スプリンクラー設備がいる建物でも、天井がとても高い部分には放水型ヘッド等という別の種類のヘッドを使います。
ふつうのヘッドでは、熱が届くのが遅く、水も床まで届きにくいからです。
大阪市消防局の運用基準は、この放水型ヘッド等を設置しないことができる場合を6つ並べています。
その中には、床面積50平方メートルを境に条件が変わる項目や、屋内消火栓設備の特例を借りる項目があります。
この記事では、国の基準と大阪市の運用を分けて読み、堺市の書き方と比べます。
大阪市で、3階まで吹き抜けたロビーのある事務所ビルを計画しています。
ロビーの天井まで12メートルほどあるのですが、放水型ヘッドは必ず要るのでしょうか。
大阪市の運用基準には、放水型ヘッド等を設置しないことができる場合が6つ書かれています。
ロビーのような場所は、その中の床面積50平方メートルを境にした項目に当たるかもしれません。
ロビーなら、放水型ヘッドなしで済みそうですね。
ただし建物の用途や仕上げで条件が変わります。
国の基準から順に、大阪市の項目をたどっていきましょう。
- 国の基準(消防法施行令第12条第2項第2号ロ)は、床面から天井までが10メートルを超える部分(指定可燃物の部分などは6メートル)に放水型ヘッド等を求めています
- 大阪市の運用基準は、この部分を「高天井の部分」と呼び、同じ空間の平均ではなく部分ごとの高さで測るとしています
- 高天井の部分の床が隣の低い天井の閉鎖型ヘッドで有効に包含されるときは、放水型ヘッド等を設置しないことができます
- 天井が10メートルを超える部分は、床面積50平方メートル未満か以上か、特定防火対象物かで、ヘッドを設置しないための条件が3段階に分かれます
- 堺市の審査基準も同じ考え方ですが、特定防火対象物の50平方メートル以上のロビーを扱う項目や、高感度型ヘッドの項目がありません。東大阪市の公開資料にはスプリンクラー設備の基準がありません
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目次
国の基準ではどんな部分に放水型ヘッド等が必要なのか

スプリンクラーヘッドの種類は、消防法施行令第12条第2項第2号が決めています。
「可燃物が大量に存し」の部分と、ヘッドの種類は、消防法施行規則第13条の4が決めています。
一 指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う部分
二 令別表第一(四)項に掲げる防火対象物又は同表(十六)項イに掲げる防火対象物の同表(四)項に掲げる防火対象物の用途に供されるもの(通路、階段その他これらに類する部分を除く。)
2 令第十二条第二項第二号ロの総務省令で定める種別のスプリンクラーヘッドは、消防庁長官が定める性能を有する放水型スプリンクラーヘッドその他のスプリンクラーヘッド(第十三条の五から第十四条までにおいて「放水型ヘッド等」という。)とする。
地下街や準地下街の店舗なども、同規則第13条の5第6項・第8項で6メートルなどを超える部分に放水型ヘッド等を求めています。
大阪市の運用基準は、これらをまとめて「高天井の部分」と呼んでいます。
同じ12メートルでも、事務所ならロビー、百貨店なら売場で扱いが違うのですね。
はい、まずどの境目の建物かを確かめます。
次は、大阪市が高さをどう測るかです。
大阪市は高天井の部分をどう測りどこを外すのか

(1) 天井のない場合については、床面から屋根の下面までの高さとすること(図1―5―1)
(2) 防火対象物の部分が高天井の部分に該当するか否かについては、当該防火対象物内の同一の空間としてとらえることのできる部分(防火区画等されている部分)の床面から天井までの平均高さではなく、個々の部分ごとの床面から天井までの高さとすること(図1―5―2)
(3) 天井が開閉する部分については、当該天井が閉鎖された状態における床面からの高さとすること
吹抜けの部分だけが10メートルを超えていれば、その部分が高天井の部分になります。
そのうえで第2 2は、高天井の部分に当たらないものを2つ挙げています。
(1) 階段又はエスカレーターの付近に設けられる小規模な吹き抜け状の部分(図1―5―3)
