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パッケージ型自動消火設備の総合点検はなぜ消火薬剤容器を差し替えて確かめるのか|試験用ガスによる模擬放出とⅠ型Ⅱ型の違いを解説

パッケージ型自動消火設備の総合点検はなぜ消火薬剤容器を差し替えて確かめるのか

パッケージ型自動消火設備は、天井などに感知部と放出口を組み込んだ自動消火の仕組みです。
設置してからも、総合点検で実際に消火薬剤を放出させて機能を確かめる決まりになっています。
とはいえ、点検のたびに本物の消火薬剤を消費するわけにはいきません。
この記事では、消火薬剤容器を試験用ガス容器に差し替える模擬放出の手順を、告示の条文から確認していきます。

うちのパッケージ型自動消火設備、総合点検で本当に薬剤を撒いているんでしょうか。

いえ、消火薬剤容器を試験用ガス容器に差し替えて確かめます。

容器を差し替えるなんてこと、そんなに簡単にできるんですか。

はい、告示で決められた手順どおりに行います。

この記事の結論
  • パッケージ型自動消火設備の総合点検は、消火薬剤貯蔵容器を試験用ガス容器に差し替えて模擬放出する方式で行います
  • 差し替える試験用ガスの量は、防護区域の必要消火薬剤量の10%以上(端数は切上げ)と定められています
  • Ⅰ型は同時放射区域を順次変えながら4年以内で全設備を確認し、Ⅱ型は1回の点検で全部を確認します
  • 2台以上のパッケージ型自動消火設備で同時放射区域を防護する場合は、連動して作動することも確認します
  • 点検後は加圧用ガス容器の再充てんと復元が必要で、結果は維持台帳に記録し消防長又は消防署長へ報告します

パッケージ型自動消火設備の総合点検の手順をまとめた図解

パッケージ型自動消火設備の総合点検はなぜ実際に放出させて確かめるのか

パッケージ型自動消火設備の感知部と放出口を確認するイメージ
パッケージ型自動消火設備は、感知部が火災を感知すると自動で消火薬剤を放出する設備です。
設置してからも、総合点検で機能そのものを確かめる義務があります。
消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件(平成16年5月31日消防庁告示第9号) 第2 点検の内容及び点検の方法(抜粋) 2 総合点検 消防用設備等の全部若しくは一部を作動させ、又は当該消防用設備等を使用することにより、当該消防用設備等の総合的な機能を確認すること。
総合点検は設備を実際に作動させて総合的な機能を確認する点検です
パッケージ型自動消火設備は機器点検が6月ごと、総合点検が1年ごとと告示で定められています。
機器点検では周囲の状況や外形、表示など目視で確認できる範囲にとどまりますが、総合点検では感知部から放出口までの一連の動作を実際に確認します。
とはいえ、火災を模したセンサー作動のたびに消火薬剤を放出していては、点検のたびに設備が使えなくなってしまいます。
次の章では、消火薬剤を消費せずに機能を確かめる仕組みを見ていきます。

機器点検だけじゃ足りないんですね。

総合点検で初めて一連の動作を確認できます。

なぜ消火薬剤貯蔵容器を試験用ガス容器に差し替えるのか

消火薬剤貯蔵容器を試験用ガス容器に交換するイメージ
総合点検では、消火薬剤の代わりに試験用ガスを使って放出動作を確認します。
具体的な手順は告示で細かく決められています。
消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号別表第29) 2 総合点検(抜粋) 放射に用いる試験用ガスの量は、点検を行う防護区域の必要消火薬剤量を放射するのに要する加圧用ガスの10%(端数を切上げた本数とする。)以上とする。消火薬剤貯蔵容器(パッケージ内の全ての消火薬剤貯蔵容器)と放出口への放出導管との接続部を外し、消火薬剤貯蔵容器1本を加圧用ガス容器又は試験用ガス容器と取り替え、他の消火薬剤貯蔵容器と放出口への放出導管の接続部には密栓等の処置をする。
試験用ガスの量は、必要消火薬剤量を放射するのに必要な本数の10%以上と決まっています
パッケージ内の消火薬剤貯蔵容器のうち1本だけを試験用ガス容器に取り替え、残りの容器はいったん放出導管から切り離して密栓します。
つまり消火薬剤そのものは一切放出せず、試験用ガスだけを実際に流して感知部から放出口までの動作を確かめる仕組みです。
点検後は取り替えた加圧用ガス容器を再充てんし、元どおりに復元することまでが手順に含まれます。
次の章では、この点検をどこまでの範囲でやればよいのかを見ていきます。

残りの消火薬剤の容器はそのままにしておくんですか。

いえ、接続部を密栓してから点検します。

Ⅰ型とⅡ型で点検の範囲がなぜ違うのか

Ⅰ型とⅡ型で点検の対象範囲が異なることを示すイメージ
総合点検の対象範囲は、Ⅰ型かⅡ型かで大きく変わります。
一度にどこまで確認するかという範囲の考え方です。
消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号別表第29) 2 総合点検(抜粋) Ⅰ型は、任意の同時放射区域を指定して、非常電源に切り替えた状態で試験用ガスを用いて確認する。同時放射区域を順次変えることで、4年以内で設置されている全てのパッケージ型自動消火設備を確認できるようにする。Ⅱ型は、非常電源に切り替えた状態で消火薬剤貯蔵容器と放出口への放出導管との接続部を外し確認する。1回の点検で一の防火対象物に設置されている全てのパッケージ型自動消火設備を確認するものとする。
Ⅰ型は同時放射区域を順番に選び、数年がかりで全体を確認していく方式です
任意の同時放射区域を1つ指定して試験用ガスで確認し、次回以降は別の同時放射区域を選ぶことで4年以内に全設備を一巡させます。
一方でⅡ型は、1回の点検で防火対象物に設置された全てのパッケージ型自動消火設備をまとめて確認します。
Ⅱ型がⅠ型より小規模な防護区域を想定した型式であることが、この点検範囲の違いにも表れています。
次の章では、複数の設備が連動している場合に何を確かめるのかを見ていきます。

