70メートル以下・異なる階30メートル以下なら、自動式起動装置を設置しないことができるとしています(◆=行政指導基準)
- 大阪市は、自動式で感知に使う閉鎖型ヘッドを取付け面10メートル以下・標示温度75度未満に限り、すのこ・渡りの上部には閉鎖型ヘッドを設けるとしています
- 堺市の審査基準も同じ距離で「直ちに起動できる場合」を定めています(印なし=法令の解釈)。東大阪市の公開資料にはスプリンクラー設備の基準がありません
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目次
国の基準では舞台のスプリンクラーをどう起動させるのか

消防法施行令第12条第1項第2号は、(1)項の劇場などで、舞台部の床面積が地階・無窓階・4階以上の階は300平方メートル以上、その他の階は500平方メートル以上のものにスプリンクラー設備を求めています。舞台部は、舞台とこれに接続して設けられた大道具室・小道具室をいいます。
消防法施行規則第13条の2第1項は、(1)項の舞台部に設けるヘッドを開放型スプリンクラーヘッドとしています。
開放型は、一斉開放弁などを開くと放水区域のヘッド全部から同時に水が出る仕組みです。どうやって弁を開くか、つまり起動装置の決まりが大切になります。
一斉開放弁や手動式開放弁の位置など国の基準の全体は、舞台のスプリンクラーの記事で解説しています。
ただし、自動火災報知設備の受信機若しくはスプリンクラー設備の表示装置が防災センター等に設けられ、又は第十二号の規定若しくは第二十四条第九号において準用する第十二条第一項第八号の規定により総合操作盤が設けられており、かつ、火災時に直ちに手動式の起動装置により加圧送水装置及び一斉開放弁を起動させることができる場合にあつては、この限りでない。
ただし書は、受信機や表示装置が防災センター等にある(又は総合操作盤がある)うえで、火災時に直ちに手動式の起動装置で起動できる場合は、この限りでないとしています。
防災センター等は、規則第12条第1項第8号で、防災センター・中央管理室・守衛室その他これらに類する場所のうち常時人がいる場所に限ると定義されています。
ところが、どのくらいの位置関係なら「直ちに」起動できるといえるのかは、規則に書かれていません。
「直ちに手動で起動できる」と言われても、どこまでなら認められるのか分かりにくいですね。
はい、規則には距離などの目安がありません。
そこを大阪市の運用基準が数字で補っています。
- 消防法施行令第12条第1項第2号が、一定の広さの舞台部にスプリンクラー設備を求める
- 消防法施行規則第13条の2第1項が、舞台部のヘッドを開放型とする
- 規則第14条第1項第8号イ(イ)の本文が、自動式の起動装置を原則とする
- 同じくただし書が、防災センター等に受信機などがあり、直ちに手動で起動できる場合を除く
- 大阪市の運用基準 第3 5(1)エが、防災センター等から手動起動装置までの歩行距離で「直ちに」を判断する
大阪市は手動ですぐ起動できるかを何で判断しているのか

その第3 加圧送水装置等の「5 起動装置」の中に、自動式起動装置を設置しないことができる場合が書かれています。
測るのは直線距離ではなく歩行距離で、起点は防災センター等、終点は舞台部に設けられる手動起動装置です。
防災センター等の意味は、大阪市の屋内消火栓設備の基準でも「規則第12条第1項第8号に規定する防災センター等」とされていて、常時人がいる場所に限られます。
同じ距離の線は、手動式開放弁を使えるかどうかの条件にも出てきます。
- 放水区域ごとに2個以上を、相反する位置で、舞台部を見とおすことができ、火災時に容易に近づける箇所に設ける(ア)
- 一斉開放弁の起動操作部等である旨と、受け持つ放水区域が容易に判別できる表示をする(イ)
- 有機ガラス等による有効な防護措置を講じる(ウ)
| 位置関係(例) | 歩行距離(例) | 5(1)エの扱い |
|---|---|---|
| 同じ階 | 60メートル | 自動式起動装置を設置しないことができる |
| 同じ階 | 80メートル | 70メートルを超えるのでこの扱いに当たらない |
| 異なる階 | 25メートル | 自動式起動装置を設置しないことができる |
| 異なる階 | 40メートル | 30メートルを超えるのでこの扱いに当たらない |
防災センターが1階で、舞台が2階にある場合はどうなりますか?
異なる階なので、歩行距離30メートル以下かどうかで見ます。
歩行距離なので、階段を通る経路で考えることになります。
自動式の起動装置を付けるときは何で火災を感知するのか