(2) 天井又は小屋裏が傾斜を有するものである等の理由により、床面から天井までの高さが局所的に令第12条第2項第2号ロ並びに規則第13条の5第6項及び第8項の規定に掲げる高さとなる部分(図1―5―4)
どちらも、まわりの低い天井にある閉鎖型ヘッドで有効に包含されていることが条件です。
大阪市の第2 2には面積の数字がありません。
この扱いのもとになった国の質疑応答は放水型ヘッド等の質疑応答の記事で紹介しています。
エスカレーターの吹抜けは、はじめから高天井の部分に入らないのですね。
はい、ここで外れなかった部分が第14 特例基準の対象になります。
次は、その1つ目を見ます。
隣の閉鎖型ヘッドで床が覆えれば放水型ヘッド等はいらないのか

1 高天井の部分の床面が隣接する高天井の部分以外の部分に設置された閉鎖型ヘッドにより有効に包含される場合(第2.2に該当するものを除く。)には、当該高天井の部分には放水型ヘッド等を設置しないことができる(図1―5―6)。
令第32条は、消防長や消防署長が火災の危険などから判断して基準によらなくてよいと認めるときの規定です。
| 図1―5―6の例(格子型配置) | 両側に低い天井がある場合 | 片側が壁の場合 |
|---|---|---|
| 標準型ヘッド(図の表記はr2.3) | 両側のヘッドの間が3.25メートル以下 | 壁から隣のヘッドまでが1.625メートル以下 |
| 高感度型ヘッド(図の表記はr2.6) | 両側のヘッドの間が3.6メートル以下 | 壁から隣のヘッドまでが1.8メートル以下 |
かっこ書きで第2 2に当たるものを除いているのは、そちらははじめから高天井の部分に入らないからと読めます。
逆に、高天井の部分の放水型ヘッド等で隣の低い部分の床を覆う場合は、閉鎖型スプリンクラーヘッドの節の特例で扱われていて、金庫室や車寄せのヘッドの記事で取り上げています。
吹抜けの幅が数メートルなら、まわりのヘッドの配置で片付くこともあるのですね。
はい、ヘッドの配置図で距離を示すのが協議の出発点です。
次は、広いロビーや体育館の場合です。
床面積50平方メートルを境に条件はどう変わるのか

(1) 高天井の部分の床面積が50平方メートル未満であるものについては、次に適合するもの
ア 高天井の部分において火気の使用がないこと
イ 高天井の部分において多量の可燃物が存しないこと
ウ 高天井の部分は、屋内消火栓又は補助散水栓等により有効に包含されていること
(2) 高天井の部分の床面積が50平方メートル以上で、かつ、特定防火対象物並びに地階、無窓階及び11階以上の階の高天井の部分については、次に適合するもの
ア 高天井の部分には令別表第1(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項及び(9)項イに掲げる用途に供する部分が直接面していないこと
イ 高天井の部分の床、壁及び天井の仕上げが不燃材料でなされていること
ウ 高天井の部分はロビー、通路その他これらに類する部分であること
エ (1).ア、イ及びウに適合すること
オ 避難者が高天井の部分を通過しなくても避難できる避難経路が確保されていること
カ 高天井の部分を監視する防災センター等の係員又はその他の係員の指示により、速やかに消火活動ができる体制が確立されていること
(3) 高天井の部分の床面積が50平方メートル以上で、かつ、特定防火対象物並びに地階、無窓階及び11階以上の階の高天井の部分以外の高天井の部分については、次に適合するもの
ア 高天井の部分は体育館(主として競技を行うために使用するものに限る。)、ロビー、会議場、通路その他これらに類する部分であること
イ 高天井の部分の壁及び天井の仕上げが準不燃材料でなされていること
ウ (1).ア、イ及びウに適合すること
| 区分(天井10メートル超) | おもな条件 |
|---|---|
| 50平方メートル未満 | 火気の使用がない・多量の可燃物がない・屋内消火栓か補助散水栓等で有効に包含 |
| 50平方メートル以上で、特定防火対象物か地階・無窓階・11階以上 | ロビー・通路など、床・壁・天井が不燃材料、店舗や病院などの用途が直接面しない、高天井の部分を通らない避難経路、係員の指示で速やかに消火できる体制、上の3条件 |
