大雨の翌朝、消防ポンプ室へ入ると、排水溝に泥や落ち葉が詰まり、床に水がたまっていました。
ポンプが浸かっていないように見えても、制御盤や配線、モーターの状態を確認せず起動するのは危険です。
水に触れた可能性のある電気設備へ近づかず、消防ポンプをいったん使用保留にします。
排水、清掃、乾燥、電気設備の点検、ポンプの機能確認まで終えてから復旧を判断します。
床の水だけ抜けば起動できますか。
浸水範囲と電気設備の確認が先です。
- 滞水を見つけたら入室・起動・再通電を急がず、まず立入制限します
- 水の入口、排水溝、ピット、ポンプ、モーター、制御盤、配線を一体で確認します
- 排水しただけで復旧扱いにせず、清掃・乾燥・電気点検・作動確認を行います
- 使用保留中は代替の消火手段や監視体制を決め、必要に応じて消防署と共有します
- BCPには大雨前の排水清掃、止水、連絡、復旧試験、記録まで定めます
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目次
大雨後に消防ポンプ室の排水溝が詰まり床に水がたまっていたら起動してよいのか

結論からいえば、滞水がある状態で消防ポンプをいきなり起動してはいけません。
水が電気設備へ達している、または達した可能性があるときは、近づかず使用を保留します。
経済産業省は、浸水した電気設備を十分に点検せず使用すると、感電や火災のおそれがあるとして注意を促しています。
見えている水面だけでなく、端子、配線、制御盤の内部、モーターの絶縁状態まで確認が必要です。
水が制御盤やモーターへ届いておらず、専門家が安全を確認できた場合でも、排水経路の回復と消防ポンプの作動確認を行います。
排水溝の詰まりを除いただけで、平常状態へ戻ったと判断しません。
ポンプ本体が濡れていなければ大丈夫ですか。
制御盤・配線・モーターも確認します。
どの水の経路と消防ポンプ設備を確認対象にするのか

確認対象は、詰まった排水溝だけではありません。
水の入口、室内の流れ、排水先、消防ポンプ設備への到達範囲を一本の経路として追います。
| 確認する場所 | 見るポイント |
|---|---|
| 水の入口 | 出入口、壁、床、配管貫通部、換気口、逆流 |
| 排水経路 | 排水溝、グレーチング、排水口、ピット、排水ポンプ、屋外放流先 |
| 消防ポンプ | ポンプ本体、基礎、軸継手、モーター、呼水装置、弁類 |
| 電気設備 | 制御盤、端子、配線、電源、非常電源、接地、警報表示 |
| 消火機能 | 水源、圧力、起動装置、送水経路、代替の消火手段 |
国土交通省と経済産業省の浸水対策ガイドラインは、浸水経路を想定し、防水区画や止水、排水能力を組み合わせて対策する考え方を示しています。
入口を止めても、排水先が詰まっていれば室内の水位は下がりません。
床面に水位跡や泥の付着がある場合は、現在の水面より高い位置まで影響した可能性があります。
制御盤の下端、ケーブル引込み部、モーター、端子箱の高さと水位跡を照合してください。
排水口だけ見ればよいですか。
入口から排水先まで追います。
滞水を見つけたらどの順で対応するのか

最初に行うのは、ポンプを動かすことではなく人の安全確保です。
水に電気が流れている可能性を否定できない間は、室内へ入らず周囲を立入制限します。
- 消防ポンプ室の出入口を区画し、入室と起動を保留する
- 安全な位置から水位、漏電表示、異臭、異音、水位跡を確認する
- 防火管理者、建物管理者、電気主任技術者、消防設備業者へ連絡する
- 安全を確保して水の流入を止め、排水溝やピットの詰まりを除く
- 排水、泥の除去、洗浄、十分な乾燥を行う
- 制御盤、配線、モーターなどの電気点検と消防ポンプの機能確認を行う
- 使用保留中の代替措置と復旧結果を所轄消防署や関係者へ共有する
水の中へ入ってブレーカーを操作したり、通電状態の制御盤を開けたりしてはいけません。
停電や遮断の操作も、設備と権限を理解した担当者が安全を確認して行います。
消防ポンプが使えない間は、火気使用の制限、巡回、初期消火器具の増強、代替設備の確保などを施設の状況に合わせて検討します。
消防用設備の機能へ影響する場合は、所轄消防署へ状況と代替措置を早めに相談してください。
先に排水溝を手で掃除しますか。
感電の危険を除いてからです。
水を抜けば起動できると思うと何を見落とすのか