- 標示温度が75度未満のものとする((ア))
- ヘッドのデフレクターと取付け面との距離は0.15メートル以下とする((イ))
- ヘッドの種別と取付け面の高さに応じた床面積につき1個以上を、放水区域ごとに設ける((ウ))
| ヘッドの種別 | 取付け面の高さ6メートル以下 | 6メートルを超え10メートル以下 |
|---|---|---|
| 標準型ヘッド | 15平方メートルにつき1個以上 | 7.5平方メートルにつき1個以上 |
| 高感度型ヘッド | 20平方メートルにつき1個以上 | 10平方メートルにつき1個以上 |
感知器を使うときは、ウで規則第23条第4項の例によるほか、大阪市の自動火災報知設備の基準(第4)により、放水区域ごとに設けるとされています。
なお、5の柱書は閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備の基準(第3.5)を準用するとしていて、その第3.5は起動用水圧開閉装置の圧力スイッチの設定などを定めています。
天井がとても高い舞台だと、閉鎖型ヘッドは感知に使えないのですね。
はい、大阪市は取付け面10メートル以下に限るとしています。
それより高いときは感知器で感知します。
すのこの上や放水区域の分け方で大阪市が加えている点はどこか

1つ目は、すのこや渡りの上部のヘッドです。国の基準は次のとおりです。
ただし、すのこ又は渡りの上部の部分に可燃物が設けられていない場合は、当該天井又は小屋裏の室内に面する部分には、スプリンクラーヘッドを設けないことができる。
大阪市はこのただし書を除いて規則を読み、さらにすのこ・渡りの上部に閉鎖型ヘッドを設けるとしています。閉鎖型ヘッドを省けるのは、すのこ・渡りが不燃材料で造られ、かつ上部に可燃物がない場合です。
2つ目は、放水区域の分け方です。
ただし、火災時に有効に放水することができるものにあつては、居室の放水区域の数を五以上とすることができる。
さらに、1の放水区域の面積は100平方メートル以上(舞台部が100平方メートル未満ならその面積)、2以上の放水区域を設けるときは隣接する区域の相対する開放型ヘッドの間隔を0.5メートル以下とするとしています(第5 1・2)。
このただし書の部分と1 面積には◆(行政指導基準)が付いています。
なお、国の規則のただし書が5以上にできるとしているのは「居室」の放水区域で、大阪市の運用基準は「舞台部又は居室」と書いています。
すのこの上に幕などを置いていると、閉鎖型ヘッドを省けないのですね。
大阪市では不燃材料のすのこで、上部に可燃物がないときだけ省けます。
設計の段階で上部の使い方を決めておきましょう。
堺市や東大阪市とは扱いがどう違うのか

起動装置の扱いは、大阪市と同じ距離です。
この項目に印はなく、堺市の凡例では法令基準及びその解釈にあたります。大阪市は第3の見出しに◆(行政指導基準)が付いています。
すのこの上の扱いは、堺市は「ぶどう棚」という言葉で書いています。
放水区域は、堺市も2以上の放水区域を設けるときの1の区域を100平方メートル以上(★=堺市独自の指導基準)とし、ポンプの吐出量が5,000リットル毎分以上なら5以上にでき、重複部分のヘッド間隔は図で0.5メートル以内と示しています。
東大阪市消防局の公開資料(6つの運用基準)には、スプリンクラー設備の基準がありません。
3市を並べると次のとおりです。
| 項目 | 大阪市 | 堺市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 自動式起動装置の扱い | 同一階70メートル以下・異なる階30メートル以下なら設置しないことができる(第3 5(1)エ・◆) | 同じ距離で「直ちに起動できる場合」を定める(Ⅱ 4(6)・印なし) | 公開資料に記載なし |
| 手動式開放弁 | 同じ距離の場合に限り設けることができる(第6 1・◆) | 同じ距離の条件は見当たらない | 公開資料に記載なし |
| 感知に使う閉鎖型ヘッド | 取付け面10メートル以下・75度未満・面積の表(第3 5(1)ア・イ) | 開放型の項目(4)には見当たらない | 公開資料に記載なし |
| すのこ・ぶどう棚の上部 | 閉鎖型ヘッドが原則で、不燃材料かつ可燃物なしなら省略できる(第10) | 電動機等以外の可燃性工作物を設けるなら閉鎖型ヘッド((5)) | 公開資料に記載なし |
| 放水区域 | 100平方メートル以上・0.5メートル以下・5,000リットル毎分で5以上(最小の数) | 100平方メートル以上(★)・0.5メートル以内(図)・5,000リットル毎分で5以上 | 公開資料に記載なし |
- 舞台部の床面積と階が、令第12条第1項第2号に当たるか
- 常時人がいる防災センター等に、受信機や表示装置があるか
- 防災センター等から舞台部の手動起動装置までの歩行距離が、同一階70メートル以下・異なる階30メートル以下か
- 手動起動装置を放水区域ごとに2個以上、相反する位置に置けるか
- すのこ・渡りが不燃材料か、上部に可燃物を置かない使い方にできるか
大阪市と堺市で、距離の数字は同じなのですね。
はい、距離は同じで、書き方と印が違います。
よくある質問で整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず図面で、防災センター等から舞台の手動起動装置までの歩行距離を測ります。
すのこの上の使い方も整理しておきます!
同じ舞台でも、距離と上部の使い方で付ける装置が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第4節 開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第3 5(1)ア・イ・ウ・エ・(2)、第5、第6 1、第10、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第4 スプリンクラー設備 Ⅱ 4(3)・(4)・(5)・(6)、総則 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第12条
- 消防法施行規則 第12条第1項第8号・第13条の2・第14条第1項第2号・第8号・第23条第4項
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