| 50平方メートル以上で、上の行以外 | 体育館(競技用)・ロビー・会議場・通路など、壁と天井が準不燃材料、上の3条件 |
同じロビーでも、ホテルや百貨店のように特定防火対象物なら2つ目の区分になり、条件がぐっと増えます。
ここでいう「その他のヘッド」まで外せるので、2はスプリンクラーヘッドそのものを置かない項目です。
そのかわり、どの区分でも屋内消火栓か補助散水栓等で有効に包含されていることが条件になっています。 天井が10メートル以下の高天井の部分(指定可燃物の部分や百貨店の売場など、6メートルが境目の部分)は、第14の3で扱います。
(1) 2.(1).ア及びイに適合すること
(2) 高天井の部分には、閉鎖型ヘッド(標準型ヘッドのうち高感度型ヘッドに限る。)が設置されていること
同じロビーでも、建物の用途で区分が変わるのは意外でした。
はい、建物全体の用途と階を先に確かめてください。
最後に、残りの3項目と堺市との違いを見ます。
屋内消火栓の特例を借りる3項目と堺市との違いは何か

5 仮設建築物で、屋内消火栓設備の基準(第12.2.(1)から(4)まで)に適合するものについては、放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備を設置しないことができる。
6 ガス充塡所の製造施設のうち、屋内消火栓設備の基準(第12.13又は14)に適合するものについては、放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備を設置しないことができる。
- 4の第12 1は、不燃材料で造られ、出火の危険がない倉庫・浄水場・ジュース工場・金属や石材の加工工場・プールやスケートリンクで、(6)の電気設備や金属溶解設備のある場所は除いています。くわしくは金属だけの倉庫の記事で読み解いています
- 4の第12 7は、評価を受けた不活性ガス消火設備やハロゲン化物消火設備の有効範囲内の部分です
- 5の第12 2は、存続期間が6か月以内などの4条件を満たす仮設建築物で、仮設建築物の記事で取り上げています
- 6の第12 13・14は、高圧ガス保安法の適用を受けるガス充塡所の製造施設で、国の特例の考え方はLPガス充てん所の記事で紹介しています
7 安全センターに設けられたガス系消火設備等評価委員会の評価を受けた不活性ガス消火設備及びハロゲン化物消火設備が設置された防火対象物の当該設備の有効範囲内の部分については、屋内消火栓設備を設置しないことができる。
では、堺市消防局の審査基準と比べます。堺市は第4 スプリンクラー設備の細目5で放水型ヘッド等を扱っています。
なお、当該部分は、概ね50 ㎡未満で、かつ、閉鎖型ヘッドにより有効に警戒されていること。
高天井部分のうち、次の(ア)のa若しくはbに定める場所に該当し、かつ、(イ)の全てに適合するもの、又は、(ア)のcに定める場所に該当し、かつ、(イ)のbからdまでに適合するものについては放水型ヘッド等及びその他のヘッドを設けないことができる。
(ア) 放水型ヘッド等及びその他のヘッドの設置を省略できる場所
a 政令別表第一(5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)項から(15)項まで、(16)項ロに掲げる防火対象物の10階以下の階(地階及び無窓階を除く)に存するロビー、会議場、通路その他これらに類する場所の高天井部分
b 10階以下の階(地階及び無窓階を除く)に存する体育館(主として競技を行うために使用するものに限る)の高天井部分
c 概ね50 ㎡未満である高天井部分
(イ) 放水型ヘッド等及びその他のヘッドの設置を省略できる要件
a 当該部分の壁及び天井の仕上げが不燃材料又は準不燃材料でなされていること
b 当該部分において火気の使用がないこと
c 当該部分に多量の可燃物が存しないこと
d 当該部分は屋内消火栓又は補助散水栓により有効に警戒されていること。
| 比べる点 | 大阪市(運用基準 第1章 第5節) | 堺市(審査基準 第4 Ⅱ5) |