床の水がなくなっても、制御盤やモーターの内部、端子やケーブル接続部へ湿気や泥が残ることがあります。
見た目の乾燥と電気設備として安全に再使用できる状態は別です。
絶縁性能が低下したまま再通電すると、感電、短絡、発熱、誤作動につながるおそれがあります。
乾燥時間だけで判断せず、電気設備の専門家が必要な測定と点検を行います。
排水溝の詰まりを除いても、出入口からの流入、配管貫通部、排水先の逆流、ピットポンプの停止が残っていれば、次の雨で同じ滞水が起こります。
原因を一つに決めつけず、流入防止と排水能力を両方確認します。
復旧試験では、外観や電気的な安全確認に加え、消防ポンプの起動、圧力、流量、異音・振動、警報、停止、遠隔・自動起動を専門業者が確認します。
試験の結果と復旧を判断した人、時刻、残る制限を記録してください。
床が乾けば復旧でよいですか。
電気点検と機能確認まで必要です。
明日から消防ポンプ室の浸水へどう備えるのか

まずハザードマップ、過去の浸水履歴、建物周囲の地盤高から、大雨時に消防ポンプ室へ水が入る経路を確認します。
排水溝の清掃だけで終わらせず、止水、排水、設備保護、代替措置を組み合わせます。
- 出入口、外壁、配管貫通部、換気口からの流入経路を図面へ記入する
- 排水溝、グレーチング、ピット、排水ポンプ、放流先を定期清掃する
- 大雨前の確認時刻と清掃責任者を決め、写真と点検記録を残す
- 止水板や土のうを、避難や消防活動を妨げない位置へ準備する
- 制御盤、端子、予備電源などの高さと想定浸水深を照合する
- 防火管理者、電気主任技術者、消防設備業者、所轄消防署の連絡順を決める
- 消防ポンプ使用保留時の巡回、火気制限、代替消火手段を訓練する
国土交通省と経済産業省のガイドラインは、建築物の電気設備について、想定浸水深や浸水経路を踏まえた止水・配置・排水などの対策を示しています。
消防ポンプ室も設備の重要度と停止時の影響を踏まえて対策の優先順位を決めてください。
内閣府の事業継続ガイドラインは、二次災害の防止、重要業務の継続、復旧を一連で考えることを示しています。
大雨前の予防から、発見、使用保留、代替、点検、復旧、記録までを消防計画とBCPへ接続します。
大雨前に排水溝を確認します。
止水と代替措置もセットにしましょう。
よくある質問
排水後も確認が続くのですね。
乾燥・点検・試験までが復旧です。
まとめ
排水経路と代替措置を確認します!
排水・点検・復旧試験を一つの手順へつないでこそBCPです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 国土交通省 建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会
- 国土交通省・経済産業省 建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン
- 消防庁 消防用設備等の点検基準・点検要領
- 消防庁 防火対象物における浸水時の消防用設備等の対策に関する検討資料
- 内閣府 事業継続ガイドライン 令和五年三月
※本記事は公表されている法令・指針・公的資料に基づく一般的な解説です。消防ポンプ室に滞水がある場合は入室と起動を急がず、水の経路、排水設備、消防ポンプ、モーター、制御盤、配線を確認してください。個別の入室、電源遮断、排水、点検、代替措置、復旧、事業継続の判断は、設備と被害の状況に応じて所轄消防署、電気主任技術者、電気工事業者、消防設備業者へご確認ください。