Ⅰ型は毎回全部の区域を確認しなくていいんですか。

はい、4年かけて順番に一巡させます。

2台以上が連動する設備は何を確かめるのか

2台のパッケージ型自動消火設備が同時に作動するイメージ
同時放射区域を1台の設備だけで守れないこともあります。
その場合は複数の設備が連動して動く仕組みが必要です。
消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号別表第29) 2 総合点検(抜粋) パッケージ型自動消火設備の連動 同時放射区域を二以上のパッケージ型自動消火設備で防護する場合は、同時に放射できるよう連動して作動すること。任意の感知部を加熱(加煙)した場合に、当該感知器が接続されたパッケージ型自動消火設備のみ受信装置において発報した旨の警報を発すること。また、同一の同時放射区域の他の感知部が発報することにより連動している全てのパッケージ型自動消火設備の受信装置において警報を発するとともに、起動信号を発信すること。
同時放射区域を2台以上の設備で防護している場合は、連動して動くかどうかも点検項目です
最初の感知部が発報した段階ではその感知部が接続された設備だけが警報を発します。
同じ同時放射区域の別の感知部が発報して初めて、連動している全ての設備が警報と起動信号を発信する二段階の仕組みです。
点検では、連動しているパッケージ型自動消火設備が設置されている同時放射区域の全ての感知部について、この動作を確認します。
次の章では、点検が終わったあとに何をしなければならないのかを見ていきます。

感知部が1つ反応しただけでは、まだ放射しないんですね。

はい、もう一つの感知部が反応して初めて連動します。

点検が終わったら何をしなければならないのか

点検後にガス容器を復元し記録を残すイメージ
試験用ガスを使った点検は、確認して終わりではありません。
元の状態に戻す作業と、記録・報告までが点検です。
消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号別表第29) 2 総合点検(抜粋) 設置されている加圧用ガス容器による点検の場合では、点検後、当該加圧用ガス容器の再充てんを行うこと。この場合、高圧ガス保安法に基づく容器検査又は容器再検査を受けて、これに合格したものを使用すること。点検終了後は、全て確実に復元しておくこと。
点検で使った加圧用ガス容器は、再充てんしてから元の状態に戻します
再充てんの際は高圧ガス保安法に基づく容器検査又は容器再検査に合格したものを使う必要があり、どんな容器でも自由に使えるわけではありません。
密栓していた他の消火薬剤貯蔵容器も含めて、点検終了後は全て確実に復元しておくことが求められます。
そのうえで、点検の結果は維持台帳に記録し、防火対象物の区分に応じて1年に1回または3年に1回、消防長又は消防署長へ報告する義務があります。
明日からできることは、Ⅰ型なら次に確認する同時放射区域をあらかじめ決めておき、点検業者との打ち合わせをスムーズにすることです。

ガス容器って点検のたびに新品に交換するものだと思っていました。

いえ、検査に合格すれば再充てんして使い続けます。

よくある質問

Q総合点検で消火薬剤そのものを放出することはあるのですか?
Aいいえ。消火薬剤貯蔵容器を試験用ガス容器に差し替えて放出動作を確認するため、消火薬剤そのものは消費しません。
QⅠ型は毎年すべての同時放射区域を点検しないといけないのですか?
Aいいえ。任意の同時放射区域を順次変えながら4年以内で全設備を確認できればよいとされています。
Q複数の設備が連動する場合、なぜ最初の感知部だけでは警報が全体に広がらないのですか?
A誤作動での一斉放射を避けるため、同一区域内の別の感知部が発報して初めて連動する二段階の仕組みになっているためです。
Q点検で取り替えた加圧用ガス容器はどうすればよいですか?
A高圧ガス保安法の容器検査又は容器再検査に合格したもので再充てんし、点検終了後は元どおりに復元します。

まとめ

パッケージ型自動消火設備の総合点検は、消火薬剤貯蔵容器を試験用ガス容器に差し替えて模擬放出する方式で行います
機器点検は6月ごと、総合点検は1年ごとに行うことが告示第9号で定められています
試験用ガスの量は必要消火薬剤量を放射するのに要する本数の10%以上と決まっています
Ⅰ型は同時放射区域を順次変えて4年以内に全設備を一巡させ、Ⅱ型は1回の点検で全部を確認します
同時放射区域を2台以上の設備で防護する場合は、連動して作動することも点検項目です
点検後は加圧用ガス容器の再充てんと復元を行い、維持台帳への記録と消防長又は消防署長への報告が必要です
これらは消防法施行規則第31条の6・告示第9号・告示第14号別表第29に定められた基準です

総合点検で何が起きているか、これでうちも把握できそうです!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第31条の6
  • 消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件(平成16年5月31日消防庁告示第9号)
  • 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)別表第29
  • パッケージ型自動消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成16年5月31日消防庁告示第13号)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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