|---|---|---|
| 高さの測り方 | 部分ごとの高さ、天井がなければ屋根の下面、開閉する天井は閉じた状態 | 同じ |
| 小さな吹抜け・局所的に高い部分 | 周囲の閉鎖型ヘッドで有効に包含されれば該当しない(面積の数字なし) | 概ね50平方メートル未満で、閉鎖型ヘッドで有効に警戒されていれば該当しない |
| 隣の閉鎖型ヘッドで床を覆う | 放水型ヘッド等を設置しないことができる。図で3.25・1.625メートルなどの距離を示す | 同じ考え方。図に距離の数字はない |
| 50平方メートル未満の部分 | 天井10メートル超で、火気なし・可燃物なし・屋内消火栓等で包含 | 概ね50平方メートル未満で、火気なし・可燃物なし・屋内消火栓等で警戒 |
| 特定防火対象物などの50平方メートル以上のロビー | 不燃材料・避難経路・消火体制など6条件でヘッドを設置しないことができる | この場面を扱う項目はない |
| それ以外の50平方メートル以上 | 体育館・ロビー・会議場・通路などで、壁と天井が準不燃材料 | 非特定用途の10階以下(地階・無窓階を除く)のロビーなど、10階以下の体育館で、壁と天井が不燃か準不燃材料 |
| 天井10メートル以下の高天井の部分 | 高感度型の閉鎖型ヘッドを付ければ放水型ヘッド等を設置しないことができる | この項目はない |
| 屋内消火栓の特例を借りる項目 | 4〜6(不燃の倉庫など・ガス系消火設備・仮設建築物・ガス充塡所) | 放水型ヘッド等の細目にはない |
| 根拠と記号 | 令第32条又は条例第47条を適用。記号なし | 政令第32条又は条例第72条を適用。◆⑥(平成8年消防予第175号を参考にした指導基準) |
堺市で同じ計画をするときは、放水型ヘッド等を付ける前提で所轄と相談するのが確実です。
大阪市の条例第47条と堺市の条例第72条の中身は、この記事では確かめていません。
東大阪市は、公開している6つの運用基準(避難器具・自動火災報知設備・非常コンセント・連結送水管・消火器具・誘導灯)にスプリンクラー設備の基準がなく、比べることができませんでした。
大阪市と堺市で、同じロビーでも答えが変わることがあるのですね。
はい、どちらの市でも計画の段階で所轄と協議するのは同じです。
よくある質問で整理しておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず吹抜けの部分ごとの高さと床面積を図面で拾って、建物の用途と階から区分を当てはめます。
大阪市と堺市のどちらの基準かも、最初に確かめておきます!
同じ吹抜けでも、市によって使える特例が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第1章 第5節 放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備 第1 用語の意義・第2 高天井の部分の取り扱い・第14 特例基準、第1章 第2節 屋内消火栓設備 第12 特例基準 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「消防同意・消防用設備等審査基準」第4 スプリンクラー設備 Ⅱ 細目 5 放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備 (1)(2)・通知一覧、第1 総則 4 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準(公開資料) https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第12条第2項第2号、第32条
- 消防法施行規則 第13条の4、第13条の5第6項・第8項
- 放水型ヘッド等を用いるスプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第6号)
※本記事は公表されている法令および大阪市・堺市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